
特別編集版『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ ウルズハント -小さな挑戦者の軌跡-』長井龍雪監督インタビュー|キャラクターデザイン原案・伊藤悠さんの想いのこもったエンディングイラストにも注目
「幕間の楔」では三日月が太刀を使わなくなった理由が......!?
──「幕間の楔」についても伺わせてください。第1期のあとの物語で、おそらく『鉄血』ファンは嬉しいアレコレが掘り下げられていました。あのアイディアはどこから生まれたのでしょうか?
長井:(TVシリーズの)シリーズ構成の岡田麿里さんがオルガのスーツの話、自分が三日月が太刀を使わなくなった理由をやりたいというところから始まっています。『鉄血』本編の時に言っておきたかったけど言えなかった、言い忘れていた……そんな10年前の忘れ物をお互いに処理したみたいなイメージです。
太刀についてはちゃんと使おうと思ったら刃筋を立てないと普通に折れますし、三日月があれだけ嫌っていたから使わなくなったということですね(笑)。
鉄華団の戦闘は基本的に乱戦なので、太刀は中々扱いづらい武器だよなっていう話を本編でやれたらやりたかった。けれどどんどん話が進んでしまったので、10周年のいい機会だと思ってやらせてもらいました。
今回の「幕間の楔」の話があった上で、バルバトスルプスになる頃にはソードメイスという刀のような鈍器になる。それ以降は結局出番がなかったというか、バルバトスルプスレクスになってからだと太刀はもう持たないというか、もう殴った方が早いですし。物語の展開的にはそうなっていくのですが、構想だけは実はあった形になります。
──そんな構想についての話題に付随して、あの破損が目立つバルバトスの新形態「ガンダム・バルバトスアダプト」のコンセプトなどについてもお聞かせください。
長井:第1期が終わってからバルバトスルプスになるまでの形態をまだ出していなかったねという話から始まり、太刀メインで、というコンセプトで新規デザインを鷲尾さんにおこしてもらい、かなりカッコいいデザインになりました。
刀の鞘といいますか、刀を持たせるためのパーツも含めてカッコいい形になっています。本編だと一本抜いてしまっているのですが、太刀を二本とも鞘に収めている姿はぜひ見てもらいたいです。
──そして、そんな新たなバルバトスの戦闘シーンからは、やっぱり『鉄血』の戦闘シーンは唯一無二な印象を受けました。
長井:そう言っていただけるとスタッフの苦労が報われると思います。ひたすら殴って蹴ってと三日月らしい戦いになっていましたが、改めてやってみても作画カロリーは高かったですね。
鉄血は撃破されても爆発しないという縛りを本編から作って、どういう風に見せていくのかみんなで試行錯誤しながら制作を進めていました。今になっても思い出してもらえるものになっているというのは、当時のそんな挑戦が上手く行っていたのかなと思います。
──「幕間の楔」の収録現場についてはいかがでしたか? 鉄華団キャストが集まる機会は久々だったのではないでしょうか。
長井:新型コロナウイルスの影響も既に明けた時期だったので、大人数で収録ができました。当時からキャスト陣は仲が良いので、本当に同窓会のような雰囲気でしたし、収録現場ではお互いに「当時の声が出てないじゃないか!」みたいな弄り合いとかをしつつ進んでいて、懐かしいなと思いながら見ていました。細かいディレクションはありましたけれどみなさん楽しそうでしたし、雰囲気は本当に良かったです。
──ちなみに、声優陣とは収録でお話しされたりしたのでしょうか?
長井:みなさん本当に忙しい方ばかりで、僕の方はそこまで久しぶりという感覚がなかったのですが、色々なことを話しました。みんなあの当時の雰囲気のままでいてくれたような感覚がありましたね。
──エンディングもとても印象に残るものでした。こちらについても伺えますか?
