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『アキバ冥途戦争』スタッフ座談会【インタビュー連載最終回】

『アキバ冥途戦争』を通して伝えたかったクリエイター陣のメッセージとは? 増井壮一監督、シリーズ構成・比企能博さん、Cygamesプロデューサー・竹中信広さん、P.A.WORKSプロデューサー・辻充仁さん スタッフ座談会【連載最終回】

今だから話せるキャスティングの裏話

──前回のインタビューはゾーヤの登場前だったので、そのお話ができなかったのですが、今だからできるキャスティングの話について他にもお伺いできればなと。

辻:ゾーヤ役のジェーニャさんは監督の指名だったよね。

竹中:そうそう。テープは送ってもらったんだけど、お願いすることはほぼ決まってて。

増井:ネイティブな発音ができる人がいいと思っていたんですよ。で、なんとなくYou Tubeやネットを見ていた中で、たまたま見つけた方が「声優もやっています」と書いていたんですよね。しかも日本文化に憧れて、秋葉原でメイドをやっていた時期もあると。「ドンピシャじゃん。この人が良いんじゃないかな」と思って音響監督の飯田(里樹)さんに伝えたら、よくご存知だったんです。「じゃあ、良いじゃないですか」と。

──ジェーニャさんはすごく喜んでいました。出会えてよかった、20年頑張ってきて良かったって。

竹中:ああ……ご本人にそう言ってもらえるのは、本当に嬉しいですね。

増井:(外国人キャラクターの役は少ないから)役とのめぐり合わせって難しいと思うんです。でも『アキバ冥途戦争』に関しては、まったく分からない言葉について、完全にお任せしていて、教えてもらうこともあったので、すごく助かりましたよね。

竹中:アドリブも考えて言ってくれましたしね。後から意味を教えてもらって。

──また、ねるら役の石見舞菜香さんは元々なごみ役を受けていたというお話も伺いました。

竹中:そうでした。オーディションを受けていただいたときに「(なごみ役以外でも)何かしら出ていただきたいな」と僕は思っていたんです。それでねるら役をお願いしました。

──特に気になるのは御徒町さんです。中の人が平野綾さんとわかり、驚かれた方も多かったのではないかと思います。

竹中:(パンダの気ぐるみから)出てこないので、正体が明らかになったときに面白い方だといいなと思っていました。平野さんだったらそこの驚きを作れるんじゃないかなと。元々、御徒町さんは男性だったり年齢が上だったりと、いろいろな案があったんです。

辻:シナリオ会議のときも「いつ喋るんだろう?」と話していて(笑)。最初は決め込んでなかったんです。何にでも触れるから。

増井:御徒町さんは第10話でたくさんセリフがありましたけど、すごく良かったですよね。

竹中:独白のシーンは長かったので、「うまく埋められるかな」と少し心配があったんですけど、すごくしっかり心情を乗っけてくれたなぁと。

──お話させてもらう中で気になったのですが、それぞれのキャラクター名って由来はあるのでしょうか。

辻:名前はどうやって決めましたっけ?

宣伝P:例えば「ねるら」は『銀河鉄道の夜』のカンパネルラをイメージして……と設定資料に書いてあって。他のキャラはどうなんだろう?と私も気になっていました。

竹中:嵐子の名前は最初の段階で決まっていた気がする。なんで嵐子という名前にしたかは覚えていないけど……。

辻:僕が見たときはキャラに名前が振ってあったような。

竹中:なごみの理由は覚えているんです。和平は逆さにすると「平和」、なごみも漢字にすると「和」が出てくるので、平和を求める少女という考えをもとに決めました。それに対して、嵐子は「乱暴な子」というイメージだったので最初は「乱子」を考えたと思うんですけど、字面的に「嵐子」にしたんじゃないかなと。適当につけたものが、残っているかもしれません。しぃぽんやゆめちとかは分からないですね(笑)。脚本にするときに「ギャルっぽく」とつけてくれたのかな。

店長にも八重樫靖子という名前はつけているんですけど、次回予告の時にしか言いません(笑)。良い名前なんですけどね。ゾーヤは脚本で決めてくれました。

──取り立て屋は……(笑)。

竹中:そのまま「取り立て屋」(笑)。取り立て屋、最高でしたよね。内山昂輝さんにお願いして、本当に良かったなと思いました。内山さんは最初のアフレコで「本当にこれでいいんですか?」という感じで(笑)。

辻:取り立て屋、面白かった。

──インタビューでお話を聞いていくと、皆さん最初は戸惑いがあったようでした。

増井:世界観がまずわからないので(笑)。初めてアフレコに参加される方からは、「どういう世界なんですか?」と質問されていました。音響監督の飯田(里樹)さんは、毎回丁寧に説明されていましたね。そこが分かると、皆さんしっかり演じてくれるんです。

──楽しい現場だったとも、皆さんおっしゃっていました。

竹中:僕自身、アフレコは見ていて楽しかったですね。

店長は野球回で爆発して死ぬ予定だった

──第8話の野球回は印象的ですがシュールな回でもありました。ところで、バットが赤い理由って広島カープの色だからですか?

