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劇場版『ベルサイユのばら』世代じゃなくても刺さる魅力を徹底レビュー

世代じゃなくても刺さる『ベルサイユのばら』の魅力。劇場版はオスカルたちの愛と信念が起こすドラマチックな“人生の革命”だった! 原作リスペクトと令和版リメイクの絶妙なバランスに惹き込まれる

フランス最後の王妃マリー・アントワネットや、男装の麗人オスカル・フランソワ・ド・ジャルジェら、フランス革命前期をばらのように気高く生きた者たちの人生を愛とロマンス、史実を織り交ぜながら描く池田理代子氏の名作マンガ『ベルサイユのばら』。

2022年には50周年を迎えた本作は、宝塚での公演やコラボイベントに企画展、コラボグッズの展開など誕生から半世紀が経った今でも世代を超えて愛され続けています。そして2025年1月31日(金)には、50周年記念施策として制作が発表された劇場版『ベルサイユのばら』が公開を迎えました。

本記事ではそんな『ベルばら』の魅力と、令和に蘇った劇場版『ベルばら』ファーストビューの感想を、小学生のころから『ベルばら』が大好きな筆者がお届けします。

 

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将軍家の跡取りで、“息子”として育てられた男装の麗人オスカル・フランソワ・ド・ジャルジェ。隣国オーストリアから嫁いできた気高く優美な王妃マリー・アントワネット。オスカルの従者で幼なじみの平民アンドレ・グランディエ。容姿端麗で知性的なスウェーデンの伯爵ハンス・アクセル・フォン・フェルゼン。彼らは栄華を誇る18世紀後半のフランス・ベルサイユで出会い、時代に翻弄されながらも、それぞれの運命を美しく生きる。作品名ベルサイユのばら(映画)放送形態劇場版アニメシリーズベルサイユのばらスケジュール2025年1月31日(金)キャストオスカル・フランソワ・ド・ジャルジェ:沢城みゆきマリー・アントワネット:平野綾アンドレ・グランディエ:豊永利行ハンス・アクセル・フォン・フェルゼン:加藤和樹アラン・ド・ソワソン:武内駿輔フローリアン・ド・ジェローデル:江口拓也ベルナール・シャトレ:入野自由ルイ16世:落合福嗣ジャルジェ将軍:銀河万丈マロン:田中真弓ノアイユ夫人:平野文ルイ15世:大塚芳忠ロザリー:早見沙織ダグー大佐:山野井仁ブイエ将軍:大塚明夫ジャルジェ夫人:島本須美ロベスピエール:小野賢章ルイ・ジョゼフ:徳井青空マリー・テレーズ:田中美海ラ...

 

苦しく切なく、美しく気高い…人生の葛藤と決意を描く『ベルばら』の世界は20代にも刺さる

筆者は現在20代後半なので、『ベルばら』世代というわけではありません。ハマったきっかけは、小学生のときに母が持っていたコミックを読んだことでした。幼いながら池田先生の描く美しい線と心に残るセリフの数々に魅了され、すぐにビデオを借りてもらいアニメ版にも夢中に。キャラクターの美しさ、煌びやかなロココ調の衣装調度品に憧れたものでした。

そして大人になった今、再び『ベルばら』に触れて心に重く響くのは、オスカル、アントワネット、アンドレ、フェルゼンそれぞれの複雑すぎる恋模様と人生の苦悩。

本来の女性貴族とはかけ離れた運命を背負わされ、男としての自分、貴族としての自分の在り方に悩み抜いたオスカル。暴発しそうな想いをひた隠し、影のようにオスカルの側に居ること決めたアンドレ。王妃という立場にあってもなお、一人の人間として愛を貫いたアントワネット。結ばれないと解っていながら、アントワネットを愛し生涯未婚を決めたフェルゼン。

 

 
それぞれの胸にたぎる激しい想いに向き合い続け、葛藤と決意を経て己の人生をまっとうしてゆく姿は、身分の差や置かれた立場、政略結婚が人生を左右する切ない時代背景の中でばらのように気高く咲き誇るのです。一方で、恋ではなくとも愛はあったと感じさせられるアントワネットとルイ16世の夫婦関係にも胸が締め付けられて……彼らが革命の中に身を投じることとなる30代を目前にした今の筆者の心に、ぐさりと刺さってなかなか抜けてはくれません。

また、『ベルばら』がきっかけでフランスの王朝や文化にも興味を持ち、歴史を学ぶ意欲にも繋がりました。実際のアントワネットはどんな人物だったのか、その子供たちはどのような人生をたどったのか、ギロチンという衝撃的な器具による公開処刑の残虐さはいかほどであったのか、ベルサイユ建立までの過程は……など、『ベルばら』キャラに想いを馳せながらさまざまな文献に触れ、パリはいつか訪れたい憧れの町に。

 

