心のはしを辿って、君に会いに行く──ZEPP TOURを象徴する新曲「往欄印」が示す互いへの道しるべ。MyGO!!!!!の羊宮妃那さん（Vo.高松燈役）、小日向美香さん（Ba.長崎そよ役）、林鼓子さん（Dr.椎名立希役）インタビュー

残っていくこと、許していくこと

──「残痕字」（ページ）もすごく良い曲ですよね。皆さんにとって、どのような存在の曲ですか。

林：「残痕字」は『カードファイト!! ヴァンガード Divinez デラックス決勝編』のEDテーマとして作っていただいたんですけど、それなのにすごくMyGO!!!!!らしくて。『ヴァンガード』のアニメの雰囲気にも合うし、MyGO!!!!!らしさもあって、初めて聴いたときから「すごくいい曲だな」って感じました。

あと今回は、いつもよりもコーラスを多めに入れさせていただいていて、そういう意味でもレコーディングがとても楽しかったですね。あと私は“許す”っていう言葉がもともと好きなんですよ。だから、〈許しきれやしない　僕を許せなくて〉っていうフレーズがすごく心に残りました。

以前、どこかでもお話したかもしれませんが、大人になるって、きっと“許す”ことだと思うんです。それは立希を見ていてそう感じて。立希って、すごく自分に厳しくて、自分のことも許せないし、他人にも厳しい。でも、愛音を受け入れていく過程で、相手のことも、できない自分も「許容する」ことを少しずつ覚えていった気がしていて。

TVアニメ『BanG Dream! It's MyGO!!!!!』やTVアニメ『BanG Dream! Ave Mujica』で彼女が成長していく姿を見て、それが“1歩大人になる”ことなんだなってすごく思ったんです。以来、ずっと“許す”というワードを見るたびに心に刺さっています。

「往欄印」にも〈許した〉というワードが出てくるんですが、MyGO!!!!!の少女性というか……大人になりたい、という気持ちが表れているように感じています。「残痕字」の“許す”はアニメにもリンクしているワードになると思いますが、個人的にすごく好きですね。

──羊宮さんは、この曲をどんな気持ちで歌ったんですか？

羊宮：すごく好きな曲なんですよ。ただ、今レコーディングがすごく難しくて。というのも、曲が発表されるタイミングと、レコーディング時のキャラクターの感情がズレてしまうことがあるので、「歌唱力をどのくらい上げるべきなのか」「このタイミングでは迷いはどれくらいなのか、客観的に自分を見ているのか」「それとも心が弱り果てて叫んでいるのか」──そういった感情の状態を考慮しながら、歌い分けていくんです。

そういう意味では「残痕字」の燈ちゃんは少し弱っているのかなとは思っていました。特に〈誰のせいでもないと　言えるときが来たら〉って……すごいことですよね。つまりは自分のせいでもない、って言えるってことじゃないですか。それってすごく大きいなって。

──確かに、「誰」の中に「自分」も含まれていると考えるとすごいことだなと、お話を聞きながら改めて感じました。その上で難読タイトルの「残痕字」を見ると、より考えさせられるものがありますね。

羊宮：なかなか読めないですよね（笑）。でもすっごく良いなって。いつも（メンバーが事前にもらう資料に）テーマや「なぜこのタイトルになっているか」が書かれているんです。今回は、「新しいページで書き換えることができても、後ろに残ったページの痛みは消えない」「消えないことも受け入れて、次のページをめくる前に、僕の痛みを許す時間」って書いてあって。

一度書いた文字を消しゴムで消しても跡は残るし、ページをめくっても後ろにあったページが消えるわけじゃない。例えばページを破ってなかったことにしても、破った痕跡は残るし……。そういう“心のノート”みたいなイメージで。だからこそ、「それでも許していこう」っていうメッセージが、すごく向き合わなきゃいけないテーマだなって思います。

──ああ、確かに。先ほど林さんがMyGO!!!!!の少女性について触れていましたが、その儚さや痛みを抱えたまま進もうとする姿勢って、大人になった今だからこそ、グッとくるものがあります。すごく切なくもあるというか……。

林：そうなんですよね。10代の頃って、もう世界のすべてが許せない、みたいな時期ってあるじゃないですか。ずっと何かにイライラしてて、その自分にすらイラつくみたいな。学生の頃って、本当に学校だけが世界みたいな“箱庭”の中にいるから、余計に客観的に見るのは難しい。

