アニメ
『瑠璃の宝石』監督に聞いた制作秘話【毎週更新】

夏アニメ『瑠璃の宝石』監督・藤井慎吾さんインタビュー! 監督に聞いた制作秘話・裏話・見どころ【毎週更新】

2019年から「ハルタ」(KADOKAWA)にて連載中の渋谷圭一郎先生による漫画『瑠璃の宝石』がTVアニメ化! 7月6日(日)21時30分より各局にて順次放送開始となります。

アニメイトタイムズでは、放送に際して本作の監督を務める藤井慎吾さんにインタビューを実施! 毎週、各話の制作秘話や裏話をお届けします。ぜひ、放送に合わせてご覧ください!

関連記事
瑠璃の宝石
キラキラしたものが大好きな女子高生・谷川瑠璃(たにがわるり)は、「自分でも見つけられるかも!」と水晶を探しに山へと向かう。そこで鉱物学を専攻する大学院生・荒砥凪(あらとなぎ)と出会い、一緒に鉱物採集をすることに。ある時は水晶を探して山道を歩き、ある時はガーネットを拾いに川に浸かり、またある時は見知らぬ鉱物を顕微鏡で覗き――ルリはナギに導かれ鉱物採集の世界に飛び込んでいく。「私だって、採れるはず」それは、誰しもが抱いたことのある夢。本格サイエンスアドベンチャー始動!作品名瑠璃の宝石放送形態TVアニメスケジュール2025年7月6日(日)~2025年9月28日(日)TOKYOMX・BS11ほか話数全13話キャスト谷川瑠璃:根本京里荒砥凪:瀬戸麻沙美伊万里曜子:宮本侑芽瀬戸硝子:林咲紀笠丸葵:山田美鈴スタッフ原作:渋谷圭一郎(HARTACOMIX/KADOKAWA刊)監督:藤井慎吾シリーズ構成:横手美智子キャラクターデザイン:藤井茉由助監督:秋山泰彦総作画監督:藤井茉由 大田和寛プロップデザイン:二宮歩路 中井杏鉱物デザイン:CLUSELLER美術監督:吉原俊一郎美術設定:藤井一志色彩設計:土居真紀子撮影監督:尾形拓哉編集:岡祐司音響監督:吉田光平音響効果:長谷川卓也音...

目次

第1話「はじめての鉱物採集」 (7月8日更新)

──第1話冒頭、瑠璃が眺めている水晶をはじめ鉱物類がまるで本物かのように描かれています。鉱石類を描く際にはどのような部分へ注力されましたか?

藤井慎吾監督:『瑠璃の宝石』という作品上、鉱石・鉱物類に関するリアリティのある作画が必要だったので、CLUSELLERさんという鉱物画集も出している専門家のイラストレーターの方に声をかけ、作品に参加して頂きました。

実際には設定だけでなく、本編での鉱物作監や特殊効果のカットも担当して頂いています。

鉱物関係は原作者の渋谷先生とも何度も専門的なやり取りをしながら力を入れたところなので、本物のように見えたのならとても良かったです。

──上記のシーンで瑠璃の瞳の中に水晶が映っていました。その後、自分で水晶を取ることを思い立ち山に入った際に、瑠璃が凪を見上げる場面でも凪の姿が瑠璃の瞳に映りこんでいました。瑠璃にとって重要な出会いの場面でこういった演出が行われた印象がありますが、この意図やこだわりについてもお伺いできればと思います。

藤井慎吾監督:瑠璃にとって凪は憧れの人という解釈で演出していますね。1話だけではなく、他の話数でも瑠璃は凪について回って、真似したりとか、そういう感情が読み取れるような演出はやるようにしています。

また、これは自分のこだわりなのですが、自分の作品は通常のアニメよりも1話数あたりの総カット数が、80~100カット少ないので、その分1カットに多数の演出的意図を追加したりしています。瞳だけでなく、水面や、鉱物そのものへの映り込みなどの演出もありますので、探して見ると面白いかもしれません。

──背景描写について、お聞かせください。例えば瑠璃が入ろうとした山などは、どの場面も1枚の絵として非常に完成度が高い印象です。木の1本1本への傷の入り方、道中に生えている茸、足元や岩についた苔、虫たちなど細部までこだわりを感じます。背景はどんなところを大切にされたのでしょうか?

藤井慎吾監督:背景に関しても鉱物と同じでリアリティに手を抜くことが許されない作品だと思ったので、初期段階でリアリティのある背景の実績がある、美峰さんに伺わせてもらい頼む事に決めました。

実際に上がって来た物は素晴らしいのでそれが反映された感じになっていると思います。

──ここから本作の物語が始まることを予感させるタイミングでオープニングが挿入されました。この映像のコンセプトについても教えてください。

藤井慎吾監督:試行錯誤があったのですが、最終的には、瑠璃が凪と一緒に宝石探しをすると決意したところでオープニング、というタイミングが一番良いと感じました。

オープニングに関してはHeroさんというアニメーターの方にコンテ・演出を頼み、原画で参加してくれた方々を含めて素晴らしい仕事で、高揚感を予感させる良い映像になったと思います。

──背景の石や岩も同じものがないかのように見えたり、水面の反射や揺れ、日の光も演出や撮影、作画にかなり力が入っているように思います。こういったある意味リアルな描写をしているものと、二次元のアニメーションのキャラクターとを親和性高くひとつの画面上で描く際に気を遣っていることは?

藤井慎吾監督:背景がリアルでキャラの線が少ないアニメだと、どうしてもそのままだと浮いてしまうので、そこに存在感を持たせるような最終調整は、撮影さんや色指定さんにやって貰っています。

幸い、今回も前の作品と同様にMADBOXという優秀な撮影スタジオと、色指定の土居さんに頼む事ができたので、素晴らしいものを上げてくれています。

──第1話冒頭の唐揚げから本作でも料理の描写へのこだわりが感じられます。やはり料理や食べ物のシーンは大切にされているのでしょうか?

