
人々を見つめるウルトラマンは何を考えるのか。これはウルトラマン自身の物語――『ウルトラマンオメガ』メイン監督・武居正能さんインタビュー
第1話冒頭、白組制作のフルCGに込めた挑戦
ーー今回はスラッガーが変身アイテムの役割を持っており、メテオカイジュウをアーマーや武器にして戦うという設定になっています。
武居:変身アイテムをスラッガーにしたのは、こちらからの提案ですね。例えば、怪獣をウルトラマンと共闘させるための一つの方法論として、「武器」というところを打ち出したかった。アーマーになったのは、その後いろんなお話を作っていく中で「もう少しビジュアルが変わった方がいいよね」という話になったからです。
また、「オメガスラッガー」は変身アイテムであると同時に、武器でもあるというコンセプトになっています。武器自体は怪獣のものですが、基本的にはスラッガーを経由するので、基本的に使っているものは「オメガスラッガー」なんですよ。
ーー新規怪獣やメテオカイジュウの登場も気になるポイントです。
武居:今回は新規怪獣も多いですが、コンセプトとしては「地球在来種」。地球の中で、元々生息していた違う生物ですね。異なる進化を遂げたものが特殊な能力を持ったという設定になっています。
メテオカイジュウに関しては、地球のものではないんですよ。ウルトラマンと関わりがあるという時点で地球の生物ではない。形は地球の在来種に近いですけど、明らかに違うものです。
ーー第1話冒頭の株式会社白組が制作したフルCGシーンのクオリティにも驚かされました。
武居:一番初めの掴みの部分ですね。あのシーンの「オメガ」はものすごく強いんです。詳しくは言えないのですが、「オメガ」というキャラクターには謎があって、記憶を失っていることにも理由があります。
映像的にも、新しい挑戦をしていかないといけないんです。細かいですけど、毎年色々やっています。
例えば『ウルトラマンアーク』の劇場版では、絵画のシーンをAIの背景で作らせて、最終的に人間の手で仕上げたり、実験的なことをしています。『ウルトラマンデッカー』ではLEDパネルを使った撮影に挑戦、『劇場版ウルトラマンR/B セレクト!絆のクリスタル」はウルトラマンをフルCG化して、「ウルトラマングルーブ」はCGのみで登場しています。
今回の新しい挑戦として、フルCGのシーンをやってみたらどうだろうと。僕が書いた絵コンテをベースに、白組の上西さんと神谷誠監督と三人で意見を出し合って作りました。
2分くらいのシーンなんですけど、結構時間がかかってるんですよ。
構想からですとクランクイン前から 着手しているので、十ヶ月以上はかかっていますね。掴みとしては面白いものになりましたし、なかなか良い出来栄えだと思います。
ウルトラマンですらない「オメガ」。その変化を楽しんでほしい
ーー直近の『ウルトラマンブレーザー』や『ウルトラマンアーク』は、一つの作品の中でウルトラマンを深く掘り下げていく内容でした。それらを踏まえたうえで、『ウルトラマンオメガ』はどのような方向性の作品になるのでしょうか。
武居:基本的にはおっしゃっていただいた方向性だと思ってください。実を言うと「ウルトラマンオメガ」はウルトラマンですらないので、自分で「ウルトラマン」とは名乗ってないんですよ。だから「どういう存在なのか」も、現時点では分からない。僕たちから見てウルトラマンの形をしていても、新しい種族なんです。
世界線としては完全に「怪獣」が初めて出てきた世界なので、「怪獣」という言葉もありません。そういう細かいところにも、こだわっています。
一方で『ブレーザー』や『アーク』に比べると、“匂い”としてはニュージェネらしいと思います。それは最終回まで観れば、分かっていただけるかなと。自分もニュージェネを長くやってきていますので、その締めくくりという気持ちで作っています。
ーー折角なので、「ウルトラマンの仕事に携わっていて良かった」と思うことについても伺いたいです。
武居:一つはウルトラマンの監督をやれたことです。他の作品でも舞台挨拶やSNSなどで視聴者の意見や反響を多少聞くことはできますが、「自分がやった作品のヒーローショーがある」というのはあまりないですよね。
「ウルトラヒーローズEXPO」では、子供たちやファンの反応を生で見られます。結果論ですけど、監督をやったおかげでそういう喜びがある。作ったものが楽しんでもらえていると実感できる機会は少ないので、それはウルトラマンをやっていてよかったと思うことです。
ーー最後に、武居監督から『ウルトラマンオメガ』の見どころを教えてください。
武居:「これはウルトラマンがどう考えるか、ウルトラマン自身のお話である」ということは断言できます。もちろんコウセイやアユムといった仲間たちはいますが、ウルトラマンそのものを描く作品なので、「ソラト」と「ウルトラマンオメガ」の変化を楽しんでいただければと思います。
[インタビュー/田畑勇樹 撮影/MoA 編集/小川いなり]
『ウルトラマンオメガ』作品情報
あらすじ
それまでの記憶を失った宇宙人「オメガ」は、地球人の姿で現れ、「ソラト」と名付けられます。「ソラト」は初めて触れ合う生命体である「地球人」を理解しようと、興味津々に人々を見つめます。
ときに出現する巨大生物、ソラトの失われた記憶から蘇る「怪獣」という言葉。次々と出現する巨大生物「怪獣」を目の前にして、無意識に使命感を掻き立てられるソラトは「ウルトラマンオメガ」に変身し、シャープでパワフルな戦いを繰り広げます。
一方で地球人も、初めて遭遇する巨大生物と赤きスラッガーで戦う巨人が何者なのかを理解しようと、あらゆる視点からその姿を見つめます。やがて結ばれる「宇宙人と地球人」のバディ…ソラトと平凡な青年。見つめ合い響き合うバディの心を通して、「ウルトラマンがなぜ地球を守るのか?」の問いに迫る意欲作です。
今、目覚めの刻(とき)。最新TVシリーズ『ウルトラマンオメガ』にご期待ください。
キャスト
(C)円谷プロ (C)ウルトラマンオメガ製作委員会・テレビ東京









































