音楽
坂本真綾ライブツアー2023「記憶の図書館」振替公演公式レポート

坂本真綾さんによるフルアルバムライブツアー「坂本真綾LIVE TOUR 2023『記憶の図書館』」振替公演最終日の公式レポートが到着!

1月2日(火)、3日(水)に東京ガーデンシアターで開催された、坂本真綾さんの11枚目のフルアルバムライブツアー「坂本真綾LIVE TOUR 2023『記憶の図書館』」。

このたび、振替公演の最終日(1月3日)の公式レポートが到着しました!

LIVE TOUR2023「記憶の図書館」東京振替公演最終日オフィシャルレポート

1月3日に坂本真綾の全国ツアー「LIVE TOUR 2023『記憶の図書館』」が遂に最終日を迎えた。このツアーは昨年5月31日にリリースされた11枚目のアルバム『記憶の図書館』をひっさげ、6月2日の埼玉・サンシティ越谷市民ホールを皮切りにスタート。当初は6月中に全ての公演を終える予定だったが、大阪2日目と東京の2日間の公演が本人の喉のコンディション不良により延期となり、大阪公演は10月に、東京公演は年をまたいで1月2日と3日に振替公演が行われることになった。

この日の観客の中には振替公演を待ちわびていた人、おめでたい年始のライブということでワクワクしていた人も多かったことだろう。アルバム『記憶の図書館』の1曲目「ないものねだり」で何本もの白い紐をスクリーンに見立てたアーティスティックな演出とともに登場した坂本真綾は、その幕が上がるとたくさんの観客に見守られているツアー最終日の光景を愛おしそうに見渡した。

続く自身が作詞・作曲を手がけた「言葉にできない」ではひとつひとつのフレーズを丁寧に歌い、その清涼感溢れるチャーミングな歌声を存分に発揮した。ちなみにこの曲はTVアニメ『本好きの下剋上 司書になるためには手段を選んでいられません』のエンディングテーマとして書き下ろされたが、〈つまずいたときは 歩き出すまで待っててくれたね〉なんて歌詞に、大阪公演2日目が中止になったとき、多くの温かいメッセージが寄せてくれたファンへの感謝が込められているように感じた。

そして「こんな日がくるなんて」では曲の会場から客席に向かってオレンジ色のライトが照らされ、まるで初日の出のようなハッピーな演出。最初のMCでは「東京ファイナル公演にお越しくださった皆さん、ありがとうございます!」と元気に挨拶。「(ライブの中止と延期は)自分の長い活動期間の中でも初めてのことだったのでびっくりしましたが、そうしたハプニングの中で多くのお客さんたちが『大丈夫だよ』『待ってるよ』と声をかけてくださったお陰で、1回1回のステージに無事に終えることの尊さをあらためて噛み締めながらツアーを再開し、今日まで辿り着くことができました。今年1年を皆さんが元気で歩んでいけるようなライブにしたいと思います」と語った。

ライブ中盤に向かっても竹内アンナの作曲による華やかなR&Bナンバー「discord」や、今回のツアーバンドのバンマスをつとめる北川勝利(Band master&Guitar)が作曲・編曲を手がけた「タイムトラベラー」など、最新アルバム『記憶の図書館』収録のナンバーが鮮やかなハイライトを生み出していく。

特に〈夢を叶える前の僕に 会いに行けるすべがあったとして〉という歌詞から始まる「タイムトラベラー」は、かつての葛藤や抱えていた未来への不安などが呼び覚まされる感覚と、そうした感情が今もここにあるという現実が、混沌としたバンドサウンドの重なりに浮かび上がるようで素晴らしかった。アルバムという作品だけで完結するのではなく、ツアーを通じ、バンドのメンバーとともに鳴らして初めて伝えられるものがある。思いがけず長いツアーになったが、そのぶんの完成度や深みが増していると感じた。

その後のMCではとてもリラックスした様子で、昨年末に放送されたTV番組「Fate Project 大晦日TVスペシャル“英霊紀行フランス編”」でフランスを訪れてジャンヌ・ダルクの足跡を辿ったときのエピソードなどを話してくれた。自身が2月に発売するエッセイ集『満腹論-明日にかぶりつけ-』の撮影も兼ねていたそうで、ハードだったが楽しんだようだ。そんな旅の話から、過去にトルコのカッパドキアを訪れた際に自身が作詞・作曲をした「ニコラ」を演奏すると、客席からの手拍子も加わって会場は温かな空気感になった。

