声優
舞台『カナタ』岩田光央さん&福山潤さん超ロングインタビュー

いしいのりえさん原作の舞台『カナタ』、岩田光央さん&福山潤さん超ロングインタビュー

 作家のいしいのりえさんと声優の岩田光央さんがタッグを組み、絵本と朗読CDや舞台で展開している大人の女性のための作品『カナタ』。その最新作『カナタ あぶな絵、あぶり声~深雪~』の公演が、2月21日(土)からスタートする。今回の『カナタ』は、岩田光央さんの他に福山潤さんと津田健次郎さんが出演。

 今回は公演直前のお忙しいなか、いしいのりえさんと岩田光央さん、福山潤さんに『カナタ』のお話を伺ってきました。朗読劇の魅力や、それぞれの恋愛観についてたっぷり語っていただきました。ファン必見の超ロングインタビューです!


●いしいのりえさん、岩田光央さん、福山潤さんのインタビュー

――さっそくですが、『カナタ』とはどのような舞台でしょうか?

岩田光央さん(以下、岩田):『カナタ』とは、イラストレーター・作家のいしいのりえさんと、声優の岩田光央がコラボレーションして始めた企画です。2月21日から始まる公演はスピンオフで、カナタの核となるのは大人の女性向けの朗読CDがついた絵本です。これを制作して世の中に出そうというのが、僕らの目的でした。

いしいのりえさん(以下、いしい):実はカナタは、ある出版社さんから「絵本を出さないか」というお話が来てからスタートさせたんです。ですが企画を進めている途中で、そのお話自体がなくなってしまいました。それならば……ということで、私が企画をまるごといただいて本格的にスタートさせたコンテンツなんです。当時、絵本にCDをつけて出版するのが流行っていた時期でした。

――岩田さんが参加されたのはいつからでしょうか?

岩田:いしいさんが企画を考えているときに、僕に連絡をくださったんです。それまでは面識がなかったんです。

福山潤さん(以下、福山):え? そうだったんですか? てっきり旧知の仲だと思っていました。

岩田:初めはメールで連絡をいただきまして、いしいさんのプロフィールを見させていただきました。そうしたらビックリしました。雑誌『anan』などでイラストを描いていらっしゃる、とても有名なイラストレーターさんだったんです。別に卑下しているわけではないですが、僕ら声優はサブカルの人間です。一方、いしいのりえさんは完全にカルチャーの世界の方です。そんな方からお声をかけていただけるなんて、とても嬉しかったです。

しかも、プロフィールには「東洋美術学校」の出身と書かれていました。実は僕も東美の出身で、さらに造形科のグラフィックデザイン専攻というところまで同じでした。年齢は7歳下なので学校では会いませんでしたが、なにを習ってきたのかは全部わかりました(笑)

――それは驚きですね! 偶然だったのでしょうか?

いしい:私は声優さんに詳しくなかったのですが、当時友だちに連れられて、森川智之さんのイベント『おまえらのためだろ!』に行ったんです。

福山:またいきなり異端なところに行きましたね(笑)。

一同:(笑)

いしい:そのときは「声優さんっておもしろいことをやってるなぁ」と思って見ていたのですが、ちょうどゲストに岩田光央さんが出てきて、学校の話になったんです。そこで岩田さんが私と同じ東洋美術学校の出身だと知ったんです。そこで興味を持って、友だちに「あの人は誰?」と聞いたら「『AKIRA』の金田の人だよ」と教えてもらいました。

――そのくらいの知識だったんですね。

いしい:そうなんです。そしてネットで岩田光央さんを検索したら、当時岩田さんはご自身のメールアドレスを晒していたんですよ。

福山そんなことしてたんですか?(笑)

岩田:そのころね、実験しようと思ってメールアドレスを晒してみたんですよ。とんでもないことになるんじゃないかって思ってたのに、ぜんぜんメールが来ないんですよ……。オレの人気もこんなもんかって思いましたね。

一同:(笑)

福山:いやいや、あからさまに公開されるとメールを送るのを躊躇すると思いますよ。うっすらと見えるレース越しだったら覗きたくなるけど、なにも隠さず「どうよ!」って言われると見れないのと同じです。

岩田:あぁ、そうか!

