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“異世界に行かなかったおじさん” が語る、セガとの出会いと『異世界おじさん』の魅力

TVアニメ『異世界おじさん』セガ・奥成洋輔さんインタビュー|“異世界に行かなかったおじさん” が語る、セガとの出会いと『異世界おじさん』の魅力

北米で任天堂と覇を争った時代 当時のセガのカッコ良さとは

――マークⅢ登場前後で、SEGAのアーケードゲームも大きく躍進しますよね。

そうですね。マークⅢ発売と同じ、1985年には、セガのアーケードゲームが8ビットから16ビットになっていくんです。この時、セガは劇的な変化の時を迎えます。

ゲームセンターでもあまりイケてなかったセガのゲームが、突然、高性能、ハイエンドマシンのゲーム機みたいになったんです(笑)。

今までは、まったく見向きもしていなかったセガというゲーム会社が、突然最先端なメーカーとして飛躍したんです。これまで有名だったタイトー、ナムコ、コナミといったメーカーと並ぶ会社みたいに注目されていきました。

その影響もあってか、「Beep」でもマークⅢ推しが強まるんです。「マークⅢの『ファンタジーゾーン』(※24)とか、『北斗の拳』(※25)といったゲームが面白いよ!」という記事が盛んに載っていて、読者の子どもたちがファミコンに代わるもう一台のゲーム機として、マークⅢを買い求めていく、という形になるんですね。

「Beep」はマークⅢをずっと推したあと、1988年に出る「メガドライブ」(※26)を推すようになるのですが、僕も「Beep」に言われるまま、「メガドライブ」を予約して買いました(笑)。

――「Beep」に推されて、二度目のSEGAハードの購入ですね(笑)。当時は、ファミコン全盛期でしたが、当時のSEGAのカッコよさはどういうところにあったと思いますか?

奥成:アーケードの話ですが、1980年代前半のセガは凝ったことはやっていたものの、ナムコほど洗練されていない印象だったんです。そんな中で1985年に『ハングオン』(※27)という、バイクにまたがって操作するという巨大なバイク型ゲームマシンが登場します。みんなが「何だこれは!?」と驚きました。BGMもシンセサイザーと同じような曲が鳴っているし、グラフィックも総天然色のような鮮やかさで綺麗だ、と話題にはなるんですが、なにしろバイクにまたがらないと遊べないという部分もあって、恐る恐るだったんです。

その半年後には『スペースハリアー』(※28)というゲームが出ました。コックピットのようなシートに乗り込んで遊ぶゲームで、ゲーム機が画面と連動して遊園地のアトラクションのように動くんです。この“シートが可動するゲーム機”というところがもうすでにすごかったんですが、映っているゲームもスゴかった。

初めて世の中で認知される3Dシューティングとして、「スゴいグラフィック」と「スゴい音楽」と「スゴいスピード」が揃っていて、これをきっかけに没入感のあるゲームとしての、体感ゲーム(※29)が根付いたんだと思います。

また、『スペースハリアー』の登場で、世の中のゲームファンを魅了し、SEGAファンにさせたのかなという気がします。


※24:ファンタジーゾーン
アーケード版が、1986年に登場。パステルカラーのポップな画面構成、お金を貯め好きな武器を購入するパワーアップシステム、個性的で攻略しがいのある各ステージのボスなど、「イケてるセガのゲーム」の先駆け的作品。マークⅢ版では、ステージ4と6のボスが変更されている。

※25:北斗の拳
武論尊(原作)、原哲夫(作画)による漫画を原作とし、1986年に発売されたアクションゲーム。作ったのは、ソニックの生みの親である中裕司氏。ファミコンでも別の内容の『北斗の拳』のゲームが発売され、当時のセガファンは「やっぱりマークⅢの方が凄い!」と気持ちを高ぶらせた。