ライブも中盤に差し掛かると、オルタナティブなアレンジをスタイリッシュなサウンドで鳴らす「一度きりでいい」が大きな高揚感を生み出した。昨年話題となったTVドラマ『ブラッシュアップライフ』にインスパイアされて歌詞を書いたというこの曲だが、生まれ変わったらどう生きるかではなく〈一度きりでいいわ/私が生きるのは これで最後にさせて〉なんてフレーズに彼女らしさが炸裂。この曲を熱唱する姿に自身の人生観がほとばしっていた。

そこからバンドのメンバーだけで客席を盛り上げた「宇宙の記憶(instrumental)」を経て、衣装チェンジした坂本がドレスの裾をひらひらさせながら歌ったのは「Anything you wanna be」。懐かしい日々のきらめきを全身に纏ったようなステージングと伸びやかな歌声は、このツアーにおけるとびきりの宝物のようなひとときだった。

そして今回のツアーでは「皆さんの記憶に残るような、いつもとは違うことを」という想いから、他アーティストへの歌詞提供曲をセルフカバーしているが、この日は堂島孝平に提供した「Latest Train」を披露。

堂島孝平は坂本の25周年記念ライブにもゲストで出演してデュエット曲「あなたじゃなければ」を一緒に披露した他、最新アルバムでも「Anything you wanna be」のアレンジ、「空中庭園」では作詞・作曲・編曲を手がけており、「気づけば色々な形でお世話になっている方」と紹介。「その堂島さんにまさか作詞を依頼されると思わなかったのでびっくりしました」と「Latest Train」の制作を振り返った。他のアーティストに歌詞を提供するときとは違い「自分が歌ったらどんな感じになるかなということもイメージしながら書いた」と言うだけあって、鍵盤の音色と共に広がる穏やかな星空のような楽曲世界を美しい声で表現し、観客はうっとりと聴き入った。

ツアー最終日の楽しいライブもあっという間に終盤に突入すると「さあ、2024年、一緒に始めましょうか!良い年にするぞ東京―!」と声をかけ、華やかなアップナンバー「トロイメライ」でエネルギッシュに会場の熱気を上昇させた。

「マジックナンバー」では「元気な声が聞きたいぞー!」と坂本が呼びかけ会場にマイクを向けると〈明日を信じてる〉のフレーズで大合唱。年明けから震災など不安な出来事が続き、いつの間にか強張っていた心がどんどんほぐれていくような感覚があった。

「たくさんの歌声をありがとうございました。今年は本当にお正月から色々な出来事があって、一体どんな1年になっちゃうんだろうという気持ちにどうしてもなっちゃうんですけど。もう進んで行くしかない1年を少しでもタフに生きていくために、一緒に歩き出せるようなライブにして、このツアーを締めくくることができたらいいなと思っていました。〈明日を信じてる〉という歌詞がこれまでも何度も私を救ってくれたように、どんな状況でもやるしかないから、今年1年みんなで元気に突き進んでいきましょう!」と言うと、大きな拍手が会場から沸き起こった。

そしてツアーの最終日にしっとりと聴かせてくれた「菫」は格別だった。くるりの岸田繁が作曲を手がけたこの曲は、誰もが普通の人生を歩んでいるように見えて、誰もが普通の人生を望んでいるような、そんな私たちの孤独と愛おしさをギュッと抱きしめるような1曲。出産を経ての再始動ライブ「坂本真綾LIVE 2022”un_mute”」のときの「菫」も印象的だったし、今回のツアーでは大阪公演1日目の終盤で声が出づらい状況になりながら「菫」を歌い遂げたシーンが忘れられないという人もいるかもしれない。彼女が懸命に駆け抜けてきた日々の記憶が、そのぶんだけ更なる豊かさを添える、「菫」はそんな包容力を持った歌だ。

「以前はライブをすると目の前にたくさんのお客さんがいると感じていたのが、それぞれの人生を歩んでいるひとりひとりがその道の途中でこうして立ち寄ってくれたんだと考えるようになりました。だから怖くない、寂しくないと思い出すことができる、私にとってライブはそういう場所なんだと。今回のツアーを通じて皆さんにたくさん励ましていただき、より一層そういう想いを感じることができました。ありがとうございました」

胸がいっぱいになるバラード「菫」の後、再び「Get No Satisfaction!」で盛り上げ、「この旅を見届けてくれてありがとう!最後に歌えますか?」と「ポケットを空にして」へ。イントロで坂本がノスタルジックにピアニカの音色を響かせるのを合図に、歌うと心が浄化されるようなこの曲をみんなで大合唱。東京ガーデンシアターいっぱいのお客さんたちと共に、素晴らしい旅の締めくくりとなった

