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- 藤崎萌恵
- 大阪府在住のライター。小説、漫画、アニメ、映画など“好き”を追い続ける。

すう先生の大人気BLコミック『キスは捜査のあとで』が、渡部 秀さん&齋藤璃佑さんW主演で実写ドラマ化。渡部さん演じる天然人たらしのアラフォー人情派刑事・多古井平助と、齋藤さん演じる毒舌エリート後輩・塩野 秀が織りなす、ノンストップ・ラブコメディです。
第9話では多古井と塩野が温泉お泊まりデートへ。塩野の初恋について明かされ、回想では“交番のおまわりさん”時代の多古井と学ランの塩野の姿が。
本稿では、ドラマ『キスは捜査のあとで』第9話「10年先の俺たちは」をレビュー。2人は着実に愛を育み、多古井は塩野との10年先を見据えて心の内を語りました。
※本稿はドラマ『キスは捜査のあとで』第9話までのネタバレを含みます。
恋人同士となり、もっと一緒にいたいと想いを募らせていく多古井と塩野。2人は休暇を合わせて温泉お泊りデートへ。観光しながら名物のかまぼこの食べ歩きを満喫したあと、温泉旅館ではしゃぐ多古井に視線を送る塩野は、「その顔見れただけでここに来た価値があります」と表情を緩ませていました。
露天風呂でじゃれ合いながら、塩野の初恋相手について切り出す多古井。バッティング対決で伊達ジョージ(演:渋江譲二さん)から聞いた塩野の初恋情報を気にしていたようで、改めて塩野の口から「かっこよくてまっすぐな交番の警察官」だったと告げられ、ちらりと嫉妬心を覗かせます。
初恋相手が多古井であることを何故か明かさない塩野ですが、多古井の顔をじっと見つめながら「好きな顔だなって思って」としみじみと呟く姿も。一緒に温泉で癒やされ、同じ浴衣を身に纏って美味しい料理を堪能した2人は、足湯に浸かりながら至福の時間を噛み締めていました。本音で交わす言葉が確かな愛を物語っています。
初恋の回想では、なんと“交番のおまわりさん”時代の多古井と学ランの塩野の姿が。年齢をも巧みに操ってしまう多古井役の渡部さんと塩野役の齋藤さん。現在の面影も投影しつつ、若かりし2人はあどけなさや未熟さも残しています。
“初恋泥棒”の説得力を発揮し過ぎてしまう多古井に、塩野少年が恋に落ちた運命の瞬間。「かっこよくてまっすぐな交番の警察官」から目が離せなくなり、髪をわしゃわしゃされて目をぎゅっと閉じた後、まぶたを開けて彼を視界に捉えるとまた釘付けになっていました。これは罪深い……忘れられないですよね。
塩野の初恋エピソードがここで差し込まれたことで、多古井への並々ならぬ想いと同時に、どれだけの感情を抱えて拗らせてきたのか、今の彼がどんな想いで多古井の隣にいるのか、改めて想いを巡らせてしまいます。
多古井は本部に行きたいという本音を語り、塩野との立場の差に対する不安を打ち明けていました。「もう10年もすればお前はきっと管理官になる。その時一緒にいる俺がかっこつかないのは嫌なんだよ」と。
10年先を語る多古井に「プロポーズみたいですね」と返し、どこか実感のないような嬉しさを滲ませる塩野。そう言われて、多古井は「もっとちゃんとしたやつじゃないと」と真面目に向き合っていました。塩野の姉夫妻に対する挨拶といい、ここでも誠実さを見せる多古井。すると塩野は、「ちゃんとしたやつしてくれるんだ」と微笑んでいました。
幸せに溺れながらも塩野との“この先”を見据えて、そのためにどうすればいいのかを真剣に考える多古井。幸せを噛み締めつつ多古井を繋ぎ止めたい気持ちが強く、多古井を楽しませることに頑張ってしまう塩野。2人の視点と恋愛観の違いは年齢的なものもあるだろうし、それだけでもないように思えます。
自分が多古井の恋愛対象にはならないと考えていた塩野は、焦がれ続けた人が恋人になってもなお、必死に追い続けているかのよう。“今”の幸せを離したくなくて、“未来”にまで気持ちが追いついていないようにも見えます。多古井にとって好きな人との未来を考えるのはごく自然なことだとしても、これまでの塩野にとっては必ずしもそうではなかったのかもしれません。
一方で、塩野と過ごす時間に確かな喜びを感じるようになった多古井にとって、塩野はずっと一緒にいたいと思える居心地のいい存在に。そうでなければ、その人との“この先”のことなんて考えられませんから。
そして、多古井にはひとつの変化が。これまで人目を気にする姿も見られましたが、“塩野と付き合うこと”への向き合い方が徐々に変わっていく様子も。恋人同士なんだからと背中を押してくれる同僚の江川(演:工藤 遥さん)と長谷川(演:金井勇太さん)の言葉を受け止めつつ、多古井は塩野との関係を隠すことに違和感を覚えるように。
塩野は周りの目なんて気にしないけど多古井の気持ちを尊重し、多古井は塩野と楽しい時間を過ごしながら自分なりの答えに辿り着こうとしていました。
旅行から帰った塩野は、伊達と情報を共有しながらある事件の捜査を進めていました。一方で山ノ道署では、多古井が同僚たちにお土産を渡しながらご機嫌で旅の思い出を語り、大前田(演:小方蒼介さん)はそんな多古井をじっと見つめています。ここでは多古井と塩野の関係に気づいていないのが、もはや八木(演:ドロンズ石本さん)だけに……?
