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「サンフェス2021」『ブレンパワード』上映記念舞台挨拶レポ

「サンライズフェスティバル2021」富野由悠季監督が上映記念舞台挨拶でリハビリ作となる『ブレンパワード』制作のきっかけを語った!|そして作り直したい、「長生きするぞ!」とファンの前で決意表明!!

アニメーション制作会社サンライズと映画館がタッグを組み、2010年から毎年開催されてきた「サンライズフェスティバル」。同イベントが今年(2021年)は10月1日(金)から10月31日(日)までの期間、「サンライズフェスティバル2021 REGENERATION(リ・ジェネレーション)」として開催中!

本稿では10月15日(金)に「サンライズフェスティバル2021」のプログラムのひとつとして行われた、アニメ『ブレンパワード』の上映記念舞台挨拶の模様をレポートします。

登壇者は富野由悠季監督、宇津宮比瑪役の村田秋乃さん、「富野由悠季の世界」展企画チーム・ブレンパワード担当の若松基さんの3名。上映されたエピソードを掘り下げたほか、20年以上経った今だからこその話など、興味深いトークが尽きない時間となりました!


 

富野監督はキャスティングについて、「上手くいったという記憶しかない」

当日のMCを務めたサンライズの河口佳高さんが登場し、富野監督、村田さん、若松さんを呼び込むと、会場から大きな拍手で迎え入れられました。

この日上映された4つのエピソード(第9話「ジョナサンの刃」、第21話「幻視錯綜」、第25話「オルファンのためらい」、第26話「飛翔」)は村田さんと若松さんのセレクトということで、まずはおふたりに選んだ理由を伺っていくことに。

村田さんは第9話「ジョナサンの刃」を選択したそうですが、こちらはタイトル通り本作を語るうえで外せないキャラクターである、ジョナサン・グレーン(CV:青羽剛)の活躍が記憶に残るエピソード。

「8歳と9歳と10歳の時と! 12歳と13歳の時も僕はずっと……待ってた!」「クリスマスプレゼントだろ!」というジョナサンのセリフが、彼の母であるアノーア・マコーミック(CV:磯辺万沙子)にぶつけられたのもこの話なので、本作を知らずとも知っている方は多いかもしれません。

村田さんはジョナサンの心の闇や傷の部分となる、母・アノーアへの想い……幼いクマゾー(CV:渡辺久美子)ですら見抜けたこの点が心に刺さったのだとか。「放送されていた当時の自分なら違う話を選んでいたけれど、母親になった今の自分の目線だとジョナサンが可愛くてしかたない」とも語っていました。

ここで河口さんから当時のアフレコについての話が出ると、この作品で村田さんがアニメのアフレコに初めて挑戦したことや、本作のキャスティングについて富野監督に語って貰う一幕に。

富野監督はキャスティングについて、「上手く行ったなという記憶しかありません」と一言。その基準については声優としてキャリアを積んだ人ではなく、本作ではあえてそういう所で慣れていない人を求めていた旨を暴露。村田さんについても、そういう仕事に染まっていない事がわかったからこそ採用したとのこと。

この基準については全てに当てはまっているそうなのですが、声優として仕事をしている方たちを批判する気持ちはないとも語った富野監督。「実を言うと彼らは徹底的にプロなので、何をやっていただいても当たりはずれがない」とし、本作でも何人かは抑えとして来てもらっていたと声優さんたちの実力も賞賛されていました。

続いて若松さんによるセレクトの第21話「幻視錯綜」について。若松さんは本作が富野監督作品で一番エモーショナルな方向に振り切れていると考えており、だからこそ本作が好きなので「富野由悠季の世界」展で自ら担当に志願したのだとか。

富野監督の作品はキャラクターたちそれぞれの立場によって正義や真実の見え方が変わってくる不確かな部分が軸になっているとも評すると、それが端的に表されているのがこのエピソードだと語っていました。


 

『ブレンパワード』は当時の監督が持つ能力を限界まで使った作品

ここで富野監督も最後まで今回の上映を鑑賞していたと明かされたのですが、実はこのイベントの2日前にもセレクトされたエピソードと第1話を鑑賞していたとのこと。ですがその際に、「こんなにもわからない話を作った事にゾッとした、理解できなかった」と考えてしまったそうなのです。

そこから本作のムック本を斜め読みしたそうですが、理解できなかったと富野監督。なんと有志が編集しているWEB上のアニメ百科辞典的なサイト(※wiki)で本作の記事を読み、ファンの目線で本作のどこが褒められているのか理解できた部分があったと話しました。

その記事の執筆者には感謝していたほか、ここで“白富野”という固有名詞を初めて知ったという衝撃の事実が判明する一幕も。

富野監督はなぜ本作を作ったかも少しだけ思い出せたようで、「この作品に表れているセリフや物語の構造、その全てを当時の自分が持つ能力の限界値で作った」と、自分のすべてを吐き出さざるを得ないギリギリの状況で制作し、当時のことは殆ど覚えていない旨を表明。

本作が素晴らしい作品だという実感は得られたようでしたが、先述したゾッとした、理解できなかった事もあってなのか、「作りが悪すぎる。褒められない部分があるために、ここにいらっしゃるみなさん(※本作のファン)以外の方に観て欲しいとは言い難い」と語っていました。

