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『映画ドラえもん』シリーズ最新作、理想郷を舞台にのび太たちがたどり着いた「らしさ」とは?/監督インタビュー

『映画ドラえもん』シリーズ最新作『のび太と空の理想郷(ユートピア)』古沢良太さん脚本のオリジナル作品で、理想郷を舞台にのび太たちがたどり着いた「らしさ」とは?/堂山卓見監督インタビュー

初の長編作の監督に。古沢良太さんがやりたい話をいかにアニメにするかを意識。そして大切にしたことは?

――この『映画ドラえもん のび太と空の理想郷(ユートピア)』で、初めて長編作品の監督を務めることになったそうですね。

堂山:やっぱりビックリしたのが一番ですね。例えば僕が『映画ドラえもん』にアニメーターや演出などで関わっていたのなら「ステップを踏んで、やっと監督になれるのか」と感慨深いものがあったと思いますが、僕にはその過程がなかったので、「何で?」というのが正直な気持ちでした(笑)。

――『ドラえもん』シリーズの劇場版は毎回、注目度も期待値も高いので、その監督を任されることにプレッシャーはなかったですか?

堂山:もちろんプレッシャーはありましたけど、今回、脚本に古沢(良太)さんが入られることが大きくて。それを知らされた時、「古沢さんってあの古沢さん? そんなわけないないよね」と一瞬自分の耳を疑いましたが(笑)、改めて「今回初めて『ドラえもん』の映画に関わられます」と。だから古沢さんのやりたいお話をアニメにすることが僕の仕事かなと思って、そのためにはどう仕事をやっていけばいいのかという方向に意識が変わりました。

――今作は完全オリジナル作品ですが、古沢さんとどのようにお話を作られたのでしょうか?

堂山:コロナ禍に入った中で、この作品の制作が始まりました。誰もが自由に行動できない時ですし、劇場版では大冒険があった後、必ず自分の街に帰ってくるので、いつもの日常や隣りにいてくれる人の大切さを感じられる作品にしたいという気持ちが最初にありました。僕や古沢さんだけでなく、制作会社や原作サイドを含めてお話ししたら、「それを形にしよう」とすんなりと決まりました。

そして古沢さんからはもう1つ、「今の子たちはいい子すぎませんか?」と。のび太くんは勉強も運動もできないけど、そういう子に対して「ダメな子」と言ってしまっていいのかともおっしゃっていて。話し合いの中で舞台設定などは変わっていきましたが、それら2つの柱は完成まで一貫しています。

――今作ではSDGsや格差、差別など現代にある社会問題を、決して押しつけがましくするのではなく、子供たちが自然に感じたり、考えたりできるように作られている気がします。

堂山:確かにそういうテーマはあったし、『ドラえもん』の映画はいつも大切なことを教えてくれるけど、まず子供たちに楽しんでもらうこと、おもしろいことが前提にあって。どうやったら素直におもしろく受け取ってもらえるかをずっと考えていました。

――もはや『ドラえもん』は子供たちに道徳を教える役割を担っていますよね。

堂山:授業や教科書では、すぐに理解したり、受け取ることができなくても、『ドラえもん』の映画は楽しみながらも「あれ? 今のはこういうことなのかな?」と感じられるのが魅力なのかなと思います。

――今作は暮らす人すべてが完璧で幸せというパラダピアという空中に浮かぶユートピアが舞台になっていますが、70~80年代のSF映画っぽいなと思いました。

堂山:そうおっしゃられる方も多いですね。根底には古沢さんの中にあるSF像があったのかなと思いますが、最初からそういう部分を取り入れましょうと話していたわけではなく、「日常の大切さに気付くための舞台とは?」と考えた時、のび太くんは勉強や運動ができないというコンプレックスを抱えているけど、あきらめないで努力する子で、そんな子が「変わりたい、行きたいと思うところはどこだろう?」というところからユートピアが出てきたのかなと思います。

――どんな時代の子供たちも、勉強や運動ができるようになりたいというのは普遍的な願いですよね。

堂山:そこに加えて、「みんな、いい子すぎる」というのは子供に限らず、大人たちもそうで、何をするにしても人目を気にしてしまうことでがんじがらめになってしまう空気感があって。古沢さんはそんな部分を感じ取って作品に落とし込みたいというのがわかっていたので、そこは大切にしたいなと思いました。

――作品の終盤で「みんな違って、みんないい」というような意味のセリフがありましたが、それが作品のテーマなのかなと思いました。

堂山:それは作品を通してのテーマなので、あえて口にしなくても伝わるかもしれないけど、シナリオを読んだ段階で、「このセリフだけは最後にちゃんと言わせたいな」と。だから説教がましく、自然の流れでのび太くんたちの心から出てきた言葉として受け取ってもらえるように、流れを整えていきました。

(C)藤子プロ・小学館・テレビ朝日・シンエイ・ADK 2023
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