『けもフレ』、『ケムリクサ』の福原Pが手掛ける新コンテンツ『モクリプロジェクト』ってなんだ!? 新スタジオ設立記念インタビュー

『けもフレ』、『ケムリクサ』の福原Pが手掛ける新コンテンツ『モクリプロジェクト』ってなんだ!? 新スタジオ設立記念インタビュー

『けものフレンズ』や『ケムリクサ』などを手掛けた福原慶匡プロデューサー(以下、福原P)が、まったく新しいコンテンツ『モクリプロジェクト』を始動させた。キービジュアルには、『メイドインアビス』で有名な漫画家のつくしあきひとさんが描いたかわいいケモノ系のキャラクターが描かれている。

すでにクラウドファンディングが行われているが、『モクリプロジェクト』はどんな作品なのか? 正直イマイチわからない! さらに、同タイミングで中国にアニメ制作会社「Root studio」まで設立させる謎展開。福原Pは、これから何を始めようとしているのか!?

同プロジェクトに参画する、デザイナーのさわえみかさん(HIKKY所属)と、VR法人HIKKY 代表取締役の舟越靖さん、GNCY'S代表取締役社長の野澤徹也さんにお話を伺ってきた。

目次

『モクリプロジェクト』ってなんだ!?

――さっそくですが『モクリプロジェクト』とは、どのようなコンテンツなのでしょうか?

福原P:えーっとですね、話すとややこしいんです。よくある「新作テレビアニメ」とか、そういう話ではありません。大人ががんばって遊び場を用意するから、「みんなで楽しく遊ぼうぜ」というのが一番のテーマのコンテンツです。

――アニメではないのでしょうか?

福原P:CGアニメも作る予定ですが、テレビで放送するかネットで配信するか、まだ決まっていません。それこそ30分枠なのかどうかも未定です。ただ、YouTubeのような誰もが見られるメディアで、短編アニメは配信したいと考えています。

▲モクリ

▲モクリ

――福原さんが『モクリ』に関わったきっかけをお聞かせください。

福原P:僕がこのプロジェクトに参加させていただいたのは2019年6月からですが、『モクリ』はHIKKYがずっと育ててきたコンテンツなんです。

さわえみか(以下、さわえ):「モクリ」は安心して使えるアバターが欲しくて作ったキャラクターです。

――安心して使える?

さわえ:はい。当時、権利があやふやなアバターが多かったんです。そこで、権利も、改変も自由なみんなで遊べるアバターをつくりたいなって。人型を配布しているところはちょこちょこ知ってたので、せっかくだったらかぶらない……世界中の人も使えそうなかわいケモノのキャラクターを作りたいと思いまして。

そしたら私の友人に適任者いるじゃない!!と、漫画家のつくしあきひとさんに相談したんです。『メイドインアビス』の作者さんですね。

――どのような反応でしたか?

さわえ:つくしさんもVRに興味をお持ちだったので、「いいですね作りましょう!」と即答でした。

――その当時から、アニメ化を考えていたのでしょうか?

さわえ:アニメと言いますか、CGの映像作品は作りたいと思っていました。VR内で撮影して映像コンテンツにできたらいいなぁ~と。でも、実際にVRで撮影してみると、難しくて上手くいかないんです。簡単なものだったら作れるのですが、ちゃんとした作品にしようとしていたので挫折しました……。

――映像を作るのは簡単ではなかったのですね。

さわえ:ですね。なのでモクリは本来の目的であったVRのアバターとして活動を続けていました。モクリは1体ですが、亜種の「レッサーモクリ」を作って無償で配布したんです。とても嬉しいことに、多くの方に使っていただいています。レッサーモクリは改変オーケーなので、色を変えたり形を変えたり、いろいろなタイプのレッサーモクリを確認しています。

――モクリの映像化は断念したとおっしゃいましたが、今回は福原さんが加わってアニメ化が発表されました。お話を聞いたとき、どう思いましたか?