藤井慎吾監督:料理系の作画は大変なので、無理に追加したりはしないのですが、1話はシナリオ上必要だったのと、シーンを担当してくれたメインアニメーターの中井さんの能力が反映されたカットですね。から揚げを食べてあちあちみたいになっている瑠璃は作画さんの完全なアドリブです。

──いよいよ放送開始となりましたので、最後に視聴者のみなさまへ一言お願いします。

藤井慎吾監督:高校時代に地学専攻、大人になってからも古生物学・地学にずっと興味があり調べたりしていたので、この作品を読んだ時、自分が好きな地学の作品の監督をやりたいという思いが強くありました。

鉱物学と言うサイエンスをメインにした作品ですが、この作品を見る事で少しでもいろいろな人が鉱物学や地学に興味を持ってくれるなら嬉しいと感じます。どうか、最終話まで視聴よろしくお願いします。

第2話「金色の価値」 (7月15日更新)

ーー今回は砂金の採取が主に描かれました。瑠璃と凪もいくつか取っていた金の質感をアニメで表現するにはどんな点に苦労されましたか?

藤井慎吾監督:金(GOLD)は人間にとってかなり特別な金属なので、リアルな質感には拘りたいなとは思いつつ、アニメ的な見栄えも重視で入れ込んでいる感じです。特に黄鉄鉱と金とで見た目の違いのバランスには苦労した点です。

ーー第2話も第1話とはまた違ったシチュエーションでの採取になっています。ロケハンなどはかなり苦労されたのではないでしょうか。こちらについてのエピソードはありますか?

藤井慎吾監督:実際にガーネットや砂金取りのロケハンなど色々な場所に出向いて参考写真などを取りました。ガイドさんや専門家の人に説明してもらったりもして楽しかったですね。自分がきつかったのは山登りですが(笑)。

ーー前回に引き続き、凪の小憩ではかなり詳細に鉱石の紹介がなされています。一時停止してじっくり読みたい人も多いかと思いますが、こういったものを入れた意図は?

藤井慎吾監督:内容が多少アカデミックな箇所もあり、全てを本編映像だけで説明するのは無理だと感じたので、より深く知りたい人の為に追加したカットになります。実際にリアルタイムであの文字量を読むのは無理だと思うので、放送終了後に公式サイトや公式SNSで楽しんでもらえたらと思っています。内容も基本的には原作準拠ですが、中にはアニメ新規のカットもあるので楽しんでもらえるとありがたいです。

ーー水に濡れた瑠璃の描写にもリアリティを感じました。水濡れをアニメで表現するのは中々難しそうに思うのですが、こだわっている部分はありますか?

藤井慎吾監督:作品柄、川が多く登場するので濡れた服の設定などの描き方はキャラクターデザインの藤井さんがこだわっていましたね。自分のこだわりというよりは、原画さんの画力や力量が発揮されるカットではあるので、そこが重要だと思います。

ーーラストシーンで、自分の見つけた砂金の塊を絶対に手放さないと言う瑠璃の無邪気な笑顔が印象に残る人も多そうです。このラストシーンに向けてこのエピソードを組み立てていく上で、どんなポイントを意識していたのかもお伺いできればと思っております。

藤井慎吾監督:“金銭的価値よりも大事な物がある”というこの話数で一番重要な、瑠璃の心情的変化が明確になるシーンなので、最初から上手いアニメーターさんに頼むことを前提としていました。演出的盛り上がりをそこに上手く持っていく秋山(泰彦)君のコンテと、中井(杏)さんという素晴らしいアニメーターの原画のおかげで素晴らしいシーンになったと思います。

ーー前回語っていただいたオープニングと同様に、エンディング映像についてもコンセプトやこだわりなどをお聞かせいただけますと幸いです。

藤井慎吾監督:エンディングについては以前の監督作品でもお願いをしたスーパーアニメーターの方にやってもらっています。内容も基本的にその人にお任せなのですが、曲がしんみりとしたシリアスな感じなのでそれに合った映像をお願いしました。動画まで自分で担当されている方なので、原画さんと撮影さんの完全に2人だけで作った映像ですね。いつもながら凄いです。

ーー第1話のAパートとBパートでも瑠璃の服装が変わっていましたが、今回は前回よりも瑠璃の恰好が山歩きに適したものに変わっていたり、川に行くことを想定した服装のように感じました。この服装の移り変わりにはどんな意図があるのでしょうか?

藤井慎吾監督:2話の冒頭でハンマーを買っているのも含めて、まずは凪の真似をして形から入ろうとしている瑠璃、という感じです。最初は単なる真似ですが、徐々に専門的な事にも興味がわき、少しずつ成長していくという描写になります。服装の変化はその始まりですね。

第3話「残された恒星(ほし)」 (7月22日更新)

ーービスマス結晶を制作していましたが、ビスマス結晶の酸化膜と酸化膜を剥がした部分の質感の差だったり、骸晶の虹のような色々な色が混ざった部分の質感は再現が難しそうな印象です。どんな部分に苦労しましたか?

藤井慎吾監督:作画で動きはある程度作成しましたが、最終的に虹色はMADBOXの撮影さんにとても頑張っていただいたシーンになりました。優先して時間もかけたカットだけあり、すばらしいビスマスの質感の出来になったと思います。

ーー伊万里曜子の本格的な登場回となりました。瑠璃と凪のふたりだったところに新たなキャラクターが加わりましたが、彼女の登場するシーンの演出はどんな部分に気を付けていましたか?

藤井慎吾監督:年齢もそうですが、意味的にも凪と瑠璃の間のキャラという位置づけで描きました。最初から大量に古本を持ったちょっと変わった人として出てくるので、インパクトはあったと思います。

ーー掃除中に瑠璃が発見した古い地図は昭和初期のものとなっていました。作中ではこれと新しい情報を組み合わせて廃坑跡を探す流れになっていましたが、アニメで描く際にはどんな資料を参考にしたり、どんなロケハンを行ったのでしょうか?

