
『お兄ちゃんはおしまい!』『瑠璃の宝石』で話題! アニメ界を席巻する藤井慎吾監督とは?|「暴走」のアニメーター時代から「自由とバランス」の現在まで【インタビュー】
アニメーターとして様々な作品に参加し、近年では話題作『お兄ちゃんはおしまい!』、『瑠璃の宝石』の監督としても活躍するクリエイター・藤井慎吾氏。アニメファンの心を掴んだ両作品は、どのようにして作られたのか。そして、藤井監督は一体どんな人物なのか。
そんな疑問をご本人に直接聞いてみたい……ということで、アニメイトタイムズでは『瑠璃の宝石』放送終了のタイミングで藤井監督にインタビューを敢行!
原作の魅力と向き合いながら、自由に楽しく作っていく——藤井監督のアニメづくりの現在地。そして、その境地に至るまでの新人アニメーター時代のお話まで。創作のリアルがぎゅっと詰まったロングインタビュー。藤井監督の温かい人柄とともに、アニメづくりの奥深さをお楽しみください!
「世界初の鉱物学アニメ」を創る
──『瑠璃の宝石』の制作お疲れ様でした。アニメイトタイムズでは『お兄ちゃんはおしまい!』に続いて、監督の連載インタビューも掲載させていただき、作品とあわせて非常に好評でした。
藤井慎吾さん(以下、藤井):それは良かったです。ただ、途中からお話するネタがなくなってくるんですよ。だいたい2〜3話くらい辺りで(笑)。
──(笑)。いえいえ、読者にも副読本のような形で楽しんでいただけたようです。
藤井:色々言いたくなるんですけど、「これ先週の回でも言ったな?」と思ったり。楽しんでいただけたなら幸いです。
──そんな『瑠璃の宝石』は、SNSを中心に大きな話題を呼びました。放送が終わった現在、監督としての心境はいかがでしょうか?
藤井:やっぱり「ホッとした」という気持ちが一番大きいです。原作モノの場合いつも原作ファンの期待している表現とズレが無いかという所に気を使います。特に、『瑠璃の宝石』は科学的な内容なので、劇中の説明を間違えるわけにはいきません。ミスがないかのチェック、原作者さんへの確認、取材、表現方法の検討……その辺りが本当に大変でした。それでもTV放送ではいくつか細かいミスが出てしまったので、そこはBlu-ray&DVDで修正させて貰っています。
──取材というと、研究者の方々にお話を伺ったり?
藤井:もちろん色々な方のお話を聞きましたし、許諾を得たり、見学の申し込みをして鉱山の取材にも行きました。原作の渋谷圭一郎先生にもたくさんご協力いただいていて資料を頂いたり。顕微鏡などの機材も、エビデント社の方に取材させていただくなど、やることが多かったですね。
──鉱石だけでなく採集関連の機材も丁寧に描かなければいけないですよね。荒砥凪たちの研究室のディテールも凄まじいクオリティでした。
藤井:あれは渋谷先生の研究室の写真を参考にして作りました。ほとんど完全再現です。
──『瑠璃の宝石』を見た視聴者の反響は、監督のところにも届いていましたか?
藤井:正直「鉱物」にどこまで興味を持ってくれるかは予想がつきませんでした。今でも地学の履修者は少なめなので、「どうなんだろう?」と。でも放送を終えてみると、皆さん興味を持ってくださって安心したと言いますか。本作が鉱物学や地学に興味を持つきっかけになれたらと思っていたので、嬉しかったです。
──私もすぐに砂金採り体験ができるところを調べてしまいました。そもそも、本作の監督を務めるようになった経緯はどのようなものだったのでしょうか?
藤井:元々原作は読んでいました。学生時代は地学を履修していまして、その後は主に古生物学の方を中心に独学でやっていたのですが、主に地学全般に興味はあった感じですね。縄文遺跡の発掘のアルバイトとかも一時期やっていたんですよ。
──面白そうなアルバイトですね。
藤井:なので、「そういう題材でアニメをやれる機会があるなら、ぜひやりたい」と思っていたんです。ただ、そういう題材の漫画やアニメってほとんどないんですよ。似たような分野はありますが、「やったら絶対面白いのに」という気持ちは常にありました。
『瑠璃の宝石』は「世界初の鉱物学漫画」という触れ込みでしたが、「本当にその通りだ」と納得しました。それをアニメ化すれば「世界初の鉱物学アニメ」になるかもしれない。これはアニメ化したら絶対に面白いんじゃないかと思って、プロデューサーなどに話をしたら、割と興味を持っていただけました。
──連載インタビューでは、瀬戸硝子(CV:林咲紀)が中心となる第7話について、「是非アニメ化したかった」とおっしゃっていましたが、それも学生時代の経験があってのことですか?