さわえ:「えっ、やった!!福原さんもレッサーモクリにしなきゃ!!!楽しそう!」って感じでした(笑)。

福原P:そんな感じの流れでプロジェクトが始まりました。なので、僕が加わった時点で、すでにみんなの中にモクリのイメージがあるんです。

さわえ:そうですね。ファンの方々が、それぞれのモクリの世界で楽しんでいますから。

福原P:そうなんです。でも、コンテンツを作るにはそのままでは話を作れません。なので、まずはみんなの持っているイメージをひとつにまとめる作業から始めました。

――世界のルールを決めるのは大切だと思います。

福原P:つくしさんのイメージとさわえさんのイラストを見ながら、みんなで話し合いました。すると新しいアイデアが浮かぶんです。例えばつくしさんのアイデアがおもしろいと思ったら、それを成立させるための仕組みを作ろう……という感じです。

――世界観を構築するのは苦労しそうです。

福原P:しっかりルールを決めて、文章化しているのでだいぶ固まってきています。

さわえ:ある程度の方向性を決めておかないと、チームのみんなが迷っちゃいますからね。

――先ほど配布している「レッサーモクリ」のお話がありましたが、モクリとレッサーモクリは、どのような関係なのでしょうか?

福原P:わかりやすく説明すると、モクリ族という種族が存在していて、レッサーモクリはその世界の「一般住民」、モクリの亜種のようなイメージです。

さわえ:ここでは便宜上“主人公”と呼ばせてもらいますが、一体だけ主人公の「モクリ」がいて、その他に一般住民の「レッサーモクリ」がいます。ですが、レッサーモクリはファンのみなさんたちなので、彼・彼女たちにも、自分たちの物語があります。なので、みなさんにとっては自分のレッサーモクリが“主人公”です。

――配布しているレッサーモクリは改変可能なのですね。

さわえ:改変には3Dツールが必要なので少しハードルはありますが、我々が観測しているだけで200種類くらいの改変モクリが存在しています。もちろん、我々が観測しきれていないレッサーモクリもいるので、もっと多いでしょうね。

――福原さんが作るアニメに、それらのレッサーモクリは登場しますか?

福原P:アニメはVRの表現とは少し違った感じになるかと思います。3Dモデルの解像度の問題でそのまま登場させるのは難しいですが、もしかしたらこっそり登場するかもしれませんね。

さわえ:冒険をしているレッサーモクリもいれば、商売をしているレッサーモクリもいます。みなさんのお話次第になってしまいますが、もしかしたらアニメのお話に絡んでくるかもしれない!?

――それはおもしろそうですね。

福原P:みなさんの設定やお話がおもしろかったら絡んでいただく可能性はありますが、難しいところもあります。二次創作のアイデアを本家が取り入れると、それはそれで揉めることもありますから。

――ファンのみなさんたちの目的が、「アニメに登場したい」になってしまうのも困りますね。

さわえ:そうですね。私たちは「モクリの世界で遊んでほしい」を第一に考えていますから。

福原P:ただ、僕はあまり心配はしていないんです。その理由は、このような企画に賛同してくださるお客さんって、リテラシーが高い方が多いんです。だからモデルをぐちゃぐちゃにしたり、世界観を壊すような設定は作らないと信じています。それに、もしルールを破るような人が出てきたとしても、警察のレッサーモクリが登場して取り締まってくれるんじゃないかな?

さわえ:そうですね。すでに観測レッサーモクリがいるように、いろんなモクリが出てきて活動をもっともっとしてくれたらいいなと思います!つくしさんも「各地のワールドでひたすらレッサーモクリを観測し続けたい」とおっしゃっていました(笑)。

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クラウドファンディングの目的は?

――クラウドファンディングを実施していますが、立ち上げた目的は?

福原P:まずは1stサポーター「開拓者」と言いますか、「村人」の募集のような感じです。

――リターンをいろいろ用意されていますね。

福原P:グッズを用意させていただいてますが、一番のウリは「これから始まるオープンソースみたいなIPの参加者になれる」というところです。なので、本当は僕らの「夢」とか「心意気」に賛同して欲しいんだけど、これを言い過ぎると怪しいと思われちゃうから……。

一同:(笑)

福原P:まだ確定ではありませんけど、制作日誌を公開したり、オンラインの制作会議に参加できたり。あとはもしかしたら、アンケートを行うかもしれません。

さわえ:実はすでにDiscord上に部屋があって、海外の人もたくさん参加してくださっています。誰にでも開放しているので、いまは200人弱くらいかな? 過去にお手伝いを募集したこともあります。

――どのようなお手伝いでしょうか?

