音楽
Sir Vanity 2nd AL「cinéma」桑原 聖&中島ヨシキ インタビュー

桑原 聖さん&中島ヨシキさんがアルバムの魅力や6年を迎えるグループについて語り尽くす! ロックバンドプロジェクト「Sir Vanity」2ndアルバム「cinéma」インタビュー

「『思いついた時に勝ったって思ったでしょ?』」って言われて(笑)」

──続く「プレタポルテ」はいかがでしょうか?

中島:これはソロ曲なのですが、1人で歌っている理由はキーが高すぎるからなんです(笑)。

桑原:でも、ハモりは全部梅ちゃんが歌ってくれてます。

中島:この曲はなんとなくSir Vanityでこういうコンセプトで歌詞を書きたいという覚え書きのようなものがあり、メモに残していました。

「プレタポルテ」は服飾用語で、ハイブランドで作られている高級な既製品という意味のフランス語です。響きも意味もおしゃれで、単語としても口当たりも良く「プレタポルテ」をコンセプトに歌詞を書きたいなとストックしてあったテーマでした。僕はアパレルもやっているので、そういうものと絡めて曲を書けたらおしゃれかなと思って。

個人的に、マジでこの曲が好きで! デモをもらった時点でとても良いなと思っていました。こういう曲をやりたいというリファレンスを8月のライブ後に全員で出し合っていて、自分がリクエストした曲をリファレンスして作ってもらった曲なので、好みとしてもド真ん中な曲。「ここだ!」と思って当てて書き始めました。

プレタポルテとオートクチュールは似て非なるもので、オートクチュールは一点物のオーダーメイドの高級仕立て服。プレタポルテは既製品や大量生産されるもの。どちらも良いものではありますが、高級だからといって自分にとって価値があるかどうかは、必ずしもそうではないよなと。周りから評価されていても自分には評価できないものや、自分自身の自己評価などをお洋服に例えてみようかなと思いました。

──「クローゼット」「メジャー」「デザイン」といった単語も散りばめられていますよね。

中島:取りようだと思うので、そこは聴いた人にお任せします。曲が出来上がった時に斉藤君に聴いてもらったのですが、Dメロの〈選び抜かれた最高級を縫い合わせ 思いの丈を合わせられたら〉という歌詞をめちゃくちゃ気に入ってくれました。

服にも人間の感情にもリンクした歌詞になっているので「思いついた時に勝ったって思ったでしょ?」って言われて(笑)。

一同:(笑)。

中島:何に?と(笑)。

でも確かに、自分でもダブルミーニングとして綺麗な歌詞だなと思うし、音のはまり方としても上手くいったなと思います。サウンド的にもコンセプト的にも渾身の一曲です。

桑原:どう考えてもキーを下げた方が良かったのですが、譲りたくなかったんですよね。この曲は絶対にこのキーが気持ち良くて音も良いんです。高いのはわかっていたので気合で歌ってもらいました。

──先ほど中島さんが「自分好み」とおっしゃっていたので、歌唱する際も心地良さを強く感じられているのかなと。

中島:気持ちよかったです。難しさはありますが、抜けるような高音が決まった時が特にですね。

──桑原さんは中島さんの「プレタポルテ」の歌唱を聞いてどう感じられましたか?

桑原:「ごめん!」って。

中島:ははは!

桑原:でも、カッコいいなと思いますね。自分はどの音楽でも、ゆるい音楽ならゆとりのあるキーが好きですが、メッセージ性の高い曲はできるだけ限界ギリギリのキーが好きなんです。悲痛にも似た叫びのような、限界まで振り絞って声を出す感じが曲に合うと思っていて……ですがその中でも、これはやりすぎたなという反省があります(笑)。

だけど、キーを下げるとサウンド的に違ってしまうし、このサウンドが気に入っていたので下げたくありませんでした。単純にキーを下げるとチューニング的にもライブで演奏しづらい曲になってしまう。できればこのキーで行きたいので頑張ってほしいと。歌っていればそのうち高い音も出るので。

中島:「歌い慣れ」はありますからね。

桑原:録っている時から、想像以上に雰囲気が合っていて良いなと思っていました。そして歌詞をもらった瞬間に「勝ったな」と。

自分が想像していたものより良いものが出てきたと思ったので、あとは完成させていくだけだなと、歌詞を見てすぐ思いました。正直、他の曲は歌が乗るまでどうしようと思う部分があったのですが、これは明確なビジョンを持って作れた曲で、自分もあまりやったことのない曲だったので楽しく作ることができました。

「晴れたらいい、気も晴れたらいい、あいつの顔も腫れたらいいな」

──柔らかい雰囲気のある「明日ハレるかな」は、どのように制作されていかれたのでしょうか?

