真島ヒロ先生原作アニメ『EDENS ZERO』より、石平信司総監督&鈴木勇士監督の対談が実現!『FAIRY TAIL』も手掛けたお二人がアニメ化する際に意識したこととは?
アニメ化で意識したのは重力アクションの表現とメカ描写
――アニメ化にあたって意識された点と、真島先生や編集サイドからのオーダーもありましたらお聞かせください。
石平:シキの重力アクションをどう表現するかがまず1つ。
鈴木:先生からもオーダーをいただいたし、十分時間をいただいて練ることができました。
石平:あとはハッピーの変形などのメカ描写ですね。触感が伝わるようにしてほしいと。
鈴木:メカ描写を、マンガから受ける印象より、更に精細に描いてほしいというオーダーもありました。でもメカとしておいしい、楽しいところをいただいて、難し過ぎるところは避けて。
また非科学なものではなく、ちゃんと機械的な構造があっての動き方だということもわかりやすく表現してほしいと。その結果、エーテルギアの表現も魔法ではなく、科学的な仕組みを深堀りした上で描いています。
石平:CGが使えることで、ディテイルも表現できたことも大きかったです。
鈴木:CGがなかったら、戦艦であるEDENS ZEROそのものを画面に出すことにもかなり苦労することになったと思います。
石平:航空戦艦フェアリーテイルの時は手描きだったからすごく苦労したよね(笑)。
――毎回の話の中で、視聴者の心を揺さぶるような演出も素晴らしいですね。
石平:ほぼ原作の流れはそのままでやっているんですけど、平野(義久)さんの音楽の力と、それをうまくハメてくれる音響監督のはた(しょう二)さんがすごくいいんですよね。ダビングの時にも思わず泣けてくるほど(笑)。
アニメにして音声をハメると想像以上に盛り上がって、ガラっと印象が変わって、エモーショナルになるんだなと。
鈴木:より感情に触れるような音楽の入れ方なんですよね。
石平:『FAIRY TAIL』でもそんな感覚になったことがあって、例えばスティングとエクシードが和解するシーンとか。もちろん原作に元々、そういう流れや描写があるからのことで。
鈴木:原作は読ませる力が強過ぎるから、どんどん読み進めてしまうけど、アニメでは情感を貯める時間を用意するとより効いてくるからかなとも思います。
石平:5話でシビルとの決着を付けたシーンは良かったよね。
鈴木:脚本量とアクションとのバランスで、尺が埋まらなくて、強引に伸ばしたけど、それが結果的にいい間になって、音楽が付いたときに感情を揺さぶるだけの時間が用意できたかなと。自分たちの仕事に、自分たちで驚いている最中です(笑)。
――レベッカのお色気シーンが毎回出てくるのも、シリアスなシーンが続いた後に心をほぐして、終盤でまた物語に引き込むという「緊張と緩和」の「緩和」、いいアクセントになっている気がしました。
石平:そこは真島イズムで。
鈴木:原作でそうなっているし、我々はその雰囲気を消さないように心がけています。シリアスなシーンが続いているから、ふざけた1コマを抜いてしまおうということはせずに、ちゃんとふざけるのが大切なんですよね。
キャスティングについてのポイントとお芝居の印象
――シリーズ構成やキャラクターデザインなどのスタッフ組みが決まったポイントをお聞かせください。
鈴木:ほぼプロデューサーやJ.C.STAFFさんが決めてくれました。
石平:例えば、キャラクターデザインの迫(由里香)さんも、「まずこういう方がいるんですけど」と推薦していただいて、ラフを描いてもらって、「いいですね」と。
鈴木;ご紹介いただいたスタッフさん達が皆さん、素晴らしかったので、こちらもやりやすいです。
石平:どちらかというと僕と鈴木さんが外人部隊のようなもので。
鈴木:既にでき上がった座組に、我々がやってきた、みたいな(笑)。だから一緒に作っていく中で「こんな方法もあるんだ」という発見や新鮮に感じることも多くて。
――お二人からスタッフの皆さんへのオーダーやアドバイスされたことはありますか?
鈴木:最初の頃は、「今回の作品はこうです」と説明したり、我々の作り方の温度感のすり合わせはしました。あと現代のアニメでは緻密さを追求することを求められることが多いけど、そこにばかり気を取られるのではなく、その労力をもっと楽しいことに使いましょうと言った気がします。
石平:描き手がノって描いてもらえることが一番なので。
鈴木:だから邪魔をしないことが我々の仕事で、皆さんに気分良く作っていただくことで、作品も良くなっていきますから。
――メインキャストが決まったポイントをお聞かせください。
石平:オーディションを受けてくださった方がすごい人数で、最終的に決まるまで2~3カ月かかりました。でも時間や手間をかけたかいがあるキャストさんがそろったと思っています。
――シキ役の寺島拓篤さん、レベッカ役の小松未可子さんのお芝居はいかがですか?
石平:いいに決まっているじゃないですか! そして収録を重ねていくごとにより自然になじんでいった感じもあって。レベッカも1話の時の叫び方と比べて、10話あたりの叫び方の質も違うし。
鈴木:ツッコミも土佐弁になった時など、我々の気持ちをしっかり汲み取って、出してくださっているので。ワイズ役の手塚(ヒロミチ)さんは紆余曲折あって。最初、イケメンとして出てこようとして、「違う! 違う!」と(笑)。
登場したての頃はまだそれほど、優しくないし。でもその揺れ具合が、ワイズの優柔不断さと相まって良かったと思います。
石平:シキ役の寺島さんも叫び方を試行錯誤しながらああいう声になって。
鈴木:これだけのキャリアの方に最初は少年として出発してもらって、ノドをいとわない叫びを毎回していただいて。
石平:『FAIRY TAIL』でもジャッカル役を演じていただきましたが、それとは違う役柄ですが、いいなじみ方をされていると思います。
――釘宮理恵さんは『FAIRY TAIL』と同じハッピー役ですね。
石平:収録前に釘宮さんと、『FAIRY TAIL』と同じように演じるか、話し合いましたが、みんなが求めているのは変わらないハッピーじゃないかという結論になって、ほぼそのままでやっていただくことになりました。
鈴木:でもちょっと違いは出してくださって。同じように聞こえつつも、別のハッピーである部分も入れてくださって。まさに匠ですね。
石平:ちゃんと笑わせてくれるんですよね。気が付いて、笑っているのは僕だけかもしれないけど(笑)。
鈴木:ちゃんとお茶の間にも届いていますよ。