羊宮＆小日向：うんうん。

林：でも、大人になるとちょっと一歩引いて考えられるようになるんですよね。いろいろな世界に出て、いろいろな人と出会って。その中で、許すことの重要さに気づくというか。1つ1つを受け入れて、許していかないと前に進めないこともあるんだなって気づくんですよね。それって、実はすごく切ないことでもあるんですけど……「許す」っていうワード、やっぱりすごく好きですね。

──小日向さんはどうでしょう？

小日向：私の勝手なイメージなんですけど、燈ちゃんがたくさんの人に発信するような曲が増えてきた中で……この「残痕字」は、また再び部屋で一人で自分の思いを書き記しているような印象を受けて。改めて、この世界で苦しんでいる、一人だけでも誰かの心に届いてほしい、みたいな、そういう気持ちが込められた曲なのかなって思っていました。私自身も、こういう気持ちになったことがあるので、心が救われた気持ちになりましたし、誰かの心にそっと寄り添えるような曲になっていくんじゃないかなって。

それと今回、『ヴァンガード』のEDテーマに、『バンドリ！』の各バンドが週替わりで登場するという新しい試みに、MyGO!!!!!が入れているのがすごく嬉しくて。私自身、『バンドリ！』というコンテンツが大好きなので、それぞれのバンドがどういう色を持ち寄ってアニメを彩っていくのかが楽しみです。そんななかでも、MyGO!!!!!として“自分たちらしさ”をしっかり表現できる楽曲だと思うので、それが放送でどのように流れていくのか、今からすごくワクワクしています。

──私も楽しみにしています。そして、あっという間に時間となってしまって。さっき林さんが「いいバンドだね」とおっしゃっていましたが、羊宮さんもそう感じられることってありますか？

羊宮：私はMyGO!!!!!しかバンドの内側を知らないので、良いバンドの定義みたいなものははっきりとはわからなくて、比較はできないんですけど……でも、MyGO!!!!!ってすごく“らしい”なって思うんです。

みんなが「こうしたほうがいいんじゃないかな」って、それぞれが考えていて、しかもそのすり合わせがちゃんとできていて。でも一人ひとりが真剣に向き合っているからこそ、迷いもあったりして。でもその迷いがあるからこそ、また次の答えに導かれていく。そういうことをちゃんとお互いが感じ取れている気がします。

ただそれを、毎回言葉にしているかというとそうでもなくて。これは本当に“私は”なんですけど、ステージの上で本当に“つながってる”と思える瞬間がすごく多いんです。ステージでメンバーの顔を見たとき、「ああ、支えられてるな」って心から感じられる。そういう言葉にはできない気持ちとか支え合いを、バンドを通して感じられるのは、すごくMyGO!!!!!らしいなって思いますし、いいバンドだなって強く実感できています。

【インタビュー・文：逆井マリ　撮影：小川遼　編集：鳥谷部宏平】

TVアニメの放送やMyGO!!!!!との合同ライブ、フェス参加……Ave Mujicaが駆け抜けた半年間を佐々木李子さん＆高尾奏音さんが振り返る｜5th LIVE「Nova Historia」から始まる新たな歴史の幕開けと、その先にある理想のバンド像とは【インタビュー】

2023年4月より『バンドリ！』プロジェクトに登場したバンド「AveMujica」。楽曲リリースやキャストによるリアルライブなど精力的に活動を続けていき、2025年1月からは、メンバー5人を主人公としたTVアニメ『BanGDream!AveMujica』が放送。4月にはMyGO!!!!!との合同ライブ、さらには作品を越え、「JAPANJAM2025」「ANISAMAWORLD2025inMANILA」といったフェスにも参加するなど、昨年末から今年の上半期にかけ、世界にその名を轟かせるほどの大躍進を遂げました。そんな怒涛の展開を経て、7月26日（土）・27日（日）に、LaLaarenaTOKYO-BAYにて、AveMujica5thLIVE「NovaHistoria」が開催。「NovaHistoria=新たな歴史」の意味合いを持つ本公演の開催に際して、ドロリス／三角初華役の佐々木李子さん、オブリビオニス／豊川祥子役の高尾奏音さんにインタビューを実施。濃密な半年間の中で感じたことやライブパフォーマンスの変化、5thLIVEにかける想い、そしてこれから目指すバンド像などを存分に語っていただきました。※以下、5thLIVEの公演内のネタバレを一部含みます。MyGO!!!!!との合同ライブで二人が交わした「音での会話」――昨年4月掲載のインタビューぶりに取材させていただくのですが、待ち時間...