マンガ・ラノベ
『機動戦士ガンダムエイト』鴨志田一×高木秀栄 対談|第1巻発売記念インタビュー

『機動戦士ガンダムエイト』第1巻発売記念! シナリオ:鴨志田一先生×漫画:高木秀栄先生対談インタビュー|外宇宙探査の候補生たちにフォーカスした新たなオルタナティブシリーズ……その世界観構築に至るアイディアに迫る

人対人の戦争ではなく、過酷な環境下で人々がどう生きていくのかというドラマを目指した

――世界観の部分でいうと、人 VS 人の戦争ではなく人類とは違う生命体と戦うというアイディアはどのようにして生まれたのでしょうか?

鴨志田:元々が漫画で始めること自体が根幹にある企画だったんです。だから、誌面上での見やすい絵作りを重視してこの物語の構成となりました。メカとメカが戦う描写をいきなりオリジナルでやると、どっちが何のメカなのかがわからない。そういう弊害が出るであろうと当時 編集部の方と話したことがあるんです。なら敵側はクリーチャーみたいなものにすれば、絵の面ではわかりやすくなるんじゃないか。実はそういう前提があった上であの形に舵を切ったところがあります。

――ドラマを作る上でも戦う相手がクリーチャーだとまた違ったものになりそうです。

鴨志田:対立のドラマでなくても良いのかなと思っていたことに加え、過酷な環境下でその世界の人たちがどうやって生きていくのか、というような人間ドラマの作り方もあるだろうと考えました。対立させてもストーリーとして作りやすい部分もあるのですが、その要素はまた別で入ってくるので、それはそれでやりつつ今の物語を進めていく予定です。

――人類同士の部分も少しずつ要素が散りばめられていた印象です。人類の大半が既に地球を出て宇宙に生活の場を移していることはガンダムシリーズでは珍しい印象がありました。

鴨志田:外宇宙探査を軸とした話の作り方をして、今までのガンダムシリーズであまり見られなかった方向性にもちょっと振ってみようと思い切りました。後は外宇宙探査をするような技術力を持っているのならば、まだ地球に人類が多く留まっているような文明ではもうなくなっているだろうなと。そのあたりは割と自然に、設定を整えていった結果ですね。

――訓練生たちの物語を選んだところをもう少し掘り下げたいのですが、そこに至るまでにはどんな考えがあったのでしょうか。また、クリーチャーと戦うという要素と訓練生たちの物語という要素はどちらの軸が先にあがったのでしょうか?

鴨志田:まず大前提として、人と人とが戦争をしている世界ではない、軍隊ではやりたくないというふたつの軸があったんです。クリーチャーとの戦いを描いていいと確認が取れてからは、そこをフックに広げていきました。

ではそんな存在がどこから来たのかを考えたら、少なくとも太陽系内ではない。なら外宇宙は注目されるし、そこから流れてきたものが土星の環の中で見つかったとしましょう、と物語を作るための連想ゲームをどんどん積み上げていった感じです。

そこで子供が目指す仕事の選択肢のひとつとして、ナオミたちはモビルスーツのパイロットになるために切磋琢磨している世界観にしました。

特殊な状況に放り込まれて戦うことになったのではなく、あくまで外宇宙探査のお仕事としてモビルスーツに乗ることを自ら選んだ少年少女たちにスポットを当て、そんな彼らの物語として作っていくのがいいなと思ったんです。

前提がそうなっているので、カネコツさんにジリウスのデザインなどをお願いする際に、極端な例えではあるのですが「兵器というより、スペースシャトルみたいなもの」だと思ってくださいとお伝えしました。

――太陽系の各惑星が国みたいな形になっていて、全体が国連のような組織になっているという壮大な世界観にも惹かれました。

鴨志田:作中では太陽系同盟という名前にしていますけれど、そういう枠組みがあり基本的にはそのルールに則って人々は幸せに暮らしているという世界です。そんな世界を作ったのがナオミたちエイトの前の世代の人たちになります。でも見えないところで不満を抱えている人がいたり、フラストレーションを持っている人がいたりするのは当然にあることなので、この後はそんな小さな火種が少しずつ大きくなっていくような展開もあるかもしれません。

――エイトの面々はまだ世界的には少数派という情報もありました。まだまだ仲間が少なく、しかも兵士ではなく外宇宙探査の候補生をやっている子たちがこれから過酷な戦いに身を投じていくと思うと、厳しい展開もありそうです。

鴨志田:これについてはまだ何も話せることがないのですが、おそらく第2巻が出る頃には少しは先が予想できるようになっているかもしれません……!

