
「片田舎のおっさん、剣聖になるII」キャスト連載インタビュー第6回!ベリル・ガーデナント役 平田広明さん|「親父を超えたのだから、自分の剣に責任を持たなきゃならない」……その自覚があることをただ感じてほしい
シュステの想いを受けてベリルの中に浮かんだアリューシアの存在
──これまでの物語を振り返る質問に移ります。この物語が始まるきっかけを作ったアリューシアとベリルはずっと関わり続けていたと思いますが、平田さんがアリューシアについて気に入っている部分をお教えください。
平田:キャラクターのビジュアルと台本を照らし合わせてどんな子かを把握した段階で、東山さん(※東山奈央さん)とは別作品でお付き合いがありましたし、雰囲気はピッタリだろうなと思っていました。東山さんがどこかで言ったかもしれませんが、やっぱりアリューシアはベリルに恋焦がれているところがあるじゃないですか。その気持ちと騎士団長という立場との変わり目がきっと面白いんだろうし、アリューシアの大事な見せ場のひとつになるんだろうなとも思いましたね。
東山さんも真面目な方ですから、きっと台本を読んでそう解釈したんだと思います。それで台本に準じて第一声を出してみたら、「デレなくていいです」ってディレクションをされたんですよ。彼女も「え?」と驚いていましたが、絵がデレているからお芝居ではそこまでやらなくていいということで、そこの調整には苦労していたみたいです。
そんなアリューシアに慕われているベリルがどこまで鈍感なのか、僕にも実際のところはわかっていないんです。決して迷惑には思っていないけれど困ってしまう……それ以上でもそれ以下でもなくて、第一期からそのスタンスを貫いていました。だからこそ、アリューシアの気持ちを考えると相手がこんな鈍感なおっさんじゃ気の毒だなって思っていたんです。
そうやってふたりの関係は停滞を続けていましたが、第二期の第7話「片田舎のおっさん、貴族に招かれる」で上坂さん(※上坂すみれさん)の演じるシュステ・フルームヴェルクが登場したことで少し変化の兆しが現れました。といってもベリルはまあいつも通りですが、アリューシアのほうは「おいおい」「ちょっと待って!?」と気が気じゃない。
このシュステの存在がアリューシアの心にもたらした変化を、ベリルも僕もきちんと捉えきれてないんです。けれど、劇中で説明するシーンがないのなら深く解釈してもしかたないと前向きに考えました。自分の演じなければならない部分だけを繋げて、視聴者の方にとって余計な情報をお芝居にのせないようにするのが僕の信条なんです。ただの説明芝居やネタバラシになってしまう恐れがあるので。
シュステから向けられた気持ちが自分の家のためから純粋な好意に変わって一途な想いを感じたときに、初めてベリルはアリューシアのことが「あれ?」と引っかかってきた。それを観て僕は「ほぉ~!」と思いましたよ。
グレン王子とサラキア王女が誓いを立てるシーンで一瞬アリューシアの顔をふと見てしまう。「おいおい、これはこの先どうなっちゃうの?」って僕としても感じましたし。
──他の弟子たちとはまたちょっと違った関係性になりつつありますよね。
平田:そうなんです。そして東山さんのお芝居を受け止めて、そういった心境の変化を見ている人に感じてもらわなきゃならないベリルのお芝居も、これまでの鈍感なおっさんと違って繊細になりました。
ベリルが考えるのを避けてきたようなことにいよいよ向き合わなきゃならない段階に来たのかなと思ったけれど、きっとそれ以上にアリューシアは大変になるだろうし。それを東山さんがどんなお芝居でくるだろうか楽しみでしたし、第一期から密な芝居をしてきた彼女のアプローチに救われた部分はたくさんありました。
ベリルと一番絡むのがアリューシアだからこそ、セリフを交わしながら東山さんもきっとこの役が好きなんだろうなとも思いました。
──そして、アリューシアと同様にベリルにとって大切な存在がミュイでした。親子のような関係性を築いていきましたが、掛け合いで印象に残っていることはありますか?
平田:東山さん以外の弟子キャストのみんなとはこの作品で初めましてだったので、最初は役として会話する時以外はほとんど話はしなかったんです。そこから喋るようになってみると、仲田さん(※仲田ありささん)は地声がとても可愛いんですよ。後々聴いてみたら、他の作品ではもっと可愛らしい声の役柄をやっていると言うんです。
だとすると、ミュイの声は一生懸命作っているんじゃないか、しんどいんじゃないかと思いながら聴いていたのですが、それが見事にハマっている。キャラクターの心情……という意味では特に難しい役ですからね。最初はお姉ちゃんのためにっていうわかりやすい目的があって、それが色々な相手に向かって飛んでいる。泥棒をやっていたなんて、日常ではありえないような状況だったからこそ、逆に分かりやすく作りやすい部分があったと思います。
逆に、誰もがしている日常会話、その中での微妙な感情の揺れだとか何かのほうが、視聴者のみなさんも知っている日常だからこそお芝居でも嘘が吐けないし、僕はむしろそういうところの方が難しいと感じています。だけどそういうところも可愛いミュイになっていたので、若い方だけど凄く頼もしかったですし、救われたシーンがいっぱいあります。
──ベリルとミュイのコミュニケーションの場といえば、やっぱり食卓を囲むところが印象的です。
平田:特に何かが起きる訳ではないからこそ、ああいう日常シーンが難しい。序盤だと魔術師学院の剣魔法科の臨時講師のお仕事をベリルが受けてもいいかと尋ねて、ミュイが「なんでアタシに聞くんだよ」とやりとりするところなんか、ともすれば長年連れ添った夫婦のくたびれた会話みたいじゃないですか。
そういうところはキッチリお芝居をしないといけないんだけど、そういう何でもないシーンをきちんと形にする彼女に凄く助けられていました。




