ここでライブが終わるかと思いきや、この日は特別に「お会いできたことに感謝し、みんなにお年玉を」と、毛利康士(Percussion&Manipulation)と扇谷研人(Keyboards)の二人をステージに呼び戻すと、自身が作詞・作曲を手がけた「シンガーソングライター」を披露してくれた。「今回のツアーは本当に色々なことがあり、きついなと思ったこともあったけど、こうして終わりを迎えてみて思うのは、やっぱり楽しいばかりが音楽じゃないんですね。でも色んなことがあるから人生なんだという、この曲を歌いたいと思います」と語っていた。

アクシデントを乗り越えて、だからこそ大きな実りのあったツアーの終わりにふさわしい選曲だった。〈生きることは音楽〉という明るく力強い歌声が、客席からの手拍子に乗ってふんわりと舞い上がる。「ありがとー!」と晴れやかな笑顔を最後に見せてくれた彼女。ステージを重ねて坂本真綾はまた新たな坂本真綾になっていく。私たちはその旅路を、これからも見届けていきたい。

出演

坂本真綾
北川勝利(Band master & Guitar)
奥田健介(Guitar)
千ヶ崎学(Bass)
髭白健(Drums)
扇谷研人(Keyboards)
毛利泰士(Percussion & Manipulation)
高橋あず美(Chorus)
Kayo(Chorus)

[TEXT:上野三樹 撮影:羽田誠/原田捺未]

「抱きしめて」(WOWOWオリジナルアニメ『火狩りの王』第2シーズンエンディングテーマ)リリース情報

アーティスト:坂本真綾
発売日:2024年1月15日(月)
作詞・作曲:大江千里 
編曲:河野 伸

《配信情報》
音楽ストリーミングサービスおよびiTunes Store、レコチョク、moraなど主要ダウンロードサービスにて1月15日(月)0時より配信スタート!
配信はこちら

※音楽ストリーミングサービス:Apple Music、Spotify、YouTube Music、LINE MUSIC、Amazon Music、Deezer、AWA、Rakuten Music、KKBOX、TOWER RECORDS MUSIC

坂本真綾さんプロフィール

東京都出身。8歳より子役として活躍。
1996年シングル「約束はいらない」でCDデビュー以降、精力的に作品を発表。
2011年オリコン1位を獲得した「You can’t catch me」を皮切りに、様々なアーティスト、ミュージシャンとのセッションを積極的に行う。
2013年アルバム「シンガーソングライター」以降は自身で詞曲も手掛けつつ、他アーティストへの作品提供も盛んになる。
2019年30thシングル「宇宙の記憶」(椎名林檎プロデュース)、10thアルバム「今日だけの音楽」リリース、2020年には25周年記念アルバムとなる「シングルコレクション+ アチコチ」リリースし、同年にデジタルシングル「躍動」を配信し、オリコン1位を獲得。
2021年3月にはバラエティーに富んだシンガーをゲストに迎えたコンセプトアルバム「Duets」リリース、同月CDデビュー25周年を記念して横浜アリーナにて25周年記念LIVE「約束はいらない」を2DAYS開催。
同年7月には自身が20年パーソナリティを務めるラジオ番組「ビタミンM」が放送1,000回を迎え、現在22年目に突入。
2022年5月に発表したWタイアップシングル「菫 / 言葉にできない」では「くるり」の岸田繁が作・編曲を手掛け反響を呼んだ。
2023年1月に33枚目のシングル「まだ遠くにいる / un_mute」をリリース。
作詞家として、1stアルバム以降のオリジナル曲のみならず、KinKi Kidsシングル「光の気配」や宮野真守「透明」、ワルキューレ「風は予告なく吹く」ほか提供楽曲まで、自身が手掛けた歌詞のみが収載された歌詞集「刺繍」(KADOKAWA)も刊行。
また、日本初上演されたミュージカル「ダディ・ロング・レッグズ~足ながおじさんより~」ジルーシャ役が好評を博し、第38回菊田一夫演劇賞を受賞。
声優、女優、作詞、エッセイ執筆、ラジオパーソナリティなど、多方面で活動。瑞々しい歌声が、日本国内のみならず世界各国のファンから支持をうける。

オフィシャルHP「I.D.」
坂本真綾 YouTube Official Channel

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