
「THE DAY」から「THE REVO」へ――ポルノグラフィティが『ヒロアカ』と共に描いた革命の物語【インタビュー】
寄り添い過ぎないことで生まれる相乗効果も大切
──ポルノグラフィティさんは、タイアップのときは、どうやって楽曲を作っていくのでしょうか?
岡野:お互い曲を作って、そこからこの曲でいこう!というのを決めて、今回は晴一が歌詞を書くという流れでした。
──岡野さんの作曲ということになりますが、どんな想いで作曲していったのでしょうか?
岡野:先程話した熱量というのは、アニメサイドのスタッフさんと話したときにも感じました。アニメサイドからは、大団円のような、(続編があるとかではなく)作品としてこの先があるような、生徒たちの未来が見える感じを曲で書いてほしいと言われたんです。
そのイメージにどこまで近づけているのかはわからないんですけど、僕としてはコミックス42巻分の積み重ねがあって、それぞれのキャラクターの成長が最後に爆発している感じがしたんですね。やっぱり40巻~42巻にかけての堀越先生の熱量が本当にすごかったので、そこでの爆発を楽曲に込めたいなと思いました。もちろん、ファイナルなので、大団円になるようにしたかったですし。でも、わかりやすくサビが頭にくるとか、キラキラしたJ-POPのアニソンにするというのはちょっと違うなと思ったので、これまでと少し違う感じにしようとは考えていました。
──映画の主題歌のような印象すら受けました。新藤さんは、楽曲を聴いた印象はいかがでしたか?
新藤:きっと『FINAL SEASON』に合うだろうなと思いました。そこから僕なりに歌詞を書いていくんですけど、最初に書いたものに対して「愛情が足りない」という感想が、自分たち側のスタッフから返ってきたんです。きっと『ヒロアカ』のファンなんでしょうね。これだと、アニメサイドに持っていけない。アニメサイドの熱量がすごいから、もっともっと愛情を持たないと、ファンの方の熱量に合いませんと言われたんです。
なかなかそういうダメ出しをもらうことってないんですよ。この言葉が作品としては不適切だとか、そういうリテイクはあるけど、「愛情が足りてない」と言われることはないから、そこで改めて、今回はそういうプロジェクトなんだなと思い直して、アニメのファイナルに当たる部分をもう一度読み直したんです。その時に、何か革命的なことが起こって、ここまで来たんだということを感じたので、物語と同じテンションで、より響く言葉を選んで、歌詞を書くようにしました。
──まさに「THE REVO」というタイトルに込められていると思います。響く言葉でいうと〈THE DAY HAS COME〉もそうですよね。「THE DAY」にも出てきた歌詞なので繋がりも感じますし、アニメとしても大きなワードでもありますから。
新藤:きっと響いてくれていると思うので、そう言っていただけて嬉しいです。「THE DAY」を書いた頃の、始まった当初の『ヒロアカ』って、我々が小さい頃に読んできた『週刊少年ジャンプ』から生まれた作品として違和感がなかったんです。だからそのままジャンプ魂で歌詞を書いたんですけど、そこから『ヒロアカ』の世界は、その範疇にとどまらず、広がっていった『ヒロアカ』ワールドがあるんです。だから終盤は、読んでいても、第1期の頃と同じ作品には思えなかったし、それだけの広がりがあるので、それを表現したいと思って出てきたワードが〈革命〉だったんです。
──それもタイアップだからこそ出てきたものだと思うのですが、自分たちで作る曲と、タイアップでは、やはり考え方自体が変わりますか?
岡野:そうですね。やっぱりタイアップは作品ありきだから、そこにまったく合わないものを作っても仕方がないんです。しかもアニメだと、そこにアニメの映像が付くのが前提なので、そこを考えないなんて、やる意味がないことだと思います。ただ、寄り添いすぎるのも違うんですよね。
──アニメサイドの意見はリスペクトするけど、というところですね。
岡野:今回は特にそうでした。あと、堀越先生が42巻に書いていたコメントにもすごく共感したんですよ。第1話で自分の実力以上のものを描いてしまって、そのあとは、描くたびに不安で大丈夫かな?と思っていたと。で、ファンの方の言葉を聞いて、それを道しるべにここまで描いてきました、みたいなことだったんですけど、そこに勝手に共感したんです。うちらも「アポロ」で勢いよく出たはいいけど、そのあと大丈夫かな?と思っていたので。
なんか、そこが合致するのっていいなとすごく思いました。寄り添い過ぎてもいけないですけど、『ヒロアカ』サイドの息遣いとか考えを、自分がどう咀嚼するのかというのはすごく大事だし、それが相乗効果になっていくのは好きですね。
──新藤さんも、作品に寄り添いつつ、自分たちの想いも込めていくようなイメージでしたか?