藤井慎吾監督:古地図は演出の石井(章詠)さんが図書館などで調べてきてくれましたね。それを元に貼り込みを作って貰う形でした。蛍石は『笹洞蛍石鉱山』のツアーで許可を取り実際にロケハンさせて貰いまして、とても貴重な体験になりました。

ーー終盤、蛍石の鉱脈が宇宙のようになっていたシーンがありました。伊万里が自分でこの先も調査すると決める理由になった場面のように思いますが、演出はどんな部分にこだわっていたのでしょうか?

藤井慎吾監督:とにかく伊万里が感動したときのような風景を再現したいと思いました。ロケハン時に幸いにも同じような写真を実際に撮らせていただいたので、それを参考に劇的なカットになるよう、カメラワークも含めて構成したつもりです。かなり難しいカットだったので撮影と背景のスタッフに感謝しています。

ーー凪の大学の研究室について。なかなかの散らかり様ですが、掲示されている資料がしっかり読めそうなものになっています。また、積みあがっている本たちも色々なものがありました。このあたりはどんなところにこだわって決めていったのでしょうか?

藤井慎吾監督:研究室に関しては、実際に原作者である渋谷先生の研究室の写真を頂いて、その写真を主に参考にした感じです。本のハリコミもそちらを参考に作って貰い、とにかく現実の研究室っぽくリアリティを出す感じに努めました。

第4話「砂を繙(ひもと)く」 (7月29日更新)

ーーAパート、夜の大学で凪が星空を見るシーン。この光景が後程見られる顕微鏡で砂粒を見るシーンのシャーレの中を思わせます。本作は空を効果的に使って物語を演出している印象を受けましたが、この意図やコンセプトなどはありますか?

藤井慎吾監督:そこまで意識はしていませんが、壮大さを表すのに星空・宇宙はやはりうってつけなので、そういう印象を持たせたいシーンでは使っているかもしれません。天文学も地学に含まれるのでそういう意味では地続きだと思っているので、ちゃんと描けたら効果的だと思います。

ーー大学の研究室での描写が登場しました。外に出て鉱物を探すだけでなく、必要な知識を得て実践する、地道な繰り返しが印象に残ります。それに応じて狭い部屋と外との場面転換が増えていますが、この両者の情景を描く上で工夫している点を教えてください。

藤井慎吾監督:この作品で一番多く出てくる場所がこの大学の研究室なので、初期段階から優先して3Dガイドを作ってもらい色々な小物やどんな角度が出てきても大丈夫なように対処しました。

室内だけで画面が退屈にならないように、外の情景との対比も勿論描いて貰った感じです。

ーー顕微鏡で見た砂粒をアニメで描くというのは他では中々ない描写かと思うのですが、この砂粒ひとつひとつをアニメーションで描く上で苦労したこと、工夫したことを教えてください。

藤井慎吾監督:顕微鏡では超アップになる以上、ディテールに手を抜く事は出来ないので、背景と作画と鉱物特効と撮影で連携して手分けをした感じになりますね。具体的には目立たせたい鉱物は作画と鉱物特効、それ以外は背景でディテールを合わせ、撮影でリアリティのバランスを取ってもらうという感じでした。

ーー磁石を使って磁鉄鉱を調査する砂から取り除こうと思い立つシーン。理科の実験などを思い出すような描写でしたが、砂粒を磁石にくっつけて集めるという描写をアニメーションにする上での苦労はありましたか?

藤井慎吾監督:あのシーンは直接、作画監督の大田さんと相談して、参考映像を見せながら「こういう風にして欲しい」と伝えた覚えがあります。シンプルですが意外とリアルにやるのは難しそうなカットでした。

ーー川砂を調査して産地を辿る方法を凪が解説するAパート終盤のシーン。ミニキャラとなった瑠璃がコミカルに動いて中々可愛らしいのですが、この時の「あった」「なかった」「あっち」などのボイスは様々なパターンがあったように思います。収録時のディレクションや演出方針について、お聞かせください。

藤井慎吾監督:ミニキャラの台詞は元々文字だけで声は予定してなかったのですが、声優さんがアフレコであててくれまして、それがとても可愛くて面白かったので実際に使用する事になりました。他の話数でもちょこちょこ出てきますのでお楽しみに。

第5話「見える世界、見えざる世界」 (8月5日更新)

ーー今回は海でのメノウ採集のシーンがありました。メノウのひとつひとつ違う縞模様で色まで違い、昼と夕方とで色合いも少し違って見えます。このあたりの彩色や撮影でのこだわりや苦労をお教えください。

藤井慎吾監督:瑠璃が凪の考えを聞けるという、原作でもかなり重要なシーンに繋がるものなので、瑪瑙(メノウ)だけではなくシーン自体にも拘ってもらいました。ただ、キャラクターより瑪瑙の作画は線が多く、キャラクターがよく持って動くのでちょっと大変そうで、申し訳なかったです。

ーー海での採集ということで、瑠璃、凪、曜子の服装がそれぞれ涼しげな印象でした。各自の個性が出ていますが、今回の服装設定のポイントもお聞かせください。

藤井慎吾監督:涼みに海に行くという目的も入っているので、全体的に夏っぽい服装になるようにした感じですね。実はシナリオ段階では、瑠璃が海水浴だと思っていて浮き輪とシュノーケル装備した水着で車から飛び出してくるというシーンもあったのですが、結局相談の結果無くなりました(笑)。

ーー瑠璃の砂の採集がかなり手慣れてきた印象です。作画や演出でこういったキャラクターの成長を描写するうえでこだわっていること、心掛けていることはありますか?

藤井慎吾監督:急激ではなく、話数ごとに徐々に成長しているように気を付けています。瑠璃の成長も作品のテーマの一つなので、そこは大事にしていますね。

ーー山の中の蛇紋岩の塊の描写について教えてください。少し緑がかっていて他の山の景色から目立っていますが、描写する時に気を付けていたことはありますか?

