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- 藤崎萌恵
- 大阪府在住のライター。小説、漫画、アニメ、映画など“好き”を追い続ける。

すう先生の大人気BLコミック『キスは捜査のあとで』が、渡部 秀さん&齋藤璃佑さんW主演で実写ドラマ化。渡部さん演じる天然人たらしのアラフォー人情派刑事・多古井平助と、齋藤さん演じる毒舌エリート後輩・塩野 秀が織りなす、ノンストップ・ラブコメディです。
第8話では塩野をめぐり恋のライバル対決(?)が開幕し、多古井と伊達ジョージ(演:渋江譲二さん)が自分しか知らない塩野を披露。なんと多古井からは「塩野はキスがうま〜い!」という発言が……!
本稿では、ドラマ『キスは捜査のあとで』第8話「愛の乱打戦、プレイボール!」をレビュー。親密度が深まっていく多古井と塩野。そこには相手のことを“もっと知りたい”という想いがありました。
※本稿はドラマ『キスは捜査のあとで』第8話までのネタバレを含みます。
塩野と遠距離恋愛となり、着実に愛を育みながらも会えない寂しさを嘆いていた多古井。寂しいのは多古井だけではなく、塩野もまた会いたい気持ちを募らせていました。
塩野が突然会いに来て素直な想いを伝えてくれたことで、多古井は嬉しさを隠しきれず。この幸せな時間を終わらせたくない、もう少し一緒にいたいという本音を塩野も感じ取ったのか、夜道でキスをして「次来る時は泊まるから」とそっと囁きます。
しかし本部からの監察として姿を現した塩野は、すっかり冷たい表情で感情を覆い隠しながら、多古井に素っ気ない態度を向けていました。
さらに塩野と親密な関係を匂わせてくる伊達ジョージの登場により、多古井は戸惑いや嫉妬心を剥き出しに。そんな多古井に、「多古井さんが疲れてない日に泊まりに来るんで」と、塩野はまたしても甘い言葉と眼差しで宥めます。多古井はというと、一気に有頂天に。
こうして感情がめまぐるしく変化していた多古井の中で、塩野に対するある疑念が生じます。デートをキャンセルした日、なんと塩野が伊達と一緒にいたらしいと判明。電話の向こうで「秀」「ジョージ」と名前で呼び合う親しげな2人の声。思わぬ恋のライバル(?)の出現に、多古井の不安はますます膨らんでいきます。
一方で、突然多古井から電話がかかってきて、「声聞きたいななんて思って」「人肌恋しくなって」なんて言われた塩野の喜びは想像に難くない。同時に、こんなに危うい多古井のそばにいられないのは、やはり心配だろうと共感せずにはいられません。
多古井がこんなふうに言葉にして自分を求めてくれるのは嬉しいけど、誰かに取られるかもしれないという不安がずっと根付いているからなのか、「危なっかしいな」という本音を漏らしていました。
そんななか、塩野のことが頭から離れない多古井は、八木(演:ドロンズ石本さん)から頼まれて本部へ急ぎの書類を届けることに。塩野に会える機会を得た多古井は、彼のいる本部へと一目散に向かいます。まさに「人を動かすのは結局愛だよな」と呟く長谷川(演:金井勇太さん)の言葉通り。
そんな多古井の様子を見つめていた大前田(演:小方蒼介さん)。多古井に駆け寄って「送りますよ」と好意的な態度を示し、断られてもなお献身的にネクタイや袖を整えてあげていました。
これは何か起こりそうな予感……寄せられる好意に、周りは気づいても多古井本人は気にも留めない。あまりにも愛され体質で無自覚な隙を見せてくれる度に、塩野の気苦労を痛感してしまいます。とはいえ、塩野もまた伊達に馴れ馴れしく触られてもされるがままで、無反応なのですが。
多古井が本部に書類を届けて塩野を待ち伏せしていたところ、親しげに歩く塩野と伊達の姿が。思わず2人の後を追って辿り着いたのは、なんとバッティングセンターでした。
多古井は見事なバッティングを披露する2人をこっそり覗き見。「昔から変わらないな、秀は」という伊達の言葉から“元カレ”疑惑が浮上して混乱を極めていたところ、ついに伊達に見つかってしまいます。
塩野のことを好きな者同士仲良くしようと煽る伊達に対し、多古井は「あいつの今の相手は俺だからな」「渡す気なんてさらさらねぇよ!」と宣戦布告。一歩も譲らない意気込みには塩野への熱い想いが溢れていました。
塩野は多古井にだけ見せる顔がある一方で、伊達の前で見せる顔はまた少し違って砕けた態度も。視聴している側としてはこの差異も楽しみのひとつなのですが、多古井もおそらくこのあたりを繊細に感じ取ってモヤモヤしているはず。“元カレ”の称号に加えて、こういった自分の知らない塩野を引き出す存在であることも気になってしまうのではないでしょうか。
こうして多古井と伊達、恋のライバル(?)同士によるバッティング対決が開幕し、2人は“自分しか知らない塩野のこと”を披露することに。
中学のときにファンクラブがあったとか、ああ見えてお化けが怖いとか、初恋相手が“交番のおまわりさん”とか、伊達の口から塩野の貴重な情報が続々。
対する多古井も、塩野のスマホの待ち受け画面が自分であることを自慢。毎度ドヤ顔を見せつけるも即座にマウントを取られ、多古井はついに切り札を出します。
「塩野はキスがうま〜い!」
さて、ここで言及しなければならないのは、“塩野はキスが上手い”ことを多古井が知っているという事実。これまでのキスは、第1話の取調室のキス、第3話のキス未遂、第6話のほっぺのキス。
そして第7話の夜道のキスでさえ、おそらく唇が触れるだけの優しいキスだったので、それだけなら“塩野はキスが上手い”という言葉には至らないはず。つまり多古井はおそらく、私たちが知らないところで“塩野はキスが上手い”ことを体感しているわけなのです。第6話ラストの行間を含め、このような妄想の余地が我々をさらなる沼へと誘います。
煽られてキス事情まで暴露してしまう多古井があまりにも可愛いのですが、それを間近で見ていた塩野の心境やいかに……!
