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アニメ『ワンダーエッグ・プライオリティ』が考察してもしなくても面白い理由

アニメ『ワンダーエッグ・プライオリティ』が考察してもしなくても面白い理由|クオリティの高さとともに“絶対的な答えのない物語”の楽しさを知った話

衝撃の「学校行きます」

筆者が本作においてとにかく衝撃を受けたのは第6話「パンチドランク・デー」のラスト、アイの突然の「学校行きます」発言。予想だにしない急展開すぎて脳が追いつかないのもそうですが、晴れやかな表情で左目にかかった髪をかき上げる仕草の美しさに見惚れたのもあってしばし呆然としました。

このシーンは作画のクオリティの高さ、考察性ともに、間違いなく本作の象徴的なワンシーンのひとつといえるでしょうし、放送後特にさまざまな意見が飛び交ったように感じます。

ただ、個人的にはその翌週、第7話「14才の放課後」の冒頭のほうがより衝撃的でした。「ようやくアイの真意、そして学校に行くようになってどう変わったのかが明かされる!」と期待していたわけですが、なんと学校に行くことについては冒頭の4人の日常会話で一言言及しただけ。

その後の話数でもついぞ話題に出ることはなく、本編は終了、ほかにもさまざまなできごとが起こっているので、特別編でもおそらく言及されることはないと思います。

物語序盤のアイの戦う動機は「小糸を生き返らせること」ですし、「小糸の自殺」をきっかけにアイは不登校になっています。なので、アイの一番の課題は「小糸の自殺を乗り越える」で、その克服の象徴として「学校に行く」ようになるのだと筆者は予想していました。

最初はこの予想が外れ、大いに困惑しましたが、徐々にこれこそが本作の魅力ということに気づき納得していきました。そう確信したのが第11話「おとなのこども」および、第12話「負けざる戦士」でした。

衝撃再び

第9、10話はねいる、桃恵にスポットが当たり、彼女らの掘り下げは進みましたが、アイの物語に大きな変化はありません。続く第11話では、アカ・裏アカの過去、エッグ、その先にある目的といった物語の根幹となる部分がついに明かされ、一気に物語の全体像や終着地点が整理されました。

一方でアイの物語も大きく進展していきます。沢木先生との向き合い方が変化していったアイが、いよいよ小糸の死について直接訊いたところで第11話は終了。「またすさまじい引きだ……」と感嘆しました。

そして翌週。「いよいよ小糸の死の真相が明らかになる!」と興奮している筆者。あれ、この展開は……?

そう。デジャブというかまたも見事にやられたわけです。第12話では小糸の死の真相については明言されませんでした。

第12話は「パラレルワールド」という新たな概念が出てくる異質な話で、もしかしたら時系列が素直に「第11話→第12話」ではない可能性もあるにはあります。ですが、どちらにせよアイと沢木先生の関係には決着が付けられており、特別編で沢木先生関連の話がされることはない気がします。

そしてこの2度のできごとで、筆者は「この作品は謎の答えを素直に用意してくれるんじゃないんだ」と衝撃を受けたとともに、それこそが魅力なのだと確信に至ったわけです。

受け身の姿勢と“答え合わせ”だけが楽しみ方じゃない

アニメに限らず、近年の娯楽全般の傾向として「難しい話は避けられやすい」あるいは「答えが明示されやすい」と感じる方は多いのではないでしょうか。

決してこれが悪い、ということを言いたいわけではないのです。ただ、筆者は本作で「よく分からないけれど面白い」という感覚を久々に覚えました。それは間違いなく筆者が「答えを提示されること」に慣れてしまったからだと思います。

いつしか物語を受け身で“接種するだけ”になってしまい、「このときのキャラクターの感情は?」「この台詞の意味は?」「この作品のテーマは?」といった思案を巡らせることを疎かにしていたのです。

もしくは、展開の予想や考察を立てたとしても、それが当たろうが外れようが、なにかしら“絶対的な答え”が明示されてきた体験が多かったからかもしれません。能動的に思案していたとしても、“答え合わせ”に終始するだけでした。

ですが、本作では上述したように予想をしたとて、そもそも合っているか、外れているかも分からない、絶対的な答えが明示されない展開が続きます。それはこう言われているようにも感じるのです。「そこはこの作品の論点じゃない」と。ひとつの謎にこだわりすぎて、作品全体が見えなくなっていたことに気づかされました。

絶対的な答えを求めるだけがアニメの楽しみ方じゃないということを本作は教えてくれましたし、そういった体験ができるのが大きな魅力なのではないかと思います。

あれこれ言いましたが

といいつつ特別編に向け展開予想などもしてしまっている筆者。ただ、それが当たろうと外れようと、どの謎が明らかになろうとならまいと、そこだけに注視するのではなく、この物語が最終的に何を描きたかったのか、アイたちはなにを見出すのか、放送前、後ともにじっくりと考えようと思います。

みなさんもぜひ、なかなかできない体験が味わえるアニメ『ワンダーエッグ・プライオリティ』を、自分なりの方法で存分にお楽しみください!

TVアニメ『ワンダーエッグ・プライオリティ』作品情報

イントロダクション

脚本家・野島伸司がアニメの世界で紡ぎだす、悩みもがく少女たちの物語――。14歳の少女・大戸アイは、深夜の散歩の途中で出会った謎の声に導かれ、「エッグ」を手に入れる。「未来を変えたいなら」「今はただ選択しろ」「さぁ、自分を信じてー」「エッグを割れー」「エッグ」を割った先で、アイを待つものとは……。「高校教師」「薔薇のない花屋」ほか話題のドラマを数多く生み出してきた脚本家・野島伸司が手掛ける、初のオリジナルアニメーション作品。

スタッフ

原案・脚本:野島伸司
監督:若林信
キャラクターデザイン・総作画監督:高橋沙妃
コンセプトアート:taracod
副監督:山﨑雄太
アクションディレクター:川上雄介
コアアニメーター:小林恵祐
ゲストキャラクターデザイン:久武伊織
プロップデザイン:井上晴日
デザインワークス:大鳥 絵を描くPETER
色彩設計:中島和子
美術監督:船隠雄貴
撮影監督:荻原猛夫
3DCG:Boundary
編集:平木大輔
音響監督:藤田亜紀子
音楽:DE DE MOUSE ミト(クラムボン)
音響効果:古谷友二
企画プロデュース:植野浩之(日本テレビ) 中山信宏(アニプレックス)
制作:CloverWorks
製作:WEP PROJECT

主題歌:アネモネリア

キャスト

大戸アイ:相川奏多
青沼ねいる:楠木ともり
川井リカ:斉藤朱夏
沢木桃恵:矢野妃菜喜

公式サイト
公式ツイッター

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