
「影」の表現とロボットアニメ的カメラワーク――若手×ベテランで描く映像美。羽原信義監督に訊くアニメ『ステつよ』の魅力【インタビュー】
「影多め」の狙い。カメラワークに取り入れた「ロボットアニメ」の手法
──絵の部分でこだわられた点をお聞かせください。
羽原:作品の傾向として、ダークヒーローっぽさもあるので、世界観に深みを出したいと思いました。今のアニメではあまりやらないですが、「影を多めに」という指示を出したんです。80年代〜90年代のアニメに多く見られる手法で、2号影(1号影と呼ばれる影の色からもう一段暗い影の色)を多めに付けて、画面の密度感を上げています。
最近のアニメーターの方は影を付けることにあまり慣れていないようでしたが、そこは作画監督陣にがっつり押さえていただいて、狙い通りの画面になったんじゃないかなと。
──特に晶の描写は影の存在感によって、より映えた気がします。
羽原:かなり良い感じになったのではないでしょうか。今回は色彩設定も初めてご一緒する方で、TVシリーズの色指定自体も初めてだったそうですが、色々とチャレンジしてくれました。
──暗殺者としての晶や陰謀を匂わせる時のダーク感と城の敷地内や街の明るさ、アメリアの可愛らしさなど、作品全体のコントラストも素晴らしいですね。
羽原:特にアメリアは多様な表情を見せてくれるので、作品に華を添えてくれていますし、ポイントポイントでさまざまな魅力が出せたと感じています。作品が暗過ぎないのも、彼女の魅力に依るところが大きいかもしれません。
──1話冒頭や迷宮でのバトルシーンはスピード感と迫力がありました。
羽原:カメラワークに関してはロボットアニメっぽい手法、常にカメラが動いている感じを意識しています。なので、戦闘中にFIX画面(カメラを固定した画面)はそれほど使っていません。あと僕の作品の特徴である画面を少し揺らす手法も使っています。昔のフィルムのパーフォレーションによる揺れを再現しているんです。デジタルでは止めの画面ではピタっと静止してしまいますが、ほんの少し揺らすことによって、画面の息遣いなどが伝わればいいなと思っています。これは気付かない方も多いと思いますが。
キャスティングのポイントは若手とベテランの融合
──キャスティングのポイントについて、お聞かせください。晶役に大塚剛央さんを選んだ決め手は何だったのでしょうか?
羽原:送っていただいたオーディションテープをみんなで聴いて、話し合いながら決めました。晶くんのポイントはモノローグの説得力、「ぼそぼそと言っているようで、ちゃんと感情がこもっているのか」ですね。他人とあまり関わってこなかった人ですけど、魔法を使う時にはガッと強く出る。大塚くんはその辺りのバランスも上手かったです。
──晶は人間嫌いというわけでもなく、家族想いですし、クラスメイトが話しかければちゃんと答えてくれますよね。
羽原:今後のお話で何故そうなったのかという理由も明かされます。2話でも朝比奈くんは晶のことをよく覚えていることに触れられます。誤解から別行動をすることになったクラスメイトとの関わりもあるので、楽しみにしていただけると嬉しいです。
──次はアメリアについてお聞かせください。
羽原:セリフを聴いていただければ分かると思いますが、アメリアは透明感と清楚さがありつつ、強さや鋭さもある。そういうところを見事に演じ分けていただく必要があります。ひとりのキャラクターとしての幅広さを見せてくれた水野(朔)さんのお芝居は素晴らしかったです。
──その他にも、夜役・小林沙苗さんやサラン・ミスレイ役・諏訪部順一さんなど、皆さんが雰囲気のあるお芝居をされていて、思わず引き込まれてしまいます。
羽原:小林さんとは何度もご一緒していますが、夜を非常に可愛く演じてくださっています。ちゃんと猫でしたし、好きにならずにはいられない、そんなキャラクターになりました。全体としては、若手とベテランの融合と言いますか。サラン団長は晶の兄であり、父みたいな存在でありつつ、おちゃめな部分とのギャップも必要なので、諏訪部(順一)さんには頼りっぱなしでした。
「そう簡単に真相は明かしません。引っ張りますよ(笑)」
──アニメの見どころや注目ポイントのご紹介をお願いします。
羽原:作品の世界観は原作サイドと相談しながら、新たに作っていきました。中世ヨーロッパの雰囲気を出そうと思って作りましたが、背景が本当に素晴らしくて。観ていると実際にその場所に行ったような感覚になれると思います。
色々な仕掛けもありますが、まずは気楽な気持ちで観ていただいて、晶くんと一緒に『ステつよ』の世界を旅している気分で観ていただきたいです。次々に謎も出てきますが、そう簡単に真相は明かしません。引っ張りますよ(笑)。
──最後に、皆さんへのメッセージをお願いします。
羽原:原作ファンの皆様、『ステつよ』が遂にアニメになりました。皆さんの中にあるイメージとは違うかもしれませんが、様々な描き方ができることは『ステつよ』という作品の懐の広さだと思っています。アニメはアニメとして、楽しんでいただければ嬉しいです。
アニメから『ステつよ』の世界に入ってくださった方、引き続き楽しんでいただきつつ、原作には、アニメでは描き切れなかった面白さがたくさんあります。ぜひ原作を読んで「このキャラやエピソードはアニメで出てくるかな」「どういう描き方をするのかな」と想像を膨らませていただけたらなと。
晶くんたちはこれから様々な場所に行きますが、キャラクターひとり一人の感情を描き切れる範囲で、程よいバランスを意識しました。アニメをご覧になった方はぜひSNS等で感想を教えてください。
[インタビュー/永井和幸]
『暗殺者である俺のステータスが勇者よりも明らかに強いのだが』作品情報
あらすじ
召喚によってクラスメイト全員にチート能力が付与される中、彼は生来の影の薄さからか平凡な“暗殺者"の能力を得る。だが、ただの“暗殺者”のはずなのにステータス値が、最強の職業“勇者”すら軽々と凌駕していて――!?
そして、召喚の首謀者である国王の言動に疑念を抱いた晶は、自分の存在をひた隠しその陰謀を暴くも、逆にあらぬ罪を着せられ追われる立場に追い込まれてしまう。
国王への復讐を誓った彼は、逃げ込んだ前人未踏の迷宮深層でエルフの少女アメリアと邂逅を果たす――…。
これは“暗殺者”の能力を得た少年が、エルフの少女と出逢い真の”暗殺者”へと至るまでの物語。
キャスト
(C)赤井まつり・オーバーラップ/暗殺者のステータスが勇者よりも強い製作委員会









































