音楽
黒崎真音 アルバムインタビュー|『Beloved One』という言葉にたどり着いた理由

あなたに伝えたい素直な思いと、とびっきりの愛 全部を詰め込んだ最新作『Beloved One』|黒崎真音 ロングインタビュー

黒崎真音さんが3年半ぶりとなるニューアルバム『Beloved One』をリリースします。今作には『とある魔術の禁書目録Ⅲ』の「Gravitation」「ROAR」、『グリザイア:ファントムトリガーTHE ANIMATION』の「幻想の輪舞」、『されど罪人は竜と踊る』の「décadence -デカダンス-」を含む全14曲が収録されています。

みんなと駆け抜けてきたこれまでと、自分と向き合ってきた3年半。その全てを描いた『Beloved One』について穏やかな表情で語ってくれました。

「“みんなと音楽で繋がる”ということ」

──今は全国のアニメイトなどで発売前のリリースイベントを行われている最中ですがいかがですか?

黒崎真音さん(以下、黒崎):「アルバムを楽しみにしてくれているかたがこれだけいらっしゃるんだな」と。凄く嬉しいです。アルバムにかわいい曲があって皆とその曲の振りつけの練習をしてるんですが──。

──「peko peko peach♡」ですね(笑)。

黒崎:そうです(笑)。 そんなことをしたりとか……先にできることをやっていて。「みんなで当日を迎えようね」ってワクワク感を感じながら全国をまわってます。

──いよいよ待望のアルバムがリリースされますが、今作に向かってどんなお気持ちで向かわれたんでしょうか。

黒崎:気持ちですが……。「黒崎真音は取り繕うところがあるな」って(『Mystical Flowers』以降の)3年半に思っていました。

──取り繕う……?

黒崎:はい。取り繕うというか、本音で自分の気持ちを言うことが実は苦手で。自分の性格上の問題だったらいいんですけど、音楽に対してもそういうところがあったんです。

でもそれって私を好きでいてくれているファンのみんなに本音で話せていないような気がしたんです。だから今回は自分の気持ちに正直に、ヌーディな自分でみんなと向き合いたいなという思いでした。プラス、音楽への愛……という特別な気持ちを表現したいなと。

──そもそも“心から素直になる”って意外と難しいものですよね。特にアーティストの場合は……。

黒崎:そうですね。黒崎真音というアーティストのブランディングって自分ひとりのものではないから……“言っていいこと、悪いこと”を考えがちだったし、恐れることが多かった。

歌詞に関してもそうで、大人すぎる表現をしたらイメージが崩れてしまうかなとか、頭の中で考えることのほうが多くて「このままでいいのかな?」って。それで少しずつ考えていくうちに「思ってること全部言っちゃっていいんじゃないか?」と。

それが“みんなと音楽で繋がる”ということなんじゃないかなと。もはや人と人との繋がりじゃないですか。そのつながりをもっと深くしたいという気持ちもありました。

──少しずつ考えていったことでその考えにたどり着いていったんですね。

黒崎:そうなんです。あ、あとこの前ZAQちゃんと話しているときに──ZAQちゃんのこと大好きで、よく一緒にお茶をするんですが「いつどの作品が最後の作品になるかなんて分からないよね」って話になって。

自分のアーティスト人生のなかで最後に残すものがもしこの作品だとしたら、私はちゃんと愛情のあるものを残したいなと思ったんですよね。このタイトルに関してもそうですけど“最愛のもの”というのは、音楽もそうですし、個人的にいうと家族もファンのみんなももちろんだし……愛情のある言葉と色合いにしたくて、こういうタイトルにたどり着きました。

──今作のテーマはまさに“愛”ですよね。

黒崎:そうですね。いろいろな愛、いろいろな幸せ。最愛のものって人それぞれ違うと思うんですけど、私にとってはこれだよっていう答えにたどり着くまでの旅。

──ジャケットも温かみのあるものですよね。『H.O.T.D.』のジャケを思い出したんですけど、雰囲気が全然違くて。

黒崎:ああ、なるほど。だいぶ大人になってるっていう(笑)。

──ピンクの淡い色の背景というのも珍しいですよね。

黒崎:私から提案させていただいたんです。曲自体はヘヴィなものもあるんですが、見た目の部分では優しい色合いにしたくて。「そばに置きたい」と視覚的に思ってもらえるようなジャケットにしたいなって。昔出した「黎鳴–reimei-」(2013年)はピンクっぽいジャケでしたけど、それ以外はなかったので……。それが今のイメージの色合いなんです。

──通常版は背中がガッツリあいていて。

黒崎:ドレスなんです。ヌーディにしたいという気持ちから本当は裸に見えるようなジャケにしたかったんです。川田まみさんの『LINKAGE』のようなジャケにも憧れていて。でもプロデューサーに「黒崎は違う気がするよ」っていう感じで断られてしまいました(笑)。それで近い雰囲気にしました。でも背中のショットも珍しいです。心の内を見せたい、そんな気持ちもありました。

 