いしい:なので、このアドレスはウソかもしれないけど、とりあえず送ってみようと思って企画書とイラストを送ったんです。そうしたら返事が来ました。

――では事務所を通さず、直接岩田さんにお仕事をお願いしたんですね(笑)。

いしい:そうです。本人に投げたほうがおもしろいかな~と思って。

岩田:そういう形で企画をいただいて、いっしょにやりましょうということになりました。いしいさんがおっしゃってたように初めは書籍を出したかったんだけど、出版不況だったためスピンオフで考えていた公演を先にやることになりました。

そして「公演をする」という座組で話を進めてみると、スケジュールや予算など、いろいろなことの計算ができるようになってくるんですね。そしてあるとき、きちんと計算したら「あれ? 書籍を作ったほうが早いんじゃないか?」という結論に至ったんです。結局、二転三転して書籍から作れたんです。

――いしいさんが考えていた通りに進めたのですね。

岩田:カナタが掲げているスローガンは「心の先に体がある、愛する交わる、愛交物語」。大人からすると、恋愛の先にある行為は当たり前のこと。ですが一般的にはあえてオブラートに包んで言わない傾向にあるけど、本来大人が普通に恋愛をしたら、行為は当たり前です。それを僕らはちゃんと描画しよう! それが当然だと思って「愛交物語」という造語を作ってキャッチコピーにしました。

いしい:伝えるのが難しい題材なので、ワードがあったほうがいいと思って、岩田さんとふたりで「愛交物語」と名づけました。


●『カナタ』が目指す世界観とは?

――『カナタ』の公演は18歳以上の大人の女性に限定していますが、その理由は?

岩田:絵本を手にとって見ていただければわかると思うのですが、18歳未満でも読んでいただけます。「18禁」という単語はエロティックなイメージがあるので使いたくないのですが、僕らが目指しているのは違って、「大人」という意味です。決して描写が激しいとか、倫理的におかしいという内容ではなく、大人の恋愛の経験を積んでいる女性が理解でき、共感できるようなお客さんに向けて公演したいと考えていました。その意味から、18歳以上という制限を設けさせていただいてます。

――そしてもうひとつ、男性を省いて女性限定にした理由もお聞かせください。

いしい:女性だけで楽しんでもらいたかったんです。例えばアダルトな雰囲気の舞台を見ているときに、会場内に異性がいると視線が気になったりして楽しめないと思うんです。なので、女性がのびのびと楽しめるような空間造りを目指しました。

福山:たぶん同じように、男性も「ウサギの心」を持っている生き物なので、女性と同化して公演を最後まで楽しめるか……と考えると難しいと思います。僕は性別で区切るのはいいアイデアだと思いました。

――演じられる役者さんとしても、性別で分けられていたほうがよいですか?

福山:いや、演じる上では問題ありませんが、僕はカナタの台本を読ませてもらったときに、むしろ男性のほうが周囲を気にしそうだと思いました。例えば「エロ本」は男性ならではのファンタジー世界じゃないですか? でも、このように物語になるとリアルに感じられるので耐えられないと思います。いい例が、家族でテレビの映画を見ているとき、ラブシーンになると男の子は恥ずかしくてトイレに行っちゃいますよね?

岩田:確かに!

福山:あの気持ちを、劇場で味わっちゃうと思うんですよ。さらに、そうやって恥ずかしがっている男性がいると、周りの女性も公演に集中できません。性別で区切るのは、お客さんが物語に集中してもらえるような空間だと思います。

いしい:その通りです。場を作るためのルールです。

岩田:こうやって説明すると理解していただけるのですが、情報が不足していると「18禁なんでしょ?」と思われてしまいます。当然、誰でも入れるような公演のほうがチケットが売れるのでリスキーな試みでしたが、それよりも会場の雰囲気を作るために行っています。

いしい:私たちはルールを作りましたが、別に法律で禁じられているわけでもないし、入場時の身分証提示もありません。ただ、大人の女性に楽しんでいただきたくて決まりを作っているだけです。

岩田:そうそう。それに、CDがついた絵本の『カナタ』はAmazonでも売ってますし、誰でも、男性でも買えますからね。いしいさんが書く、誰もが憧れたくなるような大人の恋愛のお話がいっぱい入っていますので、興味のある方は誰でも読んでいただきたいです。そして18歳になったら、劇場に足を運んでいただきたいです。

――絵本と舞台と、お話はまったく同じですか?

