
「今回うまくいったのは、いろんな偶然と情熱が重なったから。だからこそキセキなんです」『アイカツ!×プリパラ THE MOVIE -出会いのキセキ!-』木村大プロデューサー/清水良太アニメーションプロデューサー/依田健プロデューサーインタビュー 今だからこそ明かせる舞台裏
なんなら敵だと思っていたんじゃないかなと
──大川監督に「アイドルアニメのシーンにおいて、どのような一歩になったと考えられていますか?」と質問したところ、「これから先、もしかしたら他の作品ともこうしたコラボがあってもいいのかなと思いますけどね。ひとつこういう前例ができたのは大きいかもしれません」とおっしゃっていました。プロデューサー陣としてはどう感じますか?
木村:『アイカツ!』と『プリパラ』は、いろいろな関係値があってこそコラボだと思うので、じゃあ他のアイドル作品と同じようにコラボできるかというと、また考えなければいけないことだとは思っています。
リアルライブでいうと『ラブライブ!』『アイマス』がコラボレーションしたり(2023年、東京ドームで開催された『異次元フェス アイドルマスター★♥ラブライブ!歌合戦』)が、その前には『アイマス』『アイカツ!』『ラブライブ!』が一同に集まったりということもありました(2019年に東京ドームで開催された『バンダイナムコエンターテインメント フェスティバル』)。リアルライブではそういうことをやっているのですが、映像で、物語として見せるとなるといろいろむずかしいところはあるのかなと。
『アイカツ!』と『プリパラ』は女児向けアイドル作品として、ほぼ同時期にスタートし、しかも両方ともカード筐体ゲームを軸にしていて、音ゲーでという、同じような形態で、互いに切磋琢磨しつつ発展してきたんですよね。
依田:それは本当にそうですね(笑)。
──いわばライバル関係でもありますよね。
木村:でも、ファンはそんな事情関係なく、両方好きで遊んでくれていたんですよね。さきほどのお話に通じることではありますが、両方を好きでいてくれる人たちがいる作品だからこそ、だからこそ「まさか一緒にやってくれるとは!」という驚きと喜びが大きかったと思います。子どものころに「これは別々の世界のもの」と思っていたものが一緒になったからこそ、面白いのかなと。これがきっかけで他の作品と何かしようっていうよりかは、新しいことをしたいなとは思いますね。
依田:今の話で言うと……ファンの皆さんも『アイカツ!』と『プリパラ』は、もともと“競い合う存在”だと思っていたはずなんです。はっきり言ってしまうと、なんなら敵だと思っていたんじゃないかなと。ゲームセンターでも売り場でも、同じスペースを取り合っていた時代がありましたから。そして、アニメ制作も全く別の会社で、同ジャンルをそれぞれのスタイルで作っていた。もちろん両方好きな人もいたとは思うのですが、どちら派かで盛り上がる子たちも多かったんじゃないかなと。
……にも関わらず、ガッツリとコラボレーションしていちからお話を作った。皆さんも驚いたとは思うのですが、やっている僕ら自身も驚いています。ビジネスの論理で組んだコラボレーションだったら、こうはならなかったと思います。今回は現場同士が「面白くて楽しいものを作りたい」という気持ちで動いて、それをプロデューサー陣が“大人の理屈”を超えて調整し続けた結果、そこに周りのメーカーさんや関係各社がついてきてくれた。これは本当に新しい流れだと思いますし、普通のビジネスの論理ではあり得ないことが実現した。そこは本当に「がんばったな」と。
──本当に“キセキのコラボレーション”といいますか。
依田:本当に(笑)。これがヒットしたからといって、同じことをもう一度やろうとしても、きっと難しい。今回うまくいったのは、いろんな偶然と情熱が重なったから。だからこそのキセキなんですよ。ですので、アイドルアニメのジャンルに……というよりは、単純に“ひとつの可能性”を切り拓けたんだなと感じています。