その後は若松さん選出による25話「オルファンのためらい」について話していき、最終回である26話「飛翔」は村田さんと若松さんのおふたりが選んでいたことが明らかに。村田さんは子供たちがブレンを撫でているシーンやブレンやみんなが手を繋ぐシーン、若松さんはオルファンが最後にどうなったか明確にしないまま物語の幕を閉じたことが印象深かった模様。

おふたりのコメントを受け富野監督にも最終回ついてお話を伺ったのですが、やはり徹底的に覚えていないとのこと。覚えているのはオープニングとエンディングが上手く行ったことだけと話してくれたのですが、見返した際には、オープニングならイメージした作画と違う、エンディングなら写真家・荒木経惟氏の写真をもっと綺麗に使えたはずだと、少しだけ不満が生まれていたようでした。

今回上映されたエピソードを掘り下げ終わったところで、河口さんが本作は“白富野のはじまりの作品”であり、初めての色々な試みがあったと話しました。ぎこちないところはありつつも、感情や心が掴まれるところがあるとの話だったのですが、これを「それはあまりない」「DVDを見ていてもあるとは思えない」とバッサリ否定したのがまさかの富野監督自身。

富野監督は20年以上経ってキチンと覚えているキャラクター関係がなく、そこには作劇的な不備がおそらくあると考え反省しているとそうなのですが、エンディング曲が始まった瞬間に凄い作品だったと考えてしまうところがある模様。


 

Blu-ray BOXの発売と、今後の希望についても……!?

この理由については上手く説明できないと話していましたが、若松さんが「完成度という意味ではもっと高い作品があるかもしれないけれど、富野監督の人生の中でもこの一瞬にしか生み出すことができなかった一期一会な感じ」があるとフォロー。ジタバタしながら何としても生きようとしている、そういう部分が作者自身からも感じられたとの話が飛び出しました。

これで少し腑に落ちたところがあったようで、富野監督は再び「思い出したことがあります」と、あるエピソードを語りだします。

本作は富野監督にとってリハビリの作品だそうですが、その1年前くらいから鬱病になってしまい家から出られなくなってしまったそうなのです。そんな状況から脱出する事を考えた際に、「元気な時には働かない勘みたいなものが、ビリビリ働いていた」のだとか。

特に印象的だったのが、ここで出てきた「アスファルトの道路の上は歩けないけれども、田んぼや畑の畦道なら気持ちよく歩ける」という言葉。この感覚の違いを理解したことで、鬱病から脱出できたというのです。

そうやって人間をはじめとした生き物の感覚について考え続けた経験が、本作に反映されているとも。そして命は無機的なものではなく有機的なものに宿り、連続し何億年も連なっていく。作中で出てくるオーガニック・エナジーとは命の力なのだとも語っていました。

まだまだこの話を続けたい雰囲気はあったのですが、時間が迫っていたため告知コーナーへ移り、本作のBlu-ray BOXの発売が発表されました。詳細は下記の記事を参照してください。村田さんがこのPVで久しぶりに比瑪を演じたそうなのでその点にも注目です。
 

詳細は下記の記事にて

SFアニメ『ブレンパワード』待望のBD BOXが3/29発売
 

 
この他には「富野由悠季の世界」のBlu-ray&DVDの情報もありました。なんと富山会場で行われた富野監督と『竜とそばかすの姫』などで知られる細田守監督との対談が収録されるとのこと!

富野監督は細田監督は年寄りをいたわってくれる、優しいと評しており、こちらの内容も気になってしまいます。

そろそろイベント終了の時間ということで、若松さんから一言ずつ挨拶をしていくことに。

若松さんは本作には誕生日というモチーフがよく出てきており、生まれたきたことへの祝福がテーマにあると話しました。“生きる”ということは哲学、宗教、芸術の分野でも扱われるテーマであり、それが反映されている富野監督の作品を美術館で扱えた喜びを露わに。

村田さんは23年前の放送当時から考えると、日本だけでなく世界で色々な出来事があったとコメント。本作を今見返すことでまた違った視点で楽しめると考えているようで、Blu-rayの発売をファンのみなさんと同じように楽しみにしているようでした。

そして最後に富野監督が、Blu-rayで本作を鑑賞できることは感謝していると語りました。しかし必ずしも作りがいいとは言えないため、これが永久保存版になることに悔しさがあるのだとか。そして、現在再度制作に臨んでいる劇場版の『Gのレコンギスタ』を引き合いに出しつつ、「『ブレン』作り直したい……(笑)」との言葉がポロっと飛び出しました!

すると会場から盛大な拍手が巻き起こり、河口さんが「会社に戻って検討しないといけない」「『Gレコ』が終わった先の仕事になる」と発言。富野監督が「絶対長生きするぞ!」と決意表明したところで、本イベントは幕に!!

根強いファンが支持し続けている本作。遂にBlu-ray化も決まったということで、既に心を掴まれている方だけでなく、新たなファンも獲得していくはず。最後に富野監督から飛び出した言葉が実現することを祈りつつ、これからも本作を語り継いでいきましょう!


 

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関連リンク

『ブレンパワード』公式サイト
「サンライズフェスティバル2021」公式サイト
「サンライズフェスティバル」公式Twitter

(C)SUNRISE
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