「初音ミク」との出会いが、今に至るまで十数年の原動力になっています――『劇場版プロジェクトセカイ　壊れたセカイと歌えないミク』連載インタビュー｜ボカロP・DECO*27さんが語る『プロセカ』の意義

アプリゲーム『プロジェクトセカイ カラフルステージ！ feat. 初音ミク（『プロセカ』）』が、待望のアニメ映画化！　『劇場版プロジェクトセカイ　壊れたセカイと歌えないミク』が、2025年1月17日（金）より公開中です。

劇場版の公開を記念して、アニメイトタイムズではボカロP・スタッフインタビューを実施しました。本稿では、本作に向けてユニット＆バーチャル・シンガー書き下ろし楽曲を提供されたDECO*27さんが登場です。

アプリゲームリリース初期から『プロセカ』に携わり続けるDECO*27さん。ボカロPとして感じる『プロセカ』の魅力とは？　全6曲の書き下ろし楽曲に込めた想い、制作秘話はもちろん、レコーディングの思い出など、『プロセカ』と初音ミクへの愛がたっぷりと詰まったインタビューをお届けします。

「とんでもないものがきたな」と思いました

――劇場版アニメの制作を知ったときのお気持ちからお聞かせください。

DECO*27さん（以下、DECO*27）：オファーと同時に劇場版の制作を知ったのですが、何より「おめでとうございます！」という気持ちでした。

『セカイ』などの楽曲で、最初期から関わらせていただいていたコンテンツが、こんなにも大きくなって劇場版にまでなって……感動でしたね。そこからジワジワとオファーの実感が湧いてきて、「自分ができる精一杯のものを出そう」という気持ちになりました。

――全6曲の書き下ろし楽曲について、どのようなオファーだったのですか？

DECO*27：「劇場版に登場するミクが歌うハミングのメロディが、最終的に『ハローセカイ』という楽曲になる」「そのハミングのメロディが各ユニットに届いて、そのメロディから自分たちなりの楽曲を作って披露する」「なので、『ハローセカイ』のメロディを、必ず各ユニット楽曲に引用してください」というもので、自分のキャリアの中で初めての挑戦でした。

「とんでもないものがきたな」と思いましたが（笑）、同時にやりがいがあるなとも思いました。今まで自分が培ってきた経験や磨いてきたスキルを活かせそうだな、とも。

――オファーの段階で、具体的な楽曲のプランがあったのですね。

DECO*27：そうですね。そのプランに基づいて、劇場版アニメ制作チームと曲調などの相談をしつつ、『ハローセカイ』の制作から取り掛かりました。

逆に、『ハローセカイ』以外の各ユニット書き下ろし楽曲の曲調などは指定されていなかったので、楽曲イメージやコンセプトから固めていきました。そうして出来上がったデモをお送りしてOKをいただいて……このような流れで楽曲制作が進んでいきましたね。

――そんな今回の書き下ろし楽曲ですが、アレンジャーとして様々なボカロPが参加されています。こちらのコラボに関しては、どのようなキックオフだったのですか？

DECO*27：「同じメロディを引用する」というテーマを守りつつの制作だったので、すべての楽曲が似たジャンルに寄ってしまうのは避けたいと考えていました。どの楽曲も新鮮かつ「各ユニットに合っている」と感じてもらうにはどうしたら良いか考えた結果、親交のあるボカロPに力を借りよう、と。

正式オファーをする前でしたが、僕が歌詞やメロディを書いている段階から、「この曲はあの人に編曲をお願いしよう」とイメージしながら書いていました。その時に思い描いていた方々全員がオファーを受けてくださったのが、何より嬉しかったですね。

――そんな名だたるボカロPとの楽曲制作はいかがでしたか？

DECO*27：今回お願いした方々は、自分の作風を持っているボカロPなので、お渡しするデモをどこまで作り込むかについてとても悩みました。

僕がアレンジを作り込んでしまうと、アレンジャーとして参加された方の個性も薄れてしまいますし、コラボする意味がなくなってしまう。かと言って、あまりにも（アレンジを）入れないと、仕上がりのイメージが共有できなかったり、共通意識を持って制作ができないかもしれない。

オンラインでのミーティングなども行って、お互いの良いところが出るバランスを探りながら制作をしました。僕もみなさんの楽曲を聴いていますし、みなさんも僕の楽曲を聴いてくださっていたので、話が膠着してしまうようなことはありませんでしたね。

――なるほど。

DECO*27：様々なアイデアが出たので、行き詰まることもなくて。実際のアレンジ作業で苦労されたかもしれませんが、コミュニケーションを取る上では問題なく、スムーズでしたね。

実際、みなさんがどう思われていたかはわかりませんが……。編曲で参加してくださったみなさんのインタビューが世に出たとして、違うことが書いてあったら、そっちが正解だと思います（笑）。

――DECO*27さんとアレンジャーの皆さんの信頼関係が伝わってきますね。次に、書き下ろし楽曲に込めたこだわりについて、作曲の観点からお聞かせください。

DECO*27：やはり今回に関しては、「同じメロディを引用する」が肝になっているので、メロディの引用の仕方に気をつけました。

例えば、全楽曲のAメロにメロディを引用してしまったら、新鮮に聞こえないと思うんです。なので、イントロのコーラス部分に使ったり、AメロBメロ、サビに使ったり……引用するセクションを散らしています。

――作詞についてはいかがでしょうか？

DECO*27：全楽曲を通して「誰かを救いたい」「勇気づけたい」というテーマがあります。すべてのユニットが持つ想いの根幹は同じなんです。

ですが、想いが同じであったとしても、各ユニットによって伝え方に個性が出ると思っています。キャラクター全員の励まし方が、一様に同じなわけがない。例えばビビバス（Vivid BAD SQUAD）だったら「お前らも来いよ」と、背中でグイグイ引っ張っていくだろうし、レオニ（Leo/need）だったら同じ目線に立って「一緒に行こうよ」と言ってくれるのかなと。

歌詞におけるメッセージ性で、ユニットごとの特色を出すことも意識しましたし、最終的な雰囲気の調整を歌詞で行いました。結果として、それが良い色になったのではないかなと思っています。