中島:この曲はアルバムの一番最後にできた曲です。実は最初は桑原さんが歌詞を書く予定でした。今まで桑原さんはSir Vanityでは歌詞を書いていなくて、この曲では書いてみようかなというお話もあったりして。

桑原:元々、書きたいなと思っていました。曲自体は先にできていて、自分で歌詞を書けるように前もって準備していましたが、時間がなく(中島さんに)「こういうことが書きたいです。お願いします」と伝えて……。

中島:発注が来ました(笑)。

桑原:(笑)。歌詞を読むと意味が分かりにくいかもしれませんが、音楽的には、要は「あまりにも毎日が辛すぎるので、あいつを殴りたいな」という曲です。ムカつくアイツをぶん殴ってスッキリしたいという曲。「明日ハレるかな」は、「晴れたらいい、気も晴れたらいい、あいつの顔も腫れたらいいな」というトリプルミーニングになっています(笑)。

中島:〈綺麗な顔に一発 ぶちかましたい〉という歌詞を梅原に歌わせるのがまた……綺麗な顔のやつに歌ってもらいたいなと(笑)。

桑原:そうそうそう(笑)。

中島:歌詞を書いていた時から「ここは絶対梅だな」と思っていました。

桑原:レコーディングの時も、ここからすごく元気になっていました(笑)。

中島:ははは! やりやすいだろうな(笑)。

桑原:キー的にも緩く作りたいと思っていて、そこまでは柔らかく歌おうというニュアンスだったのですが、2番のサビの〈綺麗な顔に一発 ぶちかましたい〉からは元気になって良いよと伝えました。本人も「元気になりすぎじゃないですか?」と言っていましたが、「大丈夫、一発殴ってるから!」って(笑)。

中島:(笑)。実際の歌詞的には「そんなことできないけどね」っていう感じですけどね。

──(笑)。桑原さんが歌詞を書く予定と話しましたが、いつかご自身で歌詞を書かれる可能性があったり?

桑原:どうでしょう。正直、自分が書きたいと思う歌詞は「MUSIC」と「明日ハレるかな」の内容に近いので、それ以外に言葉として世の中に発したいものは、現時点ではあまりないんです。よほど強く「これを言いたい」と思いつけば書くと思いますが、今は欲が1ミリもなくなりました。「MUSIC」「明日ハレるかな」も素敵な仕上がりになったと思いますし、逆に自分が書いた場合どうなったかを考えると……きっとこれ以上のものにはならなかったと思います。

自分の言葉に責任を持ちたくないわけではありませんが、変な解釈をされるのが好きではなくて。普段から話す言葉もそうですが、中高生にも伝わるように話すことを心がけていて、難しい言葉を使わないようにしています。

難しい言葉を使って違う解釈をされてしまうと、本質が伝わらないなと思っちゃうんです。そういう生き方をしてきた中で、音楽をするときは「言葉がなくて良い」ことが良いなと思っていて。もちろん、考える余白はあるのでしょうけれど、自分で言葉にしてしまうと「こういうものなんだ」「こう思っているんだ」と誰かが異なった断定されてしまいそうで、それが好きではないので……どうなんでしょう。機会があるなら、という感じです。

──このアルバムの全体のメロディーについては「こういうものを世に出したい」と、曲の方向性を決められていたりもしたのでしょうか?

桑原:メロディー全体を通して、と言われると難しいのですが、基本的に僕はキャッチーな曲が好きなので、どこかしらにキャッチーさを残しておきたいと思っています。ここまでの幅だったらSir Vanityでも受け入れられるかなという塩梅……行きすぎず硬派になりすぎず、少し遊びがある方が今回の「cinéma」というコンセプトには合っていると思っていて、その部分は気を付けました。

あとは普段、2人(梅原さんと中島さん)はたくさんのキャラクターソングや他の活動で歌っているので、うちでしか聴けないような声色や声のトーンを引き出せる曲にしたいと思っています。それが高めだったり、逆にすごい低めだったり、荒々しい歌い方だったり、普通のキャラソンではしないような吐息が入る歌い方などが合う曲を心がけています。

今回については「cinéma」という映画を見ているようなコンセプトもあったので、できるだけ繰り返しのメロディーだけど少し変化がついていたり、メロディーだけではなくオケに少し違う内容をのせて少しずつ変化をつけたりしています。

──変化?

桑原:例えばイントロから1番に移った後に、またリイントロとしてもう一度イントロに近い音楽をやる場合。こちらはあえてコード進行を変えたりすることで、推進力が違うように聴こえるんです。

レコーディングでは高いキーのものもありましたが「プレタポルテ」の落ちサビは流れを変えさせてもらいました。あとは同じ歌詞だけどメロディーが違うような当て方をさせてもらって、同じメロディーや同じ歌詞でも聴こえ方や捉え方が違って感じるような工夫を色々しました。

──中島さんがこのアルバムの楽曲の中でお好きな曲をあげるとするなら?

中島:シンプルに「cinéma」が好きです。

歌詞的にも今までひねくれた音楽をやってきたと思う中で、だいぶストレートで明るいロックですから、分かりやすくて良いなと思います。エモさもあるし、ツインボーカルならではの良さもたくさん詰まっていると思います。

これがSir Vanityのニュースタンダードというわけではないけど、こういう方向性もやれるし、「明日ハレるかな」みたいなゆるい曲もやっていいし「虚飾」みたいなものもあるし(笑)。

桑原:「虚飾」は僕の趣味だから(笑)。

中島:(笑)。各々のやりたいことや趣味、好きなものが出ているアルバムだと思います。

今回の新曲6曲、全部がすごく良いんですよね。桑原さんは、色々と追い詰められた状況で作っていたのですが、スケジュールや精神的に追い込まれると良いものができるのかなと(笑)。

桑原:本来、良くないことなんですけどね(笑)。

中島:これは本当に(笑)。だからというわけではないけれど、そうやってメンタルが追い込まれていたからできたという側面もひょっとしたらあるかもしれないなと。みんな時間がない中で取り組んだからこそ、より自分の潜在意識や好きなもの、自分の人格形成をしてきた歴史のようなものが色濃く出ている曲が集まったんだと思います。

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