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TVアニメ『平家物語』と羊文学「光るとき」、物語と深くリンクしたフレーズが心に響く

TVアニメ『平家物語』と羊文学「光るとき」、物語と深くリンクしたフレーズが心に響く|最終回のその後も誰かが君と生きた記憶を語り継ぐでしょう――

フジテレビ「+Ultra」ほかにて放送中のTVアニメ『平家物語』。平家の人々を見続けてきた主人公のびわが、琵琶を奏でながら何を語り継いでいくのか。そして時代が過ぎていっても容姿が変わらないびわの未来がどうなっていくのか……第四話を終えた時点で気になる点がいくつもある本作の魅力に迫りつつ、アニメに寄り添って作られたOPテーマ「光るとき」について考えていきたい。

TVアニメ『平家物語』の魅力――山田尚子監督が描く“日常”

現在放送されているTVアニメ『平家物語』。原作は、誰もが知っている約800年前に書かれた鎌倉時代の軍記物『平家物語』で、平安時代末期に栄華を誇った武士の一族である平家が、源氏に滅ぼされていくまでが描かれている。

祗園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり
娑羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす

あまりにも有名なこの書き出しのフレーズは、栄えたものもいつかは衰えるというという、この世の道理を表している。

アニメの指揮を執るのは『けいおん!』『たまこまーけっと!』シリーズ、そして『映画 聲の形』『リズと青い鳥』といった長編アニメ映画を手掛けてきた山田尚子監督。『映画 聲の形』で第40回日本アカデミー賞優秀アニメーション作品賞を受賞するなど、日本を代表するアニメーション監督のひとりである。今作は長く在籍していた京都アニメーションを離れてから初となる監督作品で、久々のTVアニメシリーズとなる。アニメーション制作会社は、アニメの新たな可能性や価値観を模索し、前衛的な作品を世に送り続けているサイエンスSARU。TVアニメ『映像研には手を出すな!』のヒットも記憶に新しい。

『平家物語』は琵琶を弾きながら物語を語っていく琵琶法師によって広まったとされているのだが、アニメでは、びわ(CV.悠木碧)という語り部を主人公にし、びわが見た平家の歴史が綴られていく。しかもびわは、右目で未来(さき)を見ることができるという力を持っているため、アニメの序盤からこの物語の未来、つまり結末を感じさせるシーンが何度となく挟まれている。これはあらかじめ最後が決まっていることを逆手に取った演出とも言えるだろう。

その脚本を手掛けているのは、山田監督のすべての作品でタッグを組んでいる吉田玲子だ。アニメの場合尺が決まっているので、どうしても取捨選択をしていかなければいけないのだが、それがとても大胆で面白い。歴史的な部分が説明過多になっておらず、ナレーションもないので、理解の部分ではかなり視聴者に委ねているところがあると思うが、それによって物語への没入感が生まれている。それは間違いなくこの作品の魅力のひとつになっているだろう。ちなみにキャラクターの機微が丁寧に描かれているので、歴史を知っているとより楽しめるというのも確かである。

これは山田監督作品のすべてに通じることなのかもしれないが、アニメ『平家物語』を見たときにまず感じたのが、監督の慈しみにも近い心だ。あのおごり高ぶった者の象徴のような平清盛ですら、どこかかわいさ感じてしまうほど、キャラクターへの深い愛情を感じた。

そしてそれがどこから感じられるものなのかを考えていくと、画面から滲み出てくる生活感にあるように思う。食事や遊び、この時代からは想像もできないはるか昔の平安時代。価値観が今とはまったく違うところも描きつつ、そんな時代でもひとりひとりに生活があり、そこで一生懸命生きていたのだというのがしっかりと描かれていて、とても愛おしく、そして美しく見えた。草木や花を手前に置いて人々の生活を覗いているような視点も印象的で、カメラがそこに置いてあるというより人の目を通して見ているような温かい感触があった。

もちろん、武士でありながら太政大臣まで上り詰めた平清盛の周りで起こっている出来事なので、庶民の生活が描かれているわけではないのだが、それでもその時代にタイムスリップして、自分がそこに居るような、そのくらい平安時代の日常が身近に感じられるような画作りになっていた。だからこそキャラクターが瑞々しく映ったし、そこに込められた監督の愛情もしっかり受け取れたように思う。

(C)「平家物語」製作委員会
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