
いちファンとして、いちばんこだわったのは「当時のファンに楽しんでもらうこと」ーー『アイカツ!×プリパラ THE MOVIE -出会いのキセキ!-』大川貴大監督に聞いたメイキングドラマ【インタビュー】
楽曲づくりもお互いの“らしさ”を大切に
──『アイカツ!』と『プリパラ』がコラボしたら「絶対に面白くなるだろう」という予感があったというお話がありましたが、両作品はアイドルとしての方向性は異なっていると感じます。その辺りはどう考えられていたのでしょう?
大川:正直、最初は誰も想像できていなかったと思います(笑)。シナリオが動き出すまでは「本当にどうしよう……」という手探りの状態でした。ただ、お互いの“らしさ”を潰さないことは最初から意識していました。下手に譲り合って寄り添うという形を取ると印象が変わってしまうと思ったので、「遠慮せず自分たちのらしさを出していこう」という話になりましたね。
──あえて譲り合わない形というか。
大川:そうですね、本当に。特に『プリパラ』はギャグや破天荒な展開が多いですが、そこはもう存分にやっていただいてと。
──大川監督はそれぞれの“らしさ”はどんなところだと分析されていますか?
大川:『アイカツ!』らしさは、やっぱり「前向きさ」だと思います。『アイカツ!』はお仕事ものとしてのアイドルを描いているので、結構リアルな問題にぶつかるんですよね。でもどんな困難にぶつかっても、諦めず、みんなで努力して乗り越えていく。その姿勢が『アイカツ!』らしさだと思います。
一方の『プリパラ』は、それぞれのアイドルの個性がとても際立っている。みんなそれぞれが「なりたい自分」を目指して、自由に活動しているんです。だから『プリパラ』では、キャラクター同士がぶつかることや意見の食い違いもあるけれど、根っこの部分の気持ちは同じで、最終的には自然とまとまっていく。もしかしたらたどり着く場所は同じでも、そこに行くまでの過程がまったく違うのが面白いと感じています。
──ある意味「前向きさ」は両方に共通する部分でもありますよね。
大川:確かに、それは共通しているかもしれません。やっぱりみんなの明るさが大きな力になっていますね。
──では監督が映画を作られる上でいちばんこだわられたところというと?
大川:やはり第一に「当時のファンに楽しんでもらうこと」です。“第一”というか、それが全ての大前提。少しでもファンが喜べる要素があればどんどん入れていく、という気持ちで作っていました。というのも、僕自身もいちファンなんですよ。実は“あかりGeneration”と呼ばれる当時の『アイカツ!』(3rdシーズン)、そして『プリパラ』にはスタッフとしては関わっていないんですよね。いちごが主人公の『アイカツ!』がはじまった年に、自分が業界入りしているんです。
──ということは、2012年以前は別のお仕事をされていたということでしょうか?
大川:そうです。それまでは他社で働いていたので、全然関わっておらず。ただ、当時から普通に視聴者として『アイカツ!』や『プリパラ』を観ていたんです。その後『アイカツスターズ!』から制作側として参加するようになったので、ファンの視点からしか描けないものがあるんじゃないか、という思いはありました。
──今回のテーマになっている「出会いのキセキ」という言葉は、大川監督の提案だったのですか。
大川:誰かひとりが出したというよりは、最初のシナリオ会議で自然と決まってきました。そもそもこの企画自体がキセキみたいなもので、「出会いのキセキ」というフレーズがすっと出てきた、という感じでしたね。
──両アイドルのステージ演出や音楽面でのこだわりについても教えてください。
大川:実はステージの采配や、どの楽曲を誰が歌うかといった基本的な部分は、僕が監督に決まる前にすでに決まっていたんです。そのベースをもとに物語を作っていく、という流れでした。ですので、僕の立場から詳しくはお話しできない部分もあるのですが、とにかく「全アイドルを満遍なく活躍させたい」と思っていて。おそらく既存曲もすべて何かしらの新録があったんじゃないかなと。
──かつ、ステージでは新曲の「ハッピーチューニング」も披露されていて。そして、エンディングテーマ「プリティー×アクティビティ」があり、両作のコラボならではの楽曲になっていますね。
大川:そうですね。「ハッピーチューニング」と「プリティー×アクティビティ」も、初期の発注の段階から関わり、少しずつ出来上がっていく過程を見させていただいていました。
今回の楽曲制作は、両作品に関わる作家さんが交互に関わるような形になっていて。たとえば「ハッピーチューニング」は、作曲が『プリパラ』楽曲を手掛ける本多友紀(Arte Refact)さんだったので、最初に上がってきたデモはどちらかというと『プリパラ』っぽい印象があったんです。でもこだまさおりさんの詞がついて、中野領太さんが編曲をして……と、作詞と編曲は『アイカツ!』側の方々だったので、どんどん『アイカツ!』要素が入ってくるというか。
──お互いの個性を持ち寄るような形に。
大川:そうですね。楽曲づくりに関しても、本当にさっきの話のように各々のクリエイターさんたちが“らしさ”を出し合って、それまでやってきたことを出した結果、良い感じで融合していて、どちらの曲にも聞こえる。それも本当に、コラボレーションとしてとてもいい着地点になったという印象です。


















































