音楽
ReoNa×新生『月姫』コラボレーションの軌跡|ReoNa「生命線」インタビュー

絶望系アニソンシンガー・ReoNaが彩る、長編伝奇ビジュアルノベル『月姫』・新生主題歌「生命線」ロングインタビュー|作品の中にある絶望感、孤独感、痛み。想像していた以上に撃ち抜かれました

死への渇望なのか、生への渇望なのか

――それぞれの曲について詳しくおうかがいさせてください。「生命線」を初めて聴いたときはどのような印象がありましたか?

ReoNa:作品を知ったらハッとするものがあるんだろうなというのは、最初から感じていて。「作品と重ねたらどういう意味を持つんだろう?」ってすごく気になったことを覚えています。この楽曲のパーツを一つひとつ紐解きたいなとワクワクしました。

――全曲に言えることですけど、毛蟹さん節が炸裂してますね。

ReoNa:定石通りではない作りというか。AメロがあってBメロがあってサビがあって、という形ではない、一方通行に流れていくような楽曲で、毛蟹さんらしさが溢れているなと思いました。

――どこがサビでもおかしくないような、そんなブロックが繋がっている印象があります。

ReoNa:そう言っていただけるとすごくうれしいです。どの部分にも静かな熱、感情が宿っているなと歌っていたときにも感じていました。だから、どこをサビと捉えても良いのかなと。

――冒頭に不思議な音色が入っているなと思っていたんですが、なんの音なんでしょう?冷たいような温かいような、針金のような。

ReoNa:弓を射るような音ですよね。ギターらしいんです。イントロを聴いたときに『月姫』の世界観が溢れているなと思いました。実は楽曲の中に、ゲームBGMと同じフレーズを使わせていただいたりもしています。

――すごくステキなお話ですね。信頼関係あってこそというか。

ReoNa:毛蟹さんは『Fate/Grand Order』でTYPE-MOONさんとご縁があって。芳賀さんのやりとりに初めて立ち会わせてもらったとき、「ああ、こんなにも近い関係性なんだ」と驚いたくらいでした。そういう経緯もあったからこそ、毛蟹さんとしても踏み込めている部分があるのかなと。

――<ゾクリと脈を打つ 命の線 ナイフでなぞって 伸ばしてしまえたら>という言葉には、まさにゾクリとさせられました。作品を知らないでこの曲を聴いたとき、「生命線」というタイトルや<命の線>という言葉から、まずは手のひらの生命線を思い浮かべると思うんですが。

ReoNa:この楽曲にまっさきに出会ってくださった方には、そこの側面もひとつ感じていただけたらなと思っていて。私たちの手のひらに刻まれている生命線ってある種、命の証というか。生命を象徴するポジティブなものなんですけど、それに対して、ナイフという命を削るもので<伸ばしてしまえたら>と言ってる命の裏表感というか。そんなところも感じてもらえたらと思っています。作品を重ねたときに、命の線、ナイフがまったく違った意味が心の中に生まれると思うので、どっちとも取っていただけるように歌えていたらいいなと思っています。死への渇望なのか、生への渇望なのかが曖昧になっているなと。

――ReoNaさんとしてはどう思います?

ReoNa:私としては生きることへの願いだと思いたいなって。この世界は彼――遠野志貴の目には、きっと脆く儚いものとしてこの世界が映っていて。命というものの儚さを感じたくなくても、感じさせられてしまうという中で、アルクェイドたちと出会って。志貴にとって、アルクェイドたちは世界の儚さを別の形で共有できる相手だったんだろうなと。世界の脆さに向けて抱える絶望がこの楽曲には詰まっているんじゃないかなと思ってます。

――毛蟹さんとのレコーディングはいかがでしたか?

ReoNa:「生命線」は楽曲の誕生からレコーディングに至るまで長い時間があったおかげで、仮のデモ音源を録ってから何回か歌う機会がありました。それこそ楽器のレコーディングに向けてだったり、フルバージョンが出来上がったときだったり、ひとりでスタジオに入る時間だったり。本番はお互いが描いているものが重なった状態で臨めたので、スムーズだったと思います。

――2019年に録ってた音源とは思わずだったこともあって、今のReoNaさんの歌声として響いてきました。ReoNaさんとしてはどうですか?