岩田:はい。まったく同じです。公演では絵本と同じお話をライブで体感できます。

福山:絵本についているCDという媒体と、舞台で行なう朗読という媒体は、僕らもプレイヤーとしてやり方が違います。そういったところも楽しんでいただきたいです。


●「男のエゴ」を出せる舞台が『カナタ』

――公演の雰囲気をお聞かせください。

岩田:潤くんはこれから味わうことになるのですが、男性のプレイヤーとしては、役者冥利につきる舞台です。僕は若いころから小劇場で舞台をやってきてるのでそれなりの場数を踏んできていると思っていました。ですがこのカナタの舞台の空気感は、いままで味わったことがありませんでした。

――どこが違いますか?

岩田:まず、朗読劇なので動きが非常にミニマルです。ステージはとてもシンプルで、舞台のスクリーンにはいしいさんのイラストが投影されて、ピアニストの演奏があります。そのセットのなかで僕らが朗読をします。朗読劇なので片手に台本を持っていますから、動きを制限される世界です。その制限のおかげで、ミニマルな動きがマキシマムな結果を生み出してくれるんです。

僕らが読み始めると会場内はものすごく静かになるのですが、空気はとても熱いんです。朗読劇のなかで、ここまで集中して聞いてくださる作品はないんじゃないかな? とにかくツバを飲み込むことすらはばかれるくらい、お客さんが集中してくれるんです。そんな雰囲気なので、僕らが眼を少し動かしただけで場内の空気が変わります。

――それはカナタならではでしょうか?

岩田:そうだと思います。初めの公演はスパイラルホールで、あのときは僕と森川智之くんで2編ずつ交互に朗読したんです。普通の舞台ならば、ひとつのお話が終わったら拍手が来ると思うじゃないですか? なのにそのときは、一切拍手がないんです。そのときは「えっ? ダメだったのかな?」と思いました。でも、4編を終わったら割れんばかりの拍手が起こるんです。公演中は拍手をしないほど、みなさん集中していたということでした。あれにはビックリしました。シーンと静まり返っている会場は、とても異様な光景でした。

いしい:作品によっては「ここで笑っていいんだよ」というシーンも用意していたのですが、誰も笑わずに真剣に聞いてくださいましたね。

岩田:それと、僕らは遠慮なく思いっきり「男」となって演じていいんですね。カナタのお客さんがそこも求めて下さっているので、全力で男の魅力を出していいんです。

福山:男のエゴを出していい公演は、なかなかありません。

――普通は抑えて演じますか?

岩田:演出上の都合などがありますからね。カナタという作品では、作品を作る前に僕らと作家さんで話し合うんです。恋愛や人生観について語り合いながら、価値観の共有をします。もちろん、いしいさんがそこでの話をそのまま書くのではなく、いしいさんのフィルターを通してお話ができます。なので福山くんには、福山くんのための作品が作られるのです。福山くんにしか読めないお話です。

福山:別の人が読んだら別の作品になるのは当然なんですけど、カナタのような打ち合わせをした後に演じると、役作りひとつにしても「この役はこうかな?」というのを、自分じゃないところから考えたり、「自分ならこうするよ」というエゴを出していいんです。

――キャラクターの設定は存在しますからね。

福山:往々にして作品というのは「これは女性向けの朗読です」という説明を受けたら、「女性が理想とする男性」を演じることが多かった。だけどカナタにはそれがありません。ふたりの情事だったり出来事を切り取って、そこを物語にしているお話です。なんだろう? 一種の「スナップ」に近いものかな? そう考えたときに「いやな部分を出していいんだな」と思うと、演じる側としてみれば、プレッシャーでもある分、楽しいですね。

――アニメのアフレコとは、まったく別の演じ方でしょうか?

