『サカサマのパテマ』 藤井ゆきよさん、岡本信彦さんインタビュー

11月9日劇場公開『サカサマのパテマ』主演の藤井ゆきよさん、岡本信彦さんインタビュー

世界的にヒットした『イヴの時間』を手がけた吉浦康裕監督が送り出す新作劇場アニメ『サカサマのパテマ』。11月9日の劇場公開が迫るなか、主人公「パテマ」を演じる藤井ゆきよさんと、パテマを助ける「エイジ」を演じる岡本信彦さんにインタビューを行ないました。

ちょっぴり不思議な世界観のお話や、お仕事が決まったときの思い出など、たっぷり語っていただきました。『サカサマのパテマ』のストーリーは「ネタバレ厳禁」が多いため、おふたりは言葉を慎重に選びながら答えてくださったのが印象的でした!

■ ストーリーは、「ドーンからのクルリンパします」とか!?

――『サカサマのパテマ』は「謎」が多い作品だと思います。お答えにくいかもしれませんが、楽しみにしている読者のために、申し訳ありませんが言葉を選んでお答えください。

岡本信彦さん:そうなんですよね~。いろいろしゃべっちゃうとネタバレが(笑)。

藤井ゆきよさん:ほとんどなにも言えないんです(笑)。

岡本:特にニコ生とかに呼んでいただいたとき、生放送なので怖くなっちゃうんです。かといって、なにも言わないのも「なんで出てきたんだ?」ってハナシになっちゃうので……。

藤井:私は岡本さんがしゃべるまで、ずっと黙ってますから!

一同:(笑)

岡本:そこで悩みに悩んだあげく、出てきたのが「ドーンからのクルリンパします」という紹介です。
藤井:会場はポカーンってしてましたね(笑)。

――では、そんな前置きを踏まえて、話しにくいかもしれませんがキャラクターの紹介をお願いします。

藤井:ではまず私から。パテマは地下集落のお姫様です。みんなに可愛がられて伸び伸びと育ってきたので、あまりお姫様っぽくないんです。天真爛漫でストレートに感情を表現する子です。

岡本:エイジはですね、ポスターに描かれている表情から読み取れる通り、とても芯のしっかりした男の子です。そして、イラストを見てください! ガッチリ掴んでいるのを見ていただければおわかりいただけるかと思いますが、とても包容力があります。なおかつ地に足がついていて、仁王立ちのできる……そんな男の子でございます(笑)。

一同:(爆笑)

――ありがとうございます。というか、ほとんどビジュアルを見たまんまですね(笑)。

岡本:あはははは! ではもう少し説明します。エイジは秩序と起立を重んじる「アイガ」という世界で生活をしています。この世界では「外の世界を見てはいけない」という厳格なルールがあるんです。そんなルールに対してエイジは「なんでだろう?」と疑問を思いながら日々を送っています。この世界でのエイジは異端にはなるかもしれないけど、頭が良くて好奇心が旺盛な男の子です。

藤井:私も付け足していいですか?(笑) パテマには「ラゴス」というお兄ちゃん的な存在の人がいたのですが、そのラゴスから教わった「地上の世界」に憧れを持っていて、「いつか行ってみたい」と思っていました。そんな子なので、パテマもエイジと同じように好奇心が旺盛です。

▲パテマ(CV:藤井ゆきよ)

▲パテマ(CV:藤井ゆきよ)

■ 台本を声に出して読いたのが黙読になるくらいドラマチックな展開


――説明しにくいお話、ありがとうございました。それでは過去を振り返っていただきたいのですが、『サカサマのパテマ』のお仕事が決まった経緯を教えていただけますか?

