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『閃光のナイトレイド』連続企画第1弾――大松裕氏&大西信介氏対談

TVアニメ『閃光のナイトレイド』連続企画第1弾――アニメーションプロデューサー・大松裕氏&メインライター・大西信介氏特別対談!“「アニメノチカラ」で「アニメの力見せます!!」”

 1930年代の上海を舞台に、スパイたちの暗躍を描き話題沸騰の超能力スパイアクション、TVアニメ『閃光のナイトレイド』。テレビ東京とアニプレックスが放つ新プロジェクト「アニメノチカラ」第2弾として現在放映中の本作は、原作モノ主流の現在のアニメ界に久々に現れたオリジナル大作としても注目を集めている。放送も回を重ねますます盛り上がる本作をより深く堪能し味わうためにアニメイトTVでは連続企画を実施。

 その第一弾として、本作の最重要人物といえるA-1ピクチャーズのプロデューサー・大松裕氏(代表作:「BLOOD+」など)と、メインライターの大西信介氏(代表作:「DARKER THAN BLACK シリーズ」「大魔神カノン」等)の特別対談を実施。二人の口から語られる『ナイトレイド』の誕生秘話とは!?


●「アニメ業界の“力”を見せたい」と思っていたら「アニメノチカラ」が始まった

──まず最初に、原作つきではなくオリジナル企画で挑もうと思われた理由からお聞かせください。

大松裕氏(以下・大松):そうですね……原作ものだと、やはり原作者の方も自分の作品に思い入れがあるのはもちろん解りますし、それを尊重したい一方で、僕の感覚としては、監督以上の人が作品に存在しないものを作りたいという部分があったんです。(アニメ制作者の)想いとして、苦労した作った作品を成功させて、その賞賛をアニメのスタッフで独占してみたいという気持ちもあります。
 また、“アニメーション業界としての力”を示したいところもあります。マンガ原作は、それはそれで良いのですが、どうしても(成功したとしても)原作の力に拠るところが大きいと思うので、アニメ業界が人気マンガの映像化のための機関だけではなくて、自分たちで1から何かモノを作れる業界であってほしいという期待もありますし、自分も小さい頃からそんな作品をずっと観てきたんで、それ(オリジナル作品)に期待している視聴者の方々もいるんじゃないかと思っていました。あとはタイミングですね。「アニメノチカラ」という枠ができたこのタイミングも相まって、この企画を実現できました。

大西信介氏(以下・大西):あまり“オリジナルもの”という事は意識はしていません。逆に原作のアダプテーション(脚色、翻案等の意味)のほうが難しい場合もありますし、オリジナルの方が自由度が高い分、書きやすいところもあります。


──キャラクターデザインにマンガ家の上条明峰氏を起用していらっしゃいますね

大松:大前提として、アニメーターの方はデザインが本職ではないわけで、本当の意味でマーケットに通用するようなデザインをゼロから起こせる人間が、アニメーターのなかにそんなにいないと思います。それならと、最近のオリジナルアニメでよく使われる手法なんですが、華のあるキャラクターを描ける(アニメ業界)外部の方にお願いしたいと考えたんです。
 その中で、上条先生が『SAMURAI DEEPER KYO』という作品を描かれているのを知り、同じ時代物ですし、キャラクターの魅力や先生の人気ぶりなども含めて今回起用させていただきました。


──なぜ1930年代の上海を舞台に選んだのでしょうか?時代考証など設定の部分でもハードルが高いのでは?

大松:アニメで取り上げられることは少ない時代ですが、“画的な面白さ”っていうのはすごくあるなと。近年、当時の上海を模したオープンセットが作られてから、この時代を舞台にしたドラマや映画が結構作られていて、作品として成功しているものもあって、映像作品としてのニーズがあるんじゃないかと思っていました。
 あとはやっぱり、“自分たちじゃなきゃできないこと”をやりたいというのがあったんです。だからアニメーションの舞台としてはニッチというかマイナーですが、そこを敢えて狙うことでオンリーワンの作品を目指そうと思って、この時代とこの舞台を選びました。

大西:私はある程度企画が固まってからの参加なのですが、本当に珍しい題材だし“挑戦的な企画だなぁ”と思いました。まぁ、“難しそうだな”っていう気持ちも勿論ありましたが(笑)。
 時代考証の部分については、こちらも学生以来あまり勉強した事も無かった時代ですし、改めて今回、資料や同時代を舞台にした映画を見たり読んだりして調べていったという形ですね。


──では“超能力”という要素は、“異世界”を作るための設定では無いということですね?

大西:やはりアニメということで、普通の歴史モノのようにオーソドックスなスパイが出てくるよりは、実際の歴史の中に“異能力者”がいて、それでどう変わっていくのか?という物語のほうが面白いという製作側の判断はあったと思います。


──葛という時代に即したキャラクターと、葵という時代を先取りしたというか、あの時代にしてはリベラルな考えのキャラクターの対比というのも、この時代を描く意図があってのことなんでしょうか?

大西:大松さんに言われたのは、「当時の人間が実際にこの時代をどう見ていたのか?」と言うことでした。「(当時を)現代から見て判断するような形にはなるべくしたくない」と。
 かといって、現代的視点をあまり無視するのは怖い部分でもあるので、そういう意味(現代と過去の視点)での“緩衝材”として、葵みたいな性格のキャラクターが入ったと思うんですよ。


──やはりあの時代と言うのは、「超能力」というものを混ぜ込むには適している題材だと思われますか?