長井:あのエンディングは、キャラクターデザイン原案の伊藤悠さんに描いていただきました。だから、あの映像は伊藤さんが『鉄血』への想いの丈をぶつけてくださった形のイラスト集です。
僕としても伊藤さんはこんな風に『鉄血』について考えていてくれたんだと凄く嬉しく思いました。多分ここまで『鉄血』を追いかけてくれたみなさんにとって、本当に喜んでいただける素敵なエンディング映像になったと思っています。
伊藤さんの絵がそのまま見れる映像は、これまでの『鉄血』ではなかったので、そういう意味でも、伊藤さんのテイストを出して締められるのは凄く素敵なアイディアだったなと。
──ありがとうございます。そして、今回の10周年記念プロジェクトを機に『鉄血』を新たにご覧になられる方もおられると思います。そんな方に注目してほしいポイントもお教えください。
長井:「子供たちが成り上がる物語」なので、刺さる人はめちゃくちゃ楽しめると思います。主人公たちのまさに生き様を見る話だと思うので、そういうところを楽しんでもらいたいです。
──そして、見どころと付随して長井監督が印象に残っている名場面も教えてください。
長井:第2期の2ndエンディング「フリージア」の映像で描かれている集合写真はかなり思い出深いです。鉄華団の最盛期を一枚の画として収められたなと思っています。
モビルアーマーのハシュマルとの戦い後の打ち上げ的なものをやった時の一幕というイメージなのですが、辛い話に突入していく前の一番楽しかった瞬間をスナップとして残せたのが自分としても嬉しかったんです。
──三日月とオルガ、ふたりの主人公に焦点を当てた場合はどこになりますか?
長井:第22話「まだ還れない」ですね。ビスケットが亡くなり、心が折れてしまったオルガの胸ぐらを三日月が掴んで発破をかける……このシーンはやっぱり思い出深いです。あれ以降のオルガは自分たちの進んだ先にある景色を見せてやるという話をひたすらするようになる。あそこで突き進むと決めて引けなくなったオルガの姿を見て、作っているこちらとしてもなんだか引けなくなった気がしています。そういう意味でも思い出深いシーンです。
──ありがとうございます。最後に『鉄血』ファンのみなさんへメッセージをいただければと。
長井:10周年のお祭りとして、こんな風に10年前の作品をもう一度、映画館でみなさんと楽しめる機会をもらえたことが本当に嬉しいです。今まで『鉄血』を好きだった方も、これを機会に初めて『鉄血』を知る方も、ぜひ一緒に楽しんでいただけたらと思います!
作品情報
あらすじ
ギャラルホルンによるアーブラウ中央議会への政治介入事件は、モビルスーツを使った武力行使にまで発展。
事件を終結に導いたのは、鉄華団と呼ばれる火星から来た少年たちだった。
金星に浮かぶラドニッツァ・コロニーで生まれ育ったウィスタリオ・アファムの耳にも、鉄華団の活躍は届いていた。
火星との開拓競争に敗北した金星は、四大経済圏も興味を示さない辺境惑星。
住人はIDすら持たず、今は罪人の流刑地として使われるだけ。
そんな生まれ故郷の現状を変えたいと願うウィスタリオの前に現れたのは、「ウルズハント」の水先案内人を名乗るひとりの少女だった。
「おめでとうございます。あなたは『ウルズハント』の参加資格を得ました」
少女との出会いにいざなわれ、ウィスタリオはコロニーすら易々と買うことのできる莫大な賞金を懸けたレース……「ウルズハント」の入口に立たされていた。
キャスト
デムナー・キタコ・ジュニア:堀内賢雄
コルナル・コーサ:上田麗奈
レンジー・ダブリスコ:木内太郎
カチュア・イノーシー:田中美海
598:三瓶由布子
タマミ・ラコウ:伊藤静
ローム・ザン:稲田徹
アイコー・ザン:山根雅史
シクラーゼ・マイアー:野島健児
【同時上映「幕間の楔」】
三日月・オーガス:河西健吾
オルガ・イツカ:細谷佳正
ユージン・セブンスターク:梅原裕一郎
昭弘・アルトランド:たくみ靖明(内匠靖明)
ノルバ・シノ:村田太志
ライド・マッス:田村睦心
ナディ・雪之丞・カッサパ:斧アツシ
クーデリア・藍那・バーンスタイン:寺崎裕香
アトラ・ミクスタ:金元寿子
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