
アニメ『ンめねこ』2クール目突入記念・プロデューサー座談会|セリフがない原作をアニメ化する上で意識したこととは? 1クール目のお気に入りエピソードも発表
SNSで話題のしりもと先生のマンガ『ンめねこ』。本作のTVアニメが2025年4月よりスタート、7月より2クール目に突入します。
2クール目の放送を記念し、TBSアニメ事業部・片山悠樹さん、原作サイドのヒューネット・兵頭慶太さん、アニメーション制作のアカツキメディアスタジオ・樋渡昇一郎さんの、3名のプロデューサーによる座談会を実施!
アニメ化の経緯や制作秘話、ンめねこ役に潘めぐみさん、うすくろ役に下野紘さんを選んだ理由などを伺ったほか、1クール目の中からお気に入りの回を発表していただきました。
温度感がまったく違う二人を、スパイスを効かせて描いている魅力的な作品
──『ンめねこ』をアニメ化することになった経緯と、魅力を感じた点をお聞かせください。
TBSアニメ事業部・片山悠樹さん(以下、片山):3~4年前にアカツキメディアスタジオの樋渡さんとお会いして、いろいろお話ししていく中で「一緒に企画をやりましょう」と意気投合しました。その後、いろいろなメディアをチェックして、イラストレーターさんや作品をいくつか抽出して、議論を重ねた結果、しりもと先生の『ンめねこ』をアニメにしてみたいと。それから先生にアプローチしたところから企画は始まりました。
シンプルで優しい世界観の作品はたくさんありますが、ンめねことうすくろの関係がほっこりしているのに、全然違う温度感のヤンチャなンめねこのスパイスが効いた要素が絶妙なバランスで調和しているところに魅力を感じました。
作品自体の魅力は片山さんがおっしゃったことに同意で、あともう一つ、キャラクターの見た目がとにかくかわいいことが大きかったです。
ヒューネット・兵頭慶太さん(以下、兵頭):アニメ化がそういう経緯だったことを今初めて知りました(笑)。お話をいただいたのが連載が始まって半年から1年くらいのタイミングだったので、「こんなに早いタイミングでアニメ化のお話がくるとは!?」とビックリしました。
原作にはセリフがないので、読者の皆さんには各コマから自由に想像していただいて、見えないセリフを解釈していただくのも魅力の1つかと思っています。なので、アニメ化になるとセリフが必要なのが悩んだポイントでしたが、しりもと先生に相談させていただき、「アニメで動くンめねこたちをファンの皆さんに楽しんでもらえたらいいですね」と言っていただけたので、アニメ化を前向きに進めることができました。
音声を付けることで新たな魅力が生まれることを意識。キャラクターのかわいさにも徹底的にこだわる
──アニメ化していく中で意識した点や心がけた点、難しかったことなどをお聞かせください。
片山:原作にはセリフがないので、アニメで声とセリフが付いた時に魅力を感じてもらえないと、原作ファンの方に違和感や失望を与えてしまうので、そうならないようにしなければなと。その点を理解した上で、アニメ化によって『ンめねこ』の魅力が拡張されるようなアイデアをもたらしてくれる樋渡さんをサポートできるスタッフを集めるのが、アニメ化で一番大切にしたところです。
あと、ンめねことうすくろの関係性を観てくださった方がいろいろ解釈できるように、というのはスタッフ全員の共通認識としてありました。
兵頭:しりもと先生の原作の作風が独特かつ個性的なので、キャラクターや背景なども原作から大きく離れすぎないように、アニメーション制作の現場の方には結構細かくお願いして、スタッフの皆さんには大変ご苦労をかけたと思うので、ここでおわびしておきます。(笑)。
樋渡:原作がかわいいので、原作ファンの方に「アニメになってよかった」と思っていただくために、キャラクターのかわいさに徹底的にこだわりました。最初はその点で原作とアニメで乖離があったので、第1話はすごく時間をかけて、5回くらい修正をして、原作サイドの方に認めていただけるように頑張りました。大変ではありましたが、頑張ってよかったと思っています。
──ショートアニメという短い尺は、制作するにあたって難しさはありましたか?
片山:僕は普段、30分アニメのプロデューサーをしていますが、その感覚からいえばめちゃめちゃ難しかったです。本編が60秒しかないのに要素を詰め込まないといけないので、非常に難しいチャレンジだなと。1分の中で何かが起きて、何かが回収されて、落とすという難しい要求を日野トミー監督と、脚本とシリーズ構成の白坂英晃さんが見事に形にしてくれました。
──本編の中にアイキャッチがあって、最後に主題歌が流れるので、そこまで短さを感じませんでした。
片山:視聴してくださる方も心地よいテンポ感がどんどんクセになってもらえているんじゃないかなと思っています。
──現在1クール目が放送されていますが、春から梅雨と、実際の季節と同じように描かれているのも親近感があります。
樋渡:シリーズ構成は日本の四季や季節を意識したものを出させていただきました。
ンめねこ役に潘めぐみさん、うすくろ役に下野紘さんを選んだ決め手とは?
