映画
生きるとは何か──『GODZILLA 星を喰う者』を歌うXAIさんにインタビュー

次世代シンガーXAI アニメ映画『GODZILLA』と共に生きた1年を振り返る 主題歌は「絶望と絶望、そのなかにある希望」を

2018年11月9日(金)から全国公開となったゴジラ映画史上初のアニメ―ション映画『GODZILLA』三部作の第三章『GODZILLA 星を喰う者』。主題歌を飾るのは、次世代の歌姫・XAI(サイ)さん。最終章の主題歌・劇中歌をパッケージしたシングルを11月7日にリリースしました。

中野雅之さん(BOOM BOOM SATELLITES)のプロデュースのもと、3作品すべての主題歌を歌ってきたXAIさん。壮大なスケール感で歌った最終章主題歌「live and die」は、XAIさん自ら作詞を手がけています。

また、劇中歌となる「エバーグリーン」は、作曲・編曲を中野さんが、作詞は、第一章・第二章の主題歌を作詞した蒼山幸子さん(ねごと)が作られています。アニゴジと共に駆け抜けた1年を振り返りながら、どんな思いで曲を紡いでいったのか教えてもらいました。

アニゴジは「変化を促される作品」

──唐突なんですけど、XAIさんが持ってるエヴァンゲリオンのスマホケース、すごくかわいいですね。エヴァがお好きなんですか?

XAI:ありがとうございます! 池袋のエヴァストアで買ったんです。もともと、エヴァ、マクロスが好きだったんです。

──もともとアニメがお好きだったんですね。では『GODZILLA』との出会いは、XAIさんにどんな変化をもたらしましたか?

XAI:選んでいただいたオーディションが第8回「東宝シンデレラ」オーディションで『GODZILLA』と縁のあるものだったんです(※初代アーティスト賞受賞)。アニゴジ(アニメーション『GODZILLA』映画の通称)は、監督も脚本も声優さんたちもとんでもなく豪華な方々が揃っていて。そういう作品に出会えたこと、関わらせていただけたことは、自分にとってすごく大きいことでした。

アニゴジは(原案・脚本の)虚淵玄さん節の絶望感があるんだけど、そのなかに希望があって……いろいろ考えさえられることがありました。作品を見ることで変化を促されるというか。これは私だけじゃなくて、観ているかたもそうだと思うんですが。

──例えばどんなことを考えさせられました?

XAI:アニゴジには「生きるとは何か」っていうメッセージが入っていると私は思っているんです。それって日常ではあまり考えることではないと思うんですが……日々いろいろなことが起こるなかサヴァイブすることも、戦いだと思うんです。私自身は"自分を守るもの""戦うもの"として音楽と向き合ってきたので……キャラクターたちが必死に戦っている姿を見て、自分の心とリンクするところがあるように思いました。そういう作品の歌を歌えたことは大きかったなぁって。

──XAIさんにとって音楽は武器でもありますもんね。

XAI:そうですね。

──楽曲をプロデュースされている中野雅之さん(BOOM BOOM SATELLITES)との出会いも大きかったと思いますが、振り返ってみるといかがでしょう。

XAI:中野さんは『APPLESEED アップルシード』などの音楽も手掛けられていて、「アニメに新しい音楽を持ってきた」という話はいろいろなところで聞いていたんです。……これまで会ったことのないかたというか、ある種、別次元で生きているかたという印象でした。デビューと同時にご一緒できてすごくありがたい気持ちと同時に「いきなりラスボスに会っちゃった!」って感じがありました(笑)。

──(笑)デビューが中野さんのプロデュースってすごいことですよね。最初のアニゴジのときに"楽曲制作を通じて肉体的にも精神的にも鍛えていただき"ってコメントを出されていましたが……。

XAI:弟子みたいってよく言われます(笑)。音楽はもちろん、「どうやって生きいくべきなのか」ってことも勉強させてもらいました。鍛えていただきましたね(笑)。

最終章は「このまま書かせてほしい」とお願いした

──楽曲はいつもどのように作っていくんですか?

