怪談ドラマCD『木原浩勝の怪鬼宴』より、木原浩勝さんインタビュー

収録スタジオから始まる恐怖の怪異譚……豪華声優陣でおくる怪談ドラマCD『木原浩勝の怪鬼宴』より、木原浩勝さんインタビュー

 シリーズ120万部を突破した実話怪談のベストセラー『現代百物語 新耳袋』で知られる木原浩勝さんによる怪談ドラマCD、辛奇音劇シリーズ『木原浩勝の怪鬼宴~録音スタジオの怪~』『木原浩勝の怪鬼宴~旅館の怪~』が、2010年8月13日(金曜日)に2枚同時発売されることが決定した。

 小杉十郎太さん、石田彰さん、杉田智和さん、中村悠一さん、中井和哉さん、福山潤さんの豪華声優陣を迎え、現代怪談の語り部がこれまで封印してきた“録音スタジオでの怪”を軸に前後編のオーディオドラマで解き放つ本作。

 そこで今回、原作・脚本、さらにキャストとして声優出演(ドラマCDデビュー)も果たした木原浩勝さんにインタビュー。実際にあった体験元にしたという本作の内容や、「怪談ドラマCD」の新たな試みなどについて語っていただいた。

●実話を元にした新感覚の「怪談ドラマCD」

――2作の内容についてお聞かせください。

木原浩勝:ドラマCDというよりは、「怪談ドラマCD」ですね。前編がアフレコ収録の際にスタジオで起こった怪異を描く『録音スタジオの怪』、その後の打ち上げでとっくに終わっていたと思った話がさらに続いていて、宴の最中にいよいよ正体を現すというのが後編の『旅館の怪』になります。原作・脚本の両方を担当させていただきましたが、録音スタジオの怪談というのは特殊な場所なので、専門用語が入ってきたり情景描写も一般の人には分かりにくいこともあって、これまで本に書きづらかったんです。
今回はドラマCDで声優さんに出演していただくわけですから、キャストの皆さんがほぼ素に近い雰囲気で、聴いている人たちがその職場や現場を覗き見しているような、そしてその場所がたまたま怖い場所だったら? といった、いわゆるシミュレーションドラマになることを計算して脚本にしました。

――劇中の怪異は実話が元になっているそうですが。

木原:場所はもちろん体験した人もその時代もバラバラですが、物語のなかで起こった怪異のほとんどは実際に録音スタジオで起こった話です。舞台になったスタジオには現存しているところもあるので、特定されないように設定をぼかしています。特典収録でキャストと対談したときに、福山潤さん(田口浩平役)から「僕も同じ体験をしています。この話を誰に聞いたかも知っていますよ」というコメントもいただきました。
聴いて下さる皆さんも固唾をのんで「こんなこと本当にあったの!?」と〝怖い〟を楽しんでいただければすごく嬉しいなと。怖いといえば、今回ドラマ化した以外にも録音スタジオであった変な話というのは、まだまだあるらしいです。


●“音”の怖さは、想像する怖さ

――木原さんの『新耳袋』シリーズは多数にわたって映像化されています。今回はドラマCDということで、“音”だけの怖さというのはどんなところにあると思いますか?

木原:音だけの最大の良さというのは、実は環境にあると思っています。映像というのは明るい場所で観るとか大勢の人で楽しんだりとか、怖さを和らげる要素を作ろうと思えば作れますよね。もちろん音源だってできなくはないんですが、今どきの音楽など、音のの楽しみかたってイヤホンをつけて1人で聴いているじゃないですか。
いざ集中すると自身でノイズキャンセルを働かせて周りの人や騒音をシャットアウトしてしまうので、環境的に怖い世界や怖い演出に引きずり込めます。こんな利点があるのに。今までどうして真剣な〝語り〟以外の怪談ドラマCDがなかったのかな?と不思議に思うくらいです。