今回、伊達の存在により一波乱ありましたが、多古井役の渡部さんと伊達役の渋江さんの演技の相乗効果で面白さがより濃厚に。齋藤さん演じる塩野との距離感や絡みもそう。伊達の登場によって、多古井と塩野の今まで見せたことのない側面が表面化することになりました。
バッティング対決の後、伊達が塩野の姉・真希の夫、つまり義理の兄であることが明らかに。塩野は多古井との関係を姉に聞かれて、多古井の躊躇う様子を察知してか“元職場の同僚”として紹介しようとしますが、多古井は塩野と“お付き合い”していることをきちんと伝えます。
伊達は高3の夏に多古井に三振させられて敗退したという高校野球時代の因縁があり、その恨みでからかいたくなったのだとか。伊達から多古井の話を聞いた塩野は、自分も多古井の好きなものを「もっと知りたくなった」と打ち明けます。
かっこつかなかったら嫌だから先に練習したかったなんて、多古井の前ではかっこよくありたい塩野も可愛いですよね。伊達から自分の知らない多古井のことを聞かされて悔しがるのも可愛い。姉夫妻の前だと“弟属性”が出てしまうのも可愛い。
塩野は不服そうにしていますが、多古井は誤解が解けてホッとした表情に。さらに塩野の本音を知った彼の顔には、自然と笑みがこぼれていました。
自分の想いを素直に言葉にするようになった多古井は、塩野の家族のことや身の回りのことを知れるのが嬉しいし、「お前のこと、もっと知りてぇし」と告げます。
今回グッときたのは特にこのあたり。好きな人のことをもっと知りたいと思うこと。多古井が塩野の家族にきちんと挨拶をして、家族を大切にする塩野を「すっげぇいいと思う」と肯定していること。好きな人を大切にしたいのはもちろん、好きな人の大切な存在も大切にしたいという気持ちからも愛の深さを窺い知ることができます。
多古井は塩野以上に“この先”のことを考えていて、家族に会わせるのは重いのではないかと不安に思っていたという塩野に、間髪いれず「全然重くねぇよ」と返していました。
「誰に紹介しても恥ずかしくない相手と普通に恋愛して普通に結婚するのが多古井さんには合ってる」と、自分に言い聞かせるかのように告げていた塩野にとって、自分との“この先”を考えてくれていることがどれほど嬉しいか。その幸せを抱きしめながら、塩野は大胆な行動に出ます。
お泊まりに誘われたあの夜は、多古井を気遣って「今日は帰ります」と断っていた塩野。だけど今回は「帰りたくないな」と甘えて、「2人でどっか行っちゃいません? このまま」と、どこか探るようにお誘い。多古井も「行くか、どっか」と誘いに乗ります。
塩野はふいに「誘ってる?」とイタズラっぽく返し、その熱を帯びた視線は1秒たりとも多古井を離しません。そのままゆっくり多古井の耳元に顔を寄せると、「キス、うまいんでしょ? 俺」と囁きます。あぁ……塩野はこんな表情を今まで隠し持っていたのか──。
思わず何度も一時停止してしまったこの場面。その熱い眼差しには愛情、情欲、挑発、自信が漲り、絶対に多古井を逃がさないと言わんばかり。多古井さん、どうなってしまうの?
とはいえ私たちが知らないだけで、多古井はそんな塩野の顔を既に知っているのかもしれないですが。
人をその気にさせてしまう多古井の魅力に説得力があり過ぎると、ドラマを観ながら常々感じているのですが、逆に多古井が塩野に夢中になる説得力も凄い。
多古井が塩野のことをよく見ていて、塩野の良さを知って惹かれているのも確かなのですが、本能的にも強く惹かれているのだろうと思えてきます。
2人の親密さを匂わせるキスの話、お泊まりへの期待を内包した手繋ぎ。多幸感で満たされつつ、残りあと2話という現実に寂しくなります。どうか続編がありますように。
| 作品名 | キスは捜査のあとで |
|---|---|
| 放送形態 | 実写ドラマ |
| スケジュール | 2026年7月26日(日)~2026年9月27日(日) ABCテレビにて |
| 話数 | 全10話 |
| キャスト | 多古井平助:渡部秀 塩野秀:齋藤璃佑 江川まり子:工藤遥 長谷川次郎:金井勇太 八木保:ドロンズ石本 大将:矢柴俊博 松雪みすず:菊川怜 |
| スタッフ | 原作:すう『キスは捜査のあとで』(Jパブリッシング) 脚本:村田こけし 演出:大内隆弘 浅見佳史 プロデューサー:藤田洋平 寺川真未 川西琢(ABCリブラ) 制作協力:ABCリブラ 制作著作:ABC |
| 主題歌 | 「なつめき」OCTPATH |