清水:そうですね、僕もふたりと同じ気持ちですね。やっぱりそれぞれのチームの中に“相手の作品が好きな人”がいたからこそ実現したコラボだったと思います。単に「コラボしたらうまくいく」というものではなくて、心から両作品を愛していたからこそ、ここまでの形になったのかなと。
──とりわけ、そらみルミナスのドレスアップ時の劇伴「空見て輝く」が印象的でした。あれぞ愛の結晶というか……。
依田:ちょうどこの直前に音楽チームへの取材も一緒に受けたんですけど、やっぱりその話になるんです。みんな口をそろえて「あの曲は奇跡だ」って言ってました(笑)。どっちの良さも完璧に合わさった、キセキのような曲ですよねって。あれは監督の采配が見事でした。「START DASH SENSATION」で『アイカツ!』パターンのフィッティング、「Make it !」で『プリパラ』パターンをやって、両方見せた上で、最後に6人のステージがくる。いきなりポンっとくるのではなくて、その積み重ねがあった上で持って来るっていう……「大川さん、うまいなあ」って思いましたね。
──まさに構成の妙ですよね。それは曲の構成に関しても言えることではありますが。
依田:そう。メロディの入りが「芸能人はカードが命」っぽく始まって、最後は“プリパラらしい”コーラスで締める。あんなの反則ですよ、泣くしかないです(笑)。エンディングも素晴らしかった。全部がいいっていう。
──さきほども話題に挙がったエンディング。本当に、エンディングは目がひとつでは足りなかったです(笑)。いわば“本編の延長線上のプレゼント”というか……。
清水:本編でやりたかったことを、監督が「せっかくだからエンディングで届けたい」と言って実現したんです。そういう意味で、エンディングはフルで活用させていただきました。
依田:特に凛とまどかが本編とは反対の天使悪魔になっているのが、うますぎて……。
清水:はいはい(笑)。あれは本当に“ファンの心をくすぐる”演出でしたね。
木村:大川さんのこだわりでしたよね。両作品のファンだからこそ、いろいろな小ネタが入っています。シナリオの段階ではそこまで書かないわけです。で、コンテにも全部が書き込まれるわけじゃないなかで、どんどんと追加されていった。完成版を見ると「ここまでやるのか!」と思うものになっていたんですよね。
──「あ、ここにあのキャラがいる!?」と驚きました。
依田:そうそう。周りのキャラクターの拾い方もすごかったですよね。あれはもう“愛”しかないなと。
木村:あれも大川監督だからこそできたものだと思います。
──大川監督と言えば。アイカツカードにトモチケが生えるくだりもすごかったですね。あの一枚に両作品の歴史とファンの想いが全部詰まっていた気がします。
依田:個人的にはいちばん驚いた場面でした。実はあれ、最初のシナリオ段階にはなかったんです。
──えっ!?
依田:最初はプリチケとアイカツカードの交換だったんです。その後コンテが上がってきたと思ったら、トモチケが生えている(笑)。「これは良いのか……?」と。
木村:まあ、そうですよね。もともと、カードはお互い商品ですので、普通に考えたら、他社タイトルのカードに触れるのは絶対NGな領域なんです。いわゆるデータカードダスやプリパラの筐体が、リアルタイムで稼働している状況だったら、おそらく難しかったと思います。今のこのタイミングだからこそ、映像の表現として昇華できたのかなと……。
依田:最後にあれがきたとき、皆さんの涙腺がゆるんだと思うんです。「まさか」っていう。
木村:あの提案って我々からだと出せないんですよね。そもそも、頭の中からそういった可能性を消去していますから。あれは大川さんが「監督として、ファンとして、自分が観たいものをやる」という気持ちであの提案を出してくださった。で、「そうきたか!」と(笑)。
依田:それを各社の関係者が“良し”として受け入れてくれた。そこが今回のプロジェクトの素晴らしさなんです。
[インタビュー/逆井マリ]












