竹中:そうですね。愛美が広島弁を喋っているので赤にしました。もともと愛美が広島弁で喋ることは決まっていて、キツめの広島弁を喋れるキャストを探していたんです。それでユリン千晶さんにお願いしました。比企さんから野球回のことは話していておいたほうがいいんじゃないですか?

比企:あれ? 僕でしたっけ、野球回入れたのって……。あ、P.A.WORKSさんの作品だから野球回は入れないと、って話だったような。

辻:(竹中さんが)もともと野球やってたんですよね?

竹中:それは何も反映されていないですけどね(笑)。でも本当は野球回で店長が死ぬはずだったんです。

──えっ?

増井:そうだ、爆発で死ぬ予定だった。

──連載の中で「もしかして店長は死ぬのかな?」なんて話があったんですが、本当に死ぬ予定があったとは……。

比企:盛り込もうと思ってたんですけど「ダメだ」と。野球回で主要キャラが死ぬ展開はやりたかったんですけど、死ぬ必要がないことに気づきやめました(笑)。

辻:話が進む度に店長の重要性が高まってきて、殺せなくなったんです。実は最初の段階で「殺そう」という話があって。

比企:最初の構成ではだんだんフェードアウトしていくイメージでした。

竹中:でも良いキャラでいてくれたからね。泣きながらタンバリンを叩いて。あれは良かった。

──改めて、それぞれの回についても振り返られる範囲で教えていただきたいなと……。近藤さんは第6話から変わっていった印象があるとおっしゃっていました。

竹中:そうですね。もともと『アキバ冥途戦争』というタイトルをつけようと思ったときに、第6話や第7話のような話がベースにあったんですけど、設定の説明もないので急に始めたらお客さんが入れないなと。だから前半でそこまでセッティングして……という感じでした。あとは、愛美が良かったですね。

増井:竹中さん、愛美推しですよね。

竹中:僕は愛美推しです。憧れます。愛美になりたい。

一同:……。

竹中:全然伝わってないですけど(笑)。

一同:(笑)

──すみません、なんて答えていいか分からなくて(笑)。愛美は芯の通った人ですよね。

竹中:憧れるんですよ。周りに流されない生き方というか。結果、彼女はうまくいっていないかもしれないんですけど。彼女の時代も見たかったなという気持ちもあります。

──そういえば、「姉妹の契り」のあの独特のイントネーションって……。

辻:アフレコのノリじゃないですか(笑)。

増井:普通にやっていたら、竹中さんが「意識的にやりたい」って言い出して。それで発音を試行錯誤したんですよね。

竹中:僕でしたっけ!? 監督が言ってたイメージでした(笑)。

増井:それでああでもない、こうでもないってみんなにいろいろやってもらったんですよね。

──石見さんは「まさかこっちを使われるとは思ってなかった」と(笑)。

竹中:その過程は覚えていないんですけど、完成したものを見て良いなって思いましたね。

──作中としては突然「姉妹の契り」が登場しましたが、この世界の伝統的な儀式という認識で合ってますか? 

竹中:そうですね(笑)。兄弟盃とイコールのものです。あれは設定的に簡易的な儀式なんですよね。おそらく本来は両方の店長がいるのが正式な形だと思うんですけど。

増井:本当はメイドカフェのミニステージで正式にやるんじゃないかなと。みんなで集まって。

竹中:みんなで「よーっ!」って言ってね。ああいうのをやりたいとは言っていたんです。あそこくらいしか、シーン的になかったんですよね。そういう裏の部分は想像してもらえたら楽しいのではないかなと。

──ところで、第9話の店長の鯉のシーンを監督がお好きだという話で、キャスト座談会で盛り上がりまして……。

一同:(笑)。

──高垣さんは「その時は好きだと言ってたけど、もう(一番好きなシーンは)更新されてると思う」とおっしゃっていましたが、どうなんでしょう?

増井:未だにあそこが一番好きですね。店長の心情を拾うシーンって意外となくて。数少ない、店長のモノローグだったので、シナリオの時からこだわっていました。

比企:あの鯉のあたりはシナリオも長かったんですよね。第9話自体、話を詰め込んでいたので「削りますか?」と聞いたら「削るところはない!」と監督から言われた記憶があります(笑)。

(C)「アキバ冥途戦争」製作委員会
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