
“吉岡亜衣加 First Live Tour 2011「心(ここ)で逢いましょう」”をレポート――「みんなの心に触れられたツアーになったと思います。ありがとう……」
「みんな来てくれてありがとー! 最後まで楽しんでいってください!」という声に湧き上がる大歓声。
歌姫・吉岡亜衣加の4ヶ月に渡り行われた初の全国ツアー「心(ここ)で逢いましょう」ファイナルは、台風にも関わらず全国から駆けつけた大勢のオーディエンスによる祝祭ムード満載の温かな歓声とともにスタートした。
このツアーでは初となるバックバンドを率いて登場した吉岡は、まずはPS2『薄桜鬼 ~新選組奇譚~』の“はらり”を届ける。
ポップな歌メロの中に和の郷愁までも感じさせる独特の歌声でオーディエンスを魅了させると、疾走感溢れるサウンドに一途な想いをふわりと乗せた“散らない花”、ミディアムバラード“時の栞”と続け、静謐で情熱的な唯一無二の音世界へと観客を導いていった。
そのムードをさらに深めるかのように「ここからはしっとりとした曲を歌っていきたいなと思います。今日はスタンディングですけど、おうちにいるような感じでゆったりと聴いてもらいたいな」とバンドメンバーと交代して、ピアニストの関が登壇。
和やかなムードのまま、地元・静岡県掛川市の海を思って作ったという “麦わらぼうし”、失恋した親友に贈った“つぼみ”、切ない想いを綴った“涙”、自身の不器用な恋愛を綴った“ラブレター”、大好きな桜「御衣黄」を歌った“緑桜”とセンチメンタルな情景をイメージさせるようなナンバーで会場を包み込んでいった。
楽曲に入る前には、その曲にまつわるエピソードを丁寧に話し、イントロが始まる度に場内から拍手が沸き、曲が終わるころに誰もが感嘆の声を漏らす──ゆっくりとした静かな時間ではあったが、吉岡の本来持つ美しい歌声と温かな人柄が浮き彫りになったのがこのブロックだろう。
ここで関がバンドメンバーとバトンタッチし、小さいころのお父さんとの思い出を綴った “さかあがり”へ。
穏やかな音色で包み込んだあとは最新シングル“響ノ空”へで、夕焼けに染まったオレンジ色の空を突き抜けていくかのような力強い歌声で観客の心を揺らしていく。
歌い終えて一息ついた吉岡は「ところで、私のマイク白くないですか? 白いよね?(笑)」とおどけた表情でオーディエンスに尋ねる。
「白い!」と答える観客に対して「いつもは黒いマイクを使っているんですけど、同じ型の白のマイクなんですよ。12/25が誕生日なんですけど、去年バースディライヴをさせてもらったときに、サプライズで社長(沢田昌孝さん)でこのマイクをプレゼントしてくれて……その時にね、言ってもらった言葉が“大きい会場で使おうね”で(笑)。だからぜひクアトロで使いたいなって思って、今日初めてこのマイクを使って歌います」と、感慨深い表情で会場を見つめた。
「……重みを感じるマイクでもあるんですけど、とっても気に入ってます。この先も使い続けられるように大事にしたいと思います」と語り、今度はそのマイクを大切そうに握りながら“紅い蜃気楼”“風遥か”で後半戦へと突入。
さらに「友達の結婚式で歌ってって言われた時によく歌うんです」というラブソング“たったひとつの遠い道”を届け「ここからアップテンポの曲にいきたいなと思います」と“舞風”へ。
ハンズクラップが湧き上がるフロアを煽りながら、「次は最後の曲です。みんな歌ってください!」とそのまま本編ラストの“十六夜涙”へと雪崩れ込む。
「もっともっと大きい声で!」とアジテートしながら客席を強固な一体感で結んでいき、大きな大きなシンガロングを沸かせステージをあとにした吉岡だった。
白いワンピースからラフなTシャツ姿へと着替え、再び登場した吉岡。
本編で客席の一体感を見事に作り上げた彼女だったが、この一体感がまさかのCDに……!?Wアンコールに入る前に観客への驚きのサプライズが発表された。
「7月13日に3rdアルバム『時の彩り』をリリースするんですけど、実は今回ボーナストラックを入れようと思っています。私が作詞・作曲した“天葉(あまね)”っていう曲なんですけど──私の地元・静岡の掛川市で推奨しているお茶をテーマにした曲です。イメージとしては新茶が“春が待ち遠しいな。早く新茶の季節にならないのかな”って待ってるような感じです(笑)。なんで今こんな話をしてるかっていうと、そのコーラスを掛川の公演でみんなの声を録らせてもらったんですよ。で、今日はこんなにひとがいっぱいいるから、掛川のみんなの声とみんなの声を合体させちゃおうと!」と発表すると、どよめき混じりの歓声が立ち上がった。
「私としては掛川は生まれ育った大事なふるさとですが、東京も大事な故郷って言える存在なんです。改めて、今日そう思いました」とその想いを語り、関を再び呼んでコーラス・パートを録音した。無事録音が終わると、客席からは自然と拍手が。
「みんなありがとう!」と感謝の気持ちを伝え、そのまま少し長めのブレイクへと入っていく。
「全国ツアーのファイナルで、このステージに立つことが出来て本当に嬉しいです。ここにいるみんながここに来てくれなかったら……吉岡はここにいられません。いつも私の歌を聴いてくれているみんながいるから、こうしてステージに立つことが出来ます。全国ツアーが始まってから4ヶ月経ちました。その間に……本当にいろいろなことがありました。いろいろなところで待っている人がいました。初めて地方でワンマンで歌いました……」と声を詰まらせながらツアーを振り返った。
さらに続ける。「全国ツアーのタイトルは“心(ここ)で逢いましょう”です。心と書いて“ここ”と読みます。私の歌って聴いてもらえてるのかな、本当に心は通じ合ってるのかなっていう不安もありました。でも、地方に行って、歌わせてもらって“応援してるよ”って声をかけてもらって……“また来てね”って言われることが、こんなに嬉しいんだって思いました。そして、今日このステージに立ってビックリしました。こんなにたくさんの人が来てもらえるなんて思ってなかったので……台風だったし(苦笑)。私はみんなに支えられているんだなって実感してます。過酷なところもあったけど、みんなの心に触れられたツアーになったと思います。私に歌わせてくれて、ありがとう……」。
その感謝の気持ちを込めるように、ラストは吉岡が作詞・作曲した“ねぇ、もしも2人が…”。
ワルツ調のサウンドに合わせて<キラキラとしたこの世界に ずっとずっといたいな このまま時間が止まればいいのに>と歌われるこの曲は、オーディエンスへの賛辞の曲として、そして吉岡の“いま”の素直な思いとして胸に響いてきた。
この曲に限らず、この日はいつもの楽曲が一味もふた味も違う曲として聴こえてきたが、それはツアーで吉岡の心の成長があったからこそ。ツアーで得たエネルギーを、そして“いま”の想いを全力で届けたいと心の底から思って歌っていたからだろう──そんな風に私は感じた。
吉岡亜衣加はこのツアーを経て、さらに素晴らしいシンガーへと進化をしていくはずだ。そう予感させたライヴだった。
“大きい会場限定”で使うという白いマイクを再び見るのも、そう遠い日ではないはずだ。
<Text:逆井マリ>
>>吉岡亜衣加 公式サイト

















































