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『ラブライブ!』  『けいおん!』の理由をNHKに聞いてみた

『ラブライブ!』 『進撃の巨人』 そして 『けいおん!』――人気アニメをガンガン放送!! 中の人に聞く、NHKがさらに”はじまった”ワケ

ここ最近、アニメファンのあいだでNHKがアツい……!?

昨年の『美少女戦士セーラームーン』、今年1月からの『ラブライブ!』や『進撃の巨人』など、相次いで人気アニメを再放送中のNHK。4月からは『けいおん!』や『美少女戦士セーラームーンR』の放送も決まり、これまでのNHKとはちょっと違ったラインナップに、ネット上では驚きの声があがっています。

今回の記事では、気になるそのワケをNHKの中の人への取材で解明! NHKアニメのプロデューサーを務めるおふたりと、番組ラインナップを決める編成センターのおふたりにお話をうかがいました。

●お話をうかがったNHKのみなさま
編成局 展開戦略推進部(アニメ) 柏木敦子 チーフ・プロデューサー
編成局展開戦略推進部 土橋圭介チーフ・プロデューサー
編成局 編成センター 榎本幸一郎 副部長(※Eテレ担当)
編成局 編成センター 下要(しも・かなめ)副部長(※BSプレミアム担当)

 

■ アニメはもはや、アニメの好きな人だけのものではない

――民放のアニメを最近NHKで多く放送していますが、その経緯・狙いはどんなところですか?

榎本幸一郎 副部長(以下、榎本):NHKではこれまで数多くのアニメ番組を放送してきましたが、世の中で多くの関心を集めている話題の作品や優れたコンテンツを、積極的に全国のみなさまに紹介していくことも公共放送の役割のひとつであると思います。自局で制作した番組を放送するのが第一ですが、他局で制作された優れたアニメ、ドキュメンタリー番組なども条件が整えば放送します。今回はたまたまアニメ番組がタイミング的に重なったようですね

――観られる地域が限られている深夜アニメ作品でも、NHKなら全国に放送できますね。

柏木敦子 チーフ・プロデューサー(以下、柏木):1・2クールの深夜アニメだと、話題になった頃にはもう後半戦になっていたり、終わってしまっていることもありますよね。そういう点でも、NHKで放送することで、良いものをちゃんと観ていただける機会になればと思っています。

――いつ頃からそうした方針になってきたのでしょうか? アニメファンには『日常』(2012年)で一度、注目が集まった印象ですが。

土橋圭介チーフ・プロデューサー(以下、土橋):『日常』の前にも、『巌窟王』(2008年)、『蟲師』(2008年)、『カウボーイビバップ』(2008年)など放送していたんです。

柏木:「BS2」があった時代ですね。当時は民放制作のアニメを結構やっていました。2011年に、それまで3波あったBSが「BS1」と「BSプレミアム」の2波に統合・再編されたので、そこでアニメもいったん番組数が減っていて。『日常』以降も、実は本数としては増えていないんです。

――『ラブライブ!』 『進撃の巨人』 『けいおん!』 といったタイトルが注目されていますが、放送するアニメはどのように選んでいるのですか?

土橋:購入するアニメーションは、出来上がったものから選ぶので、いろんな傾向を試しているという感じですね

下要 副部長(以下、下):「話題性のあるコンテンツ」というのがひとつの軸です。ちょっと前のBSプレミアムでいうと、平日18時代台は『トムとジェリー』だったり、親子で観ていただけるいわゆる名作をやっていたんですが、最近は様々なタイプの名作もやっていいんじゃないかなという感じですね。

土橋:例えば1990年代に放送した『セーラームーン』を放送してみると、それなりに反響やお客さんの傾向もみえたので、じゃあ、もうちょっと最近の2000年代に入ってからの作品の方が、今の視聴者にいけるんじゃないかと考えていったんです。4月から放送する『けいおん!』なんかも、勝手に2000年代の名作の1つだと思っています。ことさらアニメファンを狙いにいってラインナップを決めているつもりはなくて、これまでいろいろやってみて、その上でこうなったという感じです。

――メインのターゲットは10~20代ですよね?

柏木:基本的には若い方に観てもらいたいと思っています。もちろんひと口に若い方向けといっても、小さい子のための作品から、大きい方にも観ていただけるものまでありますけれど。

下:親子で観てもらえれば一番良いのかなと思っています。『セーラームーン』だったら、子どもの頃にリアルタイムで観ていた方がちょうど親になっている世代だと思うので、そうしたところも狙っていますね。

柏木:そういう意味でも、広がりのあるコンテンツを選んでいるという感じですね。男女問わず若い人を中心に、いろんな方に観ていただければ。

土橋:『けいおん!』はアニメファンにも受けましたけど、別に、子どもが見てNGなものじゃないし、お父さんお母さんが見ても普通におもしろいと感じてもらえると思いますが。

榎本:アニメはもはや、アニメファンたちだけのものじゃないというか、言うなれば日本人が共有している文化のような感覚に近いのではないでしょうか。幅広い方に楽しんでいただければ嬉しいですね。

――『ラブライブ!』や『けいおん!』のようなアニメはNHKらしくない! というような反対意見は出ませんでしたか?

榎本:特に反対意見はありませんでした。放送するアニメ自体が優良なコンテンツであるということはもちろんですが、アニメをきっかけとして、Eテレのたくさんの番組を見ていただけると嬉しいですね。

柏木:普段NHKをご覧にならない方もいらっしゃると思いますが、そんなNHKに縁のない視聴者の方がNHKに入ってくるきっかけに、アニメがなればと思います。そして『ラブライブ!』の後にやってる番組をたまたま見たらおもしろかった、とか。他のNHKの番組のファンになってくれれば、良いのかなと思っています。身近なチャンネルだと思っていただければうれしいですね。

 
■ 『ラブライブ!』 『進撃の巨人』とも、視聴者の反応は◎

――個別の番組についてうかがいたいのですが、『ラブライブ!』を放送した決め手はなんだったのでしょうか?

