声優
家族のこと|山根綺のほんとのところ。#7

家族のこと|山根綺のほんとのところ。#7

夢を見ました。

家族で買い物に来ていて、母と二人で100円ショップのようなところを回っている夢。

母は私と久々に会って話せたからか、

いつもよりどこか楽しそうにしていました。

お会計の時、レジの店員さんに

「ネイル、可愛いですね」と褒められると

「ありがとうございます」と嬉しそうに返し、

私がしばらく前に塗ってあげたであろう華やかなマニキュアを大切に大切に撫でていました。

よく見ると右手はもうほとんど剥がれてしまっていて

一見綺麗そうに見えた左手も

少し触ったら取れてしまうくらい、ギリギリで付いていました。

もう取っちゃえばいいのに、そんなのいつでも塗ってあげるよと言うと、

「ううん、これがいいの」って言うんです。

お店を出ると、楽しそうに歩きながらたくさん質問をしてくれました。

「昨日は何のお仕事だったの?」

「仕事は忙しいの?」

「たまには、帰ってね」

母の、寂しさを精一杯隠した笑顔を見た瞬間、目が覚めました。

泣きながら飛び起きるなんてもう何年も無かったので、きっと何かのタイミングなのだと思います。

今回は、私の家族について。


私の母は医療関係者です。

大学時代に医学部を卒業した母は、現実主義でとても理性的。頭が良く、数学や科学、大人になったらほとんどの人が忘れてしまうような勉強もお手の物です。

そして昔から子供達に弱いところを見せず弱音も吐かない、強く、凛々しい人でした。

今でこそ、なんでも話せるほど仲が良く、この仕事のことを一番に応援してくれているのですが

3年くらい前までは、他愛もない会話をしたことはほとんどありませんでした。

勉強や成績に厳しく、大学へ行って欲しかった母。

ましてや芸能界なんて大反対でした。

18歳の時、その意向を押し切り

私は初めて真逆の道を歩き始めました。

母を悲しませてしまった気持ちと

学費を援助してもらった申し訳なさで

顔を合わせるのが気まずくなった私は、

次第に家にも帰らなくなり

そのまま逃げるように家を出ました。

東京で1人で立てるようにならなければ、

合わせる顔が無い。

母との距離もどんどん開いていきました。

けれど、必死だった私は忘れていたのです。

どんなに忙しくても、授業参観は毎回必ず来てくれたこと

運動会のお弁当は、姉と私の好きなものばかりが入っていたこと

軽音楽部のライブ、専門学校の卒業公演を見に来てくれたこと

私がちゃんと食べているのか、いつも心配して連絡してくれたこと。

たくさん遠回りしてしまったけれど、

小さな身体で2人の子供を立派に育てようと、一生懸命だったこと

厳しさの中にたくさんの愛と優しさがあったことを

こんなに大人になってから、気付きました。


父は公務員で、趣味はゴルフ。なかなかの腕前なんですよ。

昔から地域の大会に行ってはよく賞品を持って帰ってきました。

今でも、実家にいる時は打ちっぱなしの練習場に誘ってくれたり

「今日休み?温泉行くぞ!」と必ず声を掛けてくれるような、あたたかい父です。

昔からあまり悩みを打ち明けたことが無かったのですが、

専門学校一年生の終わり際、映像のお芝居へ進みたい気持ちが生まれ

進級するかどうかを悩んだ結果、初めて父に相談をしました。

仕事から帰った父は私をリビングへ呼び出すと

目の前にドカッと現金を置き

「ここに120万ある。パパさんとママさんが毎日一生懸命働いて稼いだお金。これをお前にやるから、自分で使い道を考えなさい。ここまでは支援してやる。もし学校に通うなら銀行まで車で送るから、お前が自分で振り込め。」と言いました。

覚悟を決めた私は、一年分の学費120万円を

自分の手で振り込みました。

手に持った時の、あの質量だけではないずんとした重みは、きっと一生忘れないと思います。

ある日には、私が朝早くに駅まで車で送ってもらうのを申し訳なさそうにしていると

「見返りを求めないのが愛だよ。誰かに見返りを求めているうちは、愛じゃない。パパさんは、お姉ちゃんにもチビたん(と呼ばれています)にも、何も返してほしいと思わない。それが愛情だよ。」

そんなかっこいい言葉を残して、東京へ旅立つ私を見送ってくれました。


姉は年齢が一つ上で、

私がこの世界に踏み込むきっかけをくれた人です。

アニメやゲーム、声優さんが大好きで、私がアニメを観るようになったのも姉の影響でした。

姉は私のことが大好きなのですが(言い方)

昔は私の方が、姉にずっとくっ付いて離れない、カルガモのような子供でした。

その割にはお中元の謎のリボンを取りあって大喧嘩するくらい毎日喧嘩が絶えませんでしたが(本当に謎)

今では、お互いが辛い時に支え合える

良い信頼関係が作られてきたような気がします。

そして姉は、昔から家族の繋がりをとても大切にしていました。

家族が離れている時、4人でビデオ通話をしようと提案してくれたり

VRのゲームを買って、皆でやろうと言ってくれたり

誰よりも家族のLINEグループを動かしてくれたり。

家族と距離や壁を作っていた私を繋ぎ止めてくれたのは、

間違いなく姉だったと思います。


私がスターになれなくても

何にも持っていなくても

ただ幸せに生きていてくれたら、それで良い。

それだけが、家族の願いでした。

離れていても、離れているからこそ

分かったことがたくさんありました。

これからちゃんと恩返しできたらいいな。

たまには、実家に帰ることにしよう。

仕事で塗れないマニキュアの代わりに

母の大好きな、バラの花束を持って。

>>山根綺 公式Twitter
>>山根綺のゆるっと綺譚

企画協力:青二プロダクション
編集担当:川野優希

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