映画
劇場アニメ『HELLO WORLD(ハロー・ワールド)』監督×プロデューサー対談

難解と言われても敢えてお客さんに背伸びしてもらいたかった|映画『HELLO WORLD(ハロー・ワールド)』伊藤智彦監督&武井克弘プロデューサーロングインタビュー

2019年9月20日より公開中のオリジナル劇場アニメ『HELLO WORLD(ハロー・ワールド)』(以下、HELLO WORLD)。

『ソードアート・オンライン』シリーズを手掛けてきた伊藤智彦監督、『正解するカド』でも脚本を務めた小説家の野﨑まどさん、『けいおん!』や『たまこまーけっと』で総作画監督を務めた堀口悠紀子がキャラクターデザインを、さらにOKAMOTO’S、Official髭男dism、Nulbarich、OBKR、Yaffle、STUTS、BRIAN SHINSEKAIといった面々が、本作のためのユニット「2027Sound」を結成し、劇中音楽を担当するなど、非常に豪華なスタッフ陣が集結して作られた作品です。

「この物語は、ラスト1秒で引っくり返る」というキャッチコピーも話題を呼び、その衝撃的な展開の数々に、公開後も大きな反響が寄せられました。

今回はそんな『HELLO WORLD』の中核とも言える、伊藤智彦監督と武井克弘プロデューサーを直撃。

本作が生み出された経緯から、ファンからの高い評価を集めているスピンオフ小説、大きな盛り上がりを見せている現在の劇場用アニメについてまで、様々な話を聞くことができたインタビューの模様をお届けしていきます。

3Dアニメでもアニメーターの好みが出ることも

――公開もスタートし、映画を観たお客様から感想なども届いているかと思います。それを受けての心境はいかがですか。

伊藤智彦氏(以下、伊藤):騙されている人からは「こんな小難しい話だと思わなかった」という声をいただく一方で、騙されなかった人からは、SF要素の高さを評価する声もいただいていて。宣伝的な部分も含めて、「どういうプレゼンテーションが良かったんだろう?」と、いろいろ思うところはありますね。

――SFと青春、それぞれの要素のバランスというのは、やはり苦労した部分なのでしょうか。

伊藤:そうですね。あとはもうちょっと高校生ふたりの物語を想像していったら、ヒロイン主観のシーンが少なかったことに言及している方もいるのですが。

ただそこについては、最後まで見ていただければ、どうしてそういう構造になっているのかということは、分かっていただけると思います。

武井克弘氏(以下、武井):やっぱり、最後の「アレ」が言えないというのが、結構足枷なのかもしれないですね。瑠璃のドラマに関しては。

――手応えを感じた部分としてはいかかでしたか?

伊藤:正直なことを話すと、評価して下さっている方々がどういったところに反応してくださったのか、自分でも測りかねているところがあって(笑)。

ネタバレに配慮しているのか、結構フワッとした情報でほめてくださっているので、どの要素が特定のポイントになっているのかまだよく分からないのが、俺の実感ですね。

ほめてくださっている点も結構人それぞれ違うのですが、「一行さん可愛い」と言っていただける意見が多いのは、とてもありがたいなと思いますね。

▲一行瑠璃(CV:浜辺美波)

▲一行瑠璃(CV:浜辺美波)

――やはりヒロインの可愛さ、魅力というのは重視された部分なのでしょうか。

伊藤:そうですね。俺は作品を作る際、だいたい“柱”を3つ作るようにしていて。

今回は、「出会うはずのない、未来の自分と現在の自分のドラマ」を1つ目、「ヒロイン(瑠璃)が可愛い」を2つ目、3つ目を「電脳世界、仮想空間の表現」にすると決めていました。

この、「ドラマ」と「キャラクター」と「世界観」で3つ柱を考えるんですけど、そこに関しては自分としては達成できたんじゃないかな、と思いますね。

武井:そうですね。とくに「瑠璃が可愛い」については見事に反応してもらえている気がします。

――CGの出来も素晴らしいと感じました。(キャラクターデザインの)堀口さんっぽい絵に仕上がっていたなと。

伊藤:そこは3Dチームの頑張りですね。こういったデザインでも3Dで動かせるぞ、というのを見せられたのは良かったです。

武井:堀口さんの絵を3DCGにするというのは、本来は手を出しちゃいけないぐらいの相当チャレンジングなことだったと思いますね。それだけに、日本の3DCGアニメの進化を促せたのではないかと。

伊藤:あとは3Dアニメにおいても、アニメーターの特徴が出すぎることがあるなというのも感じたことですね。

3Dだと、キャラ崩れや作画崩壊というのは基本的にはないはずなんですが、チェックをしていると作画崩壊のような現象が起こるんです。もちろん、結果としてフィルムには出していませんが。

――それは角度とか、見え方によって絵が不自然になるということでしょうか?

伊藤:見え方が不自然になる場所というのは、基本的にいっぱい出るんです。

なので、その都度カットごとに調整をしていく必要があるのですが、その調整の仕方でアニメーター個人の特性が結構出てしまう。その担当の好みで、勝手に(見せ方を)変えてくるケースがあるんですよね。

例を上げるなら、いつのまにかキャラクターの胸がでかくなったり、ムチムチになったりするんですよ(笑)。「もうちょっと痩せさせてください、太りすぎでしょ!」みたいな注意をしたこともあって。

そこはきちんと統一感をもたせないといけないので、そういう傾向がある人には、「ちゃんとキャラ表見てねと」口をすっぱくして言いましたね(笑)。

▲堅書直実(CV:北村匠海)

▲堅書直実(CV:北村匠海)

――3Dの制作をグラフィニカさんに依頼された理由は、どういったところにあったのでしょうか。

武井:グラフィニカさんについては僕が伊藤監督に紹介しました。今回の企画は、「伊藤監督とCGでSF的なものをやりたい」というのが最初の出発点だったんですけど、当時(2015年頃)まだ3DCGでアニメ映画を作る体力を持ったスタジオがそんなになかったのかな、と。

今はまただいぶ状況が変わりましたが、当時からグラフィニカさんは『楽園追放 -Expelled from Paradise-』を制作されていましたし、僕もたまたま出会う機会があって、いろいろなCGスタジオの中でも「今後は自分たちで作品を作っていく」という気概を感じました。

一緒に頑張ってくださるスタジオと映画作りをしたいと思っていたこともあり、伊藤さんにご提案したという感じですね。

――まずは、伊藤監督の参加が先に決まっていたということでしょうか。

武井:そうですね。『HELLO WORLD』に関しては、完全に伊藤さんありきの企画で、僕が伊藤さんと映画を作りたかったのが一番大きかったです。

最初は僕と伊藤さんのふたりから始まり、そこからスタジオのグラフィニカさんや、脚本家の野﨑さんを紹介させていただくという流れでしたね。

(C)2019「HELLO WORLD」製作委員会
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