藤井慎吾監督:蛇紋岩に関しては小さくてかなり緑に近い物から、巨大なものとして少し緑がかった物があるので、そこは写真参考を背景スタッフと共有して描いてもらいました。拘っただけあって、とても巨大感のある素晴らしい蛇紋岩を描いていただけたのでありがたいです。

ーー海沿いの空や雲の描写が非常に美しいと感じました。こういった空の描写で参考にしたものなどはあるのでしょうか?

藤井慎吾監督:個人的に自分は夕方の描写が好きなので拘ってしまうのですが、赤と青のグラデーションのかかった空が一番好きで、それを参考にしている感じではありますね。この作品では特に、この後に登場するあるキャラクターと瑠璃との対比をこの色で暗喩できないかと、意図しているところもあります。

第6話「その青をみつめて」 (8月12日更新)

ーー青龍寺神社の由来を描いたシーンなど、今回は大昔の描写がいくつか登場します。瑠璃たちの生きる現代とは雰囲気の違う映像に仕上がっていましたが、こちらはどのようなコンセプトがありましたか?

藤井慎吾:大昔の場面は天保という江戸時代後期の時代設定なので、その時代にあった日本画のタッチの表現にしてもらいました。現代とあえて切り離すことで、神社の由来や土地に根付く物語の重みを、視聴者にも肌で感じてもらえるよう意識しました。

ーー自ら川砂を見ようと提案したり、自分の調査に不安を覚えたりする瑠璃が見られました。教えてもらうだけでなく自分で行動するという成長が見られましたが、今回の瑠璃を描く上で気を付けていた部分はありますか?

藤井慎吾:サファイア編の第一部のラストなので、“自分で決めて動く瑠璃”を描くことを意識しました。まだ不安や迷いはあるけれど、それでも一歩を踏み出す。その姿を視聴者に見せることで、彼女の成長がリアルに感じられるようにしています。行動のきっかけや台詞は、成長の証としてしっかり印象に残るよう調整しました。

ーー泥岩とホルンフェルス、このふたつの違いをアニメーションで描写する上ではどのような部分にこだわっていますか?

藤井慎吾:見た目の色味や質感はもちろんですが、触れたときの感覚まで想像できるような描写を意識しました。泥岩は泥が固まった岩なので、アップになった場合に大きい粒ではなく、細かい粒子が見えるような感じにしてもらっています。

ーーこれまで瑠璃と関わって色々教えてきた凪が、「ここまで来られたのは瑠璃のおかげだ」と語っており、視聴者的にも感慨深くなります。このシーンに向かうまでの凪の描き方について、こだわった点や気を付けていたところも伺いたいです。

藤井慎吾:ここまで少しずつ努力・成長して来た瑠璃とのやり取りを通して、その積み重ねを見ていた凪が自然に「この台詞」にたどり着くよう、会話の間や表情の変化を丁寧に積み上げました。唐突に感謝を述べるのではなく、ここまで一緒に歩んできた時間の重みが滲むようにしています。

ーーエンディングまで飛ばさずに見ると「サファイア」という曲名や楽曲の歌詞が心に沁みました。様々な苦難がありつつも、サファイアを見つけるために一途に頑張った瑠璃の苦労が思い出されますが、前半の山場を作るうえで、意識されたことはありますか?

藤井慎吾:原作からサファイア編は長編で、科学的アプローチで見つけることを含めて、この作品のテーマにとっても重要な話です。なので、4話の顕微鏡の回なども飛ばさずに描写し、他の話数でも徐々に積み重ねを描く事を意識しました。

第7話「渚(なぎさ)のリサイクル工房」(8月19日更新)

ーーアバンから過去が描かれるなど、今回は硝子にフォーカスが当たったエピソードになっていました。物語を組み立てていく上でのコンセプト的な部分をお教えいただけますか?

藤井慎吾監督:原作でこの話を読んだ時に非常に共感し、“是非この作品をアニメ化したい”と感じた自分にとって思い入れが深い話数です。シリーズ構成の横手(美智子)さんからも「この話数は監督自身が脚本をやってみてはどうか」という提案もあったので、実際に脚本を担当させていただきました。アバンで過去を描くことで、視聴者が彼女の背景を理解した状態で本編に入れるようにしています。構成上の狙いは、「彼女の行動や選択がなぜそうなるのか」を早い段階で腑に落ちる形にすることです。

少し控えめで、感情をあまり表に出さないキャラクターである硝子が、自分の好きなことを認めてもらうという軸を、硝子個人の視点から深める回でもありました。

ーー瑠璃たちの遊泳シーンでの海岸に対して、凪や曜子と採集に訪れた海岸には漂着物がところどころに落ちているなどかなりリアルです。この海岸の描き方でこだわった部分もお話いただけますか。

藤井慎吾監督:漂着物の描写などは、実際に演出の堀(雅歩)くんと作監の内山(玄基)くんたちが、海岸をロケハンした経験をもとにしているみたいです。綺麗な海岸もあれば、流木や漁具、色あせたプラスチック片が散らばる場所もあります。採集目的で訪れる海岸は、環境の変化や人の営みを感じさせるほうがリアルだと自分も思いました。

ーー今回は曜子が非常に頼りになった印象があります。硝子にも頼りにされているようで、終盤には硝子が自身の将来について相談したりも。今後のこのふたりの関係性に注目してほしい部分はありますか?