新藤:それが一番ですかね。テーマ曲の一番いい形って、「アンパンマンのマーチ」だと思うんです。多分『それいけ!アンパンマン』の世界を再現して歌詞を書こうとしたら、あの歌詞にはならないはずなんです。
〈なんのために 生まれて なにをして 生きるのか〉という要素って、アニメを見ているだけでは感じないんですよ。この曲は、原作のやなせたかし先生が歌詞を書いているから、ちょっと特殊な例ではあるんですけど、この曲があることで、『それいけ!アンパンマン』が伝えようとする世界みたいなものを、我々が考察する幅が広がるわけです。頭が新しくなるということには、もっと違う意味があるのではないかとか、この曲があるだけで考えることになる。それって、『それいけ!アンパンマン』に寄り添い過ぎていないからだと思うんです。その相乗効果って理想的だと思うので、僕らもそういう風になりたいなと思いながらタイアップ楽曲は書いています。それはアニメだけでなくドラマやCMのタイアップもそうですね。
アニメサイドのスタッフに負けない熱量で歌えた
──アレンジに関してだと、最初のピアノのフレーズが、何かが明けていくような、霧が晴れるような革命感なものを感じました。
岡野:アレンジもすごく悩んだところで、アニメサイズだと、そのイントロはないんですよ。でも、本当に色々なやり取りがあったので、細かくは覚えていないんです(笑)。
今回は時間もあったので、アレンジを一緒にやったtasukuくんとやり取りをしていたんですけど、今日は取材日だからLINEのやり取りを見返したんです。そしたら、本当に申し訳ないくらい色々なことをお願いしていて(笑)。「ここはミュートじゃなくて、ハーフミュートにしてくれないか」とか、無理難題ではないけど、かなり細かいことを言っていたなと思いました。なのに、結局また最初に戻るみたいなこともいっぱいあったんです。
そうやって細かいところを決めてからは、tasukuくんのテクニックによるところは大きくて、ラストのサビの転調とか、終盤の展開は、彼のアイデアでした。
──後半にかけて、盛り上がっていきますよね。
岡野:僕が作曲した時のイメージでは、淡々としているかな?っていう感じだったんです。そうならないために何か工夫したほうがいいかな? それはドラムパターンとかなのかな?って話をずっとしていたので、淡々にならないためのアレンジを彼が考えてくれたんですね。
先程話したように、アニメソングのOPテーマとはちょっと違うようなものにしたいという想いがあって、それが首を絞めたところもあるんだけど、そこを上手くやってくれたし、楽しみながら悩み、色んなパターンを試しながらできたので、ファイナルに相応しい、自分の中ではすごく手応えのある曲になりました。
──後半のドラムが突き進んでいく感じは、すごく好きでした。
岡野:ドラムもすごく悩んだんですよ。普通のエイトビートにするのか、今のパターンにするのか。僕は淡々とするほうにしたかったんですけど、アニメサイドから、「前のドラムパターンがいいです」と返ってきたので、それを活かしたし、BPMももう少し遅くしたかったけど、「やっぱり疾走感がほしいです」という意見があったし。でも、そういうやり取りは、決してネガティブなものではなく、どんどんどんどん良くなっていったので、これぞタイアップの然るべき姿だなと思いました。
──ギターソロも感動的でしたし、すべてが良い方向に向かっていったんですね。
岡野:そうですね。ちなみに2Aの平歌の展開は、1番と同じことをしたくないという僕の流行りです(笑)。それはソロプロジェクトで若い人といろいろやってきたからこそ生まれたものですね。今はAメロ・Bメロ・サビだけではないですからね。Eメロ、Fメロまであるの?どういうこと?みたいな(笑)。そのあたりのトレンドは僕なりに取り込みました。
──レコーディングではどんなことを意識しましたか?