岡本:オーディションです。僕はオーディションが2回ありました。

藤井:私は3回ありました。

岡本:時期はいまから2年前くらいです。記憶しているのは、他のオーディションではなかなかないくらい緻密な世界観と文章が用意されていて、シチュエーションの説明が書かれていました。そして、もっと調べようとしても、オリジナル作品なのでネットで検索しても出てこないんです……。
一同:(笑)

岡本:そのときはまだ吉浦監督にお会いしていなかったのですが、設定を読ませていただいたときの印象は、めちゃくちゃ頭の良い方なんだろうなと思いました。

藤井:私は3回オーディションを受けたのですが、最終オーディションは監督と1対1で、台本と絵コンテをじっくり説明していただきながら進んで行きました。それまで詳しいストーリーを知らなかったので、オーディション中に「えっ!? そうなっちゃうんですか?」と、最初にお客さんとして物語に夢中になったのをを覚えています。なので、私はオーディションに受かったとき、とってもとっても嬉しかったのですが、ひとりのファンとしてなにも知らない状態で劇場に行って、絵と音がついた状態で見たかったなという気持ちもあります(笑)。

岡本:うんうん。台本だけの状態でも、驚きがすごかったです。

――初めて台本を見たときのことですか?

岡本:はい。普通に『サカサマのパテマ』というタイトルから漠然としたイメージがあったのですが、サカサマの人がいたとして、どうやって世界を広げていくんだろう? と興味が沸きました。そして台本を読み進めていく内に、「なるほど! そういうことか!」と驚く箇所がいくつも出てくるんです。なかでも「落ちる瞬間」でビックリしました。

――岡本さんの言葉は「台本」というよりも「小説」を読んでいるように聞こえます。

岡本:そうかもしれません。藤井さんは普段台本を読むとき、声を出して読む?

藤井:最初は黙読です。

岡本:僕はいつも台本を読むとき、なんとなく声を出しながら読むんです。なのに『サカサマのパテマ』の台本は、最初は声を出していたはずなのに黙読に変わったんです。それくらい集中して読みふけってしまいました。

藤井:わかります! 私のオーディションでは全部で「Dパート」まであるなかの「Cパート」までしかやらなかったんです。クライマックスを知らない状態でオーディションが終わってしまったので、後日受かってすべての台本をいただいたとき、「あの続きはどうなるんだろ?」と、完全に物語のファンのように台本を読みました。そうしたらもう、吉浦ワールドでした!(笑)

岡本:ほんとほんと。吉浦ワールドです。僕らが台本を読んでこれだけ驚けるんだから、お客さんがスクリーンで見たときは、どれくらい驚いてもらえるか楽しみですね。台本をパッと見ただけで、世界が壮大なんです。そして「サカサマ」という言葉がまるで謎。それで無限大の可能性がそこにあると思いました。オーディションに受かったのは当然嬉しかったのですが、それ以上に台本を読んで、「こんなすばらしい作品にかかわれるんだ」と思ったときは、もっと嬉しかったです。

藤井:ホントに嬉しかったです! ホントに嬉しかったです!

岡本:2回言っちゃうくらい嬉しいよね(笑)。

一同:(笑)

藤井:オーディションに受かったとき、私は声優事務所に入って一年目でした。メインを担当させていただいた初めての作品が『サカサマのパテマ』なんです。お仕事を始めたばかりなのに、心の底から「おもしろい!」と思える作品で、しかもヒロインをやらせていただけるなんて思ってもいませんでした。

■ アフレコ現場は、「不良の教室」みたいな過酷さ!?

――アフレコ現場での思い出はありますか?

藤井:吉浦監督はレコーディング中に、スタジオとブースを行ったり来たりしながら直接指示をしてくださるんです。シーンが終わるごとに熱い指導をしてくださいました。

岡本:「ここはこうしてほしい」と言ってくださるんですけど、僕は個人的にとてもわかりやすかったです。監督がそのような姿勢で望んでいるので、キャスト陣は士気を高めていけました。

藤井:監督ご自身が原案も脚本もやられているので、その方から伝わってくる熱量がすごいんです。なので、みんながその思いに応えたい一心で現場の士気が高まりました。

岡本:最近のアニメでは珍しい「ナチュラル感」がありました。セリフが多くなってきたり、セリフがどこのシーンにかかっているかわかりにくくなってくると、普通はセリフが技術的になってきます。だけど『サカサマのパテマ』のセリフでは、それがまったくありませんでした。本当にすべてのセリフが話し言葉のように、珍しい雰囲気の台本でした。吉浦監督ならではだと思いました。

