
羽多野渉アーティストデビュー10周年記念スペシャル対談企画『羽多野くんと〇〇くん』 Part.1「羽多野くんと小野くん」前編|先輩から受け継がれていく技と魂__羽多野渉さん×小野大輔さんが出会いから思い出の作品、互いの楽曲まで語り合う
小野さんがうらやんだ羽多野さんの曲は「I’m a Voice Actor」
羽多野:まさに役者としての振舞ですよね。アーティスト然というより役者の考え方だから飛び込める。
小野:「熱烈ANSWER」でファンクをやって、「DELIGHT」でK-POP、次のElements Gardenの上松(範康)さんと菊田(大介)さんに作ってもらった「Lunar Maria」はまさにザ・Elements Gardenという曲調で。そうかと思えば、僕は二胡を入れた曲(「月夜の円舞曲」)も好きだし、音楽でやれることは全部やろうと思って。
羽多野:僕も二胡を入れた曲(「流転流浪」)があります。やっぱりお互いに似ているところがあるのかも? 外側からの影響や張っていたアンテナに引っかかってきた「こういうニュアンスのダンスサウンドいいな」とか「EDMいいな」とか。
小野:発想は、「演じたい」だよね。
羽多野:そうです。小野さんの曲を聴いていて「ズルい! これやりたかったやつだ」と思う時があります(笑)。
小野:いいでしょ?(笑) でもこっちだってあるよ。「I’m a Voice Actor」なんて、演じることが真ん中にある人しか歌えない曲で、曲の中で演じ分けしているところなんて、番レギ時代に培ってきたものでしょ。その部分の精度がライブのたびに上がっているから、聴いていても楽しいよ。
羽多野:2014年の神戸公演で初めて『おれパラ』に呼んでいただいた時はまだ僕がライブツアーをやる前でした。会場では「I’m a Voice Actor」を歌わせていただきましたが、リハーサルを見ていた先輩方から「その曲、おもしろいね。いい曲だね」と言っていただけたことがすごく嬉しかったんです。
番レギュをやってきたことでどんなキャラにもなれるけど、自分の音楽の芯をどこに置けばいいのか、わかっていなかった。「I’m a Voice Actor」を皆さんが客観的に見ていただいて、羽多野の音楽おもしろいねと言ってくださったことで、「これなんだ!」とつかめた気がして。すぐにダンサーさんに振り付けを作っていただいて、そこから「I’m a Voice Actor」を踊りながら歌うスタイルになりました。それからは「これが僕の音楽です」と名刺代わりにやらせていただくようになって、それは『おれパラ』の先輩方のおかげです。
小野:確かにあの曲を聴いたら羽多野くんがどんな音楽をやりたいのかわかるね。すごいね、音楽って。5分くらいで、その人のアイデンティティがわかっちゃうんだから。
羽多野:いろいろな声優アーティストがいる中で、自分の役者として生き様を歌うことで、泥臭く、自分が役者であることを、音楽でも表現できたらいいなと。
小野さんが役者としての自分を歌ったのが「canvus」
羽多野:あと当時、小野さんが「役者としての自分を歌にする。うらやましいな。僕もそういうのに挑戦してみたいな」とおっしゃっていて。
小野:それをやったのが「canvas」という曲で、(「I’m a Voice Actor」を作詞・作曲している)前山田健一さんに僕も頼んだ。
羽多野:そうだったんですね。でも同じ前山田さんでも全然違いますよね。僕はファミコンの音を使ったチップチューンと言われる曲だけど、「canvas」は特にラストフレーズでぐっとくるんですよね。「今じゃこのヘンテコな色 とても好きになれたよ」は全役者きっと涙すると思うし、どんなお仕事をされる方でも自己肯定感が上がると思います。
小野:僕らは作品やキャラに色をのせていく仕事だけど、何とかやってこれたかなとトツトツと歌っているんです。自分自身に色はないけど、みんなが色をくれたんだということが言いたくて。そもそも自分のことが好きじゃないし。アーティストとして一番の自分の名前をフロントマンとして出して音楽活動していくことが正直、苦手でした。
羽多野:それが不思議で。パブリックで見えている小野さんと、ご自身の内面とのギャップが。あんなに「大好き」と歌っているのに(笑)。
小野:「D・A・I・S・U・K・I 大輔」とみんなにも言わせていたのに(「だいすき」)。今回のアルバム『Sounds of Love』でも「だいすき2」となる「Self Satisfaction」という曲が収録されています。トッシー(豊永利行さん)作詞・作曲で。その曲でも同じことを歌っているけど、逆説なんだよね。自分が好きじゃないから、せめて歌の中では自分を肯定してもいいんじゃないという発想で作ったんだ。
羽多野:この作業って循環していて、小野さん自身以上に、周りが小野さんのことを大好きなんです。だからこういう曲を小野さんに歌ってほしいという曲ができると思うんです。それってすごい循環だなと。
小野:「TORUS!」
羽多野:うまく誘導してしまった(笑)。
【後編へつづく】









































