※26:メガドライブ
1988年発売。家庭用ゲーム機として他社に先駆けて16ビットCPUを搭載し、一時期は「ジェネシス」の名前で北米シェアでナンバー1にもなった。ソニックを生んだハードでもあり、世界中にセガファンを生んだ名機種。おじさんの心のハードのひとつ。

※27:ハングオン
1985年に稼働したアーケードゲーム。赤い大きなバイク型の筐体にまたがり、左右に傾けながらコーナーを曲がっていくバイクレースゲーム。通常のライドオンタイプだけでなく、ハンドルのみを操作するシットダウンタイプの筐体も存在した。

※28:スペースハリアー
1985年に稼動したアーケードゲームで、3Dシューティングゲームの元祖ともいえる存在。プレイヤーは超能力戦士「ハリアー」となって、ドラゴンランドに現れた魔物たちと戦いを繰り広げる。コックピット型の大型筐体がプレイヤーの操作によって稼働するシステムは人々に衝撃を与えた。

※29:体感ゲーム
3D表現と体への刺激や反応をミックスさせたアーケードゲーム。『ハングオン』『スペースハリアー』『アウトラン』『アフターバーナー』などのセガのゲームのこと。1980年にセガが大きく飛躍したきっかけの一つ。


おじさんの初恋の裏にある、日本と北米のゲーム機戦争

――奥成さんの世代だと、ちょうど先に聞いたマークⅢやアーケードの『スペースハリアー』がセガ好きになるきっかけだと思いますが、奥成さんと10歳ほど年齢差のある、おじさんの場合は、SEGAのどんなカッコ良さに魅了されたと思いますか。

奥成:セガが俄然カッコよくなったのは、『スペースハリアー』が登場した1985年頃のことだと思うのですが、(『異世界おじさん』の)おじさんはそのときまだ2歳なので分からないですよね。

「メガドライブ」が出たときも、まだ5歳なので、僕が感じた魅力みたいなのは、知らなかったかなと思います。おじさんの初恋が、『ソニック・ザ・ヘッジホッグ2』(※30)の頃で、自我が目覚めたというか、好き嫌いがはっきりしてくる歳な気がしますね。とすると、「メガドライブ」と「スーパーファミコン」のライバル関係のなかで、セガに魅力を感じたのではと思います。

――1話で、たかふみと出会って早々、「そんなことより、ゲームハード戦争はどうなった?」と言ってますし、おじさんの人間性を語る上で、SEGAとライバルゲーム機の関係は、重要なポイントそうですね。「メガドライブ」と「スーパーファミコン」のライバル関係について、奥成さん教えてもらえますか。

奥成:「メガドライブ」の発売された1988年の段階では、任天堂はファミコンが現役で、「スーパーファミコン」(※31)が登場するのは1990年です。「スーパーファミコン」では、『スーパーマリオワールド』(※32)が同時に発売されていて話題になりましたね。また、発売の1年後に『ファイナルファンタジーIV』(以下、FFIV)が出て、続く形で『ドラゴンクエスト』(以下、DQ)などのファミコンの名作RPGのシリーズが「スーパーファミコン」へ移行していき、ファミコン時代に『DQ』や『FF』で盛り上がったRPG熱が冷めず引き継がれた感じです。

もちろん、「メガドライブ」もRPGのヒット作を出そうと努力はするんですが、出したゲームが、シミュレーションRPGだったり、アクションRPGだったりとアクティブな方向のゲームが中心になってしまい、“誰にでも遊べる日本向けのRPG”というのは、この時代弱かったのは確かです。

1990年当時、日本の「メガドライブ」は200万台に届いていないくらいだったと思いますが、『FFⅣ』の登場する1年後には、「スーパーファミコン」が、「メガドライブ」を抜き去っていきました。

一応SEGAも、RPGを準備していて、1991年は『シャイニング&ザ・ダクネス』(※33)というRPGを出しています。こちらは、『DQ』シリーズを担当していたメインプログラマーとアシスタントプロデューサーが独立して「メガドライブ」のRPGを作ったんです。なので、「SEGAもRPGを力を入れてやっていくよ」という意識は一応あり、実際、『シャイニング&ザ・ダクネス』も「メガドライブ」で初めてお店の前に行列ができるということを経験しましたが、ハードのシェアの問題もあって、なかなか浸透しなかったところはありますね。