大西:当時上海は列強各国に支配されていて、様々な人間が入ってくるという、“何があってもおかしくない”という状況が実際にあったと思うんです。そういう意味では、スパイたちが入り乱れていたのはまず間違い無いですし、そこにたまたま異能力をもった人達がいるだけ、という感じでキャラクターを配しています。


──たしかに“異能力”の物語ではないですよね。本当に重要な時にしか使わないですし。

大西:O.A.を観て自分が考えていたよりも、もっと地味になってて(笑)。一話の葵ができるだけ“力”と分からせぬように超能力を使ってるのはすごいなと。もっと“超能力もの”っぽい描き方をやるのかと思ったんですけど、監督は抑えた作りにしてましたね。「おぉ、すげぇなぁ」と思って観てました。


大西信介氏

大西信介氏

大松裕氏

大松裕氏

──スパイアクションに戦争という背景が絡んでいたり、キャラクターの年齢設定もアニメとしては比較的高めだったりと、海外ドラマと共通する要素もありますが、意識された部分などはありましたか?

大松:アニメファンの方々はもちろん、今回はそれプラス、“アニメファンではないけど歴史好き”といった層も取り込みたいなという野心もあったので、アニメファンでない方でも楽しめるような作劇を目指しました。だから海外ドラマに通じるところはあるのかなと思います。

大西:キャラクターもあまり極端なディフォルメはさせず、割と等身大というか、超能力はあるけど、性格的には等身大という立ち位置の人間を出せれば、というのはありました。そういう意味ではアニメっぽくはなくて、実写に寄せてる感じは確かにありますね。


──話は変わりますが、この作品での描かれ方もそうですが、この時代の日本人のほうが今よりも国際的だったような気がします。

大西:それはすごく感じますね。逆に戦後に生まれた昭和世代のほうが閉鎖的だったんじゃないかと。今回、色々な資料などを読ませていただいて、あの時代は中国に行くのにパスポートもいらなくて、国内を旅行する感覚だったみたいで、当時のほうがグローバルだったんじゃないかと。


──そういった環境やバックグラウンドというのは、この『ナイトレイド』で、意識されてるんですか?

大松:その時代の空気やムードを表現するのに気を遣ったのは確かです。時代の空気といっても、映像や写真を見て掴みきれるのか、難しい部分もありましたし、やっぱりその時代を生きた人間じゃないとわからないところはあると思います。
 価値観にしても今とはやはり違いますし、また時代的な情勢も、イス取りゲームの最終章みたいな感じになっていたと思うので、今との感覚や空気の違いを表現しようと思いました。

大西:もちろん上海は雑多な文化が混合する社会なので、その辺の様子も描ければとは思いました。


──実際にロケハンで上海に行ったそうですがいかがでしたか?またその他にはどのような資料を集めたりしましたか?

大松:僕も大西さんも上海に行ってみたんですが、当時のものも残ってるんですよね。外灘(バンド……上海市中心部の黄浦区にある、上海一の観光エリアの俗称)っていう所とか、黄浦江っていう川とか、地形がまるっきり変わっているわけでもないので、なんとなくの土地感覚をまず入れて、あとは小説、インターネット、資料本……。

大西:ええ、そうですね。あとは映像ですね、映画やドキュメンタリー。

大松:多分大西さんが、一番情報を集めていらっしゃったんじゃないかと思うんですが……?

大西:いえいえ、そんなことないですよ(笑)。


──当時のものが結構残ってるんですね?

大西:場所によっては結構残ってたりしますね。

大松:確かに橋とか、外灘とか、ちょこちょことは残ってるんで、そういうところが見れたのは皮膚感覚として大きかったんじゃないかとは思います“虹口(ほんきゅう)から外灘はこれぐらいの距離なのか”とか。

大西:位置関係がね。

大松:位置関係がわかったのはすごく良かったですよね。当時の事を知らない方にはファンタジックに見えるかもしれないんですが、やっぱり“元”(史実)があるので、僕らのなかでは根拠を持って作りたいなというのが、テーマとしてあります。
 それでも届かない部分というのはあるんですよ。例えば当時はどうやって料理を作っていたのか?とか、電気代はいくらぐらいだったのか?とか、発電所はどの辺りにあったのか?とか。ただ、その辺の事に関しては、他の映画とかでも表現してないんですよね。

大西:確かに。


──では最後に、これからの観どころや、作品を通して届けたいことなどをお話ください。

大松:これからは話としてはマクロな話とミクロな話が平行して走り始めるんですが、両方とも史実に沿った展開なので、歴史的な時間軸を意識しながら2つの話を楽しんでいただければ、この『閃光のナイトレイド』という作品をより深く味わっていただけるんじゃないかと思います。
 本格的にドラマが走り始める6話以降からは物語のテイストも変わっていきますので、そこから観始めても楽しめると思います。是非注目してください。

大西:6話以降はもっと展開が速くなっていきますし、フィクショナルな部分もより多く入ってきて、そういった部分での楽しさも増えますので、期待してください!

<取材・文:渡辺 祐>
<撮影:だーくまたお>

TVアニメ『閃光のナイトレイド』
<放送情報>
テレビ東京  4月5日より毎週月曜  深夜1時30分~
テレビ愛知 4月7日より毎週水曜  深夜1時58分~
テレビ大阪 4月9日より毎週金曜  深夜2時35分~
BSジャパン 4月11日より毎週日曜  深夜0時05分~

>>TVアニメ『閃光のナイトレイド』オフィシャルサイト

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(C)A-1 Pictures/閃光のナイトレイド製作委員会
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