さわえ:VRChatでモクリのワールドを作ったんです。最初はコンセプトが整っていなかったのでなかなか進みませんでしたが、コンセプトアートを公開したら話が進みました。やはりベースがあると、みなさんの創作が捗るんです。

――『モクリプロジェクト』はVRを中心に進めるプロジェクトなのでしょうか?

福原P:いえ。もちろんVRChatは今後も続けていきますが、VRのユーザーだけをターゲットにすると狭いので、VR以外でも楽しめるようにします。

さわえ:それこそスマホだけでできるARになるかもしれませんね。バーチャルマーケット3ではVR上のモノをARで楽しむ施策も行いました。VRの店員が、リアルの方に接客をしたんです。『モクリプロジェクト』でも、なにかできると楽しいですね。

――企画発案者のさわえさんが『モクリプロジェクト』で目標にしていることは?

さわえ:いろんな世界の人がモクリの世界に触れてほしいです。すでに動いているのがVRなのでVRChatの話になってしまいますが、いろんな国の人が楽しんでくれています。世界各国の人がオリジナルのストーリーを考えてくれたりしたら嬉しいです。

――それは発案者としては嬉しいですね。

さわえ:「これでいくら稼ぐぞ!」とか、そういう気持ちはまったくありません。みんなに触れてもらって、一緒に遊びたい気持ちしかありません。VRに参加しない人もウェルカムです。イラストでもいいし、造形でもいい。そうそう! すでにワンフェスにフィギュアを作ってくださった人がいるんです。あと、きぐるみもいました。まだ私たちがやってないのに嬉しかったなぁ(笑)。本当にありがたいです。

――では、福原さんの目標は?

福原P:僕もさわえさんと同じく、みんなの遊び場になってくれたら最高に嬉しいですね。いまの時代、テレビのワンクールでヒット作が生まれる時代じゃないです。作品を深く愛していただくためには、助走や仕掛けが必要なんです。なので、僕らと一緒に『モクリ』を盛り上げてくださるみなさんを求めています。

――さわえさんと同じ意見ですね。

福原P:みんなに遊んでもらうのが目的ですが、例えば「なんでもいいから遊んで!」と言うよりも、ボールとバットを渡してあげたほうが遊びやすいですよね? それが今回の「アニメ」と「VR」です。僕らは野球を遊んでもらうつもりで渡したのに、なかには違う遊びをする人が出てくるかもしれません。「ボールとバットでそんなゲームができるんだ!?」って。僕らは『モクリ』を提供しますけど、それでどんな遊びをするのもみなさんの自由です。僕らを驚かせていただきたいです。

中国にアニメ制作スタジオを立ち上げた理由は!?

――『モクリプロジェクト』の発足と同時に、中国にアニメスタジオを立ち上げたと伺いました。経緯をお聞かせください。

福原P:これも話すとややこしいんですけど(笑)。

――『モクリプロジェクト』のために立ち上げたスタジオでしょうか?

福原P:そのように見えてしまうかもしれませんが、実は違うんです。舟越さんと野澤さんの3人で2019年6月くらいに会ったとき、「今後なにかをするためにCGスタジオが欲しいね」という話になったんです。

舟越さん:福原さんと僕、野澤さんと僕が知り合いだったのですが、福原さんと野澤さんの馬が合いそうなので、6月ごろに引き合わせたんです。そうしたらトントン拍子で話が進みました。

野澤さん:僕はもともと日本のCGプロダクションに所属していて、いろいろな作品を作っていました。300人くらいのスタジオでしたが、仕事が回らずに中国とかに発注していました。10年以上中国の会社と付き合いがあったので、中国の良さも悪さもしっています。

舟越さん:野澤さんはいままで、日本人の誰もが知るような作品に長く携わっていた人です。なので日本のクリエイターやアニメ制作会社の良さも、中国企業の良さも知り尽くしている人間なんです。

――日本と中国の制作スタジオの違いは?