――怪談の朗読劇とは違うと

木原:怪談を語って聞かせるCDはたくさんあったと思いますが、これはともすれば他人事のようにも聞こえるわけです。今回は声優さんたちが舞台後の控室にいるような、すごくナチュラルな雰囲気でおしゃべりをお願いしていて、聴いているお客様自身がキャストの一人として、自然にその場にいるような感覚で耳を傾けてしまう。
そしてどんどん引きずり込まれて頭の中で逃げ場をなくしてしまうというところまで狙える、ドラマCDはまさに怪談にぴったり。朗読する怪談とは別に、怪談ドラマCDの面白さは、エンターテインメントとして想像力、妄想の力で恐怖を広げてしまうという特異性にあると思います。

――イヤホンやヘッドホンを付けて聴くことで、強制的に1人で恐怖を体験することになるわけですね。

木原:そうです。矛盾していますが、このCDを聴いているうちにイヤホンをバンッと床に叩きつけて「聴けるかこんなCD!!」と言われるくらいが理想です(笑)。あるいは、聴いているときには「何だ、こんなものか」と思っていたのに、いざ寝ようと電気を消した瞬間に「……やっぱり明るくして寝よう」と思ってしまう。
この頭のの中に残像のような音源映像であるかのように残る怖さというのは、なかなか本当の映像では難しいです。これが想像の怖さというものですね。


●“この世ならざるもの”の声とは?

――怪談には“呪い”や“祟り”といった様々なくくりがありますが、今回の物語は?

木原:真っ向勝負に直球ストレートド真ん中な幽霊話です。女の幽霊しか出てきません。しいて言えば、この世のモノばかりではない寂しい人が「この人優しいな……」と思っってしまった人間についてくるという話です。設定的にありそうで嫌でしょ?(笑)原因そのものは 本人にまったく関係がないんですから。

――理不尽な怖さがありますね。

木原:そのなかで想像で埋めて頂きたい怖さは、前編の『録音スタジオの怪』であまりにも大変なことが起こり、お祓いをしてもらった時に、ひとりの声優さんがお祓いが終わったあとを写メを撮ったら「こんなのが写ってました!」というところから『旅館の怪』が始まります。写っていたものを言葉で説明するんですが、それがいかに怖いものなのか?
それを聴く人が「それってどういう写メなの?」と想像しながら、ご自身で勝手に怖くなっていただければと思って脚本に仕込みました。まさに、聴いた後の事までケアする気が全くしない、理不尽さ具合です。


●声優陣の「素で怖がる演技」に注目!

――原作者から見て、今回の声優陣はいかがでしたか?

木原:流石です!お上手です。素晴らしいです!脱帽です!当たり前ですが、「素で演じて」と言われてすぐに対応できるというのは、やはりすごいなと思います。自分を素なのに演じるといううまさ、というテクニカルを垣間見ました。役のうえでは怖いことが起こっても死さえ恐れずに勇気を持って立ち向かうことが多い方々なので(笑)、素で怖がっている演技を初めて聴くという人もいらっしゃるはずです。
今回のドラマCDはお客様の生活と地平線的につながっている話なので、プライベートな世界にこんな物事が現れたら誰でも生命の危機感を感じます。これまでお客様が聴いてきた生命の危機感とは一線を画すものだと思いますので、その点が面白い…いや、怖いのではないかと思います。

――声優の日常を垣間見る、という雰囲気を感じられるところも新鮮ですね。

木原:誰も聴いたことがないと思いますが、女の声が聞こえてきたらビビリまくる素の福山さんとか、絶対最強に決まっているのに平静を装って「あのさ……」って打ち明け話を怖そうにささやく素の小杉さんとか、新鮮じゃないですか?(笑)
本来ドラマの脚本を書くときに普通ならカットするようなしゃべりかたというか、セリフではなく普段の会話っぽくなるように気をつけましたから。「実際はともかく、素で読んでもらっても日常会話的に違和感がないように出来る限り工夫しました」と、おっかなびっくりで台本をお渡ししたというのが原作・脚本担当として怖かったところです。


●スタートは“幸運”という名の怪異から

――収録中に怪異が起きたりしませんでしたか?