「黒崎真音という人生は一度きり」

──では楽曲について教えてください。アルバムは「アイヲツナイデ-Angel of the wheel-」から「Gravitation」(TVアニメ「とある魔術の禁書目録Ⅲ」オープニングテーマ)、「Brand new,Standing wings」(CR東京レイヴンズ 搭載曲)に繋がっていきます。そこから4曲目 「Beginning☆Journey」はアッパーなダンスナンバーでアルバムの流れを一気に持っていきますね。

黒崎:アニソンが4曲……「Gravitation」「décadence-デカダンス-」(TVアニメ『されど罪人は竜と踊る』ED)、「幻想の輪舞」(『グリザイア:ファントムトリガー THE ANIMATION』)「ROAR」(TVアニメ『とある魔術の禁書目録Ⅲ』OP)が入っているので、この4曲を繋ぐようなサウンド感は守りたいなと思っていたんです。

「Gravitation」は中沢伴行さん、「Brand new,Standing wings」は高瀬一矢さん、どちらもデジタルミュージックを得意とするお二人が作曲をしてくれていて。その流れに続く「K-POPのようなダンス・ミュージックで、パーティっぽさのあるような曲をお願いしたいです」と伝えました。そこから「Beginning☆Journey」という曲が生まれて「ここから一緒に行こうぜ!」って先頭を切っていくような曲になりました。

──ボーカルにエフェクトがかかったり、後半はあでやかになったりと、表情がクルクルと変わるところも魅力的です。

黒崎:そうそう。それでサビは強めでところどころ可愛くして、最後のほうがやたらセクシー(笑)。声色で遊んだところがあって。この曲は歌詞に(yeah yeah)などカッコの部分がすごく多いんですが、そこはお客さんと叫びたいところです。みんなで遊べる曲になりました。

──作曲されている佐高陵平さんは……。

黒崎:いままでy0c1eさんという名義で書かれていたんですが、改名されたんです。もともとy0c1eさんは色々なジャンルが得意なかたなんですよ。「Red Alert Carpet」という以前書いてもらった曲はもっとアッパーな感じで、ピコピコしたゲームのような曲でしたが、この曲に関してはもっと強い女性感があるように感じています。y0c1eさんも「強い女性像がある」といったことをおっしゃっていたので、ところどころ様々な声色を使いました。

──作詞は黒崎さんですが<だって人生一度きり 誰のものでもない 僕達のもの>というのは、まさに先ほどのZAQさんの会話のお話と繋がりますね。

黒崎:さっきもお話した通りいつ何が起きるかなんて分からないし、黒崎真音という人生は一度きり。<誰のものでもない 僕達のもの>というのは、まさにそれをストレートに言ったような感じです。誰かにゆだねたり、頼ったりするときも必要だけど、それだけじゃなくて自分の思っていることをもっと大切にしていこう……そんな気持ちで書きました。

──日々の人生を歩むなかでついつい迷ったり、守ったりというのは私にもあるんですが、<嫌われてもいいじゃん>という言葉はすごく染みます。本当にその通りで。

黒崎: (頷きながら)そう言ってもらえると嬉しいです。チャレンジしたい気持ち、ここから何かはじめてみたい人に聴いてもらいたいですね。

──5曲目「peko peko peach♡」は先ほど話題にあがった曲で。

黒崎:「ペコピー」でいいですよ(笑)。

──「ペコピー」……可愛い……。

黒崎: (笑)。「Dresser Girl...♡」「Candy☆Evolution」など、アルバムには必ず可愛い楽曲を入れてきたんですが、今回はこの曲がそれです。主人公は片思いしている女の子で、これもK-Popっぽく……とお願いしていたんですが、全然違う形になりました(笑)。

3曲くらいあげてくれていたんですが、この曲が特別キャッチーで「これ絶対可愛いな!」って。サビの<peko peko peach♡>は齋藤(真也)さんから「ここは何かの言葉をリフレインするのが良いと思う」ってメールでご連絡をくれて。私は最初から「ここはpeko peko peach♡と決めてたので、大丈夫です!」って(笑)。

──(笑)。どこから出てきた言葉なんでしょうか?

黒崎:それが……分からないんです!(笑) 最初はピコピコピーで、そこからペコペコペーになってペコちゃんを思い出して。ペコちゃんって可愛くて女の子らしいイメージだから「ピーチにすればいいんだ!」を入れて「peko peko peach♡」に。

繰り返し歌うとちょっと忙しくはなっちゃうんですけど、これは「peko peko peach♡」しかない!と。可愛いモノと可愛いモノをくっつけたら可愛いに決まってる!って(笑)。

──名言! 声色もかなり可愛らしくて。

黒崎:違う人格で歌いました(笑)。女子高生のような、恋してる自分を作って、こういう曲は歌います。

──今回は演技経験が活かされました?

