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TVシリーズ『ベルセルク 黄金時代篇 MEMORIAL EDITION』重村建吾&佐野雄太インタビュー(後編)

ぎりぎり届けられた「蝕」。「TVで流して本当に大丈夫なのか?」│『ベルセルク 黄金時代篇 MEMORIAL EDITION』編集・重村建吾さん&TVシリーズ監督・佐野雄太さんインタビュー

映画三部作『ベルセルク 黄金時代篇』の公開から10年。TVシリーズ『ベルセルク 黄金時代篇 MEMORIAL EDITION』として、鷹の団の輝かしい時代が再び語られ、そして、その終焉がまた彼らを蹂躙する──。

原作は言わずとしれた三浦建太郎による同名コミック。2022年6月時点で全世界累計発行部数5,500万部(紙+電子)突破する、世界で愛され続けるダークファンタジーが、STUDIO4℃による鮮烈な映像表現でアニメーションとして描き出される。メモリアル・エディションでは映画版では描かれなかった「夢のかがり火」など原作珠玉の名シーンを追加。TV放送は最終回を迎え、現在は各動画配信プラットフォームにて好評配信中だ。

アニメイトタイムズでは、かつての制作秘話、新規シーンへのこだわりなど作品に込めた想いをスタッフ&キャストが語り明かす連載インタビューを実施。第14回は、メモリアル・エディションとしての再構築過程を支えた編集の重村建吾さんとTVシリーズ監督を担った佐野雄太さんの対談(後編)をお届けする。

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ベルセルク 黄金時代篇 MEMORIAL EDITION
己の剣だけを信じてきた。友も家族も帰る故郷もない──孤独な剣士ガッツは、百年戦争に揺れる地を傭兵として渡り歩いていた。身の丈を超える長大な剣を自在に操り、強大な敵をいとも簡単に倒すガッツ。そんな彼に目をつけたのが、傭兵集団“鷹の団”を率いるグリフィス。美しい姿からは想像もつかない統率力を持ち、大いなる野望を秘めたグリフィスは、自らの夢を叶えるためにガッツを決闘で制し、鷹の団に引き入れる。数々の激戦を共にくぐり抜けるうちに、信頼で結ばれていく仲間たち。なかでもグリフィスとガッツの絆は、今や特別なものとなっていた。やがて鷹の団はミッドランド王国の正規軍にのし上がるが、それはグリフィスの目指す頂点へのはじめの一歩にすぎなかった。一方ガッツは、グリフィスの「夢」に取り込まれ剣を振り回すだけの人生に疑問を抱き始める。だが、ガッツはまだ知らない。果てなき夢が二人に与えた、恐るべき宿命を──。作品名ベルセルク黄金時代篇MEMORIALEDITION放送形態TVアニメシリーズベルセルクスケジュール2022年10月1日(土)~2022年12月24日(土)TOKYOMXほか話数全13話キャストガッツ:岩永洋昭グリフィス:櫻井孝宏キャスカ:行成とあジュドー:梶裕貴リッケルト...

TVで流して本当に大丈夫なのか?

――映画三部作の制作時を振り返って。重村さんはプリプロダクションの段階から入り、コンテをもとにすでに編集を手がけられていたとのことですね。

重村:あがっていたコンテを確認して、そこから削ぎ落せるところを考えて、構成して。映像に入る前に紙媒体の段階でいろいろやっていた感じがあります。

――当初はまだ、三部作にするかどうか決まっていなかった時期もあったんですよね。

重村:そうなんですよ。最初は黄金時代篇を全部一本でやろうとしていたんです。

佐野:それがそのまま実現していたら、どうなっていたのかも興味ありますね。

重村:とにかくだいぶ絞らないとならなかったし、三部作になるって決まってからも、「夢のかがり火」あたりは入れられなくて、いずれにしてもかなり絞りました。大きなシーン以上に細かいところでの削ぎ落しが必要だったので、整合性をとりながら削っていくのが大変でしたね。10年以上前のことですが、いまだに克明に覚えています。

――映画では第三部の冒頭、TVシリーズとしては第9話の冒頭にあたるグリフィスの回想というか憧憬が描かれるシーンは、重村さんの提案で生まれたとか。

重村:はい。1本の映画として考えたときに、欲しい流れでありました。当たり前ですが窪岡(俊之)監督や三浦(建太郎)先生とたくさんやりとりを重ねて、考えていきました。黄金時代篇の後半は、衝撃的な展開が続くのですが、軸にあるのは人間ドラマなので、その機微を大事にしたかったのです。

――対談前編でもいろいろお話いただいていますが、その他、TVシリーズを観返す際に注目してほしいポイントをお聞かせください。

重村:悩んだ部分という意味では、ドルドレイでのボスコーン戦の配置もポイントでした。ボスコーンがハーモニー処理(絵画的なタッチを加える処理のこと)されているカットで第5 話を区切るという案もあったんですが、そうなると第6 話の見せ場がズレてしまうので、これはアバンの区切りに持ってきて……といった感じで構成しています。編集的見どころというか、なるほど、そういう考えでやっているのねと、シーンの組み換えの面白さを感じていただけたら編集冥利につきます。

