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『劇場版“文学少女”』多田俊介監督にインタビュー!

人気ライトノベルがドラマCDに続き待望の劇場アニメ化!──多田俊介監督が語る「『劇場版“文学少女”』の見せ場は“夜”です!」

 『このライトノベルがすごい!2009』では第1位に、続く『このライトノベルがすごい!2010』(ともに宝島社刊)でも第3位となり、現在のライトノベルシーンの話題を席巻する『“文学少女”』(著者・野村美月氏/イラスト・竹岡美穂氏) 06年から08年にわたって全8巻がファミ通文庫から発刊され、現在も短編集や外伝が刊行中。シリーズ累計160万部という人気シリーズのメディアミックスプロジェクトがついに始動。原作の第1巻『 “文学少女”と死にたがりの道化(ピエロ)』がドラマCD化されたのに続き、劇場アニメーション『劇場版“文学少女”』が10年5月1日に全国順次ロードショーされる。

 現時点では原作のどの部分が映像化されるのかなど、詳細な情報は明かされていないが、公式サイトなどで公開されたビジュアル等をみても、非常に期待できるクオリティであることは間違いない。

 今回、アニメイトTVでは劇場版の監督の担当している多田俊介氏にインタビュー。現在制作中ということで話せない部分なども多々ある監督だったが、『劇場版“文学少女”』の全貌に迫るべく、聞ける限りの質問をぶつけてみた。

<About>
『ぼくはあの日、真っ白な木蓮の木の下で、彼女に出会ってしまった――』

入学したばかりの新入生、井上心葉は、白い花を満開に咲かせた、大きな木蓮の木の下で本を読んでいる女生徒を見つける。その光景に見とれていると、少女は何と本のページを破り食べ始める。驚く心葉を、その少女、遠子は「今日からきみは文芸部に入りなさい―」と強引に入部させてしまう。それから一年経ったある日。遠子の「おやつ」の為に設置した「恋愛相談ポスト」に一通の手紙が…。ここから物語は急転直下のミステリアスな学園物語へと展開し、遠子、心葉を中心に、様々な登場人物達の物語が紡がれていく……

思春期を感じさせる少年少女達の心の葛藤や、暗い心の記憶など、作品の持つ透明度から、映像化困難と言わしめた作品を今、Production I.Gが遂に映像化。シリーズの集大成として様々なメディア展開を行う『“文学少女” プロジェクトメモワール』からドラマCDに続き、劇場版も公開!


●キャラクターをフォーカスした映画になっています

――5月1日公開ということですが、現在の制作状況を山登りで例えるとどれぐらいでしょうか?

多田監督:今はまだ5合目ぐらいですね。パートによっては9月ぐらいから開始しているところもありますが、コンテの完成に合わせて最近作業に入った部分もあるので、慣らしてみると半分ぐらいかなと。

――もう全貌は見えてきたような……?

多田監督:ゴール(公開日)は決まっているので、とりあえず現場の実作業を粛々と進めていくという状況になっています。

――最初に作品と出会った際の印象は?

多田監督:映像化するという前提で作品と出会ったので、最初の印象は“映像化がなかなか難しいな”と。

――どこに難しさを感じましたか?

多田監督:単なる映像化だけではなく、プロジェクトとしての形を提示されての話で、物語を原作の単行本の順に追うことができないことが、最初からわかっていたんです。その制約のなかで、“原作の何を抽出したらいいのか?”そこが最初のハードルでした。

――映像化が難しそうだなと思った部分や、逆に原作を読んでイメージが膨らんだ部分などはありますか?

多田監督:難しいのは、あくまで“文字”なんですよね。書かれている文章そのものが、“作品の存在”そのものだったりするので、“これを誰かのセリフに置き換えられるのか?”とか。そうした部分を映像ではト書きで説明するってことは基本的にできなくて、ただ実際は、そこの部分が重要だったりするので、それをどうクリアしていくかがハードルでした。形としてはある意味、モチーフになる文学よりキャラクターにフォーカスする方向で話を作っています。


多田俊介氏

多田俊介氏

●心葉目線で進行する物語だが、主人公は遠子と心葉の2人

――原作を映像に再構成するにあたって、キャラクターにフォーカスしたのですね。映画版のポイントになる部分などはどこでしょうか?

多田監督:原作を順番どおりに追うと、あまり主人公が出ないんですよ。だから主人公の出番を増やしています(笑)。

――監督の言う主人公というのは、遠子と心葉のどちらでしょう?

