
「オメガが記憶取り戻したらどうなるのか」が一番難しいテーマ――『ウルトラマンオメガ』メイン監督・武居正能さんインタビュー
防衛チームと調査チームが合わさって「科学特捜隊」になる青図
ーー怪特隊やウタ サユキの設定はどのように考えられたのでしょうか?
武居:怪特隊というチームを結成することは、初期の段階から決めていました。ストーリー上の流れとして、2クール目から話のテイストを変えたいという意図があります。
怪獣がいない世界から始まって、それに対する防衛策を持たない人類が「NDF」という防衛チームを作る。そこから研究のためのサポートチーム・研究機関として、「怪特隊」っていう調査チームが立ち上がる。要するに、防衛チームと調査チームが合わさって、最終的に「科学特捜隊」みたいな組織が設立されるという青図を考えた訳です。そういう風なお話の作り方をしつつ、描くのは「その前身にあたる組織」だけ形にしました。
というのも、例えば兵器に乗って戦うとか、彼らのキャラクターを考えたら、2年くらい訓練しないとあり得ないじゃないですか。そもそもコウセイが入れるかと言われると、難しそうですよね(笑)。
さらに「ウタ班」は正式な部隊でもなく、遊撃班です。 ウタさんはその班長であり責任者ですが、全国の部隊には他にも専門家や著名な方々がいます。 そうした中で、今回はウタさんが率いる遊撃班の活動をメインに描いているんです。それも、あくまで「まだ日本だけの仕事」という設定で考えています。
ーーウタ サユキ役の山本未來さんのキャスティングについても教えてください。山本さんご自身は「最初の資料よりは明るく演じた」とお話されていました。
武居:当初の予定としては、もう少し我の強い人というか。温かい人ではあるんですけど、もうちょっと男勝りな感じが強いイメージだったんですね。
僕の中では未來さんもそういう印象だったんです。連ドラで弁護士や刑事の役をやってらっしゃって、結構キリッとした役が多かった。ただ、実際にお会いしてみると「けっこう柔らかい人だな」と。最初の本読みでは、未来さんも台本に近い感じでやってくれたんですけど、「もうちょっと柔らかくしてもいいかもしれないですね」という話をして。自然体でチームに入って、そのまま空気に溶け込むようなキャラクターに変わっていった感じです。
ーー後半の怪獣の設定や演出でこだわった部分をお聞かせください。
武居:こだわったと言えば、やっぱりゾヴァラスですね。エルドギメラは地球の怪獣で、それまで登場した怪獣は全て地球出身です。なので、ゾヴァラスは初めて宇宙から来た怪獣なんです。そういう意味でも、分かりやすく無機質にしたかったんですね。要するに、肉体自体が地球上に存在しない物質で構成されているわけです。
そして、僕は個人的にゼットンが好きなので、明らかに“現代のゼットン”を狙って作っています。「ゼットンを新解釈して、デザインしてみたらどうでしょう」と。「ウルトラマンの最強の敵」という印象づけもできるし、やっぱりデザイン的に宇宙怪獣らしいじゃないですか。デザインだけでなく、歩きや声の加工もゼットンのイメージに寄せています。
加えて、設定的にヴァルジェネスの槍を使わないといけないんです。もちろん怪獣型では使えないですし、宇宙人形態過ぎると狙いから外れる。その中間を考えたときに“宇宙恐竜”が思い浮んだというのはありました。
ーー電飾の発光も凝っていますよね。
武居:発光の仕方はこだわりました。怪獣を操る能力を電飾でも見せたいというところがあって、実は試作品を事前に3、4回作っていただいています。
宇宙観測隊・オメガの設定
ーー宇宙観測隊の設定は最初から考えられていたのでしょうか。
武居:もちろんです。『ウルトラマンオメガ』のシリーズ構成を作る時に、初めに決めたのは、「記憶を失ったウルトラマンである」「地球人・コウセイとバディとして一緒に戦う」ということでした。また、後半に怪特隊っていうチームが結成されること、最終回の内容もかなり初期の段階で決めていたんです。
その次くらいに「宇宙観測隊」の設定を考えました。最終回に持っていくために「記憶をどう取り戻すか」を考える必要があったからです。
僕らの中ではこれが一番むずかしいテーマでした。お話的には必要でしたけど、ああなってしまうとウルトラマンは戦えないじゃないですか。その展開を第22話にするか、第23話にするか……当初は第24話の頭という案もありました。その予兆を見せるために、後半から“もう一人のソラト”が幻覚として出てくる描写を入れています。
ーー最後に『ウルトラマンオメガ』のクライマックスに向けて、ファンへのメッセージをお願いします。
武居:ラスト2話で、ソラトとコウセイの物語は完結します。放送されるまで「こういう展開かな?」と色々想像しながら観ていただきたいです。決して期待に沿えない仕上がりにはならないと思います。「これからどうなってしまうんだ」というところで終わっていますが、最後はエモーショナルに終わりますので、ぜひご期待ください。
[インタビュー/田畑勇樹 撮影・編集/小川いなり]
『ウルトラマンオメガ』作品情報
あらすじ
それまでの記憶を失った宇宙人「オメガ」は、地球人の姿で現れ、「ソラト」と名付けられます。「ソラト」は初めて触れ合う生命体である「地球人」を理解しようと、興味津々に人々を見つめます。
ときに出現する巨大生物、ソラトの失われた記憶から蘇る「怪獣」という言葉。次々と出現する巨大生物「怪獣」を目の前にして、無意識に使命感を掻き立てられるソラトは「ウルトラマンオメガ」に変身し、シャープでパワフルな戦いを繰り広げます。
一方で地球人も、初めて遭遇する巨大生物と赤きスラッガーで戦う巨人が何者なのかを理解しようと、あらゆる視点からその姿を見つめます。やがて結ばれる「宇宙人と地球人」のバディ…ソラトと平凡な青年。見つめ合い響き合うバディの心を通して、「ウルトラマンがなぜ地球を守るのか?」の問いに迫る意欲作です。
今、目覚めの刻(とき)。最新TVシリーズ『ウルトラマンオメガ』にご期待ください。
キャスト
(C)円谷プロ (C)ウルトラマンオメガ製作委員会・テレビ東京






































