音楽
Aimerが『天久鷹央の推理カルテ』と向き合うなかで改めて見つめ直した自分自身の“真実”

Aimerがアニメ『天久鷹央の推理カルテ』と向き合うなかで改めて見つめ直した自分自身の“真実”|ニューシングル「SCOPE」リリースインタビュー

Aimerの通算25枚目となるニューシングル「SCOPE」が、2月19日にリリースされた。

表題曲は、2025年1月から放送中のTVアニメ『天久鷹央の推理カルテ』のオープニングテーマ。あらゆる難事件を解決する天才医師、天久鷹央(CV:佐倉綾音)の活躍を描く医療ミステリー逆転劇を情熱的に彩る、ブラスサウンドを導入したアップテンポなロックナンバーに仕上がっている。作品の内容やキャラクターに寄り添いつつ、Aimer自身にとっても自身の想いを重ねることができたという本楽曲の制作エピソードを中心に、NHK「みんなのうた」2025年2-3月放送楽曲「やさしい舞踏会」や「うつくしい世界」といったカップリング曲について話を聞いた。

 

天久鷹央と自分自身の共通点から導き出した新しい歌「SCOPE」

──ニューシングル「SCOPE」はTVアニメ『天久鷹央の推理カルテ』のオープニングテーマ。原作小説を読んだうえで楽曲制作に取り掛かったとのことですが、アニメ制作サイドからはどんなオーダーがありましたか?

Aimer:いろんなオーダーをいただいたのですが、その中でも印象的だったのが「(主人公の)天久鷹央のテーマソングになり得る楽曲」ということでした。

原作小説を読むと、謎解きシーンの爽快感はもちろん、その背景で鷹央と彼女を取り巻く人々の人間関係が丁寧に描かれていて惹き込まれる内容なのですが、その人間関係の機微というよりも、シンプルに彼女自身にフォーカスしたかっこいい楽曲にしてほしい、と。なので私も彼女に焦点を当てつつ、オープニングに相応しい華々しい楽曲にしたい気持ちがありました。

──ということは、まず天久鷹央のキャラクター像を掴んだうえで楽曲制作を進めたと思うのですが、Aimerさんは彼女にどんな印象を持ちましたか? 個人的にはかなりエキセントリックな人間だと感じましたが。

Aimer:おっしゃる通りでクセのある人ですよね。ただ私としては、主人公然としていると言いますか、主人公が持つべきアクをしっかり持っているキャラクターだと思いました。

 

 
見た目はかわいらしい女性だけど、中身はとても頭が切れる天才。でも、天才だからこそ人間関係において上手く立ち回ることができなくて、どこかに孤独を抱えている。そういうキャラの濃さがあったからこそ、自分の中ではわかりやすく彼女のことを掴むことができました。

主人公としての光と影をわかりやすく持ち合わせていて、なおかつその濃度がすごく濃い人間だと感じました。

──そんな彼女の“光と影”を楽曲に落とし込むにあたって、どんな部分にフォーカスを当てていきましたか?

Aimer:まず彼女と自分にはある種の共通点があると感じたので、そういう部分から作っていこうという想いがありました。

もちろん私は彼女のように天才的で完全無欠な頭脳を持っているわけではないですけど、彼女のいつも真実を掴みたいと考えていて好奇心がすごく旺盛なところ、人とは少し違う考え方をしているからこそ孤独を抱えているところには自分も共感しましたし、自分も鷹央の“光と影”の部分を少しずつ持ち合わせているので、そこに焦点を当てて作っていきました。

──Aimerさんの音楽は“光と影”で言うと“影”の部分が色濃く出ている楽曲の多いイメージがあるのですが、今回の「SCOPE」に関しては、先ほど「オープニングに相応しい華々しい楽曲にしたかった」とお話しされた通り、“光”の部分がより強く出ているように感じました。

Aimer:確かに。自分としても「オープニングテーマを歌う人」という印象があまりないんです(笑)。

もちろんオープニングテーマを歌う機会はこれまでのキャリアでもありましたけど、どちらかと言うとエンディングテーマを歌う機会の方が多くて。ただ、作品の顔となる楽曲を歌えるのはすごく嬉しいことですし、今回は自分としてもオープニングらしい楽曲を歌う機会が巡ってきたなと感じたんですね。

とはいえ、この「SCOPE」という楽曲が光一辺倒なのかと言うと、そんなわけでもなくて。曲調もちょっとダークな雰囲気が混ざっていますし、本来のオープニングらしさの中に自分の影みたいな部分を上手く持たせながら作れたと感じています。“影”の割合は少ないかもしれないですけど、それでも土台にあるものは“影”だと思います。鷹央も普通とはかけ離れた存在のように見えて、実はすごく人間らしい弱みを持っている人なので。

 

 

──やはりAimerさんは、ご自身の音楽を表現するうえで“影”や“陰り”の要素を大切にしているのでしょうか。

Aimer:大切にしているというか、自然とそうなるんですよね。自分のバックボーンにあるのは“光”というよりも“影”なのかなと思います。

──それこそAimerさんは「残響散歌」(TVアニメ『鬼滅の刃 遊郭編』オープニングテーマ)をはじめ、これまでにも様々な作品のオープニングテーマを歌ってきたわけですが、それらの経験が今回の制作に何か影響を与えていますか?