藤井慎吾監督:曜子は状況を冷静に整理できるタイプです。硝子にとっては、自分が弱みを見せても受け止めてもらえる数少ない相手になっていきます。単なる友達以上に、人生の方向性に影響を与え合う関係になっていくのではないでしょうか。

ーー今回はエンディングが少し異なるものとなっていました。硝子の“これまで”と“これから”が短い映像の中で描かれている印象を受けたのですが、このエピソードで特殊なエンディングにした理由と映像を作るうえで意識したことをお聞かせください。

藤井慎吾監督:元々脚本段階では自分がコンテ・演出もやる想定でしたので特殊EDまで考えていましたが、物量的にこなせなくなりあきらめていた所を、演出と作監の若い2人が是非やりたいと言ってくれたので復活させた形になります。4人目のメインキャラではあるのですが7話という少し登場が遅い事もあり、特殊EDでエピローグも描写してあげて視聴者にインパクトを残したかったという狙いもあります。

ーー実際にネットで調べてシーグラスや銀化ガラスの実物の写真を見てみましたが、その再現度に驚きました。特に、構造色をアニメで再現するのは難しい部分があったのではないでしょうか?

藤井慎吾監督:構造色は本当に難しかったです。単に虹色を塗っても嘘っぽくなってしまうので、撮影処理と特効の合わせ技を使いました。特に動くカットが大変だったので、撮影スタッフさんには苦労をかけたと思います。

第8話「黄昏色(たそがれいろ)のエレジー」(8月26日更新)

ーー瑠璃と硝子がふたりで自由研究に取り組むエピソードでした。同級生で同じ鉱物採集をする仲間が増えたことでまた違った雰囲気が生まれています。制作時にはどんな苦労がありましたか?

藤井慎吾監督:鉱物採集って、実際にやるととても静かで地味な時間が多いんですよね。その間をどう映像として面白く見せるかが課題でした。7話で少し共通点が生まれたふたりの距離感が、8話で少しずつ縮まっていく様子を、少しずつ伝えることにこだわっています。

ーー水質調査がアニメで描かれることは中々ないかと思います。地味だと思われそうでも視聴者を飽きさせずワクワクさせてくれましたが、演出面で工夫したことはありますか?

藤井慎吾監督:水質調査って聞くと理科の授業っぽいですが、透明度や匂いをチェックするのは、現場でしかできない手がかり探しのような感覚。淡々と数値を測るだけじゃなく、「次に何がわかるんだろう」という期待を視聴者に持たせたいと思いました。

ーージンカイトを見つけた廃工場は、お化けでも出そうな雰囲気がありました。こういった建物をアニメに登場させる際に参考にしているものはありますか?

藤井慎吾監督:廃墟はただ暗く描くと怖さしか残らないので、「人がいた痕跡」や「時間の経過による色褪せ」もちゃんと入れるようにしています。壁の錆や剥がれたペンキ、植物が入り込んだ窓枠など、リアルな廃墟写真を参考に、空気感を作りました。実際の設定自体は色々な廃工場を参考にコンテの黒沢守さんが作ってくれました。

ーージンカイトは創造性や個性を象徴するものだと見られるそうですが、そんな石を自分の好きなことを隠してきた、抑えてきた硝子と手に入れる物語の流れにはグッとくる方も多そうです。アニメにする際はどんなことを意識されたのでしょうか?

藤井慎吾監督:ジンカイトを見つけた瞬間は、硝子の内面が解放される象徴的な場面なので、彼女の表情や息づかいを大事にしました。個性を認めてもらえる喜びを、宝石の輝きとリンクさせるのが狙いでした。

ーー森の中を歩いている時のキャラクターたちへの影の落ち方が非常にリアルに思えました。ここまでのリアリティを持たせるためには、かなりの苦労があったのではないでしょうか?

藤井慎吾監督:1話の段階で、木漏れ日の描写を最初は全て撮影処理で行こうとテストしたのですが、あまり上手くいかなかったので方針転換し、共通の木漏れ日のマスクデータを作画で作成しました。それをカットごとに微調整しながら撮影で乗っけてもらうという形になっています。森の影は一定じゃなくて、葉の揺れや雲の動きで刻々と変わりますので大変ですね。

第9話「190万トンのタイムカプセル」(9月2日更新)

ーー今回は風景写真や街角スナップ、ポートレート的な印象に残るカットが特に多いように感じました。(倒れた自転車のタイヤを前ボケに置いた川岸での瑠璃と硝子の後ろ姿のカットなど)こういった方法でキャラクターや見せたい建物に視聴者の視線を誘導する上での注意点やこだわりをお教えください。

藤井慎吾監督:空間やボケ表現など、基本的には今回が初コンテ・演出のみとんさんが徹底的にこだわったところになります。話数は9話ですが実際の制作時期はほぼ1,2話と同時期でかなり初期に近く、そこからずっとこだわって作っていた話になりますね。3Dレイアウトのカットも全て演出本人が出しています。そこまでこだわらないとこの画面を作るのは難しいと言う事ですね。ボケ表現やピン送りは効果的に使えば1カットの情報量を上げる事に繋がりますが、使いすぎると過剰にみえるか意味のない演出になってしまうので、そこを注意点として意識していました。

ーーまた、キャラクターたちの細かい仕草やその演出も印象に残りました。各キャラクターごとに個性が出ていて派手なアクションはなくとも活き活きとしているように思えたのですが、それぞれのキャラクターをアニメで動かす上でどんなところに気を付けていましたか?