佐野:ボスコーンのハーモニー処理は、重村さんのリクエストで入れたのですが、これが入ったおかげで、映画第一部のラストに入っていたハーモニー処理が浮かなくなったので、そういう意味でも効いていました。

重村:最後ハーモニーで終わるって、いかにもTVじゃないですか。80年代、90年代の手法なので古臭く見えるのかもしれませんが、TVならではの見せ方を考えたときに、やっぱりボスコーンにハーモニーは欲しいよね、というところだったんですよね。

佐野:僕の観返してほしいポイントは、やはり新規カットですね。「夢のかがり火」、酒場、キャスカの「傷」とガッツの最後のところを合わせて、大きくは4シーン。それ以外にも、ガッツとキャスカの洞窟のシーンを少し伸ばしていたり、ガッツとグリフィスの決闘時のジュドーのセリフがひとつ増えてたり、小さな追加カットもいろいろあります。あとは僕がコツコツとレタッチをしていったCGパートが200カットくらいかな。ほぼ気づかれてないと思いますし、レタッチに関しては、むしろそれで良いんですけどね。

重村:モブシーンのキャラの表情が変わっていると気づいていた人、いましたよ。あと見どころといえば、映画で唯一欠番になったシーンが復活したというのもありますね。

――リッケルトの偵察シーンですね。

重村:はい。映画三部作ではどうしても尺がカツカツで、泣く泣く抜いたところなんですよね。で、欠番になったんだけど、たまたま原画まではあがっていて。

佐野:おかげで、蝕に至る前のリッケルトの状況を追うことができました。

重村:ここがないままだと、蝕の最中のリッケルトのシーンがちょっと唐突な印象なんですよね。復活できてよかったです。

――蝕のパートは、いかがでしたか?

重村:まずTVで流して本当に大丈夫なのか?と思いましたよね(笑)。最初は全部真っ暗とかにされちゃうのかなとか思ったんですが、各所みなさんが尽力してくださって、ぎりぎりのところでお届けできていると思います。

佐野:このパートがあってこその『ベルセルク』ですからね。ただ、実際にこれがお茶の間に流れたらどうなるのかっていうのは、現時点ではなかなか想像つきません。

重村: TVで流れるなんて、いまだにちょっと信じられないですね。

――ジュドーの最後のセリフが追加されているのも大きなポイントですね。

佐野:ジュドーは大好きなキャラクターですし、このセリフも大好きだったので、個人的にもどうしても入れたいという想いがありました。映画制作時にはどうしても入れられなかったことも理解していたので、今回それを入れられて、とてもうれしかったです。「夢のかがり火」や酒場のシーンを追加して、ジュドーというキャラクターをしっかり掘り下げておかなければ、このセリフは活きてこないので、しっかり描写できてよかったです。細かいところですが、そのままのカットでは口が動いていなかったので、作画も少し追加しています。ここを入れるために、その前の新規カットを追加したと言っても過言ではないくらい、僕にとっては重要なポイントでした。

重村:また、蝕の後のガッツの新規シーンもとても大切でしたね。ガッツの決意表明をしっかり描いて、最後の草原のシーンは「Aria」で締める、と。

佐野:この締め、すごく効いていると思います。映画第三部のラストは余韻を残す感じが良かったのですが、TVだと「あれ? これで終わりなの?」という感じになっちゃうかもしれないと思って。「Aria」を重村さんに提案していただいて、胸が熱くなるラストにしていただけました。

重村:TVシリーズとしてのケレン味を演出しながら、最後はやっぱり平沢音楽で締めていただきたかったのです。

佐野:OPの「Aria」はサビが入っていないんですよね。なので、ここでサビが入るのは待ってました感がとてもある。

重村:こういう時って偶然の産物というか、運命的な符合が発生することがあって、この曲は仮に置いた時点ですでに尺も何もかもぴったりだったんですよね。

佐野:「こんな感じ?」と重村さんが仮あてしたのを視聴した瞬間、みんなでおおーっとなりました。

――「Aria」のお話も出ましたが、今シリーズはOP/ EDの配置もとても柔軟でした。

重村:とてもありがたかった部分ですね。OP/ EDの位置もそうですが、放送枠が買い切り枠だったこともあって、「CMを削っても大丈夫」と言われたことが一番の驚きでした。あんまりあっちゃいけないことですけど、本編尺がどうしても足りない場合は本編優先でいい、と。中CMを30秒にしてでも、このシーンを全部入れるんだという製作陣の本気が感じられるエピソードだと思います。長年編集をやってますが、僕の経験上では初めてのことでした。

佐野:僕としては、今回あらためて OP/EDの強さを実感しました。OP/ED があるのがTVシリーズの定型なので、変則的に流れない回があると、「今回は流れなかった。次は流れるんだろうか」といったツイートがけっこう見られて。僕自身はそんなに意識してこなかったんですが、やっぱりOP/EDも併せてひとつの作品として楽しみにしている方が多いんだな、と再認識しました。だからこそ、いつもあるものを外すことで特別感を演出できるし、それは映画にはない楽しみ方だな、と。

(C)三浦建太郎(スタジオ我画)・白泉社/BERSERK FILM PARTNERS
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