――ありがとうございます。高木先生は絵の部分で本作の世界観を表現する上での苦労はありますか?

高木:僕の作業に関しては、鴨志田さんをはじめとするみなさんからのフィードバックに準拠して方向修正するので、皆さんほどの苦労はないと思います。

ただ、方向修正でいうと、第2話のマリアネラが踊るステージのシーンですね。あそこは設定が特殊だったので、最初に出したものから打ち合わせを経て、球体の中に水が満たされている場所で作中のような形で踊ることになりました。

鴨志田さんが「水が満たされているといいのでは」とおっしゃってくれて、あのような形にまとまったんです。自分としても気に入っている背景美術というか、舞台設定になったので良かったなと。

鴨志田:シナリオ上では基本的に、何か素敵なダンスをすることぐらいしか書いていなかったんです。イメージとしてはフィギュアスケートとバレエを混ぜたようなものとお伝えしましたが、それをこの世界の中でどう魅力的に見せるのかは、高木さんにあげてもらった設定を揉んでいった結果だったと思います。この形にできて凄く良かったです。

――主人公のナオミやマリアネラのキャラクターがどのように固まっていったのかもお聞かせください。

鴨志田:目的をもってモビルスーツに乗ることを選んだ人にしたかったので、ナオミについては外宇宙探査計画にパイロット候補のひとりとして参加しているキャラクターと定めました。エイトという人類の8番目の世代として優秀な遺伝子を持って生まれましたが、優秀であるが故に嫌な想いもしてきた……という要素も乗せています。

その合わせ鏡ではないですが、マリアネラはナオミとは対照的に華やかな舞台に立ったりしている。だけど、彼女も彼女でそれ故に周囲から色々な感情を向けられることがあったりする。

実はふたりとも似たような境遇であるという要素を持たせることで、何か惹かれ合う要素も出てくるんじゃないかなと考えていました。それとプラスして互いが互いの鏡にもなれると思ったので、そういったことを考えて組み合わせたふたりではありました。

――マリアネラは最初ちょっとツンツンしてそうだなと思ったのですが、話が進むにつれて柔らかい感じも見せてくれるのが意外でした。

鴨志田:自然に人との距離感が詰まっていけば、相手の態度も柔らかくなる。そこは割と自然なスタンスで考えて、ああなっていきました。

――第1話の段階でこの先の展開まで描かれていますが、結末が決まっているところに肉付けしていくのは難しかったりするのでしょうか。

鴨志田:僕は物語を作る時に、結末が決まっている方が向いていると自負していて。連載形式を取るときに、あまり先を考えずに執筆できる方も確実にいらっしゃいますが、自分の場合は先に終わり方を設定して、過程を膨らませていく考え方の方が上手くいきそうだったので、このやり方にしました。きっともう少し物語が動いたら「なんだって!?」ってなると思います。

――結末に至るまでのプロットがもうできあがっているとは驚きです。

鴨志田:ある程度ですけどね。中盤をどこまで膨らませるか決めかねているところがあるのですが、もう少し先の展開まではある程度こうなっていくと決めています。ナオミが初めてジリウスのフェザーエクステンションを使う瞬間とか、あのクリーチャーたちとどうやって遭遇するのかという部分は、今組み込んでいるところです。

――また、高木先生はキャラクターについては左先生のデザインを漫画に起こされているかと思います。意識されていることなどはあるのでしょうか?

高木:モビルスーツに関してはカネコツさんたちのデザインを90%くらい再現できていると思うのですが、キャラクターに関してはやっぱりどうしても自分の絵になってしまうところがいつも心苦しくて。だから読者のみなさんに受け入れてもらえたらいいなと思っています。

漫画だと僕が原稿を描くので、色々な表情をさせなきゃならない時があります。そうなると僕が一番描きやすい感じというか、僕の癖が出てくるので、キャラクターデザインから外れていないかどうかは気にしています。

担当編集さんは僕の絵を見て微妙なところがあればためらわずに指摘してくださるし、僕としてもそうしてほしいなと思っています。細かいところまで言ってくださっているので、そこはもう信頼して一緒に作り上げています。

『ガンダムエイト』はキャラクターデザインの左さんをはじめ、色々な人がデザイン面で協力してくれています。だからその方々のいいところをしっかり出したいですし、それが自分の絵で埋もれてしまう感じにはならないようにしたい。一番自分の癖が出るのがキャラクターなので、より意識していますね。

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