ReoNa:自分で聴いていて「この時の私、幼いな」と思うことは無くて。逆に今歌ったらまた違うものになりそうだなという想像はあるんですけど、だからこそ、そのときに録れていて良かったなと思ってます。

――今回の楽曲制作には『Fate』シリーズの楽曲を数々手掛けてきた深澤秀行さんが関わっているんですよね。

ReoNa:そうなんです。 「生命線」ではストリングスアレンジとプログラミング制作でご参加いただいていて。深澤さんとは「黄金の輝き」(『Fate/stay night[Réalta Nua]』OP)のカヴァーのときに初めてご一緒させていただいたんですけど、今回はReoNaの楽曲という形で初めてお力を借りることができました。毛蟹さんと深澤さんのやりとりを経て、音源ができて、私は聴かせていただく形だったんですけど、深澤さんのサウンドのおかげで、この楽曲の持つ切ないロック感のようなものが増したように感じました。TYPE-MOON感、月感というか……。

――MVでもまさにそれを感じました。佐伯雄一郎監督がReoNaさんのMVを手掛けるのは初めてですよね?

ReoNa:初めてです。 MVでは暗い中にポツリと佇んでいる絵をいろいろなシチュエーション・角度で切り取っていただいています。撮影前に監督の過去の作品を拝見させていただいたんですが、特に印象的だったのが、独特な光、照明で。浮世離れした映像感を作るお力を感じていたので、どんな映像になるんだろうってワクワクしていました。

――最初に「生命線」という文字が出てくるのもカッコいいですよね。命の線と死の線を彷彿させるデザインにも、まさにゾクりとしました。

ReoNa:私も「カッコいい」と思いました。その後ろに映っている、水面に揺れる月の肌のようなものがよりワクワク感を煽るというか。私もすごく好きなワンカットです。

――YouTubeのコメント欄には、いつも以上に英語のコメントが多かったようにも感じました。

ReoNa:英語ももちろん、「どの国の言葉だろう」と思うような言語もあって。前作の「ないない」(TVアニメ「シャドーハウス」エンディングテーマ)のときも感じていたんですが、国を越えて、海を越えて、いろいろな方に聴いていただけていることを改めて実感しています。

母国語でコメントを下さったということは、日本語の意味をきっとすべては分からない方なのかなと思うんです。もしかしたら歌詞を読み解かずとも感じていただけている方がいるのかもしれないなって。声を受け取ってもらえている嬉しさを感じています。

――私たちが洋楽を聴くときもそうですけど、声の情報量ってそれほど大きいものですよね。

ReoNa:自分自身も洋楽を聴いていて「言葉の意味は分からないけど、なんか好き」ということがあって。この曲にもそれがあったらいいなって。

――日本語が分からないという方には、ぜひ「Lost」を聴いてもらいたいですね。

ReoNa:そうですね。全編英語詞なので、いろいろな方に聴いていただけたらうれしいなと。

シエルの孤独や葛藤、悩みを想像しながら……

――他の楽曲についても詳しくおうかがいさせてください。「ジュブナイル」のサウンドは、「生命線」の音色ともリンクするような感じがあって。

ReoNa:チェンバロの音色ですよね。それはすごく感じています。「ジュブナイル」は今作の中でいちばんゴシカルなサウンドになっていて。この曲も定石通り進まず、毛蟹さん節が炸裂しています。

――「ジュブナイル」ってライトノベルという意味があるんですよね。いつもとはまた違った雰囲気のタイトルだなって。

ReoNa:そうです。あと、少年・少女期という意味があって。いろいろな受け取り方ができる言葉だなと、意味を調べていて思っていました。メタ的な視点というか……想像ですけど、毛蟹さんにとっての「ジュブナイル」が『月姫』だったのかなって。誰かにとっての少年、少女期を彩ってきた神話というか。『月姫』の作品の中で描かれている彼らにとっても、心の柔らかいうちにできた出来事だということもありますし。過ぎてみると、学生時代って……あの当時に戻れば辛いことはいっぱいあっても、戻りたいと思える場所のひとつなのかなと思っていて。そういう場所への憧憬、感情も含まれているのかなと思いました。

――冒頭の<息を吸って吐いたら苦しいこと 傷が一つ増える度生きていること>という言葉が、すごくReoNaさんらしいなと。

ReoNa:自分を重ねるのにまったく苦がなくて。すごくスムーズに自分の感情にできました。想像を巡らせながら「ここはこういう感情で良いですか?」と毛蟹さんに確認しながら歌っていったんです。作品の登場人物それぞれに違う種類の孤独や葛藤、悩みがあるんだろうなと感じていて。そんな物語の幕開けとして、皆さんにどう感じていただけるのか、すごくドキドキしています。

――ゲームの映像中で流れるシーンを早く見たいです。

ReoNa:私もです。

(C)TYPE-MOON
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