――セリフ回しも見どころのひとつということですね。

藤井:私、エイジのお芝居が大好きなんです。すっごく好きなセリフがあるのですが、それを言ってしまうとネタバレになってしまうなぁ……。

一同:(笑)

藤井:エイジがとっても大切なセリフを、サラッと言っちゃうんです。サラッと言うことによって、そのセリフがかえって際立つんです。岡本さんがエイジを繊細に演じていらっしゃるのが勉強になりました。

岡本:そう言っていただけると嬉しいです。ありがとうございます。僕はエイジをあまり考えずにやりたかったんです。先ほどもナチュラル感と言いましたが、お芝居というのは「誰がドコで、いつ、誰に、どんな状況で、なんて言うのか」を頭で綿密に考えながら作ると思うんです。でも僕は今回のお仕事は、そのような考えをすべて捨てて、相手から言葉を受け取った印象だけでしゃべるようにしたかったんです。14歳のころの僕は、意味を持って会話をしたことはほとんどなかったと思います。たぶん「声優になりたい」と言うときも、それほど意味を持った言葉ではなく、「なんとなく」だと思う。だからエイジの日常的なセリフは、そんなに立てる必要はないんじゃないかなと思ってトライしたんです。

――「なにも考えてない」と言っても、なにか少しは考えていませんか?

岡本:そうですね。どこか深層心理では考えてると思います。僕にとって「家に帰って冷蔵庫を開ける」感覚と同じでした。帰宅したらとりあえず冷蔵庫を開けて「なにかないかなぁ?」と行動するんですけど、行動にほとんど意味はありません。もちろんなにかを飲みたくて開けるときもありますけど、「なんとなく」の行動です。エイジを演じたときは、そのような感覚と似ています。

――アフレコで苦労した思い出はありますか?

岡本:藤井さんが寝てました(笑)。

藤井:岡本さんがすっごく甘そうな菓子パンを食べてました(笑)。

――興味深いですね! それぞれ詳しくお聞かせください。

藤井:1日目のアフレコで、パテマにとって精神的に辛いシーンが続いたんです。そこで私は感情移入をしすぎて具合が悪くなってしまい、翌日の収録ではスタジオで横にならせていただきました。そして岡本さんは糖分を補給するために、すっごく甘そうなパンを食べてました。そんな私たちの姿を見た「ポルタ」役の小畑伸太郎さんが、「なんだか不良の教室みたいだな……」って(笑)。

岡本:あぁ……、言ってましたねぇ(笑)。

――でも、おふたりとも体調を壊すくらい熱心に取り組んだということですね。

岡本:僕にとって糖分を摂取するというのは、『ドラゴンボール』で言うところの「界王拳」と同じなんです。

一同:(爆笑)



■ パテマとエイジの出会いは、人と人狼

――おふたりはこのお仕事の現場で初めてお会いしたのでしょうか?

岡本:いえ。その前に「人狼会」で会いました。

藤井:役者さんが30人くらいで集まった人狼会で初めてお会いしました。そのときはまさか共演するとは思っていませんでした。そのときの岡本さんは……それはそれは巧みなウソで……(笑)。

一同:(笑)

岡本:僕、「人狼」が大好きなんです。あのときはめちゃくちゃ騙してましたから、きっと印象はすごく悪かったと思う(笑)。

藤井:そんなことないです。「役者さんってスゴいな~」と感心しました。あのときの私はまっさきに死んでしまいました(笑)。

岡本:そのとき、藤井さんは「え? なんで?」という痛いところを突いてきてたんです。狼がなんとなく理論的に攻めると、普通はみんなが納得してくれる空気になるんです。でも、そのなかで藤井さんだけ「なんで? どうして?」と引っかかってくることが何度かあったんです。だから狼にとって藤井さんを生かしておくと流れが悪くなると思い、ソッコーで倒したのを覚えてます(笑)。
藤井:そういうことだったんですか……(笑)。

――すごい! そのときの藤井さんの言動は「パテマ」っぽいですね?