XAI:私も中野さんも完成前のラフな状態の映画を観させてもらうんです。そこから中野さんが曲を書かれて、私が仮の詞をいれて、蒼山さんが歌詞をつけてくださるって感じなんです。

──今回のサウンドが中野さんから届いたときはどんな印象でしたか?

XAI:三章ご一緒させてもらって……一章の「WHITE OUT」って誰かと出会うような曲で、二章の「THE SKY FALLS」は戦場に行って共に戦うみたいな曲だったんです。今回は完結編ということもあって、物語が終結していく壮大さがあって。虚淵さん節の絶望と絶望……そのなかにある希望。そういうものをまるごと感じるデモだったんです。デモを聴かせてもらったときに情景や、キャラクターの気持ちが浮かび上がってきたので、映画を三章すべて観て感じたことや、デモを聴いたときに感じたことを込めながら作詞をさせていただきました。

──前作まで主題歌の歌詞はねごとの蒼山幸子さんが手掛けられていましたが、今回はおひとりで歌詞を書かれています。作詞はいかがでした?

XAI:仮詞を入れたときに、今回はわたしが書きたいなと思ってしまって……。「このまま書かせてほしい」とお願いしました。1年を通して中野さんとご一緒させていただいていたので、本当に鍛えていただきましたし、アニゴジから感じることもいっぱいあったので、そんなに難しく考えずに書けました。

──全文英詞ですが、最初から英語で書かれたんですか?

XAI:はい。毎回仮詞を入れるときも英語なんです。英語は表現する上でのちょうどいい距離感を保ってくれるツールというか。それで英語で書きました。

──もともと日本語より英語のほうが得意なんですか?

XAI:いや、そんなことはないんです。でも英語がいいなって。日本語だとすぐに理解できる言葉でも、英語だったら広がりがあったりするじゃないですか。英語のほうがフラットに聴いてもらえるんじゃないかなって。

──XAIさんの広がりのある歌声は英語にぴったりだと思うんですが、XAIさんはご自身の声をどのように分析されていますか。

XAI:私自身は歌うことが好きで歌手になりたいと思ってきたんですけど……今回、中野さんに「声が本当にいいね」って褒めていただいたことは凄く嬉しかったです。自分が想いを込めて歌ってることもあると思うんですけど……共鳴しやすい声なのかなとは思います。あまりうまく言えないんですが(笑)。

「私の投げかけでもあるし、人類の投げかけでもある」

──歌詞をみた中野さんからはどんな反応がありましたか?

XAI: 2ndのカップリング(「Let me free」)で作詞をさせていただいたのですが、そのときに中野さんといろいろなやりとりがあって。たとえば(ダメ出しがでたときに)「この言葉は、こういう気持ちで書かせてもらってるんです」って中野さんにいうと「音楽は自分の気持ちを押し付けるものじゃないでしょ?」「自己顕示欲のためにやるものじゃないんだから、考え直しなさい」と。そういうやりとりがあってからの今回だったので「いい歌詞だね」って言われたときはすごく嬉しかったです。「よし!」って(笑)。

──では「live and die」の歌詞にこめたメッセージを教えていただけますか。

XAI:三章の終わり方が考えさせられるものになっていて。<"We are too young and fearless?">って言葉は私の投げかけでもあるし、人類の投げかけでもあるんです。最初はハマりが良いという意味で<king>って言葉を入れてたんですけど、作詞をしていくなかでその言葉が意味を帯びていって、ゴジラのことでもハルオのことでもあるなと。