木原:いざこれから収録というときに、実然スタジオ内の火災報知器のフラッシュが光りはじめたんですよ。中断して調べてもらったら、単なる検査だったのですが、それにしてもいざ第一声を吹き込もうというときに、なんで光るんだと。そういった奇妙なタイミングの悪さがありましたが、お仕事的には良かったかなと(笑)。

――特典の対談にも収録されていますが、キャストを決めるときに奇跡があったとか。

木原:福山さんとはほかの仕事でご一緒したこともあって、どうしても出演してほしかったんです。でもかなりお忙しい方なので難しいだろうなと思っていました。キャスティングが未決定の最中に催された某イベント会場のとある場所で、福山さんのマネージャーさんとご一緒されているときに声をかけて頂けたという奇跡的な出会い方で正式なオファーができたという経緯がありまして。
ありえない出会いとありえない偶然が重なって出演が叶ったということで、もはやこのドラマCDは最初から奇跡や幸運という名の怪異からスタートしたと思っています。

――最後にメッセージをお願いします。

木原:出演されている声優さんの皆様のファンの方々は色々なドラマCDを聴かれていると思いますが、たぶん素のままで真剣に怪異を語っているドラマCDは聴いたことがないと思います。ましてや実話を元にした「怪談ドラマCD」はこれが初めてだと思います。
ぜひとも初めての、そして新しい体験を味わってください。音源的な意味ではなく、怪異を近くに聴き、感じる雰囲気ですね。これまでとは違った声優さんの皆様の〝怖い〟という“素の演技”が聴けると思います。

<取材・文:川口みどり>

辛奇音劇シリーズ
『木原浩勝の怪鬼宴~録音スタジオの怪~』
『木原浩勝の怪鬼宴~旅館の怪~』
2010年8月13日より2巻同時発売
価格:各2,100円(税込)
ブランド:Natalis
発売元:スパイスビジュアル
収録分数:20分(予定)+キャストトーク

<2巻同時購入特典>
「木原浩勝と出演声優たちの怪志異話(あやしいはなし)」
【内容】
・木原浩勝が小杉十郎太・石田彰に聞く!? 怪志異話
・中井和哉・福山潤が木原浩勝に聞く!? 怪志異話

『木原浩勝の怪鬼宴~録音スタジオの怪~』
<キャスト>
吉田直樹:小杉十郎太
椎名和人:石田 彰
正木圭輔:杉田智和
栗原晃一:中村悠一

<ストーリー>
アニメの収録現場で、出演者たちはスタジオに不可解なことがあることに気づく。出演者たちはスタジオ内の怪現象について話し始め、そこから自身の体験談を語り始める。ところがそれだけでは終わる訳ではなかった。…それこそが恐怖の連鎖が始まりだった……。

『木原浩勝の怪鬼宴~旅館の怪~』
<キャスト>
正木圭輔:杉田智和
栗原晃一:中村悠一
仁科 崇:中井和哉
田口浩平:福山 潤

<ストーリー>
作品の収録も終わり、出演者、スタッフたちは打ち上げの温泉旅行に行くこととなった。収録の際の怪現象から端を発した怪異。「誰かがそこにいる…?」終わったと思った録音スタジオで見た女の影、か細い女の声が旅館に響き渡る。恐怖の連鎖が途切れることはない……。

>>ナタリス公式サイト

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<b>『木原浩勝の怪鬼宴~録音スタジオの怪~』</b><br>2010年8月13日発売<br>2100円(税込)<br>ブランド:Natalis<br>発売元:スパイスビジュアル<br>

『木原浩勝の怪鬼宴~録音スタジオの怪~』
2010年8月13日発売
2100円(税込)
ブランド:Natalis
発売元:スパイスビジュアル

こちらは『木原浩勝の怪鬼宴~旅館の怪~』<br>2100円(税込)

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2100円(税込)

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