Aimer:それは自分でもすごく感じています。例えば「SPARK-AGAIN」(TVアニメ『炎炎ノ消防隊 弐ノ章』オープニングテーマ)のようなアッパーな要素もありますし、「残響散歌」のようなブラスサウンドも入っていて。自分が今までやってきたオープニングテーマの軌跡がこの楽曲に繋がっている感じがありますし、その1曲1曲があるからこの楽曲ができたんだと思います。

──歌詞はどんなことを意識しましたか?

Aimer:先ほどお話しした自分と鷹央の共通点、例えば無類の好奇心ですとか真実を追求したいところもそうですし、あとは常識にとらわれないところがすごく印象的で。彼女みたいな推理をするためには、いわゆる杓子定規なモノの見方や考え方にとらわれないことがキーになると思ったので、そういう部分を彷彿とさせるワードを入れていきました。聴けば鷹央の姿が自然と思い浮かぶ楽曲になればと思いながら作りました。

──サビの“常識通りのmeasureを捨て ただ真実を知りたくて”というフレーズは、まさに鷹央らしさを感じました。その一方でサビ後半の“ひた隠した声を 確かな形にして”はAimerさんらしさが出ているのかなと思って。

Aimer:本当ですか? 私もこの楽曲の制作を通して改めて、生きていくなかで自分の中の真実みたいなものにちゃんと向き合いたいと思ったんですよね。自分自身の中の声、自分の中の真実をちゃんと見据えてあげたいなと思いながら作りました。

──もちろんこれまでも自分の気持ちを偽って何かを作ることはなかったと思うのですが、今はより自分の気持ちを素直に出したいところがあるのでしょうか?

Aimer:自分の気持ちと言いますか、活動を続けてキャリアが長くなればなるほど、自分の中で「こうしなくてはいけない」と思い込んで凝り固まってしまう部分が出てくると思うんです。自分では意識していなくても、そういう無意識の中の齟齬がどうしても出てくる。

ただ、ありがたいことに、音楽は人生でたった1曲しか作れないものでは全然ないから、いろんな楽曲を作れるんですよね。その中であえて自分を解放する曲とか、鷹央みたいに自分の常識にとらわれないことが今後あってもいいのかなとは思います。

──今回の楽曲において、今まで以上に踏み込んだ表現や自分をより解放した部分はありましたか?

Aimer:こんなにも1曲の中に詰め込むのは初めてだった気はします。サウンドとしても隙間なくいろんな音が入っていますし、ボーカルも裏に掛け合いみたいなコーラスを入れていて。それこそ鷹央に似合う曲にするために私自身の濃度も高めていったところは、新しい一歩だったと思います。そうした方がこの作品の顔になれるだろう感覚があったので。レコーディングも細かく詰めるというよりも勢いで録れちゃった感じで、楽しく歌うことができました。

 

 

──これは個人的な感想ですが、この楽曲で歌っている“ただ真実を知りたくて”という言葉は、噂やフェイクニュースで溢れる現代においては、作品と離れた部分においても刺さるメッセージだと思うんです。

Aimer:そうですね……確かにこの楽曲がそういう今の時代にも合う楽曲になっていたら嬉しいですけど、私はそもそも“真実”というものは現実においてひとつではないと思うんですね。きっと人の数だけあるものだと思うので、だからこそいろんな見方をするのが大事だと思います。それが噂だったとしても、誰かから何かを言われたとしても、ひとつの方向からだけでなく、違った方向からも「これはどういうことなのかな?」と知ろうとすることが大切で。

この楽曲の中の“ただ真実を知りたくて”という歌詞は、物語としては鷹央が事件を解決することに即しているのですが、もし今の時代を生きる人に届けるとしたら、自分にとっての真実が何なのかを大事にしてほしいですし、私もそれを大事にしたいなと思っています。

自分にとっての真実を追求するためには多角的に物事を見なくてはいけないので……なんか変な話になりましたけど(笑)、この楽曲がそういうことを考えるきっかけになったら嬉しいですし、実際の世の中には白黒はっきりつけられないことが多いので、だからこそ音楽で爽快な気持ちになってほしいなって思います。

──素敵な言葉をありがとうございます。ちなみに「SCOPE」というタイトルは?

Aimer:それこそ鷹央が事件を解決する時に照準を合わせる、というイメージもありましたし、医療ミステリーということで、医療用語でもある“SCOPE”がピッタリかなという想いで付けました。

 

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