『ベルばら』玄人も初心者も楽しめるポイントが満載!劇場版の感想

上述の通り幼いころよりすっかり『ベルばら』に魅了されていた筆者。映画制作が明かされた2022年の「ベルサイユのばら展」当時より、今回の劇場版封切りを楽しみに待っていたのです! ということで、さっそく公開初日に鑑賞してきました。

私が鑑賞したスクリーンには原作世代の方はもちろん、20代〜くらいの若い世代の方も、男性も数人居たりして客層の幅広さにちょっと驚き。さらにグッズ売り場になにやら人だかりができている……なんだ? と思ったら『ベルばら』グッズのコーナーで、それにもびっくり! 圧倒的名作の貫禄を感じ、なぜか私が得意気な気分に(好きな作品が愛されているのを実感する瞬間って、嬉しいですよね)。

また、来場者特典で配布される原作の複製原稿(「原作:池田理代子 伝説の名シーン複製原稿【原稿袋入り】~オスカル人生で一度のドレス姿~」)も最高でテンション爆上がり! 本当に池田先生から原稿をいただいたような原稿袋の高揚感と、中から飛び出すオスカルのドレス姿の美しさに興奮が収まらず、思わずアンドレのような反応に……原作ファンにはぜひゲットしてほしいお宝アイテムです。

さて本編は、オスカルにメインスポットをあてつつ、彼女とアントワネット、アンドレ、フェルゼンそれぞれが選んだ愛と信念をテーマに構成されていた印象。

 

 
あの超大作をぎゅっと2時間に詰め込んでいるため、もちろんカットされているところも多く、ダイジェスト感は否めませんが、ストーリーはしっかり原作沿い。フランスの激動もうまく表現しつつ、各所に訪れる名シーンや名セリフをしっかりとおさえていたように思います。再現度も高く、原作へのリスペクトが感じられました。ロザリーはじめ、ポリニャック夫人やデュバリー夫人といった魅力的な脇役キャラたちにもちらりとお目にかかることができますよ。

一方で、劇中にはミュージカル的側面が多かったのも外せないポイント。

『進撃の巨人』『ONE PIECE』『青の祓魔師』など数々のアニメ作品のサントラや劇伴、劇中歌を手がける澤野弘之さんによる音楽、声優陣の歌唱力が高く聴き入ってしまいます。主題はミュージカルだったかな? と思えてくるほどに、各キャラの心情を歌い上げる音楽シーンは華やかで切なくて……。宝塚から『ベルばら』に入ったという人はとくに楽しめるのではないかと感じました。

また、序盤のベルサイユを描くシーンには映画『マリー・アントワネット』を彷彿とさせるようなポップさも。基本的には原作を履修済みの人向けに感じられましたが、あらすじや歴史的背景の説明もしっかり入っているので、これから原作を読み込む初心者ファンの沼の入り口にもなり得るつくりだったように思います。

そんな脚本や音楽にぬるぬると目まぐるしく動くアニメーションが合わさると、原作アニメとはまたテイストの違ったロマンチックさとドラマチックさが劇場を包みます。

 

 
豪華絢爛なドレスや調度品、煌びやかなパリ、宮廷の華やかな生活がめまぐるしく凝った演出で展開されていく様子も素晴らしいのですが、一転フランス革命へ突入するとその戦いの壮絶さ、痛々しさの表現力がすさまじく、ズドンと胸に響きます。さすがは『チェンソーマン』『進撃の巨人』『呪術廻戦』『ユーリ!!! on ICE』などヒット作を連発するMAPPAクオリティ!と唸らずにはいられませんでした。令和の映像技術はすごい……!

また、本作は沢城みゆきさん(オスカル・フランソワ・ド・ジャルジェ役)、豊永利行さん(アンドレ・グランディエ役)、江口拓也さん(フローリアン・ド・ジェローデル役)など、声優陣もとても豪華!

その中でも個人的に感激したのは、マリー・アントワネットを演じた平野綾さんの演技でした。

 

 
序盤はほわほわと愛らしく、少女性にあふれた声色のアントワネットだったのが、本当の愛を知り、王妃という宿命と向き合い、自分の行く道が定まるとぐっと大人びて強く芯のある声色に。喩えるなら、可憐な小花が凛と咲く真っ赤な薔薇へと変わるような……。アントワネットが成熟していくにつれ、声に深みが増していく過程が素晴らしかった! 鑑賞の際にはぜひ注目していただきたいポイントです。

改めて『ベルサイユのばら』とは、フランス革命と同時にオスカル、アントワネット、アンドレ、フェルゼンそれぞれの愛と信念が起こす人生の革命を描いているのだと思わされた劇場版でした。往年のファンでも、ライトなファンでも、ミリしらでも、少しでも気になっているならばぜひ劇場に足を運んでみてほしい。劇場への足がかりになれば幸いです。

 
[文/まりも]

 

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