
アニメ『タコピーの原罪』上田麗奈さん(しずか役)×小原好美さん(まりな役)インタビュー|「心が苦しくなる覚悟を」オーディション秘話からアフレコ現場の葛藤、作品の魅力まで徹底解剖
色や音楽がついているアニメだからこそより、そのツラさが伝わってくる
──ハッピー星人のタコピーは、間宮くるみさんが演じられていますが、掛け合いはいかがでしたか?
上田:タコピーは純真無垢で、悪気なくいろんな言葉を掛けてくれるので、心がほぐされそうになってしまうのが一番大変で(笑)。実際、タコピーがいてくれたことで、少し表情がほころぶことも、第1話の中でもあったんです。でも、心がほぐれても、タコピーとの出会いで、しずかのこんがらがったものが全部ほどけるわけではないから、手放しで屈託のない笑顔を向けることはできないんですよね。
間宮さんが、本当に純真無垢に、思いが凝縮された言葉を掛けてくださるので、届くものがたくさんあるのに、しずかに届けてはならないという。そこで壁を作るようなイメージはありました。
──本当に、何の汚れもない声でしたよね。あの言葉が届く状態であれば、しずかも変わったかもしれないですね。
上田:自分自身をさらけ出せない状態にあるので、その中でどんな言葉を掛けてもらっても響きはしないというのは、そうなのだろうなぁと思いました。
ただ、言葉を掛けてもらって、しずかだけでなく上田麗奈としても涙が止まらなくなるようなシーンはあって、そこは間宮さんが本当に素晴らしいお芝居をされていたので、その思いの強さに、どうやっても涙は出てしまうよね、ということはありました。我慢をする部分が多かったからこそ、感動も大きかったというか。しずかのことを、こんなに泣かせてくれるんだ、って思いました。
──小原さんは、タコピーに関してはどんな印象を持ちましたか?
小原:最初にタコピーと向き合ったとき、なんてノーテンキな奴なんだろうと思ったんです。元気でかわいくて、何もわかっていない。その、人間のことをわかっていないノーテンキなところが、後半になると一番恐怖に感じるところになったりするんです。アフレコは全員揃った状態でやっていたんですけど、間宮さんの演じるタコピーが素晴らしいだけに、その元気で淡々とした感じが、だんだん怖くなりました。
しかも間宮さん自身は現場で、(間宮さんのマネを少ししながら)「やっぱ、ずっとこの感情を維持するのって大変だよね。だってかわいそうじゃん⋯⋯」っておっしゃるんですよ(笑)。間宮さん自身は、そうやってキャラクターに共感しながら、一緒に悲しんだりするんですけど、いざタコピーを演じるとなると、それができないキャラクターになるんです。だから、全員がいろんなことと格闘しながら演じていた印象があります。
──相手の演技に持っていかれないようにしたり、受けすぎないようにしたり、抑えたり⋯⋯感情と戦いながらの収録でもあったのですね。では最後に、アニメ『タコピーの原罪』を観て、魅力に感じた部分を教えてください。
上田:光と影の描き方が素晴らしいなというのがまずありました。日の光と影もそうですし、美しいところと汚いところの描き方も、とことん突き詰めているので、総じて光と闇の描き方が素晴らしいんです。しかも、そこにちゃんと意味があるんですよね。キャラクターの心情とか状況を汲んだ上で、コントラストを付けている。それは、色があるアニメーションだからこそ膨らませられるところなんだろうなと思いました。監督やスタッフの方々が、原作へのリスペクトを持って、細かいところまで汲み取って作っていることが、すごく感じられました。あと、タコピーの動きがかわいい!(笑)。
小原:原作の絵が、そのまま動いている印象があったので、原作のタイザン5先生も喜ばれるだろうなと思いました。あと、音がすごいんですよね。アニメって、デフォルメされたかわいい絵の世界とも言えるから、結構息のアドリブとかを入れるんです。例えば、ほかのアニメでは、振り返るときにアドリブで息の芝居を入れたりするんですけど、この作品は必要がなければ入れない。そこがむしろこの世界観を高めているなと感じました。
──それが生々しさとかリアルさにつながっていたような気はします。
小原:別のタイミングで明田川さんと話す機会があったんですけど、そのときに「ダビング作業をしていても心を持っていかれる」とおっしゃっていたんです。それを聞いたとき、全6話を通して、制作チーム全体が、本気でこの作品に向き合っているんだなと思ったし、戦ってきたんだなと思いました。それがフィルムからも溢れていたと思います。
上田:何だかアニメのほうがよりツラさが増していた気もしますね。劇伴もお洒落でかわいいし、絵もかわいい成分をすごく残しているんだけど、みんなのお芝居もあって、タコピーに見えている世界としずかたちが見ている世界の違いが、より引き立っているんですよね。この二つの世界は相容れないのかも?と思うとツラくなってしまって、アニメのほうがよりしんどいのかもしれないなと思いました。
小原:そうだね。タコピーから見えている世界はカラフルだけど、人間からすると暗かったりして、全然違うんですよね。色で恐怖を感じるって、あまりない経験だったかもしれない。
──この作品、たとえば映画のような長尺で、ずっと観続けていたら心が大変かもしれないなと、ここまで話を聞いていて思いました。ある意味1話ずつ、心を落ち着かせて観られるのがいいのかなと。
上田:それでいうと、1話ずつで区切っていたからこそ、最終話のオープニングの入りが本当に良いんですよ! これは完璧な流れだ!と思ってしまいました。まだ内容は言えないんですけど、このためのオープニングだったんだと思ってしまうくらい、すごく良かったです。そうやって良さを引き立てるという意味でも、全6話構成というのは良かったのではないかなと思っています。
小原:各話数の終わり方も、めちゃめちゃいいところで終わるんです。作品の展開もあるから次が見たくなる。ツラかったらやめていいんだけど、その先を見たいと思わせるものがあるんです。なので、最後まで観ていただければ嬉しいです。
[文・塚越淳一]
作品概要
















































