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冬アニメ『地縛少年花子くん』緒方恵美×安藤正臣 監督インタビュー

冬アニメ『地縛少年花子くん』緒方恵美さん&安藤正臣監督インタビュー|第1話と最終回のラストシーンから伝わってくる花子くんと寧々ちゃんの変化

2人が印象的に残っているシーンは?

——これまでの話数を振り返ってみて、印象的に残っているシーンがあれば教えてください。

安藤:僕が1番印象に残っているのは、第1話の「トイレの花子さん」で花子くんと寧々ちゃんが夕陽が差し込む教室で手をつなぐラストのシーンです。

緒方:あ~! 音楽が盛り上がってカーテンが風でバサってなるシーンですね!

安藤:原作を読んだときも面白かったのですが、自分の中で絵コンテを作って画にしていくという段階で、より要素が明確になってきた部分でもあります。あのシーンを作り終えたところでやっと花子くんのことが掴み切れた気がして。

緒方:なんて言うんだろう……例えると、ピーターパンとウェンディのような感じですよね。

安藤:まさにそうです!

緒方:手を取ってフワッと浮かんでカーテンがバサってなる。ピーターパンとは違って夕方のシーンですけど(笑)。

安藤:しかも、寧々ちゃんは光の側で、花子くんはこっそりと陰の側になっていて、どちら側に誘うのか……みたいな形になっているんです。

緒方:えっそうなんですか!?

安藤:はい。パッと見ると1話目の段階だと、花子くん側に寧々ちゃんが引っ張られているように見えるかもしれません。ここでは、まだ寧々ちゃんは戸惑っていますし、花子くんから積極的にアプローチしているところから始まっているので。

あの構図がスタートだとしたら最終回はどうなるんだろう? と思ったのが、そのまま第12話のラストシーンになっています。

緒方:最後のラストシーンは本当に良かったですよね。すごく綺麗でした。アフレコのときは画がなかったので分かりませんでしたけど。あっ、ディスっていませんよ?(笑)。

安藤:(もっけの真似をしながら)ウゥ……やむなし、やむなし。

一同:(笑)。

——第1話とラストのシーンがリンクしていて鳥肌が立ちました。

緒方:第1話のときに花子くんと寧々ちゃんが女子トイレで初めて会ったシーンで、花子くんは寧々ちゃんの肩にポンッと手を置いていましたが、最終回では、花子くんが置いた手に寧々ちゃんが「つかまえた」って手を重ねているんですよね。オンエアでそのシーンを見たとき、すごく感動しました!

(ガッツポーズする監督)

安藤:原作がまだ続いている作品なので、アニメの1クール12話の中では、物語の核心を突くようなオチにできないのは最初から分かっていました。

シリーズ構成・脚本を担当してくれた中西やすひろくんと、全12話を通して花子くんと寧々ちゃんの関係性がどう変わっていくのか見えるシリーズにしようね、と話していたんです。

ラストシーンは自分のほうで要望を伝えてあの終わり方になりました。

緒方:最終的に2人がくっついちゃいました、というのではなくて、全然手前の段階で終わるというところが良いですよね。

安藤:あはははは(笑)。

緒方:ちょっと進展しているんだけど、進展の度合いが少ないというか。すぐにくっつくのではなくて、まだ初期の頃という感じで。

安藤:先ほど、第1話のシーンで花子くんのほうに闇があって寧々ちゃんのほうに光があると言いましたが、ラストのシーンもどっちかというと、花子くんが引っ張られているというよりは寧々ちゃんが現世に引き置いているのかな、という気もしているんです。

緒方:おぉ~!

安藤:よく見てみると、原作で花子くんはちょっと半透明になるときがあるんです。顔は透けていないけど、よく見ると胴体あたりが透けていて。存在が希薄になるというか、現世に対して軸足が薄くなり始めたときに、寧々ちゃんとの接触で戻れるんです。

なので、花子くんが寧々ちゃんを闇の世界に誘っているように見えるかもしれませんが、実は寧々ちゃんがいることで花子くんが留まっていられるのかな、心の置き所なんだろうな、と感じていて。

第1話を作っていたときもその2人の力関係を感じることがありました。今回のアニメを通して力のバランスを意識しましたし、そういう意味では第5話の「告白の木」も印象に残っています。

——第5話でいうと、花子くんが寧々ちゃんを泣かせてしまうシーンが好評でした。

安藤:はい。花子くんが寧々ちゃんを泣かせた後に「ごめん」と素直に謝って抱き合いますが、抱き合う境目が学校の門の境目で。

要は、学校の外(現世)で現実を生きられる寧々ちゃんと学校の内側(死者の世界)でしか存在できない花子くんを表しているんです。

花子くんが寧々ちゃんに対して「泣き止むまでここにいなよ」と慰めるように見せかけて、実は花子くんのほうが寧々ちゃんにここにいてほしい感じがします。

緒方:だいたい、男子がカッコつけているようで女子の掌の上で転がされてしまうパターンがほとんどなんですよね。

安藤:さすが緒方さん(笑)。

緒方:私が生物学上女子だからではなくて、中二病のような男の子を演じることが多いので。いつも私はカッコつけているようなセリフを言っていますが、相手役の方に踊らされてもらっていると思うことが多いんです(笑)。

安藤:より客観的に見えているわけですね。

緒方:そうなんです。そのことを1番初めに思ったのは『セーラームーン』のときでした。

一同:(笑)。

緒方:みんな私が演じている役に対してカッコいいと思っているかもしれませんが、言わせてくれる器の女性がいるからこそカッコよく見えるんですよね。

私自身、そういう立場を演じることが多いからこそ、どの作品で男子を演じても「(女子に)転がされている」と感じるようになりました。

花子もカッコいいセリフを言っていますが、寧々ちゃんがいてくれるからこそなので。

安藤:本当にその通りだと思います。花子くんがカッコいいのは、寧々ちゃんがちゃんと受け止めてくれるからなんですよね。

緒方:本当です。器の大きい女の人には弱いです。

一同:(笑)。

安藤:そのあたりの度合いについても、緒方さんと結構ディスカッションをしました。

緒方:恐れ多いですが……。

安藤:とんでもないです! 自分だけで考えてしまうと、どうしても弱々しい部分を求めてしまうので、緒方さんが今おっしゃっていただいた話を聞いて、本当に勉強になりました。

緒方:ありがとうございます。女子にカッコいいことを言わせてもらっているからこそ、そこはちゃんとカッコつけないと女子の立つ瀬が……というわけでもないんですが、そこでいきなり本音を駄々見せてしまうより、全部を見せないほうが良いシーンもあるんじゃないかな、という話をさせていただきました。

安藤:今回は本当に緒方さんに主演にやっていただいて、僕自身も大変勉強になりました。

緒方:(照れたように)ありがとうございます。

(C)あいだいろ/SQUARE ENIX・「地縛少年花子くん」製作委員会
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