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『特別編 響け!ユーフォニアム』松田彬人(音楽)インタビュー【スタッフ&声優 短期連載:第3回】

『特別編 響け!ユーフォニアム~アンサンブルコンテスト~』音楽・松田彬人さんインタビュー|成長していく久美子たちを表現するために、劇伴も“新しさ”を追及!【スタッフ&声優 短期連載:第3回】

新規の劇伴のいくつかの曲では尖ったことをやっている

――監督やキャストさんにお話を伺った際、第3期に向けての準備段階としても『アンサンブルコンテスト』を作れて良かったという趣旨の話をされていたのですが、松田さんとしても同じような感覚はありますか?

松田:はい。一緒ですね。映像のことを気にせず、どんな音楽をつけてもいいよ、と言われたとしても、やっぱり限界はあるので。正直、今回は「これくらいなら良いのかな?」と様子見しながらやっているところもあります。新規の劇伴が10曲あるうち、いくつかの曲では尖ったことをやっているのですが、そこが音響監督の評価も良かったので「ここまでやっても良いんだ」ということが見えてきました。なので『久美子3年生編』では、そこを基準にもっと尖ったこと、もっと面白いことをやっていけたら良いなと思っています。『3年生編』の劇伴作業は、まだこれからなので。

――先ほどのお話の確認になるのですが、アニメでは、音響監督が作った音楽のメニュー表(発注表)に沿って劇伴を作ることが多いと思うのですが、これまでの『響け!ユーフォニアム』シリーズも、そういう形だったのですか?

松田:一応、メニュー表はありますが、そこに書かれているのは、鶴岡音響監督の詩的な一言だけで(笑)。そのワードから、いかに想像して音楽に落とし込むのかという形だったんです。

――そのワードから連想される良いメロディーの曲が欲しいという形だったのですね。では、本作に関してもメニュー表は存在したのですか?

松田:(紙1枚の資料を出して)これがメニュー表です。

――1~10までの曲の番号と、その曲を使う場所のカットナンバー、あとは、短い一言だけが書かれていますね。最初の曲は「部長久美子1/まだ慣れない」とだけ書かれています。

松田:普通、劇伴の打ち合わせって、この1行1行に対して説明というか「このシーンは、こういう感情だから、こういう曲が欲しいんです」みたいな細かい話があるんです。でも、今回は本当に全くそういう話が無くて。このメニューを前に「松田くんの解釈で自由にやってください」と、一言で全部終わってしまいました。ミーティングの時間自体は1時間ちょっとあったんですが、あとはずっと雑談で、僕は戦々恐々としていました(笑)。

――加えて、今までの『響け!ユーフォニアム』とは違う新しい音楽というお題もあったわけですよね。

松田:しかも、今回はテレビシリーズではなく単発の作品なので、その音楽が使われるシーンも決まっていて、その尺に合わせないといけない。ただただ奇抜な曲を書くだけなら、わりかしどうにでもなるんですが、その尺の中で「合ってないけど合ってる」みたいなギリギリのところを狙っていくのは難しかったです。

――本当に難しいオーダーですね。ちなみに、提出した曲でボツになったり、大幅な修正をした曲はあったのですか?

松田:劇伴に関しては、全然無かったです。

「アンサンブルの息づかい」は特にチャレンジできた手応えがある曲

――現在発売中のサントラ(オリジナルサウンドトラック「Catch Your Tone」)にも、全部の劇伴が収録されているのですが、最初に作ったのはどの曲だったのですか?

松田:作品のキーになってくる劇伴は、「アンサンブルの息づかい」「ステップをひとつ越えて」と聞いていたので、その2曲のイメージはずっと頭の中に持ちつつ、作業自体は「慣れない舞台」から順番にやっていきました。

 

――「アンサンブルの息づかい」は、久美子がアンサンブルが上手くいかないマリンバ担当の釜屋つばめにアドバイスをするシーン。「ステップをひとつ越えて」はその後で久美子とつばめがマリンバを運びながら話すシーンの劇伴です。

松田:その曲のことをずっと想像していたので、(他の)劇伴の中でも「アンサンブルの息づかい」が重要な要素になっている曲もあったりします。

――新しい音楽を目指したということで、完成した映像を観る時のドキドキは、過去作よりも大きかったのでは?

松田:まったくもって、その通りですね(笑)。鶴岡さんからは、音楽を作るにあたって、「セリフも効果音も映像の芝居とかも全部フレームに縛られているものだけど、音楽は全然そういうのに縛られなくていいものだから。自由に書いて」とも言われていたんですが、それもなかなか難しいことなので、うまくできていたかどうか。

――10曲の劇伴の中で、特に新しいことにチャレンジできた手応えがあるのは、どの曲になりますか?

松田:それはやっぱり「アンサンブルの息づかい」になります。パンフレットや、サントラのブックレットでも書かせてもらったのですが、弦のカルテットがやっている曲で、曲自体は4分の4拍子といって普通の4拍子の曲なんです。でも、その4拍子の枠に収まらない感じで、ファーストは1小節プラス1拍で全体が進んでいったり、セカンドは8分音符5個でずっと進んでいったりと、みんな別の時間軸でやっている。でも、最後には協調しているみたいなところを目指しています。そういう風に、良い(メロディーの)曲を書こうというよりは、ちょっと奇をてらってやろうという作り方をした曲です。

――「アンサンブルの息づかい」は、導入から不思議なテンポが印象に残りました。少し行き過ぎてしまうと、不快なリズムにもなってしまいそうなギリギリを狙っている感じですか?

松田:そうなんですよね。レコーディングの時、ミュージシャンの方も少し苦労されていました(笑)。

――大苦戦して生まれた曲もあるのですか?

松田:今回、大苦戦と言えば、全部が全部そうではあります(笑)。逆に「懐かしいやりとり」は、先輩たち(中川夏紀と吉川優子)が言い争っているコミカルなシーンでかかる曲なんですが、劇伴としてはイメージしやすかったです。

――このインタビューを行なっている今はまだ劇場上映前で、記事の公開は上映が始まった後になるのですが、松田さんとしては、映画館で観た『響け!ユーフォニアム』ファンの皆さんが「あれ? 今回の音楽いつもと違う?」とザワついてくれたりしていると、狙い通りなわけですね。

松田:本当はそうなんですけど。石原(立也)監督たちの感想を聞くと、「打ち合わせではああ言ってたけど、やっぱり『ユーフォ』の感じもあって良かった」と言われていて、ちょっと複雑な気持ちではあったんです(笑)。なので、次の『久美子3年生編』では、監督たちがびっくりするぐらいの曲を作りたいですね。テレビシリーズだと、カットに縛られずに作っていけると思うので、それだけ書きやすいですし。

(C)武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会
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