『ローリング☆ガールズ』Blu-ray BOX ～5周年記念特装版～発売記念座談会｜出合小都美(監督)×むとうやすゆき(脚本) 後編【第4弾】　望未たち4人が巡った国々について、じっくり振り返る

WIT STUDIO初のオリジナルテレビアニメ作品として、2015年1月～3月に放送され、何かに夢中になって頑張って生きている、世にいる普通の人々(モブたち)に勇気を与えたTVアニメ『ローリング☆ガールズ』。それだけにコアなファンも多く、その声を受けて、2020年12月16日に『「ローリング☆ガールズ」Blu-ray BOX ～5周年記念特装版～』が発売となった。アニメイトタイムズでは、そんなロリガファンの胸が熱くなる座談会を実施している。

最後となる第4回は、前回から引き続き、監督の出合小都美さん× 脚本・むとうやすゆきさんのお二人に登場いただき、『ローリング☆ガールズ』で望未たち4人が巡った国々について、じっくり振り返ってもらった。

所沢編(#1 ～#2)　あの子たちがどんな“風”を感じているのか、そのほうが大事でした

――物語は所沢編から始まりますが、この作品の美術を中心にした空気感はどのように作っていったのでしょうか？

出合小都美さん(以下、出合)：tanuさんにイメージボードは描いていただいているんですけど、基本的に各国(※『ロリガ』では、都道府県がすべて独立国家になっている)をベースに美術設定を起こしてもらいました。

tanuさんのイメージが面白かったので、それを生かした形で落とし込めるように美術設定のスタッフには試行錯誤をしてもらったり、そこから膨らませてもらうようにしました。

――国ごとに、ガラッと雰囲気が変わりますよね？

出合：最初からtanuさんのイラストっぽい淡い雰囲気で行こうと思って試行錯誤を重ねていたところ、中武(哲也)プロデューサーから「柴山恵理子さんという面白い美術さんがいる」というお話をいただいたんです。柴山さんは京都編の水彩のビジュアルをメインに担当している方なんですけど、その方が入ったことによって方向性がグッと変わった印象はありました。

だから所沢編は、淡めの色で日常シーンをまとめていただいたんですけど、所沢を出て、旅に出たあたりから水彩の感じが混ざって行くような印象です。そこで日常から非日常に移行していくような感じが出ると面白いなということで。

――執行さんとマッチャグリーンこと真茶未が戦っている1話には、いろんな要素が盛り込まれていましたね。

むとうやすゆきさん(以下、むとう)：ぼくが言うのも何ですが、あのシナリオを渡されてコンテで二十分に収めろというのはちょっと酷でしたよね。オリジナル作品なので補足情報なども書き込んであったとはいえ……。

出合：本当に尺が足りなくて、絵コンテを描いている時点で、これは絶対に無理だと思ったので、シナリオの要素を止め絵で中に入れたりして、あとは申し訳ないですけど想像してくださいという感じでした。ただ、望未たちの話をやるにつけ、真茶未たちのバックグラウンドについては、何となくこういう人たちなんだろうと視聴者に伝わるだけでも十分なのかなという印象もあったので、そうさせていただきました。

――最初は、真茶未たちが主人公なのかな？と思っていました。2話でバイクで旅立つときに、やっとこの4人が主人公だったんだと気づいたんです。

むとう：キャラ起ちしているヒロイックな人たちも何かを抱えていて、そこに望未たちがやってきて、モブなりに支えてあげたり、助けてあげたりするというのがこの作品の構図なのですが、最初の所沢編はそのフォーマットではないのと、なにより、やはり派手なところに目がいくものですからね。

――最終話まで見て戻ってもう1度見たり、2～3回見ると、ここでこんな事を言っていたんだって気づくことが多いんですよね。

出合：とくに1話は細かいところまでいろいろと拾っているので、何度も観てもらえると楽しんでいただけると思います。

――2話のラストで、負傷した平和請負人のマッチャグリーンの代理として、望未が依頼人のところを訪ねて回るために、バイクで旅に出るんですけど、そこはワクワクしました。バイクで移動するというのがいいですよね。

出合：バイクに乗る設定は初期からのものでしたね。

むとう：目をひくキャラがメインではない、という常道はずしの部分と通じるのですが、いわゆるバイクアニメではないということで、あえて記号的にして、車種もぼかしているんです。特定したい人や、排気音が間違っていないかチェックするような人が多い時代で、そこはディテールにこだわらないといけない部分なのかもしれないんですけど、『ローリング☆ガールズ』においてオートバイは目的ではなく手段であって、望未たちがどんな“風”を感じているのか、それを共有してもらいたいというところのほうが大事だったので。ですので「バイクで旅に出る」ことにワクワクしてもらえたというのは嬉しいです。

出合：どちらかと言うとデザイン優先でイメージしているのはありましたね。でも、バイクのSEは、加工しているとは思いますが音響効果のスタッフがサーキットまで行って実音を録音しに行ったり、こだわってくれていました。