岡野:歌に関しては、自宅で録ったんです。そのとき海外にいたので、自分ひとりでこもってやりました。機材も自分で持って行って、エンジニアさんと相談しながらセッティングをして…。歌詞はだいぶ前にもらっていたので、かなり歌いこんで行ったんですね。その意味では、自分の中で世界が出来上がってからレコーディングしたので、アニメの熱量に負けない熱量で歌えたと思っています。
新藤:楽器は日本で録ったんですけど、やり慣れたレコーディングメンバーだったので、良いグルーヴで録れました。やっぱりこういう曲は疾走感みたいなものが大切になるので、それを“せーの”で録った感じです。
でも、すごくスキルフルなメンバーなので、2~3回やったら終わっちゃうんですよ(笑)。この曲も、打ち合わせをして、さぁ録ろう!となったら、すぐに終わってしまう。そのスピード感に、僕も置いていかれないようにギターを弾きました。
──これを数テイクで録り終わってしまうのはすごいですね。
新藤:でも本当にそうなんですよ。いつも一緒にレコーディングをしているんですけど、ちょっと気持ち悪いんですよね(笑)。演奏力だけではなく、楽曲への理解度もあるから、こちらの意図を汲み取ってくれるんです。それには毎回びっくりします。
──譜面通りにやるだけでしたら、その人にお願いしないでしょうから、多くの人から声がかかるプレーヤーというのは、理解度が高いのでしょうね。ご自身のフレーズのこだわりはありますか?
新藤:自分のソロに関しては、アレンジしてもらった通りに弾いた気がします(笑)。
──もう一度、〈THE DAY HAS COME〉という歌詞について聞きたいのですが、これに対するファンの反応はいかがでしたか?
新藤:ロック魂が何かはわからないですけど、期待したものを裏切りたい気持ちというのが基本的にあるんです。でも、その気持ちがあったとしても、ここは応えたかったんです。
でも、いろいろ考えはしたんですよ。期待通りのことをするなんて、ロックとしてどうなんだとか。でも、ここは違うなと。だからスタッフに言われる前に入れました(笑)。言われたら絶対に入れたくなくなるので。
岡野:でも作曲した時、ここは歌詞がない予定で、WOW WOWと歌い合う感じにしようかなと思っていたんです。
──確かに、二段階のサビみたいになっていますよね。
岡野:でもそこで「ここは歌詞にしませんか?」と言ってくれて。結果的に、この言葉が入ったので、面白いなと思いました。熱量の高い、イメージがある方が周りにいてくれて、その相乗効果を実際に感じた瞬間でした。
ただ、ここはファンが歌うパートだと思っていたから、あまりキーのことは考えていなかったんですよね。それもあって、めっちゃ高いところに設定していたから、ヤバいなと思いながら、いま歌っています(笑)。
──「THE DAY」よりキツいですか?
岡野:最後のところだけですね。〈神聖なMOVE SILENT VOICE THE DAY HAS COME〉は、血管が切れそうになりながら歌っていることは間違いないです。
──では最後に、ファンへメッセージをお願いします。
岡野:みなさんが愛したからこそ、ここまで大きい作品になったと思います。堀越先生の力、アニメスタッフの力、そしてファンの方が前へ進めてくれた作品だと思います。それは僕らミュージシャンもそうなので、親近感を感じながら、携わることができました。ぜひファイナルシーズンで号泣してください!
新藤:本当に「THE DAY」への感謝と「THE REVO」をお願いします。これに尽きます!
[文・塚越淳一]
楽曲情報
【発売日】2025年11月19日
【価格】
初回生産限定盤DVD付:2,500円(税込)
通常盤:1,500円(税込)
期間生産限定盤:1,799円(税込)
作品情報
あらすじ
デクはヒーロー輩出の名門・雄英高校に入学し、“個性”で社会や人々を救ける“ヒーロー”になることを目指し、ヒーロー科1年A組のクラスメイトたちと共に成長していく。
デクたちの雄英2年目の春。デクをはじめとするヒーローたちと、死柄木弔とオール・フォー・ワンの率いる敵<ヴィラン>はいよいよ最終決戦に突入し、日本各地で激しい戦いが繰り広げられる。
轟焦凍とエンデヴァー、そして荼毘=轟燈矢たち轟家の因縁、お茶子とトガの対峙は決着を見た。そしてついに、“個性”ワン・フォー・オールを全開にしたデクと、自身を乗っ取ろうとしたオール・フォー・ワンの意識を逆に取り込み完全に覚醒した死柄木。若返りで全盛期の力を取り戻したオール・フォー・ワン本体と、“無個性”ながらパワードスーツを纏った“アーマードオールマイト”。彼らの戦いが決着へ――!
果たして、デクの「僕たちが最高のヒーローになるまでの物語」はフィナーレで成し得るのか、それとも全てが崩壊するのか……!?
キャスト
(C)堀越耕平/集英社・僕のヒーローアカデミア製作委員会










