――ソニックは、この後に登場しますよね。

奥成:そうですね。「スーパーファミコン」が、1991年に北米で発売されますが、「メガドライブ」は、先行して1989年には北米で発売しています。

そんな状況の中で、「スーパーファミコンに対抗するために、メガドライブでも面白く見えるゲームが必要」ということになりました。分かりやすく言うと、『スーパーマリオ』に対抗するゲームが必要だったんです。そこで開発されるのが、『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』(※34)なんです。

北米での「スーパーファミコン」発売の1ヵ月前に『ソニック』を出して、「『スーパーマリオワールド』と『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』どっちが面白いんだ?」といったらスピード感のあるソニックだろう!みたいな比較CMも打って、本体に付けて値段も下げて、と大々的なプロモーションをしたんです。その結果、これが全部成功して北米では1991年の年末に「メガドライブ」が欠品するほどの勢いで売れました。

バラエティー番組の「しくじり先生」でも話題になりましたが、年末商戦に「メガドライブ」が欠品して、代わりに「スーパーファミコン」が売れたら大変なので、セガは日本の工場で作った「メガドライブ」を空輸して「作るだけ作って売るだけ売る」ということをやるんです。空輸するので多分利益はまったく出ていないんですが(笑)。

その代わりシェアは取れるので、北米の「スーパーファミコン」のデビューの出鼻をくじくような形で、ほぼ互角の対決をすることができ、年末の時点でのアメリカでのシェアはほぼ互角か、「メガドライブ」がちょっと上くらいだったと思います。

その翌年に『ソニック・ザ・ヘッジホッグ2』がアメリカで発売され、アメリカでのソニックの人気が完璧なものになります。この北米のメガドライブ人気は、2年くらい続き、「メガドライブ」が「スーパーファミコン」を抑えて、アメリカNO.1ハードになったんです。

当時小学生のおじさんが『ソニック・ザ・ヘッジホッグ2』に出会ったのもこの頃ですね。この辺のゲームの歴史の話を白夜書房のサイトで「SEGAの名機 メガドライブの軌跡(https://www.mirai-idea.jp/megadrive)」として連載しているのでぜひ読んでみてください(笑)。


※30:ソニック・ザ・ヘッジホッグ2
1991年に発売した『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』シリーズの第2弾として翌年(1992年)に発売されたアクションゲーム。おじさん(想定9歳)の初恋の相手「テイルス」は、この『ソニック2』で、プレイアブルキャラクターとして初登場。

※31:スーパーファミコン
1990年に発売した任天堂の家庭用ゲーム機。『スーパーマリオワールド』『ゼルダの伝説 神々のトライフォース』『ロックマン X』『ファイナルファンタジーVI』など、数多くの名作が登場した

※32:スーパーマリオワールド
1990年発売のアクションゲーム。恐竜ランドを舞台に、クッパに捕まったピーチ姫を救出するため、マリオとルイージが冒険をくり広げる。後にシリーズおなじみとなるキャラクター・ヨッシーの初登場作品。

※33:シャイニング&ザ・ダクネス
1991年発売の3DダンジョンRPG。ダンジョン、街、イベントなどがすべて奥行きのある描写になっているのが特徴。「シャイニングシリーズ」としてシリーズ化しており、多くの作品が生まれている。2010年代にはシリーズ作が何度かアニメ化もされた。

※34:ソニック・ザ・ヘッジホッグ
1991年に発売したアクションゲーム。音速で走ることができる青いハリネズミ・ソニックが主人公で、スピード感満点のアクションをボタン1つと移動だけのシンプルな操作で楽しめる。


(C)殆ど死んでいる・KADOKAWA刊/異世界おじさん製作委員会 (C)SEGA
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