榎本:話題性はもちろんですが、『ラブライブ!』は、もともと男女を問わず人気があって、学園ドラマの中に友情や音楽、かわいいキャラクターなど、今の若い人たちが好む要素が凝縮されています。普段からNHK Eテレをご覧になっている若い世代の方々にも共感していただけるのではと感じました。年度の途中から検討を始めたので、1月から特集番組として放送しています。


――NHKが『ラブライブ!』を放送するというのは衝撃でした。

榎本:反響も大きかったですが、そのほとんどが「よく放送してくれた!」といった有難いお声だったと思います。『進撃の巨人』でいうと、放送の決め手はなんだったのでしょうか?

下:BSプレミアムだとEテレ以上に、BSのチャンネルを押して見にきてもらわなくてはいけないので、やはり「話題性」がひとつありました。ちょうど映画版が公開された後で、改めてTVアニメを観たいという方もいるかなと思いました。

土橋:新年度の4月以降に既にBSプレミアムで『けいおん!』『セーラームーンR』をやることをほぼ決めていた時期でしたが、それとは違った傾向の話題作を放送したらどうなるのか?というのもありましたね。

――『進撃の巨人』の放送時間が深夜1:15からというのは、残虐シーンを配慮してのことですか?

土橋:巨人が人を食べるというセンセーショナルな部分だけを言われがちですが、『進撃』って厳しい状況の中で人がどう生き抜くかというテーマが作品の根底にあると思うのです。(原作者の)諫山さんが描いているそういうところが読者や視聴者の共感を呼んでいると思いますし、そういう普遍的なテーマをもった作品を放送することは意味があると思ったので決めたわけです。ただ、描写としてのキツさはあるので、編成時間は相談しながらでしたね。

――アニメ全般の作品選びの中で、残虐さやセクシーさなど、NHKとしてダメなボーダーラインはありますよね?

土橋:ただおもしろおかしいだけ……みたいな。そういうものだったら、きっとNHKでは放送しないですね。あるいはセクシーシーン満載を売りにしてお客さんを取るようなこともできません。そこに公共放送としての使命があるのかというと……(笑)。需要はあるのかもしれないけれど、さすがになぁと(笑)。

柏木:若い人に観てもらいたいとはいうものの、そこは守らないといけないですね(笑)。

――『ラブライブ!』 『進撃の巨人』、『セーラームーン』も含めて、視聴率などの反響はいかがですか?

下:『セーラームーン』に関しては、毎回ではないにしても親子で観られてることが視聴率に出ていたので、続編をやることに決めました。視聴者からの反響もある程度ありましたね。

榎本:『ラブライブ!』は、反響のほとんどが放送日時の問い合わせですね。放送時間が週末でちょっと変則的なので「いつ放送しているの?」とか「再放送の予定は?」といったご質問が多いです。そのほか好評のご意見が多いと思います。

■ 『けいおん!』をはじめ4月からも充実のラインナップ!

――4月からは『けいおん!』が放送されます。ネットではすごい反響が起きていました。

柏木:「『ラブライブ!』、『進撃』、次はなに?」といったお声が多かったことは知っています。

土橋:そして、『けいおん!』って予想してた人も結構いましたね。

――『けいおん!』も、NHKと親和性のあるテーマだという判断があったのでしょうか?

下:そうですね。あとはいろんなアニメを選ぶ中で、ちょっと前ですが話題になっていましたし、改めて放送してもいいのではないかなとも思いました。

柏木:『ベルサイユのばら』なども放送していますので、それに比べれば一応「最近」というジャンルにはなるかなと思っています(笑)。

――その他、今後の注目のラインナップを教えていただけますか?

下:4月からのBSプレミアムでは、『カードキャプターさくら』、アメリカで人気の『ぼくらベアベアーズ』『アドベンチャー・タイム』などが放送予定です。ジャンルが被らないように、いろんなタイプのアニメを編成しています。

放送時間のイレギュラーなものでは、3月に新海誠監督特集をやります。今年8月に新作『君の名は。』が公開されることもあり、『ほしのこえ』(3/18放送)、『言の葉の庭』(3/25放送)を放送しますのでぜひ観てほしいですね。

土橋:Eテレでは飛び飛びですけど3月末まで海外アニメ特集を組んで、ディズニーやピクサーの短編をまとめて放送する予定です。
▲『ほしのこえ』/3/18放送

▲『ほしのこえ』/3/18放送

▲『言の葉の庭』/3/25放送

▲『言の葉の庭』/3/25放送

――NHK発の新作アニメも、オリジナルの『クラシカロイド』、人気コミック原作の『3月のライオン』など、注目作が控えていますね。

柏木:今や『おそ松さん』の藤田(陽一)監督ですけれども、『銀魂』の藤田監督に、ぜひクラシックを題材にしたコメディをやってほしい! というのが『クラシカロイド』の企画です。

『3月のライオン』は原作の魅力はもちろん、新房(昭之)監督×シャフトさんというスタッフ面も含めて、若い人に訴求する、いま観てほしい作品になるんじゃないかと思います。


――今後もまだまだ隠し玉が残っているのでしょうか?

柏木:これからも楽しみにしていてください!

――ありがとうございました!

[取材&文・小林真之輔]

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