塩野との関係は順調なようで、会う約束をした多古井はルンルンでたこ焼きの準備。しかし、塩野の仕事でその日は会えず。
翌日、久しぶりに多古井に会える喜びを胸に、塩野は走って大将(演:矢柴俊博さん)の居酒屋へ。ところが、そこには大前田の姿があり、塩野の表情は一瞬にして凍りつきます。塩野を挑発するかのように、大前田は多古井に馴れ馴れしくボディタッチも。
好意的ではない視線と視線が火花を散らすカウンター席。何も知らない多古井を挟んで塩野が大前田を睨みつけていると、大前田はさらに煽るような大胆な行動に。なんと彼は、多古井にまとわりつくように腕時計をねだります。
多古井がそれを気前よく承諾すると、これまで堪えていた塩野は、「いいわけねぇだろ!」と激しい感情をあらわに。ずっと塩野の内側で渦巻いていた不安が、烈火のごとく怒りに姿を変えた瞬間でした。
2人で会う約束だったのに大前田を連れて来たことも、大前田に狙われているのに多古井本人が気づかないこともそう。塩野の憤りは計り知れないですが、多古井の同性に対しての警戒の緩さも、塩野と食い違う要因のひとつだと考えられます。
実のところ塩野は多古井から愛されていることをちゃんと知っているし、多古井が浮気するような人間ではないことも知っています。だけど、恋心というものは繊細であり、客観的視点と自信が損なわれることも。本来は強気な塩野も、多古井のことになるとどうもダメらしい。
塩野は多古井の気持ちを信じていないわけではないけれど、根底にあるのは“多古井とたまたま付き合えたのが自分だった”という認識なのでしょうか。多古井が自分を受け入れてくれたことが嬉しくてたまらなかった反面、多古井が誰かに迫られたら同じように受け入れてしまうのではないかという不安が常に付き纏っているようです。
多古井はいつも塩野と会うことを楽しみにしているし、塩野への愛情を形にしています。だけど、多古井は誰にでも優しいため、塩野がその優しさを自分への特別な愛情だと受け止めるかどうかは別。このあたりがもどかしくもあります。
多古井はというと、自分の気持ちは塩野に伝わっていると思っていたし、塩野に信じてもらえていないことに憤っていました。
本音で言葉を交わしてはいても、双方の想いが伝わりきれていないのも確か。例えば多古井は今のところ塩野の初恋が自分だとは知らないし、塩野の不安も知らない。塩野は多古井にどれだけ愛されているのか、その全貌を知らない。塩野はもう本当に、多古井からどれだけ愛されているのか思い知るべきなのです。
次回はいよいよ、ドラマ『キスは捜査のあとで』が最終話を迎えます。タイトルを回収するのかどうなのか、多古井と塩野の関係はどう動くのか。
9話の放送前、1話から観返しながら多古井と塩野の関係の変化を改めて辿ってみました。塩野のこれまでの言動が“初恋”に起因しているのだと思うと、あまりにも不器用で健気で、なんだか無性に愛おしい。2人で幸せになってほしいし幸せでいてほしい、そしてどうか終わらないでと願うばかりです。
| 作品名 | キスは捜査のあとで |
|---|---|
| 放送形態 | 実写ドラマ |
| スケジュール | 2026年7月26日(日)~ ABCテレビにて |
| キャスト | 多古井平助:渡部秀 塩野秀:齋藤璃佑 江川まり子:工藤遥 長谷川次郎:金井勇太 八木保:ドロンズ石本 大将:矢柴俊博 松雪みすず:菊川怜 |
| スタッフ | 原作:すう『キスは捜査のあとで』(Jパブリッシング) 脚本:村田こけし 演出:大内隆弘 浅見佳史 プロデューサー:藤田洋平 寺川真未 川西琢(ABCリブラ) 制作協力:ABCリブラ 制作著作:ABC |
| 主題歌 | 「なつめき」OCTPATH |