福山:たぶんひとつの表現とか切り返し方をとっても、アニメとか放送媒体では「そこはお客さんが引いちゃうから、ちょっとやめよう」ということが多々あるんです。別にキャラクターとしては間違っていないけど、際立っちゃうからやめようという理由ですね。だけどカナタはひとりで朗読をするので、そこのバランスは自分でコントロールできます。

恋愛のなかでも、結局は相手がどう思っていようが、お互いがよければいいというところを含めての、男ならではの「女性を無視したエゴ」、「男性を無視したエゴ」を出せるんです。お互いが成り立つという瞬間が、見ている方々、聞いてる方々に「感じ取ってくれるのかな?」と思いました。

――それは福山さんのファンにはたまらないですね。素の福山さんを出す演技を見られる。

福山:そう思っていただけると嬉しいですね。

岩田:ヒューマンな部分をちゃんと出せる公演です。絵本とCDもそうですが、ぜひ足を運んで見ていただきたいです。


●『カナタ』の日は、1日を楽しんでほしい

――どのようなお客さんに来てほしいですか?

岩田:「カナタを見に行く」と決めた瞬間から、僕らは脚色してあげられたらって思ってるんですね。実は劇場の立地も、カナタに適した場所を選んでいます。いままでに行った場所は、表参道やランドマークプラザホール、六本木など。そこに行くにはある程度自分でドレスコードをを考えたくなるような、オシャレな街を選んでいます。そしてもちろん、会場内の空間も上質な雰囲気にしています。僕らもスーツを着て登場しますし、スタッフもフォーマルな衣装を着てお客さんを向かい入れます。嬉しいことに、これを続けているとカナタにオシャレをして来てくれるお客さんが増えてきてくれました。

そしてカナタの公演の後は、せっかくオシャレな街にきたから普段は入らないようなバーに寄ってお酒を飲んだり、友だちと来たお客さんは恋愛観について語り合ったり、友情を深めたりしてもらいたい。ただ舞台上だけでなく、そこまで1日を楽しんで頂けたらって思ってます。

女性のみなさんって、ちょっと背伸びをしているとステキじゃないですか? やっぱり女の子は着飾りたいと思っている人が多いと思いますし、きっかけがあればオシャレ楽しんでくれると思うんですよね。カナタがそのきっかけになってくれたらなって。

――今回の『カナタ』のテーマは?

いしい:今回は「冬の話」です。いつも新作を作るときにゲストの方々からお話を聞いてから作っているのですが、福山さんと津田さんがいままでにない個性派な方だったので、「いつもとは違う表現ができそうだ」と思いました。女性はよく「わかりやすいハッピーエンド」や「優しい男性」、「強い女性」を理想としますが、現実の恋愛はそんな上手くいきません。今回はいままでカナタには避けて通ってきたお話を書きました。

岩田:いままでのカナタを見てくださった方々も、きっと前のめりになってくれると思います。

――福山さんは、そんなに個性的な恋愛話をされたのですか?

福山:そんなことはないと思いますよ(笑)。お互いの恋愛観とか、恋愛ドラマでどれが好きとか、そういうことを話したんです。ひとつ言えるのは、僕と津田健次郎さんで共通しているのは「ハッピーエンドは好きじゃない」というところかな?

一同:(爆笑)

――物語を作るいしいさんはタイヘンですね?

いしい:「それでいいんだ?」と思いました(笑)。

福山:僕が個人的に趣味嗜好として恋愛ものを見る場合、「ハッピーエンドだったら見なくていい」と考えちゃうんです。先がわからないほうが興味深いじゃないですか? お話の結果がアンハッピーでも、僕は恋愛ものだったらアリだと思います。

反対に恋愛ものでイヤなのは、「ゴールインは結婚です」みたいなお話。そこからが修羅場だろって(笑)。試練があったほうが男でも女でも盛り上がります。思いの大きさはハッピーエンドじゃないほうが美化されたり大きくなったりします。例え物語がすごくイヤな終わり方をしても、それが心に残ってくれれば、そっちのほうが僕は好きですね。

――茨の道がお好きなのですか?