岡本:そうなんですよ! すばらしい嗅覚と好奇心を持っているんです。

■ もしパテマが、現実世界にいたら、引っ越し屋さんになる!?

――では、もしもおふたりがパテマのように「サカサマ」の世界に入ったら、なにがしたいですか?

藤井:ツマラナイ話でもいいですか? 私はインドアでもストレスなく過ごせるので、天井でゴロゴロしても苦になりません!

一同:(爆笑)
藤井:あと、もしバイトをするなら「引越し屋さん」がいいです。たぶん大歓迎されます。

――現実的なお話、ありがとうございました(笑)。あまり詳しく書くとネタバレにつながってしまいそうなのでこのへんで……。次は岡本さんお願いします!

岡本:詳しく言えませんが、カチッとつける、なんだか重いヤツが出てくるのですが、それを身体につけて、ぐるぐる回ってガメラみたいに空を飛ぶ……という一発芸はどうでしょうか? あれはすごくいいアイテムだと思います。つかまらなくても空を飛べるから、そのチカラを使って世界を救いたいです。

一同:(笑)

――では最後に、読者に『サカサマのパテマ』を楽しみにしている読者にメッセージをお願いします。

岡本:14歳のふたりが繰り広げる話です。一生懸命なふたりが一組じゃないと生きていけないんです。支え合うことの大切さを気づかせてくれます。また、それ以外のお話にも、いろんな衝撃を受けたりすると思います。まずは無心で見ていただけると嬉しいです。そして機会があったら、2回目以降にいろいろ考えながら見てください。よろしくお願いします。

藤井:『サカサマのパテマ』を見たら、きっと誰かに話したくなる作品です。なので誰かを誘って映画館に行くことをオススメします。岡本さんもおっしゃいましたが、1回目を見た印象と2回めを見た印象は違うと思います。そして、最終的な伏線はBDで見てほしいです。というのも、一時停止をして見ると伏線を見つけられるかもしれない……。「吉浦ワールド」を何度でも楽しんでください。


<STORY>
手を離したら、彼女は空に落ちていく。
かつて、この世界を襲った大異変。そして…。
夜明け直前の‘空’を見上げる少年、エイジ。彼の住むアイガでは、「かつて、多くの罪びとが空に落ちた」と‘空’を忌み嫌う世界であった。
そこに、突然現れた‘サカサマの少女’ 。彼女は、必死にフェンスにしがみつき、今にも‘空’に落ちそうである。
彼女の名前はパテマ。地下世界から降ってきた。
エイジが彼女を助けようと、パテマの手を握った時、体がふっと軽くなり二人は空に浮かびあがった。
恐怖に慄くパテマと、想像を超える体験に驚愕するエイジ。
二人は未だ知るまでもないが、この奇妙な出会いは、封じられた<真逆の世界>の謎を解く禁断の事件であった。
その頃、アイガの君主イザムラの元には、「サカサマ人」があらわれたとの報告が届く。
イザムラは治安警察のジャクを呼び、「サカサマ人」を捕獲するよう命じるのだった…。

【CAST】
パテマ:藤井ゆきよ
エイジ:岡本信彦
ポルタ:大畑伸太郎
ジィ:ふくまつ進紗
ラゴス:加藤将之
ジャク:安元洋貴
カホ:内田真礼
イザムラ:土師孝也

<STAFF>
原作・脚本・監督:吉浦康裕
アニメーションキャラクターデザイン・作画監督:茶山隆介
コスチュームデザイン:杏仁豆腐
作画監督:又賀大介
美術監督:金子雄司
CG監督:安喰秀一
音楽:大島ミチル
配給:アスミック・エース

製作:サカサマ会(アスミック・エース、グッドスマイルカンパニー、角川書店、ディレクションズ)

◆11月9日(土)全国劇場公開

>>映画『サカサマのパテマ』オフィシャルサイト

(C)Yasuhiro YOSHIURA/Sakasama Film Committee 2013
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