多田監督: 2人ともです。ただ物語は心葉の視点で進みます。ここは原作を踏襲しています。

――映像のディテールの部分について、原作のイラストは少女マンガ風で、水彩画のような色遣いや線の表現などは、アニメ化にあたって難しい点もあると思います。監督としては原作のテイストから、どこを生かしてどこを割愛したのでしょうか?

多田監督:イメージでみせるよりキャラクターに歩みよった映画になっているので、キャラクターの息遣いや空気感がみえる方向です。原作の挿絵をそのまま映像にしたものを想像していると、ちょっと違う表現かもしれません。友人や知人、スタッフにリサーチした結果、原作を読んで想像していることが人によって結構違う。そこで、誰もが自分の主観で想像できるあやふやなイメージを提示する手法もあったんですけど、今回はキャラクターにフォーカスする映画にしているので、それをやったらキャラクターにフォーカスできなくなっちゃうわけです。あやふやな綺麗さや物悲しさとか、そういったもので映像を捉えてしまうと、こちら側が伝えたい明白な結論っていうものが伝わりづらくなってしまう。そこについてははっきりした映像で作っていこうと。

――映画版はDVD(※)のイメージに近いのですか?
※09年12月26日に発刊された単行本の外伝『DVD付特装版“文学少女”見習いの、傷心(しょうしん)。』に収録された『“文学少女”今日のおやつ ~はつ恋~』

多田監督:画はほぼ近い感じですが、劇場版は全く違うアプローチで作られています。『“文学少女”今日のおやつ ~はつ恋~』は、文芸部での学校生活の一場面を切り取ったという形にしてるんですけど、今回は作品のテーマ的な部分に切り込むので、手法は同じでも見え方は全然違うものになると思います。

――TVシリーズやOVAを演出するのと比べての映画ならではの苦労はなんでしょうか?

多田監督:これはハッキリしてるんですけど、映画は情報の羅列では成立しないんですよね。TVだと“総合的に観れば最終的に何かが語られている”という形にすることができるんです。話数によっては本筋に直結しないエピソードや、あとから組み立て直すと“ここにはまる”ということができますが、映画では、ゴールをきちんと設定した作り方っていうのを、TV以上に明確にしなければならないわけです。

――キャストについてはいかがでしょうか?キャスティングの決め手などは?

多田監督:これこそ最大公約数を探ったところですね。キャストは複数の候補者からオーディションを3次選考ぐらいまで行って絞りました。遠子はもちろんですが、今回の映画では心葉の視点で進むので、心葉役はあらゆるシチュエーションに対応してもらわなければなりません。だから彼のキャスティングに関しては、僕からもとリクエストはしました。

――映画として一番の見せ場はどこでしょうか?

多田監督:“夜”ですね。きちんとした夜が描かれてるのって劇場版だけなんです。

――最後に読者の方へのメッセージをお願いします。

多田監督:原作から映画へ、映画をきっかけに原作を読む。そのどちらにも訴求できるように欲張っています。知っている人にとっての見せ場はもちろん、初見の人にとっても、作品の世界に触れることで、逆に語りきられてない部分も知りたいと思うように見せられるのではないかとちょっと欲張ってみました。期待して待っていてください!


『劇場版“文学少女”』
5月1日から全国順次ロードショー(北海道ユナイテッド・シネマ札幌/東京シネ・リーブル池袋/愛知伏見ミリオン座/大阪テアトル梅田/福岡ユナイテッド・シネマキャナルシティ13 ※1/9現在)

<STAFF>
原作:『“文学少女”シリーズ』 野村美月(エンターブレイン ファミ通文庫刊)
アニメーション制作:プロダクション I.G
キャラクター原案:竹岡美穂
監督:多田俊介
構成・脚本:山田由香
キャラクターデザイン:松本 圭太
音楽:伊藤真澄

<CAST>
天野遠子(あまの とおこ):花澤香菜
井上心葉(いのうえ このは):入野自由
琴吹ななせ(ことぶき ななせ):水樹奈々
竹田千愛(たけだ ちあ):豊崎愛生
芥川一詩(あくたがわ かずし):小野大輔
姫倉麻貴(ひめくら まき):伊藤静
櫻井 流人(さくらい りゅうと):宮野真守
森ちゃん(もりちゃん):下田麻美

●ラフ画集付き限定前売券が1月23日より各劇場窓口で発売中。特典として「“文学少女”創像画集(ルビ:ラフスケッチ)」付属。価格は1,500円(税込)。

今後の新たな情報や関連CD情報については公式サイトをチェック!

>>劇場版“文学少女”公式サイト
 

(C)2010 Mizuki Nomura/PUBLISHED BY ENTERBRAIN, INC./“文学少女”製作委員会
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