福山:いや、必ず試練が訪れるのが好きなのではなくて、先がわからないのがいいんです。お客さんたちには、みなさんの経験を元に、いろいろ想像を働かせてもらえたら嬉しいですね。僕は答えを提示する気はありません。経過と重要なポイントだけを表現して、その先はお客さんに考えていただけたら嬉しいです。

アニメだと必ずハッピーエンドとか、もしくは寸止めが多いじゃないですか? なぜか意味もなくモテる男が誰かひとりに絞りきれなくて、それをみんなが許してくれる。あの状況は、男にとってはむしろ地獄って言うんです。あれをリアルでやったら、たぶん髪の毛が抜けますよ(笑)。

一同:(爆笑)

福山:女性は男性よりも恋愛についてよくわかっていると思う。男性は肉体関係だけを切り取って考えがちですが、女性は「恋愛の先にソレがある」と考えながら読む人が多いはずです。だから肉体表現を朗読で表現しても、女性は間違って受け止めないんだろうなと、安心感があります。劇場に来ていただいたということは、僕らと同じ情報を共有できます。僕らは送る方、お客さんは受け取る方。ある種の契約が結ばれているのが、朗読劇のすばらしいところだと思います。

――想像力を働かせながら見てほしい?

福山:朗読劇という限定された表現こそ、受け取り側が補完しなければならない部分が大きいんです。アニメでもそうですが、限定されたほうが「おもしろさ」を倍加させる要素が増えます。だから岩田さんがおっしゃる「ミニマル」という部分が重要なんだと思います。声と見た目、イラスト、空気感があるのに、人物像が限定されているというところで、みなさんが補完しながら、それぞれの物語を楽しんでいただけたらなというのが根底にあります。



●3人が考える「ステキな恋愛」とは?

――みなさんの恋愛について伺います。岩田さんにとって、ステキな恋愛とは?

岩田:いっぱい経験を積むことだと思います。恋愛のパターンは、それこそ無限にあって、個性も考え方も違う。決められた枠に縛られないこと。恋愛とは、人と人とのぶつかり合いの元のようなものです。だから自分の見識を広めて、柔軟な考え方を持つことができれば、豊かな恋愛ができると思います。あとは求めるよりも、求められる意識を持ったほうがステキな恋愛ができると思います。

――それでは魅力的な異性は?

岩田:よく言うのですが、自立した女性が好きです。やっぱり年齢とか収入とか立場は関係なく、僕は対等でいたいですね。頼られたり甘えすぎられると引いちゃうタイプです。自立というのは収入の話ではありません。しっかり自分を持ち続けて、前に進める人。年齢も関係ありません。

――福山さんにとってステキな恋愛は?

福山:ステキな恋愛ですか……僕は恋愛について語るのは面倒臭いんです(笑)。自分で言うのもなんですが、他人と共感できる部分があまりないんです。極論を言ってしまえば、当人のふたりがよければなんでもいいんです。「お互いにとって都合のいい関係」が一番だ思います。だけどそれってエゴのぶつかり合いですから、落とし所がちゃんと見つかったら成功なんだと思う。わがままを言うのが好きな人と、押し付けられるのが好きな人だったら凸と凹。ピッタリです。だけど凸と凸だったら目も当てられません。

いままでいろんな人を見てきて、「なんでそんな相手と別れられないのか?」と不思議に思ったこともありました。だけど当人に聞くと、それがいいと。そこには道徳的な価値観は存在してないんです。10代のころはそれでもいいかと思います。でも、大人になっちゃえば自己責任なので、当人たちがよければそれでいいんです。なのでステキな恋愛というのは、自己顕示欲が実現できたらステキなんじゃない? と思うんです。

岩田:僕はいま潤くんの話を聞いておもしろかった。僕はキレイに答えてますが、潤くんは乱暴に言ってるだけ(笑)。言ってることはほぼ同じですね(笑)。

一同:(笑)

福山:ほんと、そうですね(笑)。こと恋愛に対して、僕はキレイ事を言えないんです。実行するかどうかは別として、なんなんでしょうね?

――では福山さんにとって魅力的な女性は?

福山:本当にサイテーなことを言いますが、「僕にとって都合のいい人」です。他人の印象はどうでもいい!

岩田:あはははは!