今回の歌詞には、アニゴジのキャラクターや、観てくれたかたにたいして「自分はこう思うんですけど、どうですか?」っていう私自身の想いがこもっています。

──タイトルはかなりダイレクトですが、どういった由来でつけられたんでしょうか。

XAI:前作、前々作は情景を表現したタイトルだったんですけど、今回はメッセージを込めました。作品を観ながらいちばん考えたことは、最初にもお話した通り「生きるってなんなんだろう」ってことだったんです。みんな幸せになるために生まれてきてるのになって考えたり。でも生きていくって……毎日毎日自分が生まれ変わっていくことでもあるのかなと。壊れて、出て、それを再生して、それを繰り返していきていくと思うんです。私は「生きて、死んでいく」っていう直訳の意味合いでつけたんですけど……それがダイレクトに伝わったらいいなって。

──改めて曲を聴いたときはどんな印象を受けましたか?

XAI:ついにアニゴジが終わっちゃうなぁって。でも終わりははじまりでもあると思っていて。あと……中野さんに「今作で中野ミュージック卒業だからね」って言われたんです(笑)。そういうのも含めて、感慨深いなぁって思いました。

「前に進んでいくときの"おまじない"」の言葉

──2曲目の「エバーグリーン」はアニゴジの曲なのかなと思ったんですが、劇中歌で使われるんでしょうか?

XAI:実はそうなんです。ネタバレになってしまう可能性があるのでこれまで発表してなかったんですが……。一瞬ホッとできるような、「ええ?」っていうシーンのなかで流れる挿入歌です。そこで「エバーグリーン」という言葉を使う幸子さんがすごいなと思います。みんなハッとするんじゃないかな。

──中野さんからもらったときはどんな印象でしたか?

XAI:ホーリーな曲だなって。「どんな歌詞がつくんだろう?」って思ったんですけど、幸子さんのシンプルなんだけどロマンチックな、ピリッと引きのあるリリックがきて、おふたりのマジックが起こってる曲だなと。幸子さんは、エバーグリーンという言葉がネガティブな意味じゃなくて……前に進んでいくときの"おまじない"のような、魔法の言葉になればいいとおっしゃっていて。それを聞いてすごいなぁって思いました。呪文っぽいなって思ってます。

──どんな気持ちで歌われたんでしょうか。

XAI:今までとはガラッと違う曲で。映画を観てくれたひとが高まったあとに聴いてもらう曲なので、その人たちのこころのなかに、無垢な少年・少女が呼びかけてきているように聴こえたらいいなと思ってたんです。だから自分も立ち戻って歌いました。

──デジタルなサウンドではありますけど、透明感や切なさもあって。コーラスがとんでもなく美しいんですけど、最後はノイズで終わっていくという。

XAI:ノイズで終わっていくところが映画に合っていてさすがというか、中野さんっぽいなと思ったり……ただじゃ終わらせないぞって感じもあってステキだなと思っています。

「誰かの力になりたい、もっと聴いて欲しいって思いが強くなってきた」

──『GODZILLA 星を喰う者』の完成版をご覧になったときの印象はどうでしたか?

XAI:まずギドラが怖い!(笑) 自分のなかで組み立てた伏線が覆された感じがしました。「えっ、マジですか!?」って言葉が出てくるような……とにかく語彙力を奪われます(笑)。宮野真守さんをはじめ声優さんたちの演技も素晴らしいです。キャラクターたちが一人ひとり自分の信念を持っていて、自分の信じるものに向かって戦っているんですよね。"自分だったらどうしよう"って考えさせられたりもしました。あと私は音が好きなので、効果音を聞いたときに"この音どうやって作ってるんだろう?"って思いました。鳴き声もすごいんです! 個人的にはそういうところも聞いて欲しいなと。観た後に誰かと語りたくなるような映画だなと思っています。

──公開を楽しみにしております! ところで今回のジャケットは1stシングル「WHITE OUT」でも撮影を担当した神藤剛さんによるものなんですよね。前作とは打って変わってナチュラルな姿で。