野澤さん:日本はひとりの職人さんがいろいろカバーすることで、少ない人数で効率よく仕事を回すのが良さです。一方、中国は専門職に分かれていて、頼まれたことを実直にやる仕事の早さが良さだと思います。

――中国にスタジオを作ろうと思った理由はなぜですか?

野澤さん:人を集めやすいんです。特に大連という街はクリエイターが集まっているので、腕のいい人材を集めやすいです。でも、僕らは普段日本で仕事をしているので、中国にコミットできません。そう思っていたら、中国で長く活動している緑川さんという方と出会って意気投合して、スタジオを設立するまで話が進みました。

――大連はどのような街ですか?

舟越さん:個人的にはよく行く上海よりも好きな街です。日本のクリエイターっぽい意識を持っている人材が多いんです。それにレベルが高い。総合力では日本の方が高いと思いますけど、それでもうかうかしていられないなと思わせるくらいです。

福原P:もしかしたら、どこかで(トル)ある部分では負けている部分もあるかもしれませんね。

野澤さん:よく「コストダウンのため」と誤解されるのですが、そうではありません。将来の伸びしろが大きいので、僕らはそれを期待しています。

福原P:でも、まだスタジオを立ち上げたばっかりなので、この記事が掲載されるころには上手くいかなくてなくなってるかも……。

一同:(爆笑)

舟越さん:もうひとつよく聞かれるのが「中国で全部作るの?」という質問です。もちろん、そうはいきません。どうしても日本じゃないと作れない部分があります。先ほど「中国は分業が得意」と申しましたが、そういった点でも中国のスタジオは融通がききます。

――その新規のスタジオで『モクリ』をスタートさせるのですね。

福原P:はい。スタジオの立ち上げを受託のみで行うときついんです。僕らでイニシアチブを取れる作品を作らないと、事業計画も立てられませんから。でも、スタジオを立ち上げると決まったときは、『モクリ』はまだ決定してなかったよね?

――作るモノを考えずにスタジオを立ち上げたのですか?

福原P:考えてなかった……。

一同:(笑)

舟越さん:でも、なにかを作るときに必ず道具が必要になるじゃないですか。スタジオは道具です。

福原P:そうそう。必要かもなって思ったときにやっておくと、だいたいいいことが起こるんです。

舟越さん:『モクリ』もそうですね。VRのアバターのために作りましたけど、結果としてアニメを作ることになりました。僕らが管理しているIPなので、権利関係がややこしくならない作品。僕らが本当にやりたいことができます。

――それは大きな利点です。

舟越さん:例えばVR空間に『モクリ』のアニメに出てきたシーンを作るとします。そうすれば、ファンはいつでも聖地巡礼ができるようになります。そこで記念撮影をしてもいいし、オリジナルストーリーの劇をやってもいい。他のIPでも無理をすればできますけど、権利の問題が起こったらすべて中止です。

福原P:『モクリ』の権利は僕らが管理していますが、オープンソースのようなイメージが近いです。基本的にはファンのみなさんに「どうぞ遊んでください」というスタンスです。いまはコンテンツ消費のスピードがどんどん早くなっているので、飽きられてしまうのも早いです。そうなると供給の速度も上げなければなりません。それは難しいので、『モクリ』ではUGC(User Generated Content、ユーザー制作コンテンツの意)のような感じで、あちこちでいろいろなことが起こっていてほしいです。僕らはただ、みんなと遊びたいだけですからね。

▲左から、GNCY'S代表取締役社長・野澤徹也さん、デザイナー・さわえみかさん、ヤオヨロズ・福原慶匡プロデューサー、VR法人HIKKY 代表取締役・舟越靖さん

▲左から、GNCY'S代表取締役社長・野澤徹也さん、デザイナー・さわえみかさん、ヤオヨロズ・福原慶匡プロデューサー、VR法人HIKKY 代表取締役・舟越靖さん

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