秋アニメ『16bitセンセーション ANOTHER LAYER』第3話放送後インタビュー：阿部敦さん（六田守役）｜コノハに通じるところがある、守のPC-98に対する情熱【連載第4回】

守の98への好き具合ってコノハに通じるところがあるんです

――ストーリーの話に戻ると、96年にコノハが行き、そこで再びゲームを作る展開にはなっていきます。その前に守くんの問題もありましたが。

阿部：第1話が92年で、それから4年後。ちょうど時代の中心がPC-98からMicrosoft Windowsに移り変わっていく時期で、Windows 95の発売で、どんどん会社がDOSから移行していったし、僕の親もそこで初めてパソコンを買った気がするんです。

そのくらい時代が大きく変わったことで、守くんのアイデンティティが揺らいでしまう。先程も話しましたが、受け入れられないけど、受け入れなければいけない。時流に逆らうのもどうなのかというのもあるし、会社としては入れ替えなければならないのは分かっているけど、感情としては受け入れられないという葛藤が描かれていましたね。

――PC-98でのゲーム制作でなければ辞めると言って出ていった守くんの「刑事」役として、コノハが守くんを会社に連れ戻すという話でした。

阿部：彼がどう折り合いをつけようとしているのかというのもほんの少し見える回だったし、そのあたりの葛藤は面白かったです。ちょこちょこ守くんの98への偏愛が見えたりしたので（笑）。

――かなり98愛を語っていましたからね。

阿部：だから変な子なんですよ。ただ、この好き具合がコノハに通じるところがあるんですよね。キャラ的には対極にいる子だけど、何かを好きな気持ちは似ているなって思いながら演じていました。このあたりのキャラの関係性の面白さが出てきた回でもありました。あとは山田冬夜ちゃん（CV.山根綺）が気になっていて、今後も絡んでくるキャラなのかな?って思っています。

――冬夜が美少女ゲームを買いに行けないところを、コノハが助けて買いに行くエピソードでしたけど、なかなか行けないですよね。

阿部：この時代は、今よりもっと男臭かったフィールドですからね。そこに女の子がポンと入っていくのは難しかったけど、今はもっとライトになったような気はしますね。だから市民権を得たということで、いい時代になったとは思います。

――あと、アルコールソフトの面々が出てきていますが、90年代の会社の感じはどうですか？　コノハが現代で勤めている会社が対比のようになっていますが、あの頃の仕事にかける情熱というのを、ちょっと感じました。

阿部：何かを作る人とか、僕も表現をする立場なので理解できるところはありました。会社である以上、利益は追求しなければいけないし、売らなければならないけど、楽しく前向きに良いものを作りたいよねという空気って大事なので、アルコールソフトの面々は、変な人が集まっているけど、良い会社だなって思います。だからここで働きたいと思うコノハちゃんの気持ちも分かるというか。

このくらい小さい会社のほうが、小回りが利くし、何でも言い合えるから、良いんでしょうね。実際働いたら大変だとは思いますけど。

――徹夜は当たり前で、床で寝てますからね。

阿部：僕も仕事を始めたての頃、コミケでイベント出演をしたことがあるんですけど、企業ブースの楽屋が大部屋になっていて、ホントに床で寝ている人がいたんですよ。「すんません」って言いながら、その上をまたいで通ったりしていたから、そういう時代だったよなと思います（笑）。

――あと第3話で大事なところとして、最後にタイムトラベラーなのかを、守くんがコノハに問うシーンがありました。

阿部：でも第3話の時点では、守くんはそこまで本気で言っているわけではないと思うんです。タイムトラベラーなら歴史を変えちゃダメだから、俺のやることに干渉するなっていうニュアンスが結構あったと思うので。でもこのあたりからSF要素に少しずつ切り込んで来ることになるんです。ここで触れた以上は、今後はそこに触れなければいけないし、それが第4話以降で楽しみにしてほしいところです！

［文／塚越淳一］

『16bitセンセーション ANOTHER LAYER』作品情報

あらすじ

秋里コノハは美少女＆美少女ゲームが大好きなイラストレーター。超人気絵師になることを夢見て美少女ゲーム制作会社で奮闘しているものの現実はうまくいかず……、ソシャゲ全盛期の現代に会社は傾き、コノハはサブのイラストレーターとしてモブキャラの後ろ姿を塗る日々を過ごしていた。

ある日、ひょんなことから過去の名作美少女ゲームをゲームショップの店主から譲ってもらうことに。美少女ゲーム黄金時代に思いを馳せ、『同級生』のパッケージを開くと突如まばゆい光に包まれ、気づくとコノハは過去にタイムリープをしていた！

行きついた先は1992年！世は美少女ゲーム黎明期！アルコールソフトという会社で働くことになったコノハは、美少女を想い、美少女を描き、美少女を創りあげていけるのか！？

圧倒的な美少女への愛でお送りする、ひとりの少女の物語――『じゃ、始めるね！』