──ンめねこ役が潘めぐみさん、うすくろ役が下野紘さんに決まったポイントを教えてください。
片山:それぞれのキャラクターの方向性についてみんなで共有しつつ、オーディションでも細かく指定させていただきました。キャストの決定は先生も含めて、皆さんの意見が自ずと同じになった記憶があります。
兵頭:まず一次オーディションにテープを送っていただきましたが、原作にセリフが無い中、皆さんそれぞれしっかり原作を読み込んで、ンめねことうすくろの解釈、声、性格のイメージを膨らませた上でテストボイスを録ってくださったことが、聴いてすぐにわかりました。そんな皆さんの誠意に出来る限りお応え出来れば思い何回も聴かせて頂きました。ンめねことうすくろの声優さまの組み合わせパターン数は合計千パターン以上あったと思います。しりもと先生も「マンガと違ってセリフがたくさんあるので、そこの違いもたくさん楽しんでくれる方がいらっしゃれば嬉しいです」とおっしゃってくださいました。
また、一次オーディションにご応募いただいた声優さんの過去の出演作を見て、声の幅、表現の仕方などを視聴した上で、どう演じてくださるとより良いかを何パターンも想像してみました。しりもと先生とご相談させていただきながら「この方が演じるンめねこも、この方が演じるうすくろもいいですよね!」みたいな会話をたくさんした事を覚えています。
最終的には、『ンめねこ』役にアドリブ力や無垢な感じで一生懸命なンめねこを表現してくださった潘さんと、にじみ出る優しさや包容力がありながらもちょっとコミカルな雰囲気が、潘さんが演じるンめねことピッタリじゃないかなと思って下野さんに決めさせていただきました。
樋渡:オーディションは一次オーディションがテープで、最終オーディションはアフレコスタジオで行いました。スタッフ全員で意見を出し合いながら決めていきつつ、皆さんが「この二人じゃないかな」と一致したのが潘さんと下野さんでした。
弊社としては、しりもと先生と原作サイドのヒューネットさんのご意向を重視しながら決めていくのが一番いいかなと思っていましたが、意見が一致したのがこのお二人でした。
──潘さんと下野さんにインタビューした際、スタジオオーディションの前にしりもと先生からお手紙をいただいたとおっしゃっていましたが、そちらはどういった経緯だったのでしょうか?
兵頭:実は、最終オーディションに来ていただいた全ての方に希望オーダーのメモをお送りしています。数ある解釈の中から各声優さんに合ったンめねことうすくろの雰囲気や表現の方向性をお伝えさせていただきました。
潘さんも下野さんもンめねことうすくろの理解度がすごく高くて、あまりオーダーさせていただくようなことはなかったのですが、潘さんにはギャグ落ちが多いアニメになっているところもあって、おもしろ味やテンポ感をオーダーさせていただきました。下野さんには声のトーンや高さ、テンポに年齢感があまり出ないようにオーダーさせていただきました。
──スタジオオーディションの現場や収録直前でオーダーをすることはよくありますが、スタジオオーディション前に参加者全員にオーダーメモを送っているのは珍しいですね。
片山:確かに、通常のアニメのオーディションの手法ではあまりないかもしれません。この作品はンめねことうすくろの二人が繰り広げていくお話なので、いろいろな解釈の仕方があるかなと思って、オーディションの段階から細かくディレクションしたほうがうまくいくのかなという考え方でした。
──ここまで収録をご覧になった感想をお聞かせください。
片山:お二人がどんどんハマっていっている感じがします。最初の頃は年齢のようなものやテンションのすり合わせをしていただきましたが、スーパープロフェッショナルなお二人なので、それぞれのイメージするところも高くて、どんどんハマっていった感じがします。
兵頭:しりもと先生も回を重ねていくごとにお二人共アドリブが増えて、とっても楽しんでいますと仰ってくださっております。
樋渡:潘さんと下野さんが仲がいいこともあって、収録でも仲良くやっていただいていることがアニメにも出ていると思います。あと潘さんがすごく明るい方で、下野さんに対しても、我々スタッフに対しても明るく振舞ってくれるので、そういった面もポジティブに作品に表れていると思います。







































