
「初音ミク」との出会いが、今に至るまで十数年の原動力になっています――『劇場版プロジェクトセカイ 壊れたセカイと歌えないミク』連載インタビュー|ボカロP・DECO*27さんが語る『プロセカ』の意義
もう一周やりたいなって思いました(笑)
――楽曲のレコーディングにもご同席されたとお伺いしていますが、いかがでしたか?
DECO*27:「全員分録りたいです!」という僕のワガママを叶えていただいた形だったので、多くのキャストさんとは初めましてでした。
なので、録る前にアイスブレイクとしてお話をさせていただきました。その後、楽曲の説明をして、歌録りが始まったのですが……もう、みなさん本当に上手で! 改めて感動しましたし、自分が思い描いていた楽曲の形に、この方々とならたどり着けるなと思いました。
――ちなみに、アイスブレイクではどのようなお話をされたのですか?
DECO*27:やはり共通言語になりやすいこともあって、ボカロのお話が主でしたね。「昔からボカロ曲を聴いているんです!」という方には「どんなきっかけで聴き始めたんですか?」とか。「今はあの人のあの曲がお気に入りで……」のようなお話も聞けました。
――楽しそうな雰囲気が伝わってきます。
DECO*27:録り始めてからも「ここが上手く歌えなくて……」のような問題もなく、スムーズにレコーディングが進みましたね。楽曲に対して、キャストさんからもアイデアをいただいたりして、より楽曲の強度が上がったなと思う瞬間もありました。
何よりみなさんがとてもいい人たちだったので、レコーディングが楽しかったです。実際に歌っている分、キャストさんはキツいと思いますけど、叶うならもう一周やりたいなって思いました(笑)。
――もう一周!
DECO*27:僕はね(笑)。それくらい楽しかったです。
――続いて、『ハローセカイ』において、特にお気に入りのメロディや歌詞についてお聞かせください。
DECO*27:2箇所あります! ひとつは、楽曲の最後の場面で、堀江晶太(kemu)くんとコライト(※複数の制作者がそれぞれの得意分野を活かし、共同で作曲する手法)した『セカイ』と、2周年記念楽曲の『Journey』を引用したところです。
実は、これは僕から出たアイデアではないんですよ。
――初期の構想にはなかった展開なのですね!
DECO*27:はい。ファーストデモのときは入っていませんでした。
(ファーストデモのフィードバックとして)劇場版アニメ制作チームから「これまでの楽曲を引用するなどして、『プロセカ』の歴史が感じられるような楽曲にしたい」「例えば『セカイ』と『Journey』を引用するとか……」とアイデアをいただいて。「引用していいんですか!?」って感じでした(笑)。とてもハッピーなご提案でしたね。
結果として、『ハローセカイ』というタイトルの楽曲の中に『セカイ』が入り、かつ〈飛び込んでいこう 僕らのセカイへ〉というフレーズも登場しました。より『ハローセカイ』の世界観が濃いものになったと思いますし、『セカイ』が元々持っている意味も深まったのではないかなと。3つの曲に対して良いことができたなと思います。
――劇場版アニメ制作チームとは、何度もミーティングを重ねられたのですか?
DECO*27:その一回だけでしたね。他の曲に関しても、「ここをこうしてほしい」というお話はなくて、スムーズでした。
(『ハローセカイ』以外の楽曲に関して)デモを書く前に、楽曲イメージについての提案と確認をしていたので、齟齬なく進められたのかなと思います。
――『セカイ』『Journey』の引用は、きっと大きな話題になりますよね。
DECO*27:しかも、その2曲が挿し込まれるまでに、楽曲的な下準備がないんですよね。「なんだか『セカイ』が流れそうだぞ?」という雰囲気が全くない状態で流れるので、ビックリしてもらえるかなと(笑)。
映画館なので静かにしてなければならないとは思うのですが、お客さんが劇場で聴いたとき「えぇっ!?」って声を出してくれたらいいなと思います。公開初日などにこっそり行って、反応を見たいですね(笑)。それくらいお気に入りです。
――必聴の箇所ですね。もうひとつのお気に入りポイントについてもお聞かせください。
DECO*27:全体を通して歌詞が気に入っているのですが、特に〈未来にいる理想の君を今の君に押し付け過ぎないで〉というフレーズがとても好きなんです。
例えば思うように目標達成ができなかったり、「こんなの思い描いていた自分じゃない」と辛くなってしまったり……。上手くいかなくて落ち込んでしまうときもあると思うのですが、その気持ちに対して「やめて」ではなくて、「押し付け過ぎないで」と、ソフトタッチで励ますような言い回しが丁度良い温度感ではないか、と書いていて思いました。
――ちなみに、DECO*27さんの中で「初音ミク」と「『プロセカ』のミクたち」に向けた曲で、制作時の違いはあるのですか?
DECO*27:一番の違いは、既存ストーリーの有無ですね。DECO*27チャンネルに投稿している楽曲に関しては、僕が楽曲のストーリー(世界観)を考えてから作り始めるのですが、『プロセカ』はストーリーが先に決まっています。
ただ、その違いがあるくらいで、作り始めてからは「『プロセカ』のミクたち」の楽曲だから、という意識はないですね。あくまでもストーリーの中でその楽曲が流れたとき、舞台とキャラクターに寄り添ったものになっているかを気にしています。
――なるほど。
DECO*27:あとはキャラクターが歌う場合に関しては、ボカロのようにキーレンジを下から上までモリモリ使うみたいなことはやらないようにしています。(キーが)高すぎるとそのキャラクターの声として違和感が出てしまうこともあるので、歌唱キーの読み解きに時間を使いましたね。
――『プロセカ』への書き下ろし楽曲ならではの工程ですね。『プロセカ』に収録されている『乙女解剖』の歌唱などは……。
DECO*27:絶対大変ですよ(笑)。
今回の書き下ろし楽曲には、高低差での難しさはないですが、ユニットごとに新たな挑戦となる要素も展開されています。
ラップなど、ユニットとしては前例がないことにもチャレンジしていただいたので、キャストさんたちがどう思っていたのか、ちょっと心配ですけどね……(笑)。
――先んじて、キャストのみなさまにもインタビューをさせていただいたのですが、みなさん「書き下ろし楽曲、スゴイですよ!」「レコーディングも楽しかったんです!」とおっしゃっていました。
DECO*27:わー! よかったです! 嬉しいな(笑)。














