藤井慎吾監督:基本的にキャラの性格がハッキリしている作品なので、瑠璃は『とにかく考えるより先に一番元気に動く。』伊万里は『おっとりしていて山登りでは疲れている。』凪は『落ち着いて大人びた感じ。』瀬戸(硝子)は『冷静だけど若いので好奇心はある。』などの設定はコンテ段階で各話演出に共有した感じです。

ーー凪や伊万里にアドバイスを求めて大学へ向かった後、凪がいつもと違う服に着替えるというシーンがありました。オシャレなものばかりでしたが、服装選定のこだわりも伺わせてください。

藤井慎吾監督:実はこれアニメオリジナルではなく、単行本未収録の原作の番外編にあるネタなんですよ。連載誌のハルタ100号記念の特別冊子に収録されています。そこから内容をこの話の前後関係にスムーズに入れられるよう、若干アレンジした感じです。この一連は特に上手い若手のアニメーターが担当してくれていますので、すばらしいカットになったと思います。

ーー序盤の図書館での窓や机、河原で硝子がペットボトルを持ち上げたシーン、終盤のオパールを見つけた水場など、今回は光の反射の演出が凄く幻想的な印象を受けます。特に注目すべきポイントやこだわった部分も伺わせていただければ幸いです。

藤井慎吾監督:後半は特に水辺のシーンが多いので、反射など撮影処理で頑張ってもらいました。特に、ラストのオパール溜まりを見つけるところと夕焼けの中みんなで遊ぶところ、この二つはシナリオ段階から幻想的なシーンにしたいと指定した所になります。実際に素晴らしい画面になって良かったです。余談ですが、オパール溜まりが三日月型なのは、大雨で水位が上昇した時に川がカーブしているところで、そこに打ち上げられたものが偶然残った、という設定になっています。

ーー何気ない一コマではあるのですが、山に入ってから野鳥が木にとまるカットがありました。このあたりから季節が夏であることや瑠璃たちが歩いている場所が渓流に近いなどの予想が出来そうですが、こういった部分も狙ってやっていたりするのでしょうか?

藤井慎吾監督:基本的に1話から自然描写を多く入れて欲しいとやっていますね。動物や昆虫などが時々出てくることで、自然の中を探検しているという形にしたいという狙いがあります。トンボには翅を閉じて止まるタイプと開いて止まるタイプがいてですね……。トンボはその場で羽ばたいてから飛び立ちますが、鳥は軽くジャンプしてから羽ばたきます、みたいな動作の話も打ち合わせでした覚えがあります。

第10話「ワンセンテンスの廃線路」(9月9日更新)

ーー今回は凪と予定があわず、伊万里が主軸となって採集に臨みました。凪がいないことで普段とは違う雰囲気の話数に感じたのですが、どんなところに主眼を置いて制作されたのでしょうか?

藤井慎吾監督:伊万里のメイン回という事もあり、凪とはまた違った伊万里の良さを描写したいと思いました。隧道(ずいどう)の崩落を目にして、安全が担保できないので退却。という判断を下すのは、今後の瑠璃の成長にも大事なところで必要のあるシーンだと思います。また、空想と現実の狭間の幻想的な描写も原作から少し増やしたところです。

ーー伊万里の読んでいた小説で描かれた過去と瑠璃たちの生きる現在とが交差し、鉱物から昔の人たちの生活を知るという展開も印象に残ります。こういった部分の考証やロケハン等にはどんな苦労がありましたか?

藤井慎吾監督:機関車も出てきますので、実際に国立科学博物館に参考写真を撮りにいったり、ミニチュアのSLを参考にしたりしました。

ーー山に入った後の環境音に、様々な虫や鳥の鳴き声が含まれているように思います。こういった本作における音の部分でのこだわりも伺えますか?

藤井慎吾監督:自然描写が多いので、動物の鳴き声や川のせせらぎなどの環境音は大事にして欲しいと最初から伝えました。特に夏なのでいろいろな音が聞こえる感じですね。ほしい音などはある程度は指定しながらも細かい所はほぼ音響効果の長谷川卓也さんに任せている形になります。

ーーバラ輝石と菱マンガン鉱とで色合いにかなり違いがあったかと思います。この違いを描く上で苦労したことや気を付けていたことは?

藤井慎吾監督:どちらもピンク系で単独では混同されやすいので、落ち着いた透明感と彩度でバラ輝石を際立たせ、菱マンガン鉱は結晶部分の華やかで明るいピンクと赤色で対比させるよう意識しました。

ーー瑠璃の服装が山歩きに適した格好になっています。序盤から考えるとかなり山歩きへ慣れたことを感じさせるのですが、それでも伊万里や硝子よりもおしゃれな印象も。各キャラクターの山歩きスタイルについて、コンセプトや参考にしたものなどはありますか?

藤井慎吾監督:瑠璃は山歩きに適してない序盤の服装から、徐々に装備を本格的なものにしていくコンセプトが最初からありましたね。ただし可愛いもの好きなので手袋のデザインなど、多少こだわりは見えるような感じです。伊万里はフィールドワークが主体ではないので過剰に重装備、瀬戸(硝子)はバランスよく、凪はほぼ変化しないといったスタイルになります。

第11話「サファイアのゆりかご」(9月16日更新)

ーー今回はこれまでの積み重ねを踏まえつつ瑠璃が選択科目を決め、今後の指針を得るまでの流れを描いていました。このエピソードを構成するうえで、どんなところにこだわりましたか?

藤井慎吾監督:これまでのエピソードで積んできた瑠璃の観察、石に触れてきた経験をただの背景にせず、科目選択という日常的な決断に反映させるという展開にしました。最後は「瑠璃が何を選んだか」よりも「どういう心境で選んだか」を強調した感じですね。

ーー大学の石工室で石を削り過ぎた伊万里。顕微鏡用だと思われるスライドガラスに残る傷や微妙に残っている石の黒っぽい部分の質感がリアルに感じました。これをアニメーションの中で再現する上での苦労やこだわりをお聞かせください。

藤井慎吾監督:このあたりは鉱物特効(CLUSELLER・福田 直征)さんが頑張ってくれたところになりますね。完全に写実的に描くのではなく、光やノイズの扱いでリアルに感じる質感を再現されているのがすばらしいです。

ーートリムソーで瑠璃が石を切断する描写がありました。アニメーションではあまり見ない描写かと思うのですが、このシーンを描く上で注意した部分は?

藤井慎吾監督:原作の渋谷圭一郎先生から資料を提供していただいた上で、実際に動画などでも調べ、それを元に描写しています。若干濡れている描写や、巻き込み事故回避に素手で作業する大事さなどもこだわったところです。

ーー偏光顕微鏡の描写について、偏光板を噛ませた時のステンドグラスのような描写が綺麗でした。何色も重なっていて再現するのが難しそうだなと思いましたが、苦労された部分はありますか?

