平家の傲慢すぎるがゆえに乱立する滅亡フラグは回避できるのか……？滅亡という結末を知っている我々視聴者という新たな視点が生まれた画期的なアニメ『平家物語』の魅力を考えてみた【作品レビュー】

それでも死んでほしくないキャラだっている！

平家は何も清盛のような人だけではありません。滅亡のストーリーを追う中で、滅んで欲しくない！と思わせるキャラクターも登場します。

代表的なのは、清盛の長男・重盛（CV.櫻井孝宏）とその異母妹・徳子（CV.早見沙織）です。

重盛は、本当に清盛の息子か！？と思うほど生真面目な性格で人格者として広く尊敬を集めている人物。父である清盛からもその手腕や人柄を買われて平家頭領の座を譲り受け、後白河法皇からも認められ重用されています。
　

唯一びわから“平家滅亡”を聞いているため、それを阻止しようと驕った父の振る舞いの尻拭いに奔走するという気苦労の多いポジション。

常に後白河法皇と清盛の板挟みとなる重盛は、櫻井さんが演じる声からも真面目さがひしひしと伝わってきて思わず同情してしまいます。しかも、私たちは彼の頑張りが報われないことを知っているのです。胸が痛んで仕方ありません。

そして、重盛の異母妹・徳子は、快活で聡明な女性で、重盛の子供たちに慕われており、びわも彼女にとても懐いています。しかし、びわは大好きな彼女がうず潮に飲まれる未来を見てしまうのです。
　

徳子は父・清盛によって、後白河法皇の息子・高倉天皇と政略結婚させられることに。彼女はその聡明さゆえに、父が一族の女性を平家繁栄のための道具としか見ていないことを悟っており、そのことを悲しげにびわに話します。

世が世なら、生まれたのが現代だったなら、もっと活躍できたのでは……？と思うくらい素敵な女性である徳子。幸せになってほしいと願わずにはいられませんが、天皇家に嫁いだ彼女もまた、平家滅亡からは逃れられないのでしょう。びわの未来視ではなく、リアルに彼女が海に沈むシーンを見る日が恐ろしいです。
　
　

独特のタッチと演出で描かれる滅亡の物語

平家が滅亡の一途をたどる儚い物語は、まるで色鉛筆で描いたような独特のタッチで描かれています。特に、日本特有の四季、そして夜のシーンがものすごく美しい！

びわの上から舞い散る桜、夏の夜に舞う蛍、橙色や黄色のグラデーションが美しい紅葉、一面の雪景色に映える椿の桃色……日本に四季があってよかったと心から思わされました。
　

夜のシーンでは月明かり、あるいは行灯や灯篭などロウソクの火を元にした光源だけを描いていて、現代のような煌々とした人工的な光はどこにもありません。形のない光が忠実に描かれているため、当時の世界観にグッと引き込まれます。
　

さらに、琵琶の音とともに史実が語られるシーンは、琵琶法師によって語り継がれてきた『平家物語』ならではの演出。本格的な琵琶の音と、びわ役の悠木碧さんによる語りはまるで本当に琵琶法師から『平家物語』を語り聞かされているよう。
　

　
びわの喋りの声色と語りの声色の住み分けもさすがお見事。ファン必聴です！
　
　

内容が難しいなと感じたら、公式Twitterを見よ！

このように魅力たっぷりの作品なのですが、古典ということもあり当時の用語が使われることも多く、難しいと感じることも。そんなときはぜひ公式Twitterを見てみてください。用語や出来事が解説されているので、内容の理解が深まり物語がさらに面白くなります。
　

📖【殿下乗合事件（てんかののりあいじけん）】

鷹狩の帰途に藤原基房の一行と鉢合わせた資盛が、下車の礼を欠いたという理由で基房の従者により馬から引きずり降ろされ、過度の辱めを受けました。これに清盛は参内する基房を襲撃し報復。「平家悪行のはじめ」とされています。#平家物語用語集 pic.twitter.com/n52ElWxEIl
— 【公式】TVアニメ｢平家物語」 (@heike_anime) January 18, 2022