福山:なので、僕が勝手に「この人は都合がいい」と思わせてくれる人は好きです。絶対にいないと思いますけどね(笑)。

岩田:かっこいいなぁ~。おもしろい!

――最後に、いしいさんは恋愛のお話をたくさん書かれていますがステキな恋愛とは?

いしい:「ステキな恋愛とはなにか?」を考えたんですが、他人から見て「あの人の恋愛はステキだな」と思われるような恋愛は、たいてい上手くいかないですね。女性は男性に比べてひとりで生きていく能力が低いので、それを補完しようと思って男性と付き合う人もいます。付き合っているときの男性は、他人からは表面的な部分しか見えません。例えば収入がいっぱいあるとか、都内に持ち家があるとか。そういうところだけを見てお付き合いをしようとしても、たいてい上手くいかないですよね。

私の友人が、駅前に大きなビルを持っている人と付き合っていたのですが、その方をやめて売れないバンドマンと結婚したんです。もちろん、彼女が働かないと生活は成り立たないんですが、彼女はいつもすっごく幸せそうにしています。しょっちゅう水道まで止められてるらしいんです。それって他人から見たらステキな恋愛に見えませんよね? なのに彼女はいまの方が幸せなんです。

岩田:僕は若い女の子に言いたいのは、今、いしいさんが言った「ビルのオーナーをやめて若いバンドマンと結婚した」という話の間を、どれくらい想像できるかが恋愛を豊かにすると思います。どういうことかと言うと、結果だけを見て「バカじゃないの?」と思いがちですが、「なぜなんだろう?そこに何があってそう決めたんだろう?」と想像して「なるほど」と想像できると、豊かな恋愛ができると思います。

いしい:そうですね。想像することは大事です。

岩田:最近の深夜アニメって、けっこう難しいことをやってますよね? それを見ている読者の子たちだったら、想像は容易いかと思う。ですからきっとステキな恋愛ができると思いますよ。

福山:あとは実際に経験したとき、臓腑が動くような感情を持て余すのと、決断できるのと、その人がどっちかによります。持て余す方の人は地獄しか待ってませんよ。それから逃げたくて手近な人で済ます場合もあるし、持て余して深みにはまってイニシアチブを取れず、ボロボロになるケースもある。反対に、自分に振り向かせるためのエネルギーに変えられるタイプの人は、すごく強いと思う。男ほど持て余すタイプが多いです。

岩田:そうかもしれないね(笑)。

――では最後に、いしいさんにとっての魅力的な異性は?

いしい:いまの時代、魅力的な男性はけっこういると思います。いろいろな男性を見てきましたが……私も若くないので……健康な男性が魅力的ですね!

一同:(爆笑)

――それはオチですか?(笑)

岩田:あははは! それは大事だね~。

福山:ある一定の年齢にいったら、健康な男性を探すほうが難しいですよ。温泉を掘り当てるようなモノじゃないですか?

いしい:ええ(笑)。いそうでいないんです。花粉症とか、冬になると必ず長期的な風邪をひくとか。

福山:会うと「疲れた」って言ったり?

岩田:実はそれ、一番大事なんですよ。80歳すぎた僕の祖父が「なぁ光央、おまえの人生は健康なら80点だ」と言ったんです。若いときに聞いたので「なにを言ってるんだ」と思っていましたが、いまはその言葉の重みがよくわかる。健康というのは、心身ともに健全な状態を言います。それを維持させるには、単純なようで重要。

いしい:身体が弱ってるときに、愛だの恋だの考えられないので、まずは治さなきゃいけない。だから健康な人が魅力的です。

福山:すばらしいです! 永井一郎さんも著書に書いてました。「信頼できる医者がそばにいるということは、人生の2割から3割の幸福を手に入れたも同然」と。なので、「心の医者」であるパートナーが自分にとって都合がよければいいんです。

一同:(爆笑)

【東京公演】
会場:ラフォーレミュージアム六本木
2月21日(土) 15:00/19:00
2月22日(日) 12:00/16:00

【大阪会場】
会場:IMPホール
2月28日(土) 15:00/19:00
3月1日(日) 12:00/16:00

>>『カナタ』オフィシャルブログ

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