藤井慎吾監督:偏光顕微鏡と薄片描写は最初から難易度が高いと分かっていたので、エビデント社さんにお願いして取材をさせて貰いました。担当者に動作の説明や見え方など、色々と詳しく教えていただいたので、それが実際の映像にも反映されていると思います。薄片の映像もその時に撮った実際の写真などを参考に背景に描いてもらっています。

ーーラストシーン、凪の前で瑠璃が石のことを知り続けていきたいと語る場面。最後にやっぱり綺麗な石が好きだと語る場面は特に印象に残る人も多いと思います。ぜひこのシーンの作画や演出、収録などでこだわった部分も語っていただければ幸いです。

藤井慎吾監督:石という題材を超えて瑠璃自身の核を言葉にする瞬間なので、派手さを削ぎ落とした静けさと透明感が最大のこだわりです。これまでの積み重ねはこの一言に帰結するんだ、と感じられるように、細部を徹底して調整したのがポイントでしょうか。

人間は古代から役に立つ硬い石だけでなく「光る石」や「透き通る石」、つまり「綺麗な石」に特別な意味を見出してきました。ただ硬い、役に立つ以上の価値、美しさへの信仰です。

瑠璃が最後に言うその一言は、単なる少女的感性ではなく、「人間が太古から抱いてきた石への根源的な憧れに自分も連なっていることの告白」「科学的に調べたいという理屈を超えて、理由を超えて惹かれてしまう感覚の肯定」つまり、人類史の普遍的な眼差しを背負った“好き”だと思います。

ーー以前登場した青龍の伝説が、今回蔓で隠されたサファイアの発見に繋がる流れが見事でした。瑠璃があそこで満足せずに頑張ったからこそ視聴者もこの光景が見られたという流れになっていましたが、やはりこの回に向けて布石を打っていた部分があるのでしょうか?

藤井慎吾監督:そうですね、探求に終わりはないというのも強調したかったですし、この話につなげられるように構成した感じになります。6話ラストの「続行」への答えですね。

第12話「想い出は石とノイズと」(9月23日更新)

ーー周防神社のお祭りを見かけたところから、瑠璃の祖父の鉱石ラジオを修理するという物語になっていました。今回は監督も脚本に関わられていますが、どんなところを主軸において制作されましたか?

藤井慎吾監督:最終回前に軽いクッションと展開を挟むという意味と、笠丸は原作ではこの後のエピソードでメインキャラの1人になるのですが、今回のアニメではそのエピソードまで描く事ができなかったので、何か高校生組メインで1話数作れないかという提案から始まった形になります。脚本会議で渋谷圭一郎先生から『鉱石ラジオ』の大まかなエピソードを提案していただき、それを軸に相談しながら構築しました。自分が脚本クレジットもされていますが、実際には渋谷さん、横手(美智子)さん、との共同制作みたいな形になっています。

ーー鉱石ラジオにこの作品を通して初めて触れる方もいると思いますが、作中で描く際にこだわっていたことをお教えください。

藤井慎吾監督:実際に鉱石ラジオを作る所から始めました。12話は助監督の秋山(泰彦)くんのコンテだったので、本人に鉱石ラジオキットを購入して作ってもらい、さらに劇中に出てくるオリジナルラジオも作ってもらいました。劇中のラジオのデザインもそれを参考に描かれています。

また、鉱物以外にラジオの専門的知識が必要だったので、日本ラジオ博物館の岡部さんに監修をお願いしています。チェックも早く、アイデア出しまでしてくれまして本当に感謝しています。

実は、最後の方の凪の台詞は岡部さんの提案なので、ほぼ脚本にも影響を与えている形になっていますね。

ーー瑠璃たちが修理前の鉱石ラジオもそうですが、途中に登場したベリフィケーション・カードなど、古びた作中のアイテムたちの描き方が印象に残ります。こういったアイテムを描く際に気を付けていたことは?

藤井慎吾監督:実際にあるものなので、そこから離れすぎ無いようにリアリティを重視した感じです。ベリカードのデザインも岡部さんが実際のベリカードの画像を送ってくれたので、それを参考にしています。作中だと作ってから年月が経過しているので、錆や腐食が進んでいるのでその表現に気を付けました。

ーー周防神社で遂に鉱石ラジオを祖父と同じ鉱物を使って聴くことができ、オープニング「光のすみか」が流れてくるという演出に感動しました。ここへ繋げるまでに意識していた部分、こだわっていたことなどもお話いただければ幸いです。

藤井慎吾監督:元々はラジオから古い音楽が流れてくるという案だったのですが、音響監督の吉田(光平)さんから「他の音楽を使うよりも、作中にある音楽を使ったほうが統一感が出るのではないか」という提案を受け、なるほどと思ってオープニングの曲を流す事にしました。実際、これが一番正解だったと思います。

ーー瑠璃たちが触れる鉱物やアイテムを通して過去に触れ、現在との繋がりを感じられるという物語に、視聴者の方も心動かされたのではないかと思います。次回はいよいよ最終回となりますので、見どころや楽しみにしてほしいことをお教えください。

藤井慎吾監督:そうですね、繋がりがテーマの話数でしたのでそれが伝わってくれたのなら良かったです。

最終回はまた原作のエピソードに戻りますが、多少アニメの最終回用にアレンジしているところもあり、そこをまた楽しんでいただけるといいかなと思います。最初のティザーPVの映像を見ておくと少し面白いかもしれません。

ーー瑠璃、硝子、葵が訪れたホームセンターや喫茶店。台詞のないキャラクターたちが非常に個性的で、「今後登場するのかな?」と感じるほどでした。原作コミックスや『大科学少女』の表紙に似ている人物がいるようにも思うのですが、こういったキャラクターたちを登場させた意図もお聞かせください。

藤井慎吾監督:シンプルに『大科学少女』好きへのファンサービスになります。渋谷さんから『大科学少女』と『瑠璃の宝石』は同一世界観だとは聞いていたので、機会があれば出したいとは思っていました。ホームセンターにいるキャラは実際に原作では既に登場していますよね。他のキャラについては今後の原作の展開次第だと思いますが、個人的にもいちファンの考えとして、出てくるのでは……?と思って期待しています。

第13話(最終話)「見上げて覗いて探して、次!」(10月1日更新)

ーー伊万里のおごりで温泉旅館へ。歴史の宿金具屋を思わせる情景や温泉が特徴的ですが、この雰囲気を再現するうえで大変だったことや参考にした資料はありますか?

