
制作秘話を語る!――ショートムービー「リコリス・リコイル Friends are thieves of time.」:足立慎吾監督×いみぎむる先生インタビュー
役者さんのアドリブなど笑って観られるショートムービー
──いみぎむるさんは、どういった経緯で参加されたのでしょうか?
足立:やりたいと言ってくれたので、「是非!」と(笑)。
いみぎむる:何本かやるのであれば、1本くらいやらせてくれないかなという話を、雑談か何かで言ったのが最初だったと思います。確かショートムービーの第1話のアフレコのときだった気がするんですけど。
足立:だいたい何本やるかも決まっていなかったから、1本増えてもいいんじゃない?くらいの感じだったんです。キャラクターを使って、こんな内容があったら面白いんじゃないかと思う人がアイデアを出してくれる。それを楽しんでもらうのがいいのかなと思っていたので。
最終的に作品らしさを担保するのは、僕がやればいいので、とりあえずやりたい人が、面白いと思うことを取り組めればいいし、このショートムービーを観て、自分も参加したい!という人がいたら、連絡ください(笑)。
いみぎむる:あと、本編のときに作っていた、喫茶リコリコの美術設定をもっと使いたいよねって話もありましたよね。
足立:ナイスフォローです。忘れてました(笑)。
──第1話でも裏口が出てきましたね。
いみぎむる:でも、自分の担当する第2話では、まったくそれを活かしてないんですけど(笑)。
足立:あなた、プロットも全部守ってなかったですからね(笑)。
いみぎむる:あはははは(笑)。それは言わないでください。
──それはどういうことですか?
足立:お話した通り、僕は打ち合わせにはいなかったので、どんな内容にするのかという話には立ち会っていなかったんです。だから、こういうのをやるんだっていうプロットを事前にもらっていたんですけど、いみぎさんから上がってきたネームが、全然違うもので(笑)。
いみぎむる:最初の打ち合わせのとき、こういうプロットはどうでしょうと言われたんですけど、いろいろあるアイデアの種のひとつだと捉えていたんです。だからいただいたものを一度持ち帰って、改めて自分のネームを描いたんですけど、いざ提出したら、偉い方がざわつく……みたいな(笑)。いやぁ、まさかこんなことになるとは思わなかったです。
──最終的には、いみぎむるさんのアイデアを活かす形だったのですね?
足立:そうです。いみぎさんがそれをやりたいと言うのなら、それを作ったほうがいいでしょうと。でも、いみぎさんに提案したプロットというのは、その後第5話にちゃんと活かされているので、安心してください。
いみぎむる:結果的に、どちらも形になって良かったです(笑)。
──第2話は、いみぎむるさんがネーム脚本、足立監督がコンテを担当されています。キャラクターをどこまで崩すのか、そのデフォルメ具合は、キャラクターデザイナーならではで、かなり踏み込んだものだったと感じたのですが。
いみぎむる:そうですね。漫画っぽい表現というか、僕から最初に出したのも、文字ではなく漫画のネームみたいな形だったんです。最終的な絵の表現という部分は、演出家のほうで調整してくれるだろうから、どのくらい残るかはわからないけど、描いてみたら、ほとんど残っていたので、嬉しかったです。
足立:ネーム脚本が面白かったので、コンテは、その要素を残しつつ、コマとコマの間をどう埋めていくのかというだけだったと思います。逆に、出来上がったのを観て、どうでした?
いみぎむる:めちゃめちゃいい感じで、最高でした!
足立:アニメは漫画と違って時間の概念があるので、そこをどう作っていけば面白くなるのかは考えたんですけど、いみぎむるさんが描いた絵に関しては、全部そのまま使ったと思います。コンテに、ネームの絵を貼り付けたので(笑)。
いみぎむる:いやぁ、本当にありがとうございます。
──すべて数分で終わるショートムービーで、かなり笑える内容だったのですが、おふたりが、ここは笑ったな、というエピソードはありましたか?
足立:毎回面白かったんですけど、笑っちゃうのは、基本的に収録のときになるんです。
やっぱり自分たちでコンテ・編集までやっていて、見すぎているから客観視できないんですよ。その画に対して、声優さんが予想外のお芝居をしてくれて、初めて面白くなったりするんですよね。だから毎回アフレコでは吹き出していました。
いみぎむる:自分が観た中でいうと、第3話は強烈でしたね。あのビジュアルはなかなかないですよ(笑)。
足立:あれ、面白かった? ちょっと作りながら心配していたんだけど。
いみぎむる:完成した映像を見て、こんなにちゃんと◯◯◯に見えるんだ!と思いました。
足立:わかってくれたなら良かった。視認性がちょっと心配で、短い中で2回くらい出しているので。
いみぎむる:でも、ショートムービーなので、何度も見返してくれるでしょうから。あれは強烈だと思います。
──たきなは本当に天才だなと思いました。声優さんのお芝居についてはいかがでしたか?
足立:そうですね。安済知佳さんは、千束を理解してくれているので。だから自由にやってもらいました。シナリオはあくまで素材で、安済さんがやったら千束、という段階にまで来ている気がするので、「それはちょっと違うんで」と言うこともないですよ。
──エンディングが流れたあとのやり取りは、アドリブだったのでしょうか?
足立:あのあたりは画がないので、自由にやってもらうことが多かった気がします。だいたいこんな内容なので、時間いっぱい使って、適当にやってみてくださいというのが、多かった気がします。
いみぎむる:僕は、ネーム脚本という形でしたけど、脚本は初めて書いたので、アドリブの指示とかは、あまり出さなかったんです。「ここアドリブで」って指示をしていいのかな?と思ったりもしたので、ある程度決まったセリフを提出していたと思います。なので他の話数を見て、アドリブをもっと入れておいても良かったのかな?と思ったりはしました。
足立:でも、アドリブと書くのは、基本的にはよくないことで、役者に考えてもらうところをたくさん作ってはいけないんですけどね(笑)。だからアイデアがあったらやってみてくださいとか、あくまで、あってもなくても問題がない、どちらでもいい場所でアドリブを入れてもらうほうが、役者さんにとっても負担が少なく、気が楽にできるのかなって思います。
いみぎむる:そうですね。現場で、本にはない、いいものを出してくれたりするので、負担なくやっていただきたいですね。
足立:ミカ役のさかき孝輔さんとか、良いものくれるんですよ(笑)。
いみぎ:第4話とか、バキバキにやっていましたからね(笑)。
──では最後に、ショートムービー「 リコリス・リコイル Friends are thieves of time.」を楽しみにしているファンへメッセージをお願いします。
足立:一応言っておきますが、そんなに期待しないでください(笑)。今回は本当におまけみたいなもので、新作アニメーションとは別物なので、リコリコの続きが見られる!という感じになると、がっかりされるのではないかと、ちょっと心配しています。だから、気軽に観ていただきたいですし、それが面白ければいいなぁという気持ちです。
いみぎむる:1本が短いので、何回も観てほしいですし、良かったら、良かったよという言葉を、足立監督まで届けてください(笑)。
足立:おかわりが欲しければ、言ってくださればとは思っています。
いみぎむる:僕はすでにおかわりを観たいです!
[文・塚越淳一]
作品概要
