黒崎:ああー……でも今までも気づかないうちにやっていたような気はします。例えば「ハーモナイズ・クローバー」もそういう声色でしたが、当時は「黒崎真音としてはこういう声はどうなんだろう?」っていう思いがあったんです。

でもミュージカルや映画の経験をして思ったんですが、役者さんってひとつの役をやりつづけるわけではなく、いろいろな役をやるじゃないですか。でも役者はその人しかいない。私も歌で色々な人を演じていろいろな人格を渡り歩いてる。

それって似たところがあるなと思っていて。それに気づいたときに“黒崎真音ってそういうアーティストなんだ”ってハッキリと分かったんです。そこからすごくやりやすくなりました。第三人格っていうんですかね(笑)。多面体というか。それが自信になりました。

「私だけでは届かない光を見せてくれたのはみなさん」

──ところで7曲目の「A.I.D」ってなんて読むんでしょうか?

黒崎:エイドって読むんですが、読めないって言われることが多いんですよ(笑)。

──この曲をトリガーに、どんどん深く潜っていくような感覚に陥ります。

黒崎:黒崎真音=ダークな曲ってイメージが皆さんのなかにあるかなと思っているんですが……すごく毒々しい曲ですよね(笑)。「décadence-デカダンス-」の次の曲をどうしようかなと思ってコンペをさせていただいたんです。

メタルなんですけど“普通じゃない”メタル……デジタルメタルのような曲がいいなと思っていて。Alexisonfireというバンドがすごく好きなので具体的な曲名をあげて「こういう雰囲気がいいです」と発注させてもらって、「これだ!」というものを作ってもらいました。最初のラップっぽい感じや楽曲の構成も面白いし、メロディもよくて……全部好きで。でもこの歌詞の意味は「よく分からない」って言われるんですよ(笑)。

──え、そうなんですか?

黒崎:唐突ですけど、ゾンビになりそうなときってありません? 心理的なところもあると思うんですが……<血が出てなくてもInjury>というのは、見た目には変化がなくても感染していて。<毒が回ってinfection>…というのは、毒がまわって感染して病気になっていく……。「いまにもゾンビになりそうなんだよ、助けてよ!」って気持ちを表現してるんですけど。

──(即答で)あります! もうちょっとで自分じゃなくなる瞬間。まさにゾンビですね。

黒崎:私は結構あるんですよ(笑)。そのとき思いついた言葉を書いていったんです。ゾンビ映画を観たことある方なら分かると思うんですけど、親友が自分を守るために感染してしまって「俺はもうダメだからお前の手で殺してくれ」……って第一話、あるじゃないですか(笑)。

自分を忘れる前に自分自身で消えたい。それを自分で選ぶことだっていいことなんじゃないかって思うときもあって。「A.I.D」って治療、救済って意味なんですけど、自分自身が諦めてゾンビになってしまえばいいんだ!……って思いが救済になることもあるよという、毒しかない曲です(笑)。

どこにそれぞれ幸せがあるかって分からないじゃないですか。私にとっての救済はそれを言葉にして曲を作ることかもしれないなって思いました。

──なるほど。ちなみに、黒崎さんだったらどうするんです?

黒崎:私は受け入れる……かなあ。「やりたいことがあったらやればいいじゃん!」ていう、ストロングスタイルになってきました。

──あはは、ストロングスタイル(笑)。

黒崎:後ろに進んでいくことがあまりなくなってきましたねぇ。ダメだったら違う方法を考えようって。ネガティブなことも書くんですけど最終的にポジティブになれるすべは知っているというか。それはここ最近知ったことなんですけど。

──大きな変化ですよね?

黒崎:そうですね。アーティストをやってると“勝ち負け”とかではないじゃないですか。色々なことを経験させてもらううちに表現の仕方ってひとつじゃないなということ気づいて、自分でアクセサリーやスマホケースを作ってみたり、物語を書いてみたり……色々なことをはじめてからすごく楽しくなってきました。

──やりたいと思ったことにどんどん挑戦するというのが、いまの黒崎さんなんですね。

黒崎:そうですね。あまり我慢しないというか。これまで我慢することが多かったかと言われるとそうではなくて、無意識に我慢していたところがあったように思います。モノを作りたいなと思ってもそこまでの勇気がなくて、それに挑戦している人をみて「すごいな、私にはできないな」と思って……「やっぱり私には歌しかないんだ!」って気合いを入れたりして。

それはそれですごくいいパワーにはなるんですけど、いつも歌っているわけでも、毎日ライブがあるわけではない。そうじゃないときに黒崎真音として作れるものがあるんじゃないかなって思うと、いろいろなアイデアが湧いてきて。「今だからできることがあるかもしれない」と。

──それって結果として歌のエネルギーにもなりますよね。

黒崎:そうなんですよね! 歌うことが楽しみになるんです。今年はライブが少なくて、まだ3回しかやってないんですよ。この時間がもったいないなと思ったんです。

歌の練習や海外に行ったりはしてるんですけど、こんなに海外に行ってるのも初めての経験ですし、時間があるからこそ見られるものもあると思うんです。いい時間を過ごさせてもらっています。

──ではアルバムに向けて密な時間を過ごしていたんですね。

黒崎:そうですね。言いたいことはたくさんあったので、全然悩まず書けました。「この歌詞どうしよう」とかそういう思いが全然なくて、書きたいものを書きたいようにやらせていただいた。もちろんアニメソングは悩むんですけど、ノンタイアップの曲の場合は自分のキャラソン。だからこそ好きにやらせていただきました。
 

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