藤井慎吾監督:最初から再現度の高さを重視していたこともあり、実際に金具屋さんを訪れて取材をさせていただきました。撮影した写真をはじめ、現地で得た情報を資料として活用しています。取材の際には、ご主人に源泉や湯の仕組み、さらには金具屋の成り立ちなど、幅広いお話をうかがうことができ、大変感謝しています。

ーー温泉の成分が固形化した石を採取してきた凪。普段中々見られないものだと思うのですが、どういったところから参考になるものを手に入れて作中に取り入れたのでしょうか?

藤井慎吾監督:温泉沈殿物、別名「湯の花(ゆのはな)」についても、金具屋のご主人に相談させていただきました。現地では、実際に湯の花が付着しているパイプや石を見せていただき、いくつかは実物を譲っていただくこともできました。それらは持ち帰って作画設定の資料として活用したほか、音響スタッフにも提供し、本物の音を再現する際の参考にするなど、多方面で役立てています。

ーー屋上の砂粒から隕石を発見する瑠璃。質感や模様も作中での言及通り特徴的で一目でそれとわかるものでしたが、アニメとして再現する上で難しかった部分をお聞かせください。

藤井慎吾監督:『微隕石探索図鑑』という本を主に参考にしながら制作しました。再現度を高めるため、作画では可能な限りデザインを丁寧に行いましたが、鉱物特殊効果によってさらに存在感を出す部分は難しかったと思います。最後まで支えてくださった特効スタッフには、本当に感謝しています。

ーー終盤に瑠璃と凪が夕日の下で語り合うシーン。ここまでの流れを踏まえると、「もしかしたら凪も昔は瑠璃みたいだったのかな?」「これからの瑠璃も凪の背中を追いかけていくのかな?」という想像が生まれるような流れだと感じました。絵コンテや演出面でこだわっていた部分についてもお伺いさせてください。

藤井慎吾監督:演出的には、1話で瑠璃が初めて水晶を見つけたときに凪に向かって「行きます」と言ったシーンの対として、この終盤の夕日のシーンを描きました。

初期は、宝石を単なる金銭的価値や綺麗なものとしか見ていなかった瑠璃が、さまざまな経験を経て成長し、もっと多くのことを知りたいという知的好奇心を自覚する瞬間になっています。凪の方も、無理にやらせるのではなく、“やっていて「楽しい」があるかどうか”と語りかける形で描いています。個人的には、これから瑠璃が歩む道を、原作を通してさらに楽しみにしたいと思っています。

また、アニメのラストカットについては、渋谷さんから「原作単行本の冒頭にあるモノローグは、成長した瑠璃が喋っている想定」と教えていただいたことから着想を得ました。ただ、このカットはあくまでこういう未来もあるかもしれない、という可能性を示すものです。深くとらえすぎず、アニメ13話を最後まで見てくださった皆さんへの一つの区切りとして、軽やかに楽しんでいただけたら嬉しいです。

ーー最後に、最終話までご覧になったファンの皆さんへメッセージをお願いします。

藤井慎吾監督:TVアニメ「瑠璃の宝石」を最後まで応援してくださった皆さんへ。本当にありがとうございます。

原作が持つ鉱物学や地学の魅力を、より多くの人に届けられるよう制作した作品ですが、このアニメを通して少しでもその魅力を感じたり、興味を持っていただけたりしたなら嬉しいです。

鉱物をはじめ、脚本の完成度や背景、音響など、あらゆる小さなディテールにもこだわりました。画面の隅々まで楽しんでいただけたなら幸いです。

皆さんの応援がスタッフ一同の大きな力になりました。本当にありがとうございました。

作品情報

瑠璃の宝石

あらすじ

キラキラしたものが大好きな女子高生・谷川瑠璃(たにがわるり)は、「自分でも見つけられるかも!」と水晶を探しに山へと向かう。そこで鉱物学を専攻する大学院生・荒砥凪(あらとなぎ)と出会い、一緒に鉱物採集をすることに。

ある時は水晶を探して山道を歩き、ある時はガーネットを拾いに川に浸かり、またある時は見知らぬ鉱物を顕微鏡で覗き――ルリはナギに導かれ鉱物採集の世界に飛び込んでいく。

「私だって、採れるはず」

それは、誰しもが抱いたことのある夢。
本格サイエンスアドベンチャー始動!

キャスト

谷川瑠璃:根本京里
荒砥凪:瀬戸麻沙美
伊万里曜子:宮本侑芽
瀬戸硝子:林咲紀
笠丸葵:山田美鈴

(C)2025 渋谷圭一郎/KADOKAWA/「瑠璃の宝石」製作委員会

 

(C)2025 渋谷圭一郎/KADOKAWA/「瑠璃の宝石」製作委員会
おすすめタグ
あわせて読みたい

関連商品

おすすめ特集

今期アニメ曜日別一覧
2025年秋アニメ一覧 10月放送開始
2025年夏アニメ一覧 7月放送開始
2026年冬アニメ一覧 1月放送開始
2026年春アニメ一覧 4月放送開始
2025秋アニメ何観る
2026冬アニメ最速放送日
2025秋アニメも声優で観る!
アニメ化決定一覧
声優さんお誕生日記念みんなの考える代表作を紹介!
平成アニメランキング
目次
目次