藤井:というよりも彼女の悩みは、創作業に関連する悩みだと感じたんです。
──自分のやりたいことや、生き方への悩み。
藤井:そうですね。自分がやってみたいと思っている職業を口にするのが「恥ずかしい」「バカにされるんじゃないか」とか。創作をやっている人は、みんな似たようなことを考えたことがあると思います。そこに共感しましたし、表現したいシーンになりましたね。
やれるだけのことを詰め込んだ『瑠璃の宝石』
──原作の渋谷先生とは、どのようなやり取りをされたのでしょうか?
藤井:分からないことや専門的なところは、渋谷先生に逐一確認していました。連載中ですし、あまりご迷惑をかけてはいけないとは思いつつ……(笑)。
──逆に先生から、アニメ化にあたってオーダーはありましたか?
藤井:先生からも「この描写はこうしてほしい」「この音はこういう感じにしてほしい」など、いくつか要望はありました。ただ、基本的にはすごく協力的にしてくださったと思います。
──第12話で描かれた「鉱石ラジオ」のエピソードは、皆さんで作られたと伺いました。
藤井:渋谷先生が「鉱石ラジオの話をやりたい」とおっしゃって、僕と渋谷先生と横手(美智子)さんで少しずつアイデアを出し合い、煮詰めていった形です。ただ、ラジオに関しては専門知識が必要になると思ったので、シナリオ、コンテチェックの段階で、ラジオ博物館さまに監修に入ってもらっています。
──クラスメイトである笠丸葵(CV:山田美鈴)が積極的に輪に入ってくる姿が印象的でした。
藤井:話数の関係上、彼女を活かせるエピソードを入れられなかったんです。彼女は、原作の4〜5巻あたりから徐々に出てくるんですよ。やっぱり登場させておきたくて、なんとか第12話に入れられないかと提案した記憶があります。
──作品全体を通して、主人公・谷川瑠璃(CV:根本京里)の変化も見どころですよね。鉱石についての知識を吸収しながら、「やっぱり綺麗な石が好き」という純粋な気持ちも残っていて。
藤井:1クールの中でメリハリをつけるためにも、やはり瑠璃の成長した姿は見せる必要があります。原作でも軸として描かれている部分ですし、アニメでも少しずつ成長していく姿を見せたいと思っていました。
例えば、彼女の服装が少しずつ本格的になっていったり、考え方が段階的に変わっていったり。何も知らない素人の状態から、少しずつ専門的になっていく。視聴者の中には元々詳しい人もいるし、逆にこの作品で興味を持った人もいると思うので、そういう意味で「視聴者の立場にいる主人公」としての瑠璃を大切にしました。
── 一緒に学びながら楽しめる存在ですよね。物語後半からは研究者体質になっていたように感じます。
藤井:年齢的にも、高1の夏なので。まだまだ若くて、何でも吸収するでしょうし、興味を持てば一気にのめり込んでいく時期ですよね。瑠璃は難しいことをあまり考えず、感覚で動くタイプだと最初から決めていたんです。「やっぱり綺麗な石が好き」というのは、彼女がどこまで深く考えているかは別として、根本にある性質だと思っています。そういう感覚は本質的・普遍的な感情で、人類史の中でもずっと変わらないものなのかもしれない。
──我々が鉱物を「綺麗で高価なもの」として価値づけしてきた、とも言えるのでしょうか?
藤井:そうですね。もともとはただの元素であっても、そこに付加価値として「綺麗」「珍しい」が加わる。「やっぱり綺麗な石が好き」という彼女の気持ちは、決して馬鹿にされるようなことではないと思っています。
──『瑠璃の宝石』は劇伴も非常に印象的でした。
藤井:音楽は『おにまい』でもお願いした阿知波大輔さん、柳川和樹さんに依頼しました。ゲーム音楽畑なので、耳に残るメロディーが得意な方々です。ご存知の方もいるとは思いますが、お二方ともゲームのアトリエシリーズで音楽を作っていた方で、自分がアトリエシリーズのファンなので直々に頼んで貰ったという経緯があります。
最近の作品は劇伴があまり主張しない流れもありますが、これは完全に監督である自分の好みですね。僕は割と主張する方が好きなので、自分の趣味がかなり反映されていると思います。
──全体を振り返ってみて、監督にとって『瑠璃の宝石』はどんな作品になりましたか?
藤井:やりたいことをやらせていただいた作品です。内容や演出に関しては「今の自分の力ではもうこれ以上はできない」というくらい全力でやらせていただきました。
作画に関しては、もっと時間をかければさらに詰められると思いますが、演出等はやりきった、作り切った感覚があります。非常に充実した制作になりましたね。





















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