XAI:今作は絶望なんだけど、そのなかに希望も光もあって。そういうものが覆い隠されてしまわないようにというか……希望や光の部分を感じてもらえるようと思って、こういうアー写になったんです。1年間この作品と関わらせてもらって感じてきたことだったので、それを伝えられたらいいなって。それで一周回って素の自分を出したというか。ちょっとうまく言えないんですけども……。

──私は単純に、XAIさんに自信ができたのかなって思ったんです。素の自分をさらけ出してもいいかなって思えたのかなと。

XAI:あ、そうかも(笑)。歌詞を書かせていただいたこともそうなんですけど……
最初にお話したとおり、これまでは自分がサヴァイブする大きな要素として音楽と向き合ってきたんです。でも、誰かの力になりたい、もっと聴いて欲しいって思いが強くなってきたなと。2ndのときも思ったんですけど……リリイベに来てくださっているかたを見て、よりそういう風に思うようになって。そういうことも関係しているのかもしれない。

──改めて、この一年ってXAIさんにとってどんな1年でしたか。

XAI:まさに破壊と再生(笑)。「live and die」だったなと思っています。ストイックに音楽を作られている中野さん、蒼山さん、アニゴジに出会えて……ひとりの人間としてもアーティストとしても変化があった1年でした。アニゴジというアニメに出会えたことは本当に大きくて。アニメは元々好きだったのですが、アニメって一緒に生きてくれるものなんですよね。自分の力になってくれて、自分と共に生きてくれる存在で……そういうアニメの魅力を再発見しました。自分と一緒に生きてくれる作品に出会えた一年だったかなと。

──では、中野ミュージックを経て、今後どんなことに挑戦していきたいですか?

XAI:今回作詞をさせてもらって、今後は音楽を作ることに挑戦してみたいなと思いました。アニメが本当に好きだなと改めて思ったので、今後もアニメに関わっていきたいです。あと、ライヴなどで皆さんの前で歌う機会も増やしていきたいなって思っています。

今回の制作全部終わったあとに、中野さんと幸子さんとご飯を食べに行ったんです。そこで中野ミュージック卒業式をしたんです。中野さんが酔っぱらいながら「今回君は卒業になるけど、これからも僕は見てるからね!」と言われてしまったので(笑)、この1年の自分に嘘がないように、作品に対しても音楽に対しても誠実にかかわっていきたいなと思っています。

[取材・文/逆井マリ]

CD情報

◆XAI 3rd Single 「live and die」

【アニメ盤】THCS-60228/アニメジャケット/¥1,300(+税)/1枚組
【アーティスト盤】THCS-60229/アーティスト撮り下ろしジャケット/¥1,300(+税)/1枚組

M-1.live and die
M-2.エバーグリーン
M-3.live and die(Instrumental)
M-4.エバーグリーン(Instrumental)

『GODILLA 星を喰う者』作品概要

2018年11月9日(金)全国公開

【スタッフ】
監督/静野孔文・瀬下寛之 
ストーリー原案・脚本/虚淵玄(ニトロプラス)
キャラクターデザイン原案/コザキユースケ 
音楽/服部隆之 副監督/吉平"Tady"直弘・安藤裕章 
プロダクションデザイン/田中直哉・Ferdinando Patulli 
CGキャラクターデザイン/森山佑樹 
造形監督/片塰満則 美術監督/渋谷幸弘 
色彩設計/野地弘納 音響監督/本山 哲 

【キャスト】
宮野真守 櫻井孝宏 花澤香菜 杉田智和 梶 裕貴 小野大輔
堀内賢雄 中井和哉 山路和弘 上田麗奈 小澤亜李 早見沙織 鈴村健一

【主題歌】XAI「live and die」(TOHO animation RECORDS)
主題歌アーティストXAI公式サイト
主題歌アーティストXAI公式twitter(@XAI_desu)

【製作】東宝 【制作】ポリゴン・ピクチュアズ
【配給】東宝映像事業部

映画公式サイト
映画公式twitter(@GODZILLA_ANIME)